あっ、久しぶり!
元気にしてたかな?
えっ、もしかして私のこと覚えてないの!?
一緒におままごとやったり、ヒーローごっこしたじゃん! あ、それとかお馬さんごっことか!
私下になってお部屋の中散歩したじゃない! 結構疲れたんだからね!
覚えてない……みたいだね。
……そっ、か。そうだよね。
貴方も、もう大人になったんだね。
うーん……じゃあ『初めまして』の方がいいのかなぁ。でも私にとっては全然『初めまして』じゃないからなぁ。
まっ、いっか。
えーと、それじゃあ『人間』さん。一つ、世間話ってのをやってみない?
貴方は『心の理論』って知ってる?
『心の理論』ってね、「自分と相手は違う存在なんだ!」「これこれこういう場面だったら自分はこうするけれど、相手はどうするんだろう?」ってことを考えられるようになるってことを言うんだって。
聞いたことないかな?
サリーって女の子が自分の大切な人形をかごの中に入れておいたんだけど、アンって女の子がサリーのいない間に戸棚の中に人形をしまっちゃいました。さあ、サリーは帰ってきた時に人形をどこから探すでしょうってやつなんだけど。
……普通に考えたらわかるわけないよね。
だって私は私だし、サリーはサリーなんだもん。最初っから戸棚を探すかもしれないし、かごから探すかもしれない。はたまた別の場所を探すかも。
他人の考えることなんてわかるわけないよ。
……昔はね、自分じゃない存在の考えることなんて手に取るようにわかったんだ。でもね、疲れちゃったの。
貴方はこんなことを感じたことはない?
「こんなことをしたら相手はどう思うだろうか」とか「何をしたら相手は喜ぶんだろうか。怒るんだろうか。悲しむんだろうか」とか考えてるうちに自分が何なのかわからなくなるって感覚。
自分が自分のようで自分じゃなくなる感覚。
心がねじ曲げられてしまいそうになる感覚。
それがね、考えるまでもなく直接流れ込んでくる。
歓喜も。
悲愴も。
憤怒も。
愉悦も。
苦痛も。
延々と、流れ込んでくるの。
もう、疲れちゃったんだ。
だから私は心を読むことをやめたの。
心を読むことをやめたら世界がガラッと変わったわ。
なんて静寂で、なんて美しくて、なんて孤独なんだろう! ってね。
だって自分が自分らしく、ありのままで存在できる空間が遂にできたんだもの!
お姉ちゃんはね、何度も何度も「心を読む能力を手放すなんてもったいない! 最高の能力なのに!」って言ってくるけど、そんなの知ったことじゃないわ。
誰にも冒されることのないこの世界がどんなに素晴らしいものか、お姉ちゃんは知らないのよ。
自分ですら意識しない無意識の行動の積み重ねこそが、真に自分らしい行動だっていつ気付くのかなぁ。
……でもね、たまーに。本当にたまーーに「ああ、心が読めたらなぁ」って思うことはあるよ。
だって、こうして一緒にいるのに話ができないのはきっと『寂しい』ってことなんだろうから。
タグも消されてるのはそういう…
こいしちゃんマジイマジナリーフレンド
考えるほどにちょっと怖くなってしまう話でした