私は竹林を出てあまり行かない人里に向けて歩いていた。今日は蛮奇ちゃんと会うために向かっている。
袖口から毛は出てないよね。大丈夫。安心して里に向かっている途中の橋で蛮奇ちゃんが立っていた。
「おおい、蛮奇ちゃん来たよ……ってええええええ!?!?!?」
何故か顔が無い状態で立っている蛮奇ちゃん。いや、確かに蛮奇ちゃんは飛蛮奇っていう立派な妖怪だけど、なんで予備……の頭を出さないの!
「蛮奇ちゃん、予備の頭は……?」
それを言うとちょいちょいと私を手招きして地面に座らせた。指を使って地面に何かを書いていく。
『予備も全部盗られた。だから影狼、頭一つでもいいから取り返して来てくれない?』
「蛮奇ちゃん〜〜〜なんで頭盗られるのよ〜〜〜」
私は頭を抱える。近くにあった木の棒を蛮奇ちゃんに渡す。ガリガリと続きを書き出している。
『感覚が揺れると思って身体起こしたら頭の所だけ誰かに盗まれてて、それで起きた。予備も出そうとしたら無かった』
「……盗んだ人の顔とか見れてないの?」
『起きたのがバレて見る前に頭をタコ殴りにされてね……痛いっての!!!しかも今目を開けても袋に入れられてわかんないの!』
誰が盗んだか分からないじゃないですかヤダー!
『うーん、盗んだのは妖怪だとは思うんだけど。近所の人にはバレてないとは思うから』
「そういうことじゃないと思う。とりあえず蛮奇ちゃんの匂いを辿ればいいの?」
『警察犬かな?』
「何その警察犬って?」
『鈴奈庵のバイトに聞いた』
「バイト……? まあいいや、蛮奇ちゃんもついてきてよね!一人で人里方面に行くのは嫌だよ!」
『私の頭が無いのにどうやって人里に入れと? 巫女にこてんぱんにされるよ? ついでに影狼も』
少しイライラしたように木の棒を地面にトントンと叩く蛮奇ちゃん。
「こてんぱんにはされたくないなあ……」
『ほらほら匂い嗅いで行って! せめて頭ひとつないと話せもしないから!』
背中を思い切り叩かれた。痛い!
「扱い酷いってば!」
そんなこんなで蛮奇ちゃんの頭探しが始まりました。
***
蛮奇ちゃんは前に言っていました。頭を出せる数は決まっているって。なんか寝る前に出せる分を出してから寝るのだと。それしか聞いていないので分からないけど。
私がぼうっとしているのに気がついたのか背中をバシバシ叩かれる。
「蛮奇ちゃん、痛いってば」
蛮奇ちゃんは前に指差すような仕草を取ります。早く行けということなのか。今更考えても遅いけれど、蛮奇ちゃんってどうやって音を拾っているんだろう。物凄く野暮すぎるけれど。
くんくんと周りの匂いを嗅ぐ。蛮奇ちゃんの匂いは本人以外からは捉えられない。
「ん〜人里前でどこか隠れられる場所って無い?案内してくれない?」
そう言うと蛮奇ちゃんは私の手をとって引っ張って歩き出した。……なんか頭が無いのに物凄く器用な気がする。見えてないのになんでだろうなあ?
里の門の前まで来たけれど蛮奇ちゃんは近くの草陰で止まって指差す。
私は頷いてガサガサと入るとそこには茄子色の傘が。
「あれ……? この傘って?」
そんな独り言を言いながら一歩踏み出すと何かを踏んだ。
「ウグッ!?!?!?」
「……なに!?」
「うわああああああああ!?!?!?」
踏んだ相手はがバリと起きて驚いて走り去ってしまった。水色の短髪に水色の服。そして何より目立つ茄子色の傘。付喪神だった。
あっ、謝れなかった……さすがに悪かったよね。まあいいか。
草陰から匂いを辿る。あの傘の付喪神の匂いがキツかったがどうにか追いかけることが出来た。
門より離れた場所に隠れている蛮奇ちゃんに報告に行く。
「犯人は里の中にいるみたい。どうしよ、蛮奇ちゃん」
クイクイとまた地面に座らせられる。
『どこにあるのさ』
「まだ里の中としか分からないよ。中に入ってみないことには……」
『私は外にいるから、犯人らしき奴がいたら里の外に誘って。そこから襲う。そしたら完璧』
「……蛮奇ちゃん、それで里の人だったら巫女が飛んでくるよ?ボコされたいの?」
私もよく巫女のことを忘れるけれども蛮奇ちゃんも人のことが言えないような。
『影狼に言われたくない。ともかく行ってこい!』
今日最高に一発を背中にお見舞いされた。だから痛いって。
***
頭に赤の頭巾を被って。蛮奇ちゃんの上着を借りてきた。流石に帽子だけ取りに帰るとか嫌だもの。
くんかくんかと匂いを辿る。上着の主張が激しすぎるので鼻から離す。
人間の匂いがしすぎてフラフラと匂いに辿ると《鈴奈庵》と書かれた場所についた。庵の文字は傾いている。
「お、お邪魔します〜」
「どうもいらっしゃいませ〜」
「んあ、誰だ……って竹林の犬か」
「私は犬じゃありません!!!」
中に少し入った所でなぜ犬と呼ばれなければならないのだ。
出迎えてくれたのは鈴奈庵と書かれたエプロンを着た売り子……さん?と前にボコされたことのある白黒の魔法使いだ。
「なんでお前がこんな所にいるんだよ。竹林に帰ればどうだ?」
「喧嘩打っているんですか?まさか殺されたいと?」
売り言葉に買い言葉とはよく言ったもの。私の怒りの火に燃料が注ぎ込まれる。
まさに襲いかかろうとした時に止める声が。
「はいはい、魔理沙さんは煽らない。お客さんも落ち着いてください」
しゅんと落ち着く。人の店で暴れたら申し訳ない。
「それでお客さんどうしました? 探し物ですか?」
「あっと……そこの人に用事があるので失礼しますね」
何かを言い出そうとする白黒の魔法使いの腕もむんずと掴んで妖怪の怪力で引きずった。
里の裏路地まで引きずるように連れてきた。
「おい、何すんだよ」
「率直に聞くけど。蛮奇ちゃんの頭奪ったのあんた?」
掴んだ腕は話さない。この獲物を逃がしてなるものか。
「してないが? お前に話す義理もないだろうに?」
意地の悪そうな顔で笑う白黒の魔法使い。あーぶん殴って殺したい。そんなことしたら私が死ぬけど殺したい。笑い方が煽っているように見えて仕方がない。
「それじゃあお前にはついてきてもらうか。私が弾幕を放って一発でも当てたら話せ。逃げ切ったら逃がすわ」
「それなら受けてやる……」
頷いたのを見て私は里の外まで引きずり出した。
***
「おおい、蛮奇ちゃん、犯人連れてきた!」
声に気がついて草陰から飛び出してきた蛮奇ちゃん。私の反対側から魔法使いの胸ぐらを掴んでいる。
「おい! 犯人扱いするな! と言うか胸ぐら掴むな! 苦しっ……」
「離してあげなよ蛮奇ちゃん……」
いきなりぱっと離した。
「ゴホッ……お前な、はっ倒すぞ。弾幕避けから弾幕勝負にしてやるぞ?」
……異変を解決してきているやつに勝てるか。
「弾幕避けでお願いします」
私は頭巾として被っていた服を蛮奇ちゃんに渡してふわりと浮く。
私を見た魔法使いも空を駆ける。それを合図かのように私は弾幕を放ち始めた。
どかどかと地面がえぐれていく。しかし避けるのが中々早い。異変解決の専門には敵わない。
そろそろ限界だ。体力が持たないよ。ハアハアと息が上がり出した。
「ほらほらそれまでか……ッグハア!?」
明らかに私が飛ばしていない弾幕に白黒の魔法使いは被弾した。飛んできた方を見ると音を拾って的確に当てたんだろうか。
「お前、それはルール違反だろう!?」
ドカドカと足を踏み鳴らす蛮奇ちゃん。下に降りろとイライラしているんだろう……
「とりあえず蛮奇ちゃんの話聞いて……本人は怒り心頭みたいだし」
「クソっ、めんどくさいな!」
魔法使いは頭の帽子を地面に叩き付けるように投げた。
『とりあえずもう犯人は誰でもいいから早く頭返せ』
「って言われても……」
チラリと白黒の魔法使いを見る。
「あーもー、めんどくさいな、依頼を言うつもり無かったがもういい……わかさぎ姫の所に行け。それで万事解決だ」
それだけ言って魔法使いは飛び去った。疲れて止める余地も無かった。ああ、疲れた。
『姫の所に行こう。それで解決するなら良いよ』
「うん……早く行こうか……疲れたから休ませて欲しい、な……」
私は座り込んでしまったので蛮奇ちゃんに引き摺られて姫の池に向かった。
***
「姫!姫ー!いるんでしょー!」
まるで蛮奇ちゃんから叫ばれるように脇を小突かれてしまったので姫呼ぶ。
「なあに、影狼ちゃ……ん」
水底から出てきた姫は蛮奇ちゃんを見たら固まった。魔法使いの言うことは本当だったか。
「姫、白黒の魔法使いから話を聞いてきたから、白状してくれない……?」
「嫌よ!」
そう言ったかと思えば水底に入ろうとした。蛮奇ちゃんは池の縁で足を踏み鳴らした。
それで姫を浮かびあげられるの……って目を丸くした姫は死んだ魚のようにプカプカ浮いてきた。ええ、マジで!?
驚いて姫を池の縁に寄せた。
「姫。姫! 起きて!」
「ううん……何……が……」
私の腕の中でガクリとして項垂れた。
「姫ーーーーー!!!」
叫んだところで私の頭を思い切り叩かれた。痛い!
「姫、本当に起きて! 蛮奇ちゃんの大怒りを喰らいたいの!」
「それは嫌よ! と言うか何しに来たの?」
姫、分かってなかったのか!
「蛮奇ちゃんの頭がどこかにいったから探していたの。犯人は姫という事が分かったから取り返しに来たの」
「なんでわかったのかしら」
まぁ! とばかりに手で口を覆う。蛮奇ちゃんはそれを見て書き始める。
『とりあえずさあ、姫。返してくれない。空いている目から見たらここみたいだし言われなくても取りに行くけど』
ずかずかと茂みの方に歩いていったと思ったら無造作に麻袋を取った。ゴロリ、と麻袋から出てきたのは蛮奇ちゃんの頭でした。
……ちょっと不気味だったな。人間相手にすれば効果絶大だろうな。
蛮奇ちゃんの顔を見ると鬼のように怒っていた。姫……南無三……
その後、頭を取り戻した蛮奇ちゃんは姫をこてんぱんにしていた。それは語りたくないほどの怖い時間だったよ。
「蛮奇ちゃんの頭をじっくりと見たかったのよ〜〜〜〜〜!!!」
「顔なんぞいくらでも見せてやるから次から顔を奪うなぁ!!!」
袖口から毛は出てないよね。大丈夫。安心して里に向かっている途中の橋で蛮奇ちゃんが立っていた。
「おおい、蛮奇ちゃん来たよ……ってええええええ!?!?!?」
何故か顔が無い状態で立っている蛮奇ちゃん。いや、確かに蛮奇ちゃんは飛蛮奇っていう立派な妖怪だけど、なんで予備……の頭を出さないの!
「蛮奇ちゃん、予備の頭は……?」
それを言うとちょいちょいと私を手招きして地面に座らせた。指を使って地面に何かを書いていく。
『予備も全部盗られた。だから影狼、頭一つでもいいから取り返して来てくれない?』
「蛮奇ちゃん〜〜〜なんで頭盗られるのよ〜〜〜」
私は頭を抱える。近くにあった木の棒を蛮奇ちゃんに渡す。ガリガリと続きを書き出している。
『感覚が揺れると思って身体起こしたら頭の所だけ誰かに盗まれてて、それで起きた。予備も出そうとしたら無かった』
「……盗んだ人の顔とか見れてないの?」
『起きたのがバレて見る前に頭をタコ殴りにされてね……痛いっての!!!しかも今目を開けても袋に入れられてわかんないの!』
誰が盗んだか分からないじゃないですかヤダー!
『うーん、盗んだのは妖怪だとは思うんだけど。近所の人にはバレてないとは思うから』
「そういうことじゃないと思う。とりあえず蛮奇ちゃんの匂いを辿ればいいの?」
『警察犬かな?』
「何その警察犬って?」
『鈴奈庵のバイトに聞いた』
「バイト……? まあいいや、蛮奇ちゃんもついてきてよね!一人で人里方面に行くのは嫌だよ!」
『私の頭が無いのにどうやって人里に入れと? 巫女にこてんぱんにされるよ? ついでに影狼も』
少しイライラしたように木の棒を地面にトントンと叩く蛮奇ちゃん。
「こてんぱんにはされたくないなあ……」
『ほらほら匂い嗅いで行って! せめて頭ひとつないと話せもしないから!』
背中を思い切り叩かれた。痛い!
「扱い酷いってば!」
そんなこんなで蛮奇ちゃんの頭探しが始まりました。
***
蛮奇ちゃんは前に言っていました。頭を出せる数は決まっているって。なんか寝る前に出せる分を出してから寝るのだと。それしか聞いていないので分からないけど。
私がぼうっとしているのに気がついたのか背中をバシバシ叩かれる。
「蛮奇ちゃん、痛いってば」
蛮奇ちゃんは前に指差すような仕草を取ります。早く行けということなのか。今更考えても遅いけれど、蛮奇ちゃんってどうやって音を拾っているんだろう。物凄く野暮すぎるけれど。
くんくんと周りの匂いを嗅ぐ。蛮奇ちゃんの匂いは本人以外からは捉えられない。
「ん〜人里前でどこか隠れられる場所って無い?案内してくれない?」
そう言うと蛮奇ちゃんは私の手をとって引っ張って歩き出した。……なんか頭が無いのに物凄く器用な気がする。見えてないのになんでだろうなあ?
里の門の前まで来たけれど蛮奇ちゃんは近くの草陰で止まって指差す。
私は頷いてガサガサと入るとそこには茄子色の傘が。
「あれ……? この傘って?」
そんな独り言を言いながら一歩踏み出すと何かを踏んだ。
「ウグッ!?!?!?」
「……なに!?」
「うわああああああああ!?!?!?」
踏んだ相手はがバリと起きて驚いて走り去ってしまった。水色の短髪に水色の服。そして何より目立つ茄子色の傘。付喪神だった。
あっ、謝れなかった……さすがに悪かったよね。まあいいか。
草陰から匂いを辿る。あの傘の付喪神の匂いがキツかったがどうにか追いかけることが出来た。
門より離れた場所に隠れている蛮奇ちゃんに報告に行く。
「犯人は里の中にいるみたい。どうしよ、蛮奇ちゃん」
クイクイとまた地面に座らせられる。
『どこにあるのさ』
「まだ里の中としか分からないよ。中に入ってみないことには……」
『私は外にいるから、犯人らしき奴がいたら里の外に誘って。そこから襲う。そしたら完璧』
「……蛮奇ちゃん、それで里の人だったら巫女が飛んでくるよ?ボコされたいの?」
私もよく巫女のことを忘れるけれども蛮奇ちゃんも人のことが言えないような。
『影狼に言われたくない。ともかく行ってこい!』
今日最高に一発を背中にお見舞いされた。だから痛いって。
***
頭に赤の頭巾を被って。蛮奇ちゃんの上着を借りてきた。流石に帽子だけ取りに帰るとか嫌だもの。
くんかくんかと匂いを辿る。上着の主張が激しすぎるので鼻から離す。
人間の匂いがしすぎてフラフラと匂いに辿ると《鈴奈庵》と書かれた場所についた。庵の文字は傾いている。
「お、お邪魔します〜」
「どうもいらっしゃいませ〜」
「んあ、誰だ……って竹林の犬か」
「私は犬じゃありません!!!」
中に少し入った所でなぜ犬と呼ばれなければならないのだ。
出迎えてくれたのは鈴奈庵と書かれたエプロンを着た売り子……さん?と前にボコされたことのある白黒の魔法使いだ。
「なんでお前がこんな所にいるんだよ。竹林に帰ればどうだ?」
「喧嘩打っているんですか?まさか殺されたいと?」
売り言葉に買い言葉とはよく言ったもの。私の怒りの火に燃料が注ぎ込まれる。
まさに襲いかかろうとした時に止める声が。
「はいはい、魔理沙さんは煽らない。お客さんも落ち着いてください」
しゅんと落ち着く。人の店で暴れたら申し訳ない。
「それでお客さんどうしました? 探し物ですか?」
「あっと……そこの人に用事があるので失礼しますね」
何かを言い出そうとする白黒の魔法使いの腕もむんずと掴んで妖怪の怪力で引きずった。
里の裏路地まで引きずるように連れてきた。
「おい、何すんだよ」
「率直に聞くけど。蛮奇ちゃんの頭奪ったのあんた?」
掴んだ腕は話さない。この獲物を逃がしてなるものか。
「してないが? お前に話す義理もないだろうに?」
意地の悪そうな顔で笑う白黒の魔法使い。あーぶん殴って殺したい。そんなことしたら私が死ぬけど殺したい。笑い方が煽っているように見えて仕方がない。
「それじゃあお前にはついてきてもらうか。私が弾幕を放って一発でも当てたら話せ。逃げ切ったら逃がすわ」
「それなら受けてやる……」
頷いたのを見て私は里の外まで引きずり出した。
***
「おおい、蛮奇ちゃん、犯人連れてきた!」
声に気がついて草陰から飛び出してきた蛮奇ちゃん。私の反対側から魔法使いの胸ぐらを掴んでいる。
「おい! 犯人扱いするな! と言うか胸ぐら掴むな! 苦しっ……」
「離してあげなよ蛮奇ちゃん……」
いきなりぱっと離した。
「ゴホッ……お前な、はっ倒すぞ。弾幕避けから弾幕勝負にしてやるぞ?」
……異変を解決してきているやつに勝てるか。
「弾幕避けでお願いします」
私は頭巾として被っていた服を蛮奇ちゃんに渡してふわりと浮く。
私を見た魔法使いも空を駆ける。それを合図かのように私は弾幕を放ち始めた。
どかどかと地面がえぐれていく。しかし避けるのが中々早い。異変解決の専門には敵わない。
そろそろ限界だ。体力が持たないよ。ハアハアと息が上がり出した。
「ほらほらそれまでか……ッグハア!?」
明らかに私が飛ばしていない弾幕に白黒の魔法使いは被弾した。飛んできた方を見ると音を拾って的確に当てたんだろうか。
「お前、それはルール違反だろう!?」
ドカドカと足を踏み鳴らす蛮奇ちゃん。下に降りろとイライラしているんだろう……
「とりあえず蛮奇ちゃんの話聞いて……本人は怒り心頭みたいだし」
「クソっ、めんどくさいな!」
魔法使いは頭の帽子を地面に叩き付けるように投げた。
『とりあえずもう犯人は誰でもいいから早く頭返せ』
「って言われても……」
チラリと白黒の魔法使いを見る。
「あーもー、めんどくさいな、依頼を言うつもり無かったがもういい……わかさぎ姫の所に行け。それで万事解決だ」
それだけ言って魔法使いは飛び去った。疲れて止める余地も無かった。ああ、疲れた。
『姫の所に行こう。それで解決するなら良いよ』
「うん……早く行こうか……疲れたから休ませて欲しい、な……」
私は座り込んでしまったので蛮奇ちゃんに引き摺られて姫の池に向かった。
***
「姫!姫ー!いるんでしょー!」
まるで蛮奇ちゃんから叫ばれるように脇を小突かれてしまったので姫呼ぶ。
「なあに、影狼ちゃ……ん」
水底から出てきた姫は蛮奇ちゃんを見たら固まった。魔法使いの言うことは本当だったか。
「姫、白黒の魔法使いから話を聞いてきたから、白状してくれない……?」
「嫌よ!」
そう言ったかと思えば水底に入ろうとした。蛮奇ちゃんは池の縁で足を踏み鳴らした。
それで姫を浮かびあげられるの……って目を丸くした姫は死んだ魚のようにプカプカ浮いてきた。ええ、マジで!?
驚いて姫を池の縁に寄せた。
「姫。姫! 起きて!」
「ううん……何……が……」
私の腕の中でガクリとして項垂れた。
「姫ーーーーー!!!」
叫んだところで私の頭を思い切り叩かれた。痛い!
「姫、本当に起きて! 蛮奇ちゃんの大怒りを喰らいたいの!」
「それは嫌よ! と言うか何しに来たの?」
姫、分かってなかったのか!
「蛮奇ちゃんの頭がどこかにいったから探していたの。犯人は姫という事が分かったから取り返しに来たの」
「なんでわかったのかしら」
まぁ! とばかりに手で口を覆う。蛮奇ちゃんはそれを見て書き始める。
『とりあえずさあ、姫。返してくれない。空いている目から見たらここみたいだし言われなくても取りに行くけど』
ずかずかと茂みの方に歩いていったと思ったら無造作に麻袋を取った。ゴロリ、と麻袋から出てきたのは蛮奇ちゃんの頭でした。
……ちょっと不気味だったな。人間相手にすれば効果絶大だろうな。
蛮奇ちゃんの顔を見ると鬼のように怒っていた。姫……南無三……
その後、頭を取り戻した蛮奇ちゃんは姫をこてんぱんにしていた。それは語りたくないほどの怖い時間だったよ。
「蛮奇ちゃんの頭をじっくりと見たかったのよ〜〜〜〜〜!!!」
「顔なんぞいくらでも見せてやるから次から顔を奪うなぁ!!!」
よく頭を全部持っていけたな!?
相手が蛮奇ちゃんじゃなかったら完全に猟奇殺人犯な思考ですね、このわかさぎ姫。
頭泥棒とかいうパワーワード、どうやったら思いつくんだろう……?