Coolier - 新生・東方創想話

斉天大聖、比那名居天子!

2019/05/27 16:15:46
最終更新
サイズ
11.65KB
ページ数
1
閲覧数
1990
評価数
5/6
POINT
520
Rate
15.57

分類タグ

_人人人人_
> 決・着! <
 ̄Y^Y^Y^ ̄

「天界に上った猿は、与えられた役職に怒って反逆し、結果、山に閉じ込められるのです」

「ぐぬぬ…私が猿だって言うわけ!? 紫! もう一勝負よ!」

「はいはい」



私、比那名居天子は自分の起こした異変から一年後、幻想郷の主たる面々の所に顔を出して回っていた。
いわゆる挨拶回り。

一年も待ったのはタイミングがなかったからだ。

私の起こした異変から暫くすると、地下からたくさんの怨霊達がぞろぞろと湧き出てきた。
怨霊程度私の敵にもならないが、マイナスのオーラを撒き散らしているのであまり近づきたくない。

……地震を起こした自分のせいで地下に何かあったのではないかと思って、気まずかった訳ではない。本当に。


とはいえ冬も終わり怨霊も雪と共に地下に封じ込まれたようで、早速異変中で会わなかった奴らに会って回っているというわけだ。


具体的には山の上にすむ神様に桃を送ってみたり。
あの地霊異変についても関係していたらしいので巫女達にお説教をしてあげた。きっと今頃泣いて喜んでいることだろう。 別に八つ当たりではない。

どうやら巷では、巨大な人影が見えるといって話題になっているらしい。
どうせ、だいだらぼっちか何かのくだらない妖怪が脅かしてるだけだと思われる。
ぶっちゃけ興味ない。


そしてその帰り道にこのいけ好かないスキマ妖怪に遭ってしまったのだ。ならばやることは一つ。



_人人人人_
> 決・着! <
 ̄Y^Y^Y^ ̄


「天界に上った猿は、与えられた役職に怒って反逆し、結果、山に閉じ込められるのです」


「また猿って言った! もう一回!」
「またやるの? いつまでやるつもりよ、もー」
「無論! 勝てるまで!」



_人人人人_
> 決・着!<
 ̄Y^Y^Y^ ̄

「天界に上った猿は、与えられた役職に怒って反逆し、結果、山に閉じ込められるのです」


「ゼェ、ゼェ………。同じことばかり言ってんじゃないわよ!」
「言いたくて言ってるわけじゃないわ。システム上の理由よ」
「はぁ?何か言った? もう一回!」
「もう疲れたわー。 私忙しいのだけれど」
「嫌なら勝負断ればいいじゃないの。 なんだかんだいって付き合ってくれてるし」
「私は何でも受け入れる。それはそれはとても残酷な話ですわ。主にシステム上に理由で」
「意味のわからないこと言わない! 次よ!」



_人人人人_
> 決・着! <
 ̄Y^Y^Y^ ̄

「天界に上った猿は、(ry



_人人人人_
> 決・着! <
 ̄Y^Y^Y^ ̄

「天(ry


_人人人人_
> 決・着! <
 ̄Y^Y^Y^ ̄

_人人人人_
> 決・着! <
 ̄Y^Y^Y^ ̄

………………。




「ハァッ、ハァッ。 ぐぬぬ……今日はここら辺で勘弁してあげるわ!次あったときは覚悟しておくことね!」
「お手本通りの捨て台詞ありがとう。有頂天になりすぎると孫悟空みたいになっちゃうわよ」
「余計なお世話!」

クソッ、次は必ず勝ってやるんだから!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「やっと帰ってくれたわね。
......天界に上った孫悟空は結局天界の生活が合わなくて金丹を食べて暴れ回った結果、追放されてしまった。
しかし追放された後、三蔵法師の取経の旅を手伝うことで人間的に大きく成長して、仏の仲間になった。
悟空は追放を成長のきっかけとすることが出来たのよ。
今のあなたは自称の”斉天大聖”でしかないけれど、いつの日か”闘戦勝仏”に成長できるのかしらね。あゝ、本当に、見てて面白い」

