今日はシンギョクの日!
この作品に出てくるシンギョクは私の作品の「Gatekeeper」http://coolier.dip.jp/sosowa/ssw_l/223/1557669074を読んでもらえると分かると思います。
……雨だ。
森の中の洞窟から少し顔を出したところで、サアアと小雨が降り始める。降るとは予測していた。雨の降る前の独特の匂いして、空がどんよりと暗くなっていた。それと半身の男の頭が痛い、と言ったことで。近くの洞窟に雨宿りついでと休むために入った。
火をおこして寒くならないようにもした。
当のその男は少し唸りながら寝ている。
全くこいつは……本当に雨に弱い。
一人では暇なので、雨の中に行こうかな。舞は分からなかったけれど男に少しだけ教えてもらったから。
そんなことを思ったので私はタッ、とサアサアと降りしきる雨の中に飛び出した。
~*~*~
頭が痛い。何故かいつも雨が降る時になると痛くなってしまうのだ。
降りしきる雨の音を聞きながら横になっていたのでどうにか体を起こす。
「痛い……」
ガンガンと痛みを発する頭。思わず抱える。
本当にどうにかならないのか……
そう言えば女がいないことに気が付く。この雨の中、外にいるのか?
この洞窟に着いた時は雨は降っていなかった。ということは俺が寝ている間に雨は降り始めたんだろう。女は妖怪だから風邪は引かないとは思うが、俺が服とかが濡れているのを見るのが嫌なのでひっぱり戻そうかと思った。
洞窟の入り口に行くと出たところ直ぐに緑の木々と踊る女がいた。
たん、たんたん。俺が教えた舞を踊っている。本来は巫女が神に捧げるために踊る舞を妖怪の女が舞う。滑稽だろう、それでも俺はそれだけに目を奪われた。
サアサアと降りしきる中。緑色の舞台でふわり、と。小鳥達と戯れながら、とん、とんと、踊っている。
俺は頭が痛いことを忘れてそれに見とれていた。
どれほど見とれていたのだろうか。分からなかったが、女が俺に気が付いたみたいだ。
時間が止まったような感覚の中でこちらを向いた女の顔は笑顔だった。
「もう大丈夫なの? もう少し寝てた方が良いんじゃない……」
「大丈夫だ……少し治まった……それと、洞窟の中に入れ。風邪は引かないだろうが……俺が見ていて嫌だからな」
金縛りのような、止まった感覚は話しかけられると同時に戻った。
俺はそのまま女の元に行き、左腕を取って引きずるように洞窟に入った。女は抗議していたが無視をした。
「もう少し舞いたかったのに。おまえ、雨のこと本当に嫌いだな……」
「雨は好きではないな。頭が痛くなるからな……」
「まあ、おまえに従う。上着を火の近くで乾かしてくれないか、疲れたから寝る」
女はそれだけ言うと紺で裏地が赤の上着を俺に投げて座ってそのまま寝てしまった。
やれやれと思いながら俺は女の上着を木で組み立てて作った物干し竿で干す。
さっきまで寝ていたのだから流石に眠れない。かと言って外は出たくない。
パチパチと木が燃える音が洞窟内に響く。
何もすることがないので女の顔を見る。
紅の長い髪の毛は濡れている。両側のこめかみ辺りから生える二本ずつ、計四本の角と髪は燃える炎にゆらゆらと照らされている。スウスウと寝ている女の肌に髪から水滴が滴り落ちていく。それがとても扇情的で……って、俺は何を考えているんだ。
バッと俺は女の顔から目を離した。
不味い感情が込み上げてくる。これは……このまま寝た方が良いかもしれない。寝れなくても無理矢理寝よう。そうしよう。
意識を無理やり、暗闇へと落としていった。
~*~*~
「ふぁ……」
