「なぁ、あの黒髪の人いいよな」
「わかる、なんかミステリアスな感じしていいよな」
「お前らやめろ、呪われるぞ」
「呪われる?」
「あの人はな……」
§
「また噂されてるわよ、蓮子」
「人気者は辛いわね」
私は相方であるメリーと講義を終え家へ帰るところだった。
最近は大学内でも何故か噂されることが多い。それもメリーとセットではなく「私だけ」が噂されるのだ。失礼な奴らだ全く。
「ねぇ蓮子、明日から連休だから少し遠出しない?」
突然メリーが話を振った。普段私に連れまわされるだけのメリーが自分から行きたいところがあるというなんて珍しい。
「メリーが行きたい場所あるなんて珍しいわね。いいわよ。どこへでも行くわ」
「流石蓮子、じゃあ明日だけど……」
久しぶりの倶楽部活動に私は心を躍らせていた。
§
「宇佐見さん、最近変よね」
「そうそう、誰も居ないところでブツブツ言ってたり」
「誰かと話をしてるのかしら」
「やだ怖いわ……」
§
翌日私はやっぱり寝坊し、メリーとの待ち合わせ時間に遅れてしまった。
「相変わらずね、蓮子」
「あれ?今日は怒らないんだ」
私が少し茶化すとメリーはクスッと笑って見せた。
「ううん、いつも通り過ぎて安心したのよ」
「ふぅん……変なメリー」
「時間を視る目を持ちながら時間が守れない貴女の方が変よ」
私達は笑いながら駅の改札を通り、電車に乗った。
「ところでメリー、今日はどこへ向かうの?」
「簡単に言うならば自殺の名所ね」
随分と重たいチョイスをするんだな私の相方は。
「正確に言うと心中と思われる死体が多いところなんだけどね」
「おー怖い。死者の霊とかいそうだね」
そういう場所の幽霊ってよく道連れを求めているとかいう。物騒ではあるが、私達が調べるのにはピッタリだ。
「もしかして、怖い?」
メリーが意地悪そうにニヤッとして聞いてくる。
「ううん、メリーが一緒なら怖くないよ」
「相変わらず恥ずかしいセリフをそう簡単に言える蓮子は、ホント尊敬するわ」
メリーは嬉しそうに笑っている。
そんな他愛もない話をしているうちに目的地の最寄り駅に着いたようだ。
「ねぇ蓮子。私達、色々なところを旅してきたわよね」
あと少しで目的地という所ででメリーが突然話を切り出した。
「何よメリー。別れの言葉みたいじゃない」
「衛星トリフネや妖怪が集まる酒場、あと境界から桜も見たっけ」
「……メリー?」
「ねぇ蓮子」
「どうして私を見捨てたの?」
§
「メリーはいいわよね、私無しでも境界を見れて」
そんな一言を呟いてしまったのは私の失敗だった。今思えば試験で赤点取ったり、仕事先で上手くいかないことがあったりしてメリーに八つ当たりしてしまったのだろう。
「……蓮子?」
きっとメリーは私を気遣って、どこか境界巡りに行かないかと誘ってくれたのだ。
でも私は自分に余裕がなく、メリーの好意を馬鹿にされたように解釈してしまったのだ。
「行きたいんだったら一人で行って来れば?私一人じゃ境界は見れないけど、メリーなら見れるでしょう?」
私はそうメリーを突き放してしまった。メリーは泣きもせず、そっと部室を後にした。
それから何日後だろう。メリーが死んだという話を聞いたのは。
話を聞いたときは心底後悔した。とにかく泣いた。
私は相方になんて酷い仕打ちをしてしまったのだろう。
葬儀は親族の間で完結したらしく、私の様な『部外者』が立ち入る権利はなかった。
気を紛らわせる為に勉強に打ち込んでみたが点数は振るわない。
仕事に熱を向けても空回りばかりし、ミスの連発だ。
……一人で境界巡りをしようにも一人で出来るわけがなかった。
やっぱり私にはメリーが必要だったのだ。
そんな時だった。
「ただいま、蓮子」
部室に見慣れた格好をしたメリーが入ってきた。
なんでメリーがここにいるんだ、という前に私はメリーに抱きついていた。
そして涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら言った。
「おかえり……メリー」
§
「……」
「全部、思い出した?」
メリーが意地悪そうに笑う。
「……メリー。私は」
貴女になんてひどい事を、と言おうとした私の言葉を遮りメリーは言った。
「ううん。貴女の気も知らないで空気を読まない発言をした私にも非があったわ」
「メリー?」
私が声をかけるとメリーは待っていたかのように口を開いた。
「だから」
「____これからも、秘封倶楽部を続けましょう?」
そう言いながら手を差し出すメリー。
答えは決まっている。
「勿論よ、メリー」
彼女に手を伸ばした瞬間目の前が真っ暗になった。
§
『次のニュースです。
今日未明、○○川の下流で××大学3年生宇佐見蓮子さんの死体が発見されました
上流の崖には彼女の物と思われる靴が残されており、警察は自殺とみて捜査を進めています。
次のニュースは……』
「わかる、なんかミステリアスな感じしていいよな」
「お前らやめろ、呪われるぞ」