くすくす。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


それからも、鴉天狗の取材に付き合ったり(ちょこまかされて写真撮られた。不快。いつかボコる。)
宗教戦争の見物に行ったりもした。(いい見世物であった。)

突然意思を持って動き始めた緋想の剣を押さえ込むのは大変だった。宝具が暴れるとかなり被害が出る。危うく、第二の緋色の雲が出来るところだった。
(腹いせにその異変の首謀者らしい天邪鬼を捕まえようと思ったのだが、よく分からないうちに逃げられてしまった。)

無論、たまにあのスキマに勝負を仕掛けたりもした。(結局勝てなかった。)



そして、129季の終わり頃。(天邪鬼を追っかけ回してから半年後だ)
やる事もなく家でゴロゴロしていた時、久しぶりに永江衣玖が訪ねてきた。

嫌な知らせをもって。

「総領娘様、伝令です。伝令」
「あによ衣玖、最近は別に問題起こしてないわよ?」
「天界の上の方からです。曰く『しばらくの間地上に降りてはならぬ』と」

「……は? どうしてそんないきなり? 理由は何よ?」
「さぁ? 私はただの伝令役ですし、上の意向は知りません」
「そんなの私には関係ないわ。私は好きなときに好きな場所に遊びに行く」

「そうは参りません。この命令は総領娘様だけではなく、私たち使いも遍く全て、です。事の重大さを分かってください」
「衣玖たちも? 竜宮の使いまで行動を制限するなんて普通じゃ……そうか。これは月の方の命令でしょう? そうじゃないとこんな大がかりなこと考えられないわ」
「さぁ? 私は上の意向に従うだけですのでそのあたりはさっぱり」

月の世界と天界は場所こそ離れているが、根本は同じ世界だ。こちらの方がより地上(死)に近いというだけで天上(不死)の世界なのは変わらない。
天界が遠い昔地上から抜かれた要石であることと同様に、月もまた元々は地上にあった。 

そのせいか、いつもは保守的な天人達も月には逆らおうとしないのだ。


「……はぁ、分かったわ。従う。逆らうとひどい目に遭いそうだしね」
「総領娘様が素直で何よりです」

……まぁ何もしないとは言ってないけど。




とはいえ衣玖たちが使えない訳だから、自分で情報を集めるしかない。
地上を見下ろしたり、お偉いさんの話を盗み聞きしたりしてもたいした情報は入ってこなかった。

有力な情報といえば、何かに切羽詰まったらしい月の連中が幻想郷の侵略を考えているらしいと言うことくらい。
地上侵略なんて馬鹿らしい。あいつらの底力は私がよく知っている。どうせ失敗するだろう。

しかしどうやって侵略すると言うのか。
目的がわかっても、手段が分からないと意味がない。
悩みながら地上の動向を見ていると、どこか覚えのある魔力を感じた。

そちらに意識を飛ばしてみると、ふむ。一見変哲のない弾幕ごっこ。
だが、そこに感じる魔力は確かに舌禍の女神の...。

...ふふん。私の慧眼を持ってすれば月人の考えでも見通すのはたやすい事であった。



あの竹林の薬師なら事情を知ればきっとなんとかしてくれるでしょう。

あとは……スキマにも伝えとこうかな、どうしようか。あいつ今どこで何やってるのか全然分かんないし。

地上に降りることはできないから、矢文か何かで良いかな。気づかなかったらそれまで、ということで。 

楽しくなってきた!!



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


謹慎令が出てから半年が経って、ようやく解除された。

月人の幻想郷への侵略は失敗に終わったようだ。無論私の助言あってこそだが。ふふん。


とはいえこの前のタレコミが上に疑われているようで、しばらくは下手なことは出来ないな。
ほとぼりが冷めたら遊びに行こうか。
幻想郷が無事だったのは私のおかげだろうし、紫も喜んで褒め称えることでしょう。楽しみね。

お土産は何が良いだろうか。そういや、来年の催事用に金丹を作ってたっけ。あれが完成したら少しもらっていこう。

我ながらいい考えである。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



……おかしい。私はただ金丹を盗むついでに少しつまみ食いしただけだ。それほど美味しくも無かったし。
どうして私がその程度で天界から追放処分を受けなければならない?絶対におかしい。


そう、きっとこれはあのスキマ妖怪の陰謀だ。そうに違いない。あいつ、私の恩を早速仇で返してくるなんて、人として恥ずかしくないのだろうか?
あいつは妖怪だが。


今度会ったら、私が直々にその性根たたき直してやる。待ってろよ八雲紫ぃ!!