良く寝た。んん、と身体を伸ばす。濡れた髪も服も乾いているので良かった。
前を見ると男はゴロンと寝転んで寝ていた。火は燃え尽きて消えている。作ったと思われる物干し竿に私の上着がかけてあったので乾いているのを確認して着る。
外の雨は既に止んでいた。男を起こさないように洞窟から頭を出すと空は明るかった。雲が少しづつ引いていて、そこから晴れ渡る青空が見える。少し空を飛びたい気分だった。後から男を担いで飛ぼうかな。
チチチ、と小鳥が私の角にとまる。
「お前たち、また来たの」
雨の中で踊っていた時に来た小鳥だ。薄ぼんやりとだが、晴れて少し喜んでいるのような感じがする。
「はは、あんまり角の上で動かないでね。くすぐったいのよ」
ぴょんぴょんと角から頭の上に来た。私は手を頭にやって、小鳥がとまるのを待つ。
よほど髪の毛が気に入ったのか、手にとまってくれなかった。
……飛び立つまでこのままにしとこうかな。男に見られたら笑われそうだけれどこの小鳥が気に入っているならそれでいいか。
そんなことを思って私は小鳥達と戯れていた。
~*~*~
目が覚めた。無理矢理寝るのは出来たようだ。ゆっくりと身体を起こすと洞窟の入り口から声をかけられた。それと小鳥の声がチチチ、と大きな音がする。
「助けて〜〜」
その声につられて後ろを見ると驚いた。
小鳥達が女の髪の毛、角、肩、とまれるところにとまっているではないか。ざっと三十匹くらい……かな。
わんさか乗られた女は動けないらしく困ったような顔をしている。
「……どうしたんだ?」
「小鳥と遊んでいたら頭のてっぺんに乗っている子の仲間を呼んだみたいでこんな感じになっちゃった。いつか飛んでいくだろうって思ったら飛んでいかない……」
「はぁ……これからまた旅に出るのにな。ちゃんと説得しろよ」
こればかりは女本人にどうにかしてもらうしかない。俺には小鳥の言葉なぞ分からん。女は少しだけ分かるみたいだが……
「お願い〜これから私たち出ていくの。だからここでお別れだから。一緒に舞ってくれてありがとうね」
チュン。
頭のてっぺんにいる小鳥が一声鳴いたと思ったら女にとまっていた小鳥達はバササと一気に飛んでいった。
「おお、凄いな」
「ふふ、みんな楽しかったって言ってくれた」
「なら良かったな。さ、旅の続きと行こう」
そうして俺たちは雨上がりの空の下に出ていった。
この作品に出てくるシンギョクは私の作品の「Gatekeeper」http://coolier.dip.jp/sosowa/ssw_l/223/1557669074を読んでもらえると分かると思います。
……雨だ。
森の中の洞窟から少し顔を出したところで、サアアと小雨が降り始める。降るとは予測していた。雨の降る前の独特の匂いして、空がどんよりと暗くなっていた。それと半身の男の頭が痛い、と言ったことで。近くの洞窟に雨宿りついでと休むために入った。
火をおこして寒くならないようにもした。
当のその男は少し唸りながら寝ている。
全くこいつは……本当に雨に弱い。
一人では暇なので、雨の中に行こうかな。舞は分からなかったけれど男に少しだけ教えてもらったから。
そんなことを思ったので私はタッ、とサアサアと降りしきる雨の中に飛び出した。
~*~*~
頭が痛い。何故かいつも雨が降る時になると痛くなってしまうのだ。
降りしきる雨の音を聞きながら横になっていたのでどうにか体を起こす。
「痛い……」
ガンガンと痛みを発する頭。思わず抱える。
本当にどうにかならないのか……
そう言えば女がいないことに気が付く。この雨の中、外にいるのか?
