夕刻を軽く過ぎた辺り、妹紅は心地良い疲労と戦果を得て、ホクホク顔で家に帰って来た。
家には一緒に住んでる慧音が居て出迎えてくれたのだった。
「ふー慧音、今日も疲れた」
「おかえり、お疲れ様、妹紅は今日も一日頑張ったんだな」
「うん、敵性勢力が秘匿してた新型兵器を鹵獲したよ。輝夜のやつ悔しがってた」
「そうか、いよいよ逆王手だな。……それで、頑張った妹紅はこれから。黒毛和牛にする? ホルスタインにする? それとも、わ、た、し?」
あの時、なぜ、慧音を選ばなかったのか今でも妹紅は後悔している。
次の日、妹紅が眼を覚ますと隣に慧音は居なかった。
まあいつも早起きして朝食と呼ばれるこの地方独特の食習慣の準備を、律儀にこなしているから日常ともいえるんだけど。
いつもどおりだったら欠かさず作っているはずである味噌汁の食欲をそそるかおりがしなかった。
なにか嫌な予感を覚えて寝所から抜け出し、慧音の居るはずの台所兼食べ物を食べる部屋に向かう。
1DKの家だから隣の部屋に行くだけなんだけだったが、酷く嫌な予感がしてそこまで行くのには時間が掛かってしまう。
それでも勇気を振り絞って目的の場所に到着した。
予感してた通り慧音はそこにも居なかった。そして、妹紅はいつもなら美味しい食事が並べてあるはずのちゃぶ台に、紅い口紅(今年流行りそうなルージュ)で書かれているメッセージを見つけたのである。
”前略
藤原妹紅殿
私が勝手に居なくなることをお許し下さい。
でも、あなたにもそれが原因がある事はわかりますよね?
あの時、どうして私を選んでくれなかった。
私は、あなたが私を選んでくれると待って居たのに。
なのに・・・(この部分は消されていた)
サヨウナラ、大好きだったあなた。
私が居なくなってもどうか元気で、不老不死のあなたに心配してもしょうがないことでしたね。
ホルスタインに負けた哀れなあなたの仔牛より。
PS ドナドナど~な、ドナド~ナぁマドリ~ド・・ふふ、ふふふ”
妹紅は、ドナドナくだりの辺りで靴も履かず外へ闇雲に走り出していた。
まだ、愛しの慧音は遠くには行って居ないはずだ。必ず見つけ出して、昨日の事は謝ってそれから戻って貰う。
「痛ぅ!」
闇雲に走り出して五里霧中ほど走ったところで、尖った石を踏んでしまい足裏を傷つけてしまった。
「はぁ、はぁ。ううう慧音、何処に?」
痛みと共に、五里霧中ほど闇雲に走った疲労が襲って来た。その場にしゃがみ込んでしまった。
荒れた呼吸を整えようとする。怪我の具合を見て、はだしだった事に気が付き嗚咽交じりに小さな声で毒づく。
勇気を出さないと抜けないような尖った石を引き抜いた。
引き抜いたが思ったよりも傷は深かった。
「くぅ。うぅ。……けぃね」
傷からは、身体を動かす成分である血液が流れだし妹紅から体力が失われた。
ただその出血は、失って行くだけでは無かった。メッセージを読んで頭に上っていた血が足りないところを補うために向かったのだった。
少々の冷静さを取り戻し思考をめぐらせた。
今日は平日だ。妹紅の前から去ったとはいえ、慧音は真面目だから寺子屋の子供達に教育している半ばでそれをなげだすことはしない。
寺子屋に行けば再び会うことが出来る。
昨日はただ恥ずかしくてホルスタインって言ってしまっただけなんだ。だから、許して慧音。君ともう一度会いたいんだ。と自らを奮い立たせた。
そして、妹紅は怪我し痛めた足をかばいながら、五里霧中の道を寺子屋に向けて歩き出した。
幻想郷で霧中を歩くということは敵が現れることが安易に予想できる。いつのまにかその霧に紛れて、輝夜の放った刺客が迫っていたのである。
輝夜の放った刺客は月から逃亡して来た兎の兵隊で、雇われ普段から妹紅を妨害しようと狙って居た大悪党どもだ。
そして、妹紅は無防備に歩いていたものだからすぐに囲まれてしまった。その数、1人2人……兎に角沢山だ。
