……あら、こんばんは。どうしたの?こんな時間に
その質問、おまえに返すぜ。一体こんな夜中に何やって……ああ、お食事中だったのか
うん。珍しいよね。食べてくれってさ
外来人か?
多分ね。ずうっと森の中できょろきょろしてたから、里に戻れないのか聞いたの。里の人間だったら嫌だもん
そりゃそうだ。おっかない巫女が飛んでくるだろうな
ここまで案内したら、急に空を見上げて、座って、星を眺めてたの
んで、食べたのか
んーん。なあんかお姉さんの横顔が綺麗でさ。私も横に座ったの
ははっ、おまえ意外にロマンチストなんだな
茶化さないでよ……ちょっと待って。あと少しだから
ん、おお。ゆっくり食べろ
……御馳走様でした、っと
ああー、あー……ほれ、水
気が利くね
血なまぐさいんだよ。その竹筒も要らん。やる
わは、いいね。明日からこれに水を汲もう。で、なんだっけ。そう、空を一緒に見上げたの
なんか言ったのか
しばらく一緒に見上げてたらさ、ここはどこって。どこって言われてもさ、困っちゃったよ。幻想郷だって言ったら、黙っちゃってさ。悪い事でも言っちゃったかなあって
そうか
俯いて、なんか色々言い始めたの、忘れちゃったけど。んーとね、仕事がどうたらとか、逃げちゃったとか。すっごく長かった。そしたらいきなり顔上げてさ、貴女は誰って
なんて答えたんだ
妖怪だよって。そう答えたら、しばらく笑ってたの。ちょっと怖くなっちゃった。で、私を食べるのって。だから食べたいって言ったの。外来人だったみたいだし、どこから来たんだろうね
で、食べたんだな
痛くしないでって言われたから、頭から丸かじりしたの。星になりたいって言ってたっけ。美味しかったなあ
味なんてわかるのか
私、けっこう”グルメ”なんだけど
悪かった。ごめんな。しかし星になりたい、か……孤独だったのかもな
孤独?
ああ
星になりたいのに?
ああ
だって、あんなに沢山輝いているじゃない。どうして孤独なのよ
んんー、ああー、逆だ
逆?
そう。沢山集まって輝いているんじゃない。星たちは孤独だから、光を出すのさ
……逆ってなによ。わからない
そうだなあ。空を見るだろ。ああ、あの一際輝いている星、わかるか
うん
ここから、あの星までさ、どれくらいの距離があると思う?
ええー、うーんと……いっぱい?
そう、一杯だ。沢山だ。本当だったら、私たちの目には見えないくらい、あの星は遠くにあるのさ
見えてるじゃない
光っているからな
……どういうこと?
星たちは、ああやって光り輝いて、みんなに語り掛けているのさ。私はここにいるよって。みんなのことも見えているよってさ
どうして、そんなことをするの
寂しいからさ
寂しいの?
ああ。人間も、妖怪も、私も、お前も。星だってなんだってそうさ。独りぼっちじゃあ生きられないのさ
そーなのかー
だから、夜空には星が輝くんだ
じゃあ、じゃあさ、どうして昼間は太陽だけなのかしら
太陽は、とっても強いんだ。だから、星たちに呼び掛けるのさ。みんなの分まで、僕が輝いてあげるってな
だから、孤独じゃないんだ
そうさ
お姉さんも、太陽になりたいって思えばよかったのに
……太陽はとっても強いからな。お姉さんはきっと、そこまで強くなれないと思ったんだろう。きっとな。だから月があるんだ
月が?
ああ。太陽はとっても強くてみんなを包んでくれるけど、それが眩しすぎるっていうやつもいるのさ
確かに、朝日は眩しいもんね
うむん……ま、そういう認識でいいか。だから、月の光は優しいだろう?
確かに!
きっと、いろいろ考えたんだろうさ、お姉さんは
いろいろ?
ああ
例えばどんな?
ルーミア
うん
私たちが、それを考えちゃあいけない
そうなの?
そうさ
ふうん。変なの、人間って
お姉さんは色々考えて、ここが最期になったんだ。私たちは、それを憶えていることが重要なんだ
憶えていることが
そうすれば、きっとお姉さんは孤独じゃないだろうからな
ああ、そっか
さて、私は行くぜ。夜更かしは肌に悪いんだ
ねえ魔理沙
あん?
食べていい?
ぶっ飛ばすぞ
わは
ナチュラルに魔理沙に食べていいと聞くルーミア好きです。
それが良いなあと思いました。
とても良い雰囲気があって素敵だと思いました。会話だけで雰囲気を出せるのすごい。
言葉だけでも色々浮かび上がってくるものがありますね。
ロマンチスト気味に星に対する思いを熱く語っちゃうあたり、あー魔理沙だなーって感じがして好き
二人の会話が面白くてって言うとちょっとアレだけど、雰囲気が良かったです
考えてはいけないっていう台詞が特に印象深かったです
ロマンチックな星々の話と、人食いが共存してる不思議な作品でした
青く光る星が一番あったかい、あったかくて冷たい感じのお話でした。良かったです