この洞窟に着いた時は雨は降っていなかった。ということは俺が寝ている間に雨は降り始めたんだろう。女は妖怪だから風邪は引かないとは思うが、俺が服とかが濡れているのを見るのが嫌なのでひっぱり戻そうかと思った。
洞窟の入り口に行くと出たところ直ぐに緑の木々と踊る女がいた。
たん、たんたん。俺が教えた舞を踊っている。本来は巫女が神に捧げるために踊る舞を妖怪の女が舞う。滑稽だろう、それでも俺はそれだけに目を奪われた。
サアサアと降りしきる中。緑色の舞台でふわり、と。小鳥達と戯れながら、とん、とんと、踊っている。
俺は頭が痛いことを忘れてそれに見とれていた。
どれほど見とれていたのだろうか。分からなかったが、女が俺に気が付いたみたいだ。
時間が止まったような感覚の中でこちらを向いた女の顔は笑顔だった。
「もう大丈夫なの? もう少し寝てた方が良いんじゃない……」
「大丈夫だ……少し治まった……それと、洞窟の中に入れ。風邪は引かないだろうが……俺が見ていて嫌だからな」
金縛りのような、止まった感覚は話しかけられると同時に戻った。
俺はそのまま女の元に行き、左腕を取って引きずるように洞窟に入った。女は抗議していたが無視をした。
「もう少し舞いたかったのに。おまえ、雨のこと本当に嫌いだな……」
「雨は好きではないな。頭が痛くなるからな……」
「まあ、おまえに従う。上着を火の近くで乾かしてくれないか、疲れたから寝る」
女はそれだけ言うと紺で裏地が赤の上着を俺に投げて座ってそのまま寝てしまった。
やれやれと思いながら俺は女の上着を木で組み立てて作った物干し竿で干す。
さっきまで寝ていたのだから流石に眠れない。かと言って外は出たくない。
パチパチと木が燃える音が洞窟内に響く。
何もすることがないので女の顔を見る。
紅の長い髪の毛は濡れている。両側のこめかみ辺りから生える二本ずつ、計四本の角と髪は燃える炎にゆらゆらと照らされている。スウスウと寝ている女の肌に髪から水滴が滴り落ちていく。それがとても扇情的で……って、俺は何を考えているんだ。
バッと俺は女の顔から目を離した。
不味い感情が込み上げてくる。これは……このまま寝た方が良いかもしれない。寝れなくても無理矢理寝よう。そうしよう。
意識を無理やり、暗闇へと落としていった。
~*~*~
「ふぁ……」
良く寝た。んん、と身体を伸ばす。濡れた髪も服も乾いているので良かった。
前を見ると男はゴロンと寝転んで寝ていた。火は燃え尽きて消えている。作ったと思われる物干し竿に私の上着がかけてあったので乾いているのを確認して着る。
外の雨は既に止んでいた。男を起こさないように洞窟から頭を出すと空は明るかった。雲が少しづつ引いていて、そこから晴れ渡る青空が見える。少し空を飛びたい気分だった。後から男を担いで飛ぼうかな。
チチチ、と小鳥が私の角にとまる。
「お前たち、また来たの」
雨の中で踊っていた時に来た小鳥だ。薄ぼんやりとだが、晴れて少し喜んでいるのような感じがする。
「はは、あんまり角の上で動かないでね。くすぐったいのよ」
ぴょんぴょんと角から頭の上に来た。私は手を頭にやって、小鳥がとまるのを待つ。
よほど髪の毛が気に入ったのか、手にとまってくれなかった。
……飛び立つまでこのままにしとこうかな。男に見られたら笑われそうだけれどこの小鳥が気に入っているならそれでいいか。
そんなことを思って私は小鳥達と戯れていた。
~*~*~
目が覚めた。無理矢理寝るのは出来たようだ。ゆっくりと身体を起こすと洞窟の入り口から声をかけられた。それと小鳥の声がチチチ、と大きな音がする。
「助けて〜〜」
その声につられて後ろを見ると驚いた。
小鳥達が女の髪の毛、角、肩、とまれるところにとまっているではないか。ざっと三十匹くらい……かな。
わんさか乗られた女は動けないらしく困ったような顔をしている。
「……どうしたんだ?」
「小鳥と遊んでいたら頭のてっぺんに乗っている子の仲間を呼んだみたいでこんな感じになっちゃった。いつか飛んでいくだろうって思ったら飛んでいかない……」
「はぁ……これからまた旅に出るのにな。ちゃんと説得しろよ」
こればかりは女本人にどうにかしてもらうしかない。俺には小鳥の言葉なぞ分からん。女は少しだけ分かるみたいだが……
「お願い〜これから私たち出ていくの。だからここでお別れだから。一緒に舞ってくれてありがとうね」
チュン。
頭のてっぺんにいる小鳥が一声鳴いたと思ったら女にとまっていた小鳥達はバササと一気に飛んでいった。
「おお、凄いな」
「ふふ、みんな楽しかったって言ってくれた」
「なら良かったな。さ、旅の続きと行こう」
そうして俺たちは雨上がりの空の下に出ていった。