カン、カン、カン、カン……
暗闇の螺旋階段を降りていく。
何も考えずに、何も考えられずに。
いつの間に降りていたのだろうか。私にはそれが分からなかった。
降りても降りても先の見えないこの階段はどこに行くのだろうか。
“あれえ、フランちゃん? ここに降りてきたんだね?”
宙から声が聞こえる。
「誰かしら?」
“気が付いているのにあえてそんなことを聞くんだね? いじわるー”
「ふふ、ごめんね、こいし」
時々屋敷に迷い込んでくる悟らないさとり妖怪。古明地こいしの声であることは分かっていた。
そうやって話しているうちにも私は螺旋階段を降りていく。
「ねーえ、この階段はどこまで降りていくのかしら」
そんなことを聞いてみる。返事は期待せずに。
“さあね。フランちゃんの思いのままが……おっと”
「何よその間」
不自然に言葉を切ったのでとても気になる。
“ふふ、何かに呼ばれたみたい。じゃあね、後から会おうね”
「おーい、こいし? ……いなくなっちゃった」
どこからか聞こえた声は消えた。
カン、カン、カン……
降りる、降りていく。ただひたすら暗闇の螺旋階段を。
ここから私の意識は黒に塗りつぶされた。
#####
……おき……お……い、フ……ラン、「起きろフランドール!」
引っぱたかれて私は飛び起きた。
「……!?」
ここはどこ? 黒は? あれ?
「……やっと起きたか。うなされているから何かと思えば……」
キョロキョロと部屋を見ていたらお姉様はみっともなく足を揺らしながら私のベッドの隣にいた。
「あれ、螺旋階段は?」
「はぁ? 螺旋階段? 何を言っているんだ」
……ここは現実か。あれ、さっきのは夢?
「こいしはどこ?」
「……こいし? 誰だそれは」
あれ? こいし、って誰だっけ……?
「どうした? 誰かと思い違いでもしているのか?」
「いや……何でもないよお姉様。もう少し休むから出ていってくれないかしら」
「まあ、良いが」
珍しくさっさと出ていった。
……私は誰のことを言っていたんだろうか。もう分からなくなってしまった。
そんなことを思いつつまた寝ようかと思ったらいきなりお腹に重さを感じた。
「ウグッ!?」
お腹のところを見ると知らない女の子が馬乗りになっている。
「あー、やっと私に気が付いたー。やだなあフランちゃん、私のこと忘れるなんてー」
あばばば重い。お腹にクリーンヒットしてる。
「誰か知らないけどそこから退いて……苦しい……」
「わあ、ごめんね?」
いきなり現れた誰かは退いた。ほっとしているとその子の顔が近づいてきた。
「忘れるだなんて悲しいなあ。あ、でもあの夢は仕方ないか。あの夢を見るとお姉ちゃんですら忘れるもん。なんだろうね、何かに働きかけているのかな。ねえ、フランちゃんはどう思う?」
つばの広い深い灰色の帽子を被ったその子は自己完結させてからよく分からないことを聞いてくる。
「何のこと言っているの? それとあなたは誰?」
いきなり言われても仕方がない。
「ああ、ごめんね? 私は古明地こいし。こいしって呼んでくれたらいいよ。フランちゃんはどう思う……」
困惑しか無い。いきなり現れたと思ったら何を言っているんだろう。
「いきなり言われても分からないよ。あなたの都合なんて知らないし」
「あは、いつも同じ返しをするね。やっぱりフランちゃんはフランちゃんだね、変わらないね」
あははといきなり笑い出した。
「何故か物凄い腹立つけれどあなたは何しに来たの」
「んー? 遊びに来たの。それとフランちゃんとお友達になりに来たの」
「友達……? 何それ」
「また改めてなってくれると嬉しいなあ、ね、なろうよ?」
「……なんの意味が?」
「野暮だなあフランちゃん。なりたいならなればいいんだよ。今からお友達ね?」
話を勝手に進めるな。
「なるだなんて言ってないけど」
「うん、今私が決めた事だもの」
「はぁ?」
「フランちゃんが忘れなくなるまでお友達になるのをやめないよ」
「だから何それ……」
私は話についていけなかった。
「ふふ、いつまでフランちゃんは覚えているかな……」
暗闇の螺旋階段を降りていく。
何も考えずに、何も考えられずに。
いつの間に降りていたのだろうか。私にはそれが分からなかった。
降りても降りても先の見えないこの階段はどこに行くのだろうか。
“あれえ、フランちゃん? ここに降りてきたんだね?”
