「王手」
パチンと駒が置かれる音がした。
「だぁあ〜〜〜〜また負けた! 椛、強すぎるよ……」
将棋盤の向こうに座るにとりが声を上げる。
「え、これで5勝4敗でしょう?」
「違うよ、4敗6勝だよ! 一つ入れ忘れてるっての。ああ〜〜」
後ろに反り返るにとり。
「あっ、そっち行ったら落ちる……」
「うおおお!? 早く言ってくれーーー!!」
川の近くなのでそのままドボンと落ちていった。
……遅かったかな。
そうやってポーっと見ているとザブンと這い上がってきた。
「あ、戻って来た」
「お前さんなあ……早く言っとくれよ」
濡れた服をパタパタしながら言ってくる。
「だってねえ。私が言う頃には既に反り返ってたし。言っても遅かったんだってば」
「確かにそうだな。あーあ、物凄くみっともないな」
座布団にトスンと座っている。
「溺れないだけ良いんじゃないかな」
「そりゃ、河童だから溺れないわ! 当たり前のこと言うなって」
ブツブツと小言を言い続けるにとり。こうして休暇の日に楽しく将棋が出来るのは良い。
そうやって話していると、私の部下が二人やって来た。
「犬走様! 緊急事態です!」
「なんだ? 休暇の日に呼ぶなと言っているだろう……」
ああ、とてつもなく嫌な予感がする。それと呼ばれるのは休暇を私自身楽しく過ごしたいのに過ごせないのがとても嫌である。
「白黒の魔法使いが侵入しました! 私たちが追っていると射命丸様が魔法使いと話し始めたもので、手出し出来なくて見ていたら射命丸様が犬走様を呼んでこいと言われました」
……ほらやっぱり。なんで文様は私を呼ぶのか。私の優雅な休暇を返せ!
「……分かりました。行きますのであなた達は哨戒に戻りなさい」
「了解しました!」
部下達はザッといなくなった。
「話を聞いているとこれまためんどくさいねえ。しかも盟友かい。それと射命丸」
「なんで呼ぶんですかね……」
「射命丸のやつがお前さんを気に入っているからだろうなあ。厄介なやつに目を付けられたな?」
こちらにウィンクしながら言ってくるので少し腹が立つ。なのでにとりの頭を掴んで握りこんだ。
「痛い痛い痛い! ストップ、ストップだ!」
ヒーヒー言いながら叫ぶので心地いい。気分も収まったので離す。
「なんだい、いきなり……痛いじゃないか!」
「にとりがイラッとするようなことを言うからですよ。ちょっと二人を探します」
にとりが何か言っているようだが無視して、千里眼で探索する。
……いた。山の麓で飛んだまま話している。一瞬、文様がこちらを見たような気がしたが無視した。
ぷんすこ怒っているにとりに話しかける。
「いってきますね。この用事が終わり次第また将棋しましょう。夕方になっていたらいつものところに飲みに行きましょう」
「だから聞いているのか……って、もう行くのかい。盟友によろしくと言っておいてくれ」
「はいはい、分かりましたよ」
そう言って私は合流するために空を飛んだ。
***
「遅かったですねえ?」
着いたと同時にニタニタ笑顔で言われる。物凄く腹が立つ。
「おー、久しぶりだな、椛」
こちらの気も知らないで手を降ってくる白黒。
「お久しぶりも何も無いでしょう! 一週間前に追いかけ回して、言ったのにまた来たんですか! 入らないで下さいと言っているでしょうが!!」
流石にブチ切れたくなる。いやぶちギレる。山に盗みに来たのか知らないが、侵入されて2刻(4時間)追いかけ回したのだから。ふざけるな。
「おーおーキレるなキレるな」
こちらに向かってどうどうとしてくるのがさらに腹が立つ。
「こら、椛。怒らない」
ちくしょう、お前たちのせいだろうが!
「それで一体何の用です。私は休暇だったのにわざわざ呼ばれた訳ですからそれ相応の事ですよね?」
ああ、もう、イライラする。
「魔理沙さんに取材するので着いてきて下さいね?」
……そんなくだらない用事で呼んだのか!
