人生はマラソンだ、って本で読んだ。
マラソンとは決められた距離を自分の足で走り、完走までにかかった時間を競う競技らしい。特徴的なのはその距離で、全速力で走りきれるようなものじゃあ到底ないから、走りきるにはゆっくり走る必要が出てくる。だけど時間も速くしたい、ということでペース配分が重要になるわけだ。
つまりこの格言が言いたいのは『人生は長いから、適切なペース配分ができるよう、しっかり先を見据えましょう』ということなんじゃないかと思う。
なるほど、確かにそれは大切だ。全力疾走しすぎて、夢を叶える前に倒れても意味は無いし、逆にちんたらやってていつまでも叶えられないのも馬鹿らしい。上手く生きるには、成功するには、長い目で見て、計画的に生きていくべきなんだろう。
だけど本当にそうか?
人生はマラソンコースのように決まっていない。今から走る道が、一体どんな道か――舗装された平坦な道か、あるいは傾斜のきつい獣道か――そしてそれがどれだけ続くのか、誰にだってわからない。だって言うのに、先を見据えてペース配分しろ? お前には未来が見えるのか?
いやもちろんこんなのが屁理屈なのはわかってる。たとえ曖昧だったとしても、未来への展望があるとないとじゃあ大違いだ。わかってる。
けど間違ってもいないだろう? でなきゃ不安なんて抱かないはずなんだ。寺子屋のやつらが試験がどうとか弱気なことを言っているのを聞いたが、もし合格というゴールに向けて適切なペース配分が出来ていれば、そんな必要はない。けどあいつらは揃って不安を口にする。つまりそういうことなんだよ。
※
「走り込みですか、精が出ますね」
「げ」
誰もいない筈の早朝の里外れ。そこに現れた元僧侶に魔理沙は眉を寄せた。視線を外して続ける。
「今日は少し走りたい気分だったんだ。体力も付けられるしな」
上擦った魔理沙の言葉に、元僧侶はふむ、と考える素振りを見せた。
「身体能力向上《わたし》の魔法をお教えしましょうか? 走り込みの必要はなくなりますよ」
「あー、そりゃいいな。汗もかかないし楽チンだ」
魔理沙はカラカラと笑う
「けどいいや。素の体力を鍛えないと意味ないし」
「……そうですね。失礼しました」
そう頭を下げた彼女の顔には薄い笑みが浮かんでいて、魔理沙は首を傾げた。
「まぁ、その魔法自体は気になるから、また今度教えてくれよな」
「もちろんです」
その言葉を背に、魔理沙は再度走り出した。
※
じゃあ今の私たちに何が出来るのかって言うと、結局のところ体力を付けるしかないんだと思う。この先に続くのがどれだけ過酷な道のりでも、仮に無限の体力があれば踏破出来るんだから。そりゃもちろんそんなことは夢物語だけど、だからといって近づこうとしない理由にはならないだろう?
――体力ってのはあくまで比喩で、走り込みとは関係ないって?
いやいや、体は資本って言うだろ? 何をするにも体の調子が良くないと始まらないし、体力がないと続かない。本を読むのにはもちろん、寝るのにも体力を使うんだぜ?
んで、走り込みは体力を付けるのに丁度良いし、そうして初めて人生が回り始めるのさ。
んー、そうだな。つまるところ――
人生=マラソン、ってことだ。
マラソンとは決められた距離を自分の足で走り、完走までにかかった時間を競う競技らしい。特徴的なのはその距離で、全速力で走りきれるようなものじゃあ到底ないから、走りきるにはゆっくり走る必要が出てくる。だけど時間も速くしたい、ということでペース配分が重要になるわけだ。
つまりこの格言が言いたいのは『人生は長いから、適切なペース配分ができるよう、しっかり先を見据えましょう』ということなんじゃないかと思う。
なるほど、確かにそれは大切だ。全力疾走しすぎて、夢を叶える前に倒れても意味は無いし、逆にちんたらやってていつまでも叶えられないのも馬鹿らしい。上手く生きるには、成功するには、長い目で見て、計画的に生きていくべきなんだろう。
だけど本当にそうか?
人生はマラソンコースのように決まっていない。今から走る道が、一体どんな道か――舗装された平坦な道か、あるいは傾斜のきつい獣道か――そしてそれがどれだけ続くのか、誰にだってわからない。だって言うのに、先を見据えてペース配分しろ? お前には未来が見えるのか?
いやもちろんこんなのが屁理屈なのはわかってる。たとえ曖昧だったとしても、未来への展望があるとないとじゃあ大違いだ。わかってる。
けど間違ってもいないだろう? でなきゃ不安なんて抱かないはずなんだ。寺子屋のやつらが試験がどうとか弱気なことを言っているのを聞いたが、もし合格というゴールに向けて適切なペース配分が出来ていれば、そんな必要はない。けどあいつらは揃って不安を口にする。つまりそういうことなんだよ。
※
「走り込みですか、精が出ますね」
「げ」
誰もいない筈の早朝の里外れ。そこに現れた元僧侶に魔理沙は眉を寄せた。視線を外して続ける。
「今日は少し走りたい気分だったんだ。体力も付けられるしな」
上擦った魔理沙の言葉に、元僧侶はふむ、と考える素振りを見せた。
「身体能力向上《わたし》の魔法をお教えしましょうか? 走り込みの必要はなくなりますよ」
「あー、そりゃいいな。汗もかかないし楽チンだ」
魔理沙はカラカラと笑う
「けどいいや。素の体力を鍛えないと意味ないし」
「……そうですね。失礼しました」
そう頭を下げた彼女の顔には薄い笑みが浮かんでいて、魔理沙は首を傾げた。
「まぁ、その魔法自体は気になるから、また今度教えてくれよな」
「もちろんです」
その言葉を背に、魔理沙は再度走り出した。
※
じゃあ今の私たちに何が出来るのかって言うと、結局のところ体力を付けるしかないんだと思う。この先に続くのがどれだけ過酷な道のりでも、仮に無限の体力があれば踏破出来るんだから。そりゃもちろんそんなことは夢物語だけど、だからといって近づこうとしない理由にはならないだろう?
――体力ってのはあくまで比喩で、走り込みとは関係ないって?
いやいや、体は資本って言うだろ? 何をするにも体の調子が良くないと始まらないし、体力がないと続かない。本を読むのにはもちろん、寝るのにも体力を使うんだぜ?
んで、走り込みは体力を付けるのに丁度良いし、そうして初めて人生が回り始めるのさ。
んー、そうだな。つまるところ――
人生=マラソン、ってことだ。
そうやって考えられるのがとてもいいですね。
面白かったです。
だけど、もうちょい、その魔理沙の考えを補強するエピソードは欲しかった気はします。