……とはいえ、あいつ、どこにいるのだろうか?
どうやら知らない間に憑依異変なんてのも起こっていたみたいだし。


とりあえず、この憑依異変を楽しみましょう。
あいつも出張ってるかもしれない。だったら完全憑依で暴れてればいつか会える。
ついでに異変も私が解決してやれば評価もうなぎ登りね!


まずはパートナーを見つけないとなぁ。 私と組むからにはある程度格の高いやつが良いわね。
お?あれは……早速いいのがいるわね。


「そこの小人!! 私のスレイブになりなさい!!」

「ほへ?」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「成る程、そう言うわけで天人様ともあろう人が地上に降りてきたわけで」

「そう言うことよ。暇つぶしに憑依異変も解決してやろうと思ったけど、私にかかればすぐに終わっちゃうわね!」

「天人様なら幻想郷を支配することだって出来るんじゃ無いですかぁ?」

「本気を出せば余裕ね! よーし、天界に帰るまでに幻想郷どころか地上を支配するかぁ!! 行くわよ針妙丸!」

「良いっすねぇ。さすが天人様。考えることのスケールが違いますねぇ」

数多のコンビを打ち倒し、もはや最強を名乗っても過言ではない私たちを止められる者達はいない!


次の戦いを求めて彷徨っていると、覚えのある忌々しい声が聞こえた。


「貧乏疫病コンビ攻略作戦の命運は貴方の練習量にかかっているの。ただ……」
「ただ?」
「あともう一つ。完全にする為には何かが足りない気がして」


この声は聞き間違うはずもない!

「こいつはあのときのスキマ妖怪!!」
「あら?どうして貴女が地上に?」

「そう言えば地上にはこいつが残ってたな。こいつを倒さなければ地上は支配できない!!」

「おや?そこの小人は...。成る程そう言うことか!貧乏神の能力の仕組みが見えた!」

「ぶつくさ言ってないで、さっさと戦うよ! 幻想郷の支配者は私がやる!」

恩を仇で返すような奴は支配者には向いてないよ!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

_人人人人_
> 決・着! <
 ̄Y^Y^Y^ ̄


「よっし、勝ったぁ!これで私たちが最強の二人組よ!」
「ふふ、貴女たちのおかげでこの異変を解決できそうだわ。ありがとうね。あとは私たちに任せるといいわ」

「ふふん、良きに計らえ。次に会った時は一対一で倒してあげましょう!」
「それはどうかしらね……ふふ」

次は誰を懲らしめてやろうかなぁ!
最強最悪の二人組は私達だ!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「紫、あの天人の扱いうまいわね」
「とても純粋だもの。あんなに扱いやすい奴もそういないわ。ふふふ」
「そうね。……しかし、いつにもまして気持ち悪い笑顔してるわよ? そんなにいいことでもあった?」
「あらあら、酷いこというわね。でも、良いことはあったわよ。幻想郷の住民が一人増えそうなの」
「???」
「ほら、早速疫病神の対策を始めるわよ」
「はいはい」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



憑依異変を霊夢と共に解決した私は博麗神社の縁側で藍のお茶を啜って座って寛いでいた。


「で、結局あの天人が天界を追いだされることになったのも紫様の差し金なんですか?」
「そうねぇ。半分正解で半分間違いって所かしら」
「半分、とは?」
「私はただ天界に提案しただけ。まぁそういう方向に誘導したのもあるけど」
「提案?」
「そこから先は自分で考えなさい。藍」
「はぁ……」