だけどもこんなに敵に囲まれても安心して欲しい。この話の進行上でこの兎の兵隊はいわゆる咬ませ兎である。
妹紅をすごくピンチにすれど、次の瞬間にはあっさり敗退してしまうのでは無いかと思わせる一種憐憫と儚さがあった。
「妹紅ちゃん! 大変申し訳ございませんがご臨終になっていただきますと大変光栄でございます」
ヌンチャク持った兎の兵隊が話しかけてくる。妹紅にとっては顔なじみだ。没個性に個性を持たせるため変な武器と変なしゃべり方をしている。仮にヌンチャクのNとする。
「……やあ、ごめんね君。今急いでいるんだ。遊んであげられないんだ」
実は顔なじみでも、名前も知らない兎だった。
「妹紅さん、残念なんですがその急ぎの用事もここまでですよ」
とりあえず、数だけ出しとけということで他の薙刀持った兎の兵隊が話しかけてきた。情報不足により彼女?なのか彼なのかは良く分からない。
しかも、2人目にしてすでに月からの逃亡してきたわけでもない。一般公募で輝夜の所に就職してきた兵隊なのである。
遥かなる頂きを目指し3年ほど就職浪人した結果ニートに、結局親に無理やり就職させらたと本人から妹紅は聞いたことがあった。
妹紅は友達だと思っていないがなぜか人生相談してくる。でも、やはり性別が良く分からない。
最近は性別なんて些細な事なんじゃないかとこの薙刀持った兎の兵隊を見ると思う事がある。仮に薙刀Nとしたいがヌンチャクと被るのでN´とする。
「ごめんね。本当に急いでいるの。慧音を探しているから遊んであげられないの」
「ふーん、いつも一緒じゃなかった?」
そして、3人目アメリカンショートヘアーのネコの妖怪が兎だと悪いお医者様にコントロールされている兵隊が話しかけて来た。もし妹紅と出会うときが違ったらソウルメイトになっていたかもしれない。と、勝手に思い込んでいる。
そんなことを思われているなんて妹紅は知らない。仮にアメリカなのでクラウンピースとする。
「いや、ちょっと。朝から居なくてその」
「えーなんで? 妹紅ちゃんお喧嘩でございますか?」
とNがからかいながら言った。
「うん、そんなことだよ」
「また妹紅が、慧音を怒らせるような事したですか?」
N´が回り込むように妹紅の退路を塞ぎ挟撃してくる恰好だ。
「あれれぇ? 三下り半? 三下り半?」
「いや、そういうわけじゃ」
クラウンピースが必殺の離縁状をちらつかせる攻撃してきた。
3人の波状攻撃で妹紅の頭にまた血が上って来た。
「妹紅ちゃん、甲斐性ないから当然だよね~。お当然でおございますね~」
「あれれ本当に逃げられたの?」
そして、NとN´がとうとう堪忍袋の尾を破壊しに来た。
慧音に逃げられるとか、甲斐性ないは妹紅の逆鱗に触れるには十分の効果を持って居た。
他にも数匹兎の兵隊が居るわけで、口々に妹紅と慧音について話し出す。
やれ、あんな尽くしてくれるのに輝夜と浮気するのかとか。
やれ、慧音が稼いだお金をパチンコですったとか。
やれ、パンが無ければお菓子を食べれば良いじゃないとか。
おら、こんな村嫌だへいへいほーとか好き好きに言いたいことを言い始めた。
おおよそ妹紅の尺度では全体の8割しか合ってない。確かに根も葉もあるけど、まだ2割もでまかせだった。許せない、ぶっ殺してやる。
そして、見事に噛ませ兎達は見事な連携で逆鱗というテーマの回収作業をやってのけた。
「お前等全員まとめて、倒してやるから掛かって来い!」
妹紅は怒り狂い、猛った炎を沢山出して兎の兵隊達に反撃したのだった。
兎の兵隊とドンパチやったので、妹紅は満貫全席になった。
それでも満貫全席になりながらもよちよち歩いて、ようやく寺子屋にたどり着いた。
この時間は、お昼休みだったようで寺子屋のフリースポットでは子供等が惰性でゲームを黙々としているのが見える。
無課金なので経済回すこともなくただ電力と若い命がもったい。