「呪われる?」
「あの人はな……」
§
「また噂されてるわよ、蓮子」
「人気者は辛いわね」
私は相方であるメリーと講義を終え家へ帰るところだった。
最近は大学内でも何故か噂されることが多い。それもメリーとセットではなく「私だけ」が噂されるのだ。失礼な奴らだ全く。
「ねぇ蓮子、明日から連休だから少し遠出しない?」
突然メリーが話を振った。普段私に連れまわされるだけのメリーが自分から行きたいところがあるというなんて珍しい。
「メリーが行きたい場所あるなんて珍しいわね。いいわよ。どこへでも行くわ」
「流石蓮子、じゃあ明日だけど……」
久しぶりの倶楽部活動に私は心を躍らせていた。
§
「宇佐見さん、最近変よね」
「そうそう、誰も居ないところでブツブツ言ってたり」
「誰かと話をしてるのかしら」
「やだ怖いわ……」
§
翌日私はやっぱり寝坊し、メリーとの待ち合わせ時間に遅れてしまった。
「相変わらずね、蓮子」
「あれ?今日は怒らないんだ」
私が少し茶化すとメリーはクスッと笑って見せた。
「ううん、いつも通り過ぎて安心したのよ」
「ふぅん……変なメリー」
「時間を視る目を持ちながら時間が守れない貴女の方が変よ」
私達は笑いながら駅の改札を通り、電車に乗った。
「ところでメリー、今日はどこへ向かうの?」
「簡単に言うならば自殺の名所ね」
随分と重たいチョイスをするんだな私の相方は。
「正確に言うと心中と思われる死体が多いところなんだけどね」
「おー怖い。死者の霊とかいそうだね」
そういう場所の幽霊ってよく道連れを求めているとかいう。物騒ではあるが、私達が調べるのにはピッタリだ。
「もしかして、怖い?」
メリーが意地悪そうにニヤッとして聞いてくる。
「ううん、メリーが一緒なら怖くないよ」
「相変わらず恥ずかしいセリフをそう簡単に言える蓮子は、ホント尊敬するわ」
メリーは嬉しそうに笑っている。
そんな他愛もない話をしているうちに目的地の最寄り駅に着いたようだ。
「ねぇ蓮子。私達、色々なところを旅してきたわよね」
あと少しで目的地という所ででメリーが突然話を切り出した。
「何よメリー。別れの言葉みたいじゃない」
「衛星トリフネや妖怪が集まる酒場、あと境界から桜も見たっけ」
「……メリー?」
「ねぇ蓮子」
「どうして私を見捨てたの?」
§
「メリーはいいわよね、私無しでも境界を見れて」
そんな一言を呟いてしまったのは私の失敗だった。今思えば試験で赤点取ったり、仕事先で上手くいかないことがあったりしてメリーに八つ当たりしてしまったのだろう。
「……蓮子?」
きっとメリーは私を気遣って、どこか境界巡りに行かないかと誘ってくれたのだ。
でも私は自分に余裕がなく、メリーの好意を馬鹿にされたように解釈してしまったのだ。
「行きたいんだったら一人で行って来れば?私一人じゃ境界は見れないけど、メリーなら見れるでしょう?」
私はそうメリーを突き放してしまった。メリーは泣きもせず、そっと部室を後にした。
それから何日後だろう。メリーが死んだという話を聞いたのは。
話を聞いたときは心底後悔した。とにかく泣いた。
私は相方になんて酷い仕打ちをしてしまったのだろう。
葬儀は親族の間で完結したらしく、私の様な『部外者』が立ち入る権利はなかった。
気を紛らわせる為に勉強に打ち込んでみたが点数は振るわない。
仕事に熱を向けても空回りばかりし、ミスの連発だ。
……一人で境界巡りをしようにも一人で出来るわけがなかった。
やっぱり私にはメリーが必要だったのだ。
そんな時だった。
「ただいま、蓮子」
部室に見慣れた格好をしたメリーが入ってきた。
なんでメリーがここにいるんだ、という前に私はメリーに抱きついていた。
そして涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら言った。
「おかえり……メリー」
§
「……」
「全部、思い出した?」
メリーが意地悪そうに笑う。
「……メリー。私は」
貴女になんてひどい事を、と言おうとした私の言葉を遮りメリーは言った。
「ううん。貴女の気も知らないで空気を読まない発言をした私にも非があったわ」
「メリー?」
私が声をかけるとメリーは待っていたかのように口を開いた。
「だから」
「____これからも、秘封倶楽部を続けましょう?」
そう言いながら手を差し出すメリー。
答えは決まっている。
「勿論よ、メリー」
彼女に手を伸ばした瞬間目の前が真っ暗になった。
§
『次のニュースです。
今日未明、○○川の下流で××大学3年生宇佐見蓮子さんの死体が発見されました
上流の崖には彼女の物と思われる靴が残されており、警察は自殺とみて捜査を進めています。
次のニュースは……』
二つの視点から話を描く、見る方向を変えることで新たな側面が顔を出す、というのは新鮮ですね。面白かったです。
どうしてBADENDが似合うのか
もっと風呂敷を広げてもいいかも