「帰ります。失礼しました」
私はパッと逃げるように飛んだ。
しかし幻想郷の一位と二位の速さからには逃げられず。
がっしりと二人に掴まれて私は逃げることも許されないまま連行された。
***
既に日が沈んだ中で私は飛んでいる。ああ、疲れた。クソ喰らえだ。
結構あの後二人に振り回されて私の休暇は無くなった。にとりと酒を呑むかな……
そう思っていつもの居酒屋に向かう。
「こんばんは〜……」
「おう、椛ちゃんじゃないか。にとりちゃんもいるよ」
いつものおっちゃんが出迎えてくれる。
この店は白狼天狗と河童限定の居酒屋。もちろん店主のおっちゃんも白狼天狗。
「よお〜先に飲んでるぞ〜」
お猪口を上げながらいつものカウンター席に座っているにとり。
「戻った……今日のことは忘れて呑むぞー!!」
机の上に置かれた徳利を掴んでガブ飲みした。
もう心はやけクソだった。
「ヒック……だからあやさまひどいんですよ……わたしばっかり……それにあのしろくろ……なんですかああ……」
一刻後。私は飲みに飲みまくってグズグズと愚痴ばかりになった。
「おうおう、お疲れさん。吐くまで呑んでしまえ。そしたら楽になるさ」
にとりがそういうならわたしはのもうかな……
この後の記憶は無い。
しかし吐きまくっていた事だけ覚えていた。
数日後に、にとりに話を聞くと、
「いや、あれは凄かったなあ……うん」
そんな不自然なことを言われてしまったため質問攻めにした。
パチンと駒が置かれる音がした。
「だぁあ〜〜〜〜また負けた! 椛、強すぎるよ……」
将棋盤の向こうに座るにとりが声を上げる。
「え、これで5勝4敗でしょう?」
「違うよ、4敗6勝だよ! 一つ入れ忘れてるっての。ああ〜〜」
後ろに反り返るにとり。
「あっ、そっち行ったら落ちる……」
「うおおお!? 早く言ってくれーーー!!」
川の近くなのでそのままドボンと落ちていった。
……遅かったかな。
そうやってポーっと見ているとザブンと這い上がってきた。
「あ、戻って来た」
「お前さんなあ……早く言っとくれよ」
濡れた服をパタパタしながら言ってくる。
「だってねえ。私が言う頃には既に反り返ってたし。言っても遅かったんだってば」
「確かにそうだな。あーあ、物凄くみっともないな」
座布団にトスンと座っている。
「溺れないだけ良いんじゃないかな」
「そりゃ、河童だから溺れないわ! 当たり前のこと言うなって」
ブツブツと小言を言い続けるにとり。こうして休暇の日に楽しく将棋が出来るのは良い。
そうやって話していると、私の部下が二人やって来た。
「犬走様! 緊急事態です!」
「なんだ? 休暇の日に呼ぶなと言っているだろう……」
ああ、とてつもなく嫌な予感がする。それと呼ばれるのは休暇を私自身楽しく過ごしたいのに過ごせないのがとても嫌である。
「白黒の魔法使いが侵入しました! 私たちが追っていると射命丸様が魔法使いと話し始めたもので、手出し出来なくて見ていたら射命丸様が犬走様を呼んでこいと言われました」
……ほらやっぱり。なんで文様は私を呼ぶのか。私の優雅な休暇を返せ!
「……分かりました。行きますのであなた達は哨戒に戻りなさい」
「了解しました!」
部下達はザッといなくなった。
「話を聞いているとこれまためんどくさいねえ。しかも盟友かい。それと射命丸」
「なんで呼ぶんですかね……」
「射命丸のやつがお前さんを気に入っているからだろうなあ。厄介なやつに目を付けられたな?」
こちらにウィンクしながら言ってくるので少し腹が立つ。なのでにとりの頭を掴んで握りこんだ。
「痛い痛い痛い! ストップ、ストップだ!」
ヒーヒー言いながら叫ぶので心地いい。気分も収まったので離す。
「なんだい、いきなり……痛いじゃないか!」
「にとりがイラッとするようなことを言うからですよ。ちょっと二人を探します」
にとりが何か言っているようだが無視して、千里眼で探索する。
……いた。山の麓で飛んだまま話している。一瞬、文様がこちらを見たような気がしたが無視した。
ぷんすこ怒っているにとりに話しかける。
「いってきますね。この用事が終わり次第また将棋しましょう。夕方になっていたらいつものところに飲みに行きましょう」
「だから聞いているのか……って、もう行くのかい。盟友によろしくと言っておいてくれ」
「はいはい、分かりましたよ」
そう言って私は合流するために空を飛んだ。
***
「遅かったですねえ?」
着いたと同時にニタニタ笑顔で言われる。物凄く腹が立つ。
「おー、久しぶりだな、椛」
こちらの気も知らないで手を降ってくる白黒。
「お久しぶりも何も無いでしょう! 一週間前に追いかけ回して、言ったのにまた来たんですか! 入らないで下さいと言っているでしょうが!!」
流石にブチ切れたくなる。いやぶちギレる。山に盗みに来たのか知らないが、侵入されて2刻(4時間)追いかけ回したのだから。ふざけるな。
「おーおーキレるなキレるな」
こちらに向かってどうどうとしてくるのがさらに腹が立つ。
「こら、椛。怒らない」
ちくしょう、お前たちのせいだろうが!
「それで一体何の用です。私は休暇だったのにわざわざ呼ばれた訳ですからそれ相応の事ですよね?」
ああ、もう、イライラする。
「魔理沙さんに取材するので着いてきて下さいね?」
……そんなくだらない用事で呼んだのか!
「帰ります。失礼しました」
私はパッと逃げるように飛んだ。
しかし幻想郷の一位と二位の速さからには逃げられず。
がっしりと二人に掴まれて私は逃げることも許されないまま連行された。
***
既に日が沈んだ中で私は飛んでいる。ああ、疲れた。クソ喰らえだ。
結構あの後二人に振り回されて私の休暇は無くなった。にとりと酒を呑むかな……
そう思っていつもの居酒屋に向かう。
「こんばんは〜……」
「おう、椛ちゃんじゃないか。にとりちゃんもいるよ」
いつものおっちゃんが出迎えてくれる。
この店は白狼天狗と河童限定の居酒屋。もちろん店主のおっちゃんも白狼天狗。
「よお〜先に飲んでるぞ〜」
お猪口を上げながらいつものカウンター席に座っているにとり。
「戻った……今日のことは忘れて呑むぞー!!」
机の上に置かれた徳利を掴んでガブ飲みした。
もう心はやけクソだった。
「ヒック……だからあやさまひどいんですよ……わたしばっかり……それにあのしろくろ……なんですかああ……」
一刻後。私は飲みに飲みまくってグズグズと愚痴ばかりになった。
「おうおう、お疲れさん。吐くまで呑んでしまえ。そしたら楽になるさ」
にとりがそういうならわたしはのもうかな……
この後の記憶は無い。
しかし吐きまくっていた事だけ覚えていた。
数日後に、にとりに話を聞くと、
「いや、あれは凄かったなあ……うん」
そんな不自然なことを言われてしまったため質問攻めにした。
にとりが常識人ポジションで良かったネ…
椛が不憫で仕方なかったです
休暇中だぞ!
気安く呼び出すんじゃねーよ!!