机の上には林檎が一つ。それを正面に二人の少女が、向かい合って座っている。
「今日は雨かしら」
少女の一方、フランドールが問いかける。
「猫が可愛かったわ」
少女の他方、こいしが応える。
二人の少女はころころと笑った。傍からそれを見たものがいれば、まず「不気味である」と評するに違いないような雰囲気であった。会話が全く噛み合っていない風であることも、彼女らには全く気にならないかのようであった。
「本が汚れてしまうわ」
「とっても綺麗よ」
「それ、甘いわけ?」
「まるで夢のようだわ」
「芳しい香りね」
「わたし、綺麗?」
「貴方の目の前にいるわ」
二人はじっと互いを睨めつけた。どちらの口元にも薄っすらとした笑みが張り付いていた。ただし、それはあくまで口元だけの話だった。二人の視線はどちらを見ても、互いのことを値踏みするように、鋭く細められていた。
「最近、新しい子と知り合ったのよ」
「お姉様ったらひどいのよ」
「いつもはずっと川辺にいたみたいなんだけどね」
「最近お姉様が図書館の方に入り浸ってたんだけど」
「その子、実は抜群に釣りが上手かったのよ」
「何してるかと思ったら私の部屋を監視してたのよ」
「だからね、訊いてみたの。なにかコツとかあるのかなって。そしたらね、」
「しかも、それを指摘したときのお姉様の言い訳ったら傑作だったのよね」
そして二人は、歯を剥き出して同時に言った。
「レミリアさんって最近なにか面白いこと言ってた?」
「最近の子ってどうやって上手く釣るのかしら」
けらけらと、くすくすと、二人は揃って笑い出した。
「残酷ね」
「ワンコインよ」
「素敵だと思うの」
「美味しいわ」
「雨模様よ」
「言うほど幻想的かしら」
「とっても甘いと思うけど」
「気紛れだものね」
「木管楽器だけに?」
「猫よ」
少しづつではあったけど、二人の言葉を交わす速度は、どうやら上がっているようだった。証拠に、二人の言葉を返すまでの間の長さは、既に初めの半分ほどになっていた。
「まあ犬だからね」
「時間はあるかしら」
「本で読んだんだっけ」
「羽虫だと思うのだけど」
「鋏借りてもいい?」
「鼠があるわ」
「わ、しか合ってないじゃない」
「牡丹餅だものね。……あ、しまった」
瞬間、フランドールは心底慌てたように口を抑えた。
「お、やった」
こいしはにやりと口を歪めた。
「……ふふん」
「あっ」
そして、すぐに二人の表情が入れ替わった。
「むむー、不覚……」
こいしは唸りながら仰向けに倒れこんだ。その表情は、先程までの感情の読めない不気味な笑顔から一転していて、まさしく姿相応の少女と見紛うほどだった。その眼前で腕を組み、不敵な笑みを浮かべているフランドールの側を見ても、それは同様のようだった。
「前のお返しよ。悪く思わないで頂戴」
「別にいいんだけどさー。うーんしかしこの私がまさかフェイントに引っかかるとは」
「鍛錬が足りないのではなくて?」
「わーお辛辣」
「冗談よ」
「知ってる」
フランドールは笑いながら机の林檎を手に取って、そのまま齧り付いて見せた。その様子を見てこいしが言う。
「知恵の林檎の味はどう?」
「最高ね。糖質が疲れた脳髄に染み渡るわ」
「今日は雨かしら」
少女の一方、フランドールが問いかける。
「猫が可愛かったわ」
少女の他方、こいしが応える。
二人の少女はころころと笑った。傍からそれを見たものがいれば、まず「不気味である」と評するに違いないような雰囲気であった。会話が全く噛み合っていない風であることも、彼女らには全く気にならないかのようであった。
「本が汚れてしまうわ」
「とっても綺麗よ」
「それ、甘いわけ?」
「まるで夢のようだわ」
「芳しい香りね」
「わたし、綺麗?」
「貴方の目の前にいるわ」
二人はじっと互いを睨めつけた。どちらの口元にも薄っすらとした笑みが張り付いていた。ただし、それはあくまで口元だけの話だった。二人の視線はどちらを見ても、互いのことを値踏みするように、鋭く細められていた。
「最近、新しい子と知り合ったのよ」
「お姉様ったらひどいのよ」
「いつもはずっと川辺にいたみたいなんだけどね」
「最近お姉様が図書館の方に入り浸ってたんだけど」
「その子、実は抜群に釣りが上手かったのよ」
「何してるかと思ったら私の部屋を監視してたのよ」
「だからね、訊いてみたの。なにかコツとかあるのかなって。そしたらね、」
「しかも、それを指摘したときのお姉様の言い訳ったら傑作だったのよね」
そして二人は、歯を剥き出して同時に言った。
「レミリアさんって最近なにか面白いこと言ってた?」
「最近の子ってどうやって上手く釣るのかしら」
けらけらと、くすくすと、二人は揃って笑い出した。
「残酷ね」
「ワンコインよ」
「素敵だと思うの」
「美味しいわ」
「雨模様よ」
「言うほど幻想的かしら」
「とっても甘いと思うけど」
「気紛れだものね」
「木管楽器だけに?」
「猫よ」
少しづつではあったけど、二人の言葉を交わす速度は、どうやら上がっているようだった。証拠に、二人の言葉を返すまでの間の長さは、既に初めの半分ほどになっていた。
「まあ犬だからね」
「時間はあるかしら」
「本で読んだんだっけ」
「羽虫だと思うのだけど」
「鋏借りてもいい?」
「鼠があるわ」
「わ、しか合ってないじゃない」
「牡丹餅だものね。……あ、しまった」
瞬間、フランドールは心底慌てたように口を抑えた。
「お、やった」
こいしはにやりと口を歪めた。
「……ふふん」
「あっ」
そして、すぐに二人の表情が入れ替わった。
「むむー、不覚……」
こいしは唸りながら仰向けに倒れこんだ。その表情は、先程までの感情の読めない不気味な笑顔から一転していて、まさしく姿相応の少女と見紛うほどだった。その眼前で腕を組み、不敵な笑みを浮かべているフランドールの側を見ても、それは同様のようだった。
「前のお返しよ。悪く思わないで頂戴」
「別にいいんだけどさー。うーんしかしこの私がまさかフェイントに引っかかるとは」
「鍛錬が足りないのではなくて?」
「わーお辛辣」
「冗談よ」
「知ってる」
フランドールは笑いながら机の林檎を手に取って、そのまま齧り付いて見せた。その様子を見てこいしが言う。
「知恵の林檎の味はどう?」
「最高ね。糖質が疲れた脳髄に染み渡るわ」
普通に遊んでるこいフラにニヤリとしました
何やってるか理解してからも、勝負ついてなくない?って混乱しましたけど、やっとわかりました、そこがフェイントか!
フランちゃんの方が一枚上手か、こういう系はこいしちゃんの方が強そうだけど意外。
話をする二人かわいい
おねえちゃんズかわいい
実にこの子たちらしい遊びでした
やべえな