そう、私は提案しただけ。

異変を起こしてからの天子は明らかに地上に強く興味を持っていて、逆に天界には興味を失っていた。
しかし、それは天人である天子にとってかなり危険なことだった。


天人の五衰の一つ、”不楽本座” 自分のいるべき場所を楽しめず、離れたく感じること。

まだ天子は天人であることに誇りを持っていたし天界を離れたいとは思っていなかったはずだけれど、
実際、いつ五衰の兆候が出てもおかしくない状態だった。

だから、提案した。
いるべき場所を楽しめないなら、いるべき場所を”幻想郷”にすればいい。
その手段が、天界からの”謹慎”処分だ。

あくまで期限不定なのは、いずれ不良が”更生”するかもしれないと思っているからなのだろう。

とはいえ、天子をこちらによこすのは天人たちも大分渋っていた。だから、天界に危険なラインを示しておいたのだ。

それが、孫悟空の逸話。
あの数年前の天子との戦いの後、
『天子に孫悟空の天界追放の話を沢山してやった。これでもし天子が丹を盗み食いでもしたら、それは地上に行きたいという気持ちの表れだ』
と天界に伝えておいた。

天界もなんだかんだで甘いのだ。天子が五衰で死んでしまうのはどうしても避けたいらしい。
実際天子が金丹をつまみ食いしたと聞いたときは相当焦っていたようだ。いい気味だ。




とはいえ、予想外だったこともある。

天子は別に地上に行きたいとは考えずに盗み食いをしていた。ということだ。
あんなに何回も言ったのに、忘れてしまったのか……

まぁ天界が天子の気持ちに気づけばすぐに謹慎は解かれるだろう。
いつ気づくかはわからないが。


天子はもはや幻想郷の一員になりつつある。

あの子は本当に面白い。逃がしてなるものですか。



私の計算が正しければそろそろ...




「紫ぃ! 勝負よ!!」


来た来た。


「出会い頭物騒じゃない。まぁ最近調子に乗ってるみたいだし、懲らしめてあげましょう」



***

_人人人人_
> 決・着! <
 ̄Y^Y^Y^ ̄

「むむむ...憑依異変の時は勝てたのに! もう一回!」


「まぁ、待ちなさい天子。あなた、天界を追い出されたんでしょ? 今どこに住んでるの?」
「どこって……いまは針妙丸のところに住まわせて貰ってるわ」
「そう。じゃあ丁度いいわ。 これから謹慎が切れるまでうちの所に住まない?」
「……へっ?」
「ほら、月の異変の時も憑依異変の時もお世話になったしそのお礼ということで。うちの式の料理は美味しいわよ?」
「えっ...と」

「私の時間が空いてる時は相手してあげるわよ?」

つ か ま え た。
以前投稿した「天にも等しい大聖人」の大幅改稿版となります。

天にも等しい大聖人、つまり孫悟空のことですが、彼は仏に対し手のひらの上から逃げおおせることが出来たら勝ち。という勝負を仕掛けました。

一時はいとも簡単に逃げ出したように見えましたが、それは仏の見せた幻で、結局最初から最後まで仏の手のひらの上で踊っていただけなのでした。

さて、天子は紫の手のひらの上から逃げ出せるのでしょうか?というお話。

逃がすつもりはありゃしませんね。

追記:過去作「天界にはなんでもある」がこの作品の直前の時系列となります。
せっかくなのでどうぞ
雪月楓
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.30簡易評価
1.100ヘンプ削除
天子は紫の手のひらの中でわたわたしていそう……
とても面白かったです!ゆかてん可愛い
2.90奇声を発する程度の能力削除
可愛らしいゆかてんでした
3.100サク_ウマ削除
うわ、すごい。めちゃくちゃ分かりやすくなってる。そして途轍もなく面白い。
>気づかなかったらそれまで→無論私の助言あってこそだが
この思考に自然になるあたり、天子がほんといい性格してて良いですね。
そして計算高い紫様もとても楽しそうですきです。素晴らしい作品でした。
5.100終身名誉東方愚民削除
何だかんだで幻想郷からも天界からも大事にされてる天子いいですね 紫に手が届きそうで結局はうまく躱されてる感じがなんとも言えませんね
6.100名前が無い程度の能力削除
お話のテンポがよくすらすらと読めました。天子ちゃんはいつでも真っ直ぐなのがいいですよね