宙から声が聞こえる。
「誰かしら?」
“気が付いているのにあえてそんなことを聞くんだね? いじわるー”
「ふふ、ごめんね、こいし」
時々屋敷に迷い込んでくる悟らないさとり妖怪。古明地こいしの声であることは分かっていた。
そうやって話しているうちにも私は螺旋階段を降りていく。
「ねーえ、この階段はどこまで降りていくのかしら」
そんなことを聞いてみる。返事は期待せずに。
“さあね。フランちゃんの思いのままが……おっと”
「何よその間」
不自然に言葉を切ったのでとても気になる。
“ふふ、何かに呼ばれたみたい。じゃあね、後から会おうね”
「おーい、こいし? ……いなくなっちゃった」
どこからか聞こえた声は消えた。
カン、カン、カン……
降りる、降りていく。ただひたすら暗闇の螺旋階段を。
ここから私の意識は黒に塗りつぶされた。
#####
……おき……お……い、フ……ラン、「起きろフランドール!」
引っぱたかれて私は飛び起きた。
「……!?」
ここはどこ? 黒は? あれ?
「……やっと起きたか。うなされているから何かと思えば……」
キョロキョロと部屋を見ていたらお姉様はみっともなく足を揺らしながら私のベッドの隣にいた。
「あれ、螺旋階段は?」
「はぁ? 螺旋階段? 何を言っているんだ」
……ここは現実か。あれ、さっきのは夢?
「こいしはどこ?」
「……こいし? 誰だそれは」
あれ? こいし、って誰だっけ……?
「どうした? 誰かと思い違いでもしているのか?」
「いや……何でもないよお姉様。もう少し休むから出ていってくれないかしら」
「まあ、良いが」
珍しくさっさと出ていった。
……私は誰のことを言っていたんだろうか。もう分からなくなってしまった。
そんなことを思いつつまた寝ようかと思ったらいきなりお腹に重さを感じた。
「ウグッ!?」
お腹のところを見ると知らない女の子が馬乗りになっている。
「あー、やっと私に気が付いたー。やだなあフランちゃん、私のこと忘れるなんてー」
あばばば重い。お腹にクリーンヒットしてる。
「誰か知らないけどそこから退いて……苦しい……」
「わあ、ごめんね?」
いきなり現れた誰かは退いた。ほっとしているとその子の顔が近づいてきた。
「忘れるだなんて悲しいなあ。あ、でもあの夢は仕方ないか。あの夢を見るとお姉ちゃんですら忘れるもん。なんだろうね、何かに働きかけているのかな。ねえ、フランちゃんはどう思う?」
つばの広い深い灰色の帽子を被ったその子は自己完結させてからよく分からないことを聞いてくる。
「何のこと言っているの? それとあなたは誰?」
いきなり言われても仕方がない。
「ああ、ごめんね? 私は古明地こいし。こいしって呼んでくれたらいいよ。フランちゃんはどう思う……」
困惑しか無い。いきなり現れたと思ったら何を言っているんだろう。
「いきなり言われても分からないよ。あなたの都合なんて知らないし」
「あは、いつも同じ返しをするね。やっぱりフランちゃんはフランちゃんだね、変わらないね」
あははといきなり笑い出した。
「何故か物凄い腹立つけれどあなたは何しに来たの」
「んー? 遊びに来たの。それとフランちゃんとお友達になりに来たの」
「友達……? 何それ」
「また改めてなってくれると嬉しいなあ、ね、なろうよ?」
「……なんの意味が?」
「野暮だなあフランちゃん。なりたいならなればいいんだよ。今からお友達ね?」
話を勝手に進めるな。
「なるだなんて言ってないけど」
「うん、今私が決めた事だもの」
「はぁ?」
「フランちゃんが忘れなくなるまでお友達になるのをやめないよ」
「だから何それ……」
私は話についていけなかった。
「ふふ、いつまでフランちゃんは覚えているかな……」
センスを感じます。良かったです。
短いのに鋭く刺さる感じ、最高です
何度も繰り返し忘れ去られる哀しさが痛切で。それでも何度でも友だちになろうとするのが健気だなと思いました。
こんなやり取りをこれからも繰り返していくんでしょうか
やはりこいしちゃんというキャラの可能性は無限大ですね。それでいて、ラストはほんのりと切ない。とても素晴らしい作品だと思います。