だが、そんな子供等の事は妹紅には関係ない。一瞥もくれず、慧音を探す。
満身創痍の身体は悲鳴をあげている。今の状態では寺子屋全体を探すと途中で力尽きてしまう。
場所を絞って探すしか無いだろう。
1.小動物飼育小屋
2.教室の水槽
3.牛舎
4.紅魔館
まずは寺子屋の小動物飼育小屋を探した。そこには慧音は居なかった。
慧音は心拍数が無駄に多い小動物ではないので間違っていることに気が付く。
次に教室まで言って罠が無いことを確認して水槽を見た。
飢えた狼のような魚が居るだけだった。
唐突だったけど、紅魔館に居るんじゃないかと歩いて行った。
困ったときは、紅魔館だ。紅魔館なら何とかなると踏んだのが間違いだった。その道中で妹紅は力尽きて気絶してしまった。
『おお、もこうよ、ちからつきてしまうとはなさけない』
所持金が十分の一になってしまった。
もはや、残っている場所は約束の地、フリーストール牛舎しかない。約束の地に、妹紅は進んでいった。
そして、ようやく牛舎で慧音を見つけたのだった。まさか、慧音に牛っぽいところがあるからと言って安直に牛舎に居るだろうとは思わなかった。
それでもそこに居たのだった。沢山の仔牛に紛れて、牧歌を綺麗な声で1人謳って居たのだった。
「慧音! やっとみつけた!」
妹紅は駆け付けつもりだったが、消化不良の満貫全席が……満身創痍の身体がそれを許さなかった。
ぬるぬるした速度で近づいて行った。ただし、それが功を制したのだろう。もし、急いで近づいて居たら、その動きにおののき恐慌を起こした仔牛達に襲われたかも知れなかった。
辛くも、その動きは仔牛が興奮するのを抑えたのであった。
「あら、誰か知りませんがこんな仔牛ばっかりの色気無い所にお客さん? 私に何か御用ですか?」
仔牛のぬらぬらした鼻をなでながら、慧音はそれに答えた。嘗て、妹紅と初めて出会った時を思い起こさせる。
「慧音何を言ってるんだ?」
「あら、あなた怪我をしているじゃないですか? あら嫌だわ。重症じゃないですか」
妹紅の損傷は、妹紅を蓬莱人と知らないエンジニアが見ると修理に時間が掛かりそうである。
「慧音、怪我なんて蓬莱人の私には関係ない」
「あなた、何を言って? ご自身を大事にしてください」
慧音のその態度に不信感というか、嫌な予感。いや、予感では無くほぼ革新的な事をに気が付いた。
考えたくはもないその事実。
「もしかして、慧音。私との昨日歴史を食べたのか?」
「あなたとの歴史?」
……慧音は昨日夜は、ハクタクの日だった。
同室で寝息を立て安らかに眠っている妹紅の横顔を見ながら歴史喰いになっていた。
ハクタクの日だったからそれが始まる前から心が普段よりも開放的になり大胆な発言をしまったのだった。
『……ホルスタインにする? それとも、わ、た、し?』
『え? じゃあ、そのう。け、け』
『け?』
『けが白黒なホルスタインで』
激しいホルスタインへの怒りと嫉妬心のせいで今夜本来の仕事にはまったく手を付けていない。
妹紅は自分じゃなくて他の牛を選んだ。
妹紅が白黒牛のホルスタインを選んだ歴史を喰って、自身を選んだことにしようと思った。
喰ってしまおうと喰う直前まで思っていたが、自身が泣いていることに気が付く。
歴史を改竄すれば、ホルスタインは歴史の闇に溶け込んで妹紅を手に入れることができる。
窓から見える月が高ぶる思いに答えたかのようにはそれでも良いのではないかと語り掛けてくる気がした。
でも、それは偽りの歴史と偽りの記憶で妹紅を縛り付けることになってしまう。
慧音はだったら自分の歴史を喰ってしまうことにしたのだった。
夢を毎日語りながら一緒に座り一緒に食事をした。そんな思い出が詰まるちゃぶ台に別れのメッセージを書いて妹紅との歴史を喰って居たのだった。
喰った後は、寺子屋の為にセプテット謳いながらまだ夜分だというのに牛……寺子屋に夢遊病患者のように向かい何故か分からないがあふれる涙が抑えられず朝を迎えていたのだった。
全ては慧音の腹の中に葬られてしまったのだった。また再び新しい絆で二人が結ばれるその日までサヨウナラ。
妹紅は、再び『黒毛和牛にする? ホルスタインにする? それとも、わ、た、し?』と慧音に言ってもらうために綺麗なお花を持って、慧音の元に毎日通うのだった。
家には一緒に住んでる慧音が居て出迎えてくれたのだった。
「ふー慧音、今日も疲れた」
「おかえり、お疲れ様、妹紅は今日も一日頑張ったんだな」
「うん、敵性勢力が秘匿してた新型兵器を鹵獲したよ。輝夜のやつ悔しがってた」
「そうか、いよいよ逆王手だな。……それで、頑張った妹紅はこれから。黒毛和牛にする? ホルスタインにする? それとも、わ、た、し?」
あの時、なぜ、慧音を選ばなかったのか今でも妹紅は後悔している。
次の日、妹紅が眼を覚ますと隣に慧音は居なかった。
まあいつも早起きして朝食と呼ばれるこの地方独特の食習慣の準備を、律儀にこなしているから日常ともいえるんだけど。
いつもどおりだったら欠かさず作っているはずである味噌汁の食欲をそそるかおりがしなかった。
なにか嫌な予感を覚えて寝所から抜け出し、慧音の居るはずの台所兼食べ物を食べる部屋に向かう。
1DKの家だから隣の部屋に行くだけなんだけだったが、酷く嫌な予感がしてそこまで行くのには時間が掛かってしまう。
それでも勇気を振り絞って目的の場所に到着した。
予感してた通り慧音はそこにも居なかった。そして、妹紅はいつもなら美味しい食事が並べてあるはずのちゃぶ台に、紅い口紅(今年流行りそうなルージュ)で書かれているメッセージを見つけたのである。
”前略
藤原妹紅殿
私が勝手に居なくなることをお許し下さい。
でも、あなたにもそれが原因がある事はわかりますよね?
あの時、どうして私を選んでくれなかった。
私は、あなたが私を選んでくれると待って居たのに。
なのに・・・(この部分は消されていた)
サヨウナラ、大好きだったあなた。
私が居なくなってもどうか元気で、不老不死のあなたに心配してもしょうがないことでしたね。
ホルスタインに負けた哀れなあなたの仔牛より。
PS ドナドナど~な、ドナド~ナぁマドリ~ド・・ふふ、ふふふ”
妹紅は、ドナドナくだりの辺りで靴も履かず外へ闇雲に走り出していた。
まだ、愛しの慧音は遠くには行って居ないはずだ。必ず見つけ出して、昨日の事は謝ってそれから戻って貰う。
「痛ぅ!」
闇雲に走り出して五里霧中ほど走ったところで、尖った石を踏んでしまい足裏を傷つけてしまった。
「はぁ、はぁ。ううう慧音、何処に?」
痛みと共に、五里霧中ほど闇雲に走った疲労が襲って来た。その場にしゃがみ込んでしまった。
荒れた呼吸を整えようとする。怪我の具合を見て、はだしだった事に気が付き嗚咽交じりに小さな声で毒づく。
勇気を出さないと抜けないような尖った石を引き抜いた。
引き抜いたが思ったよりも傷は深かった。
「くぅ。うぅ。……けぃね」
傷からは、身体を動かす成分である血液が流れだし妹紅から体力が失われた。
ただその出血は、失って行くだけでは無かった。メッセージを読んで頭に上っていた血が足りないところを補うために向かったのだった。
少々の冷静さを取り戻し思考をめぐらせた。
今日は平日だ。妹紅の前から去ったとはいえ、慧音は真面目だから寺子屋の子供達に教育している半ばでそれをなげだすことはしない。
寺子屋に行けば再び会うことが出来る。
昨日はただ恥ずかしくてホルスタインって言ってしまっただけなんだ。だから、許して慧音。君ともう一度会いたいんだ。と自らを奮い立たせた。
そして、妹紅は怪我し痛めた足をかばいながら、五里霧中の道を寺子屋に向けて歩き出した。
幻想郷で霧中を歩くということは敵が現れることが安易に予想できる。いつのまにかその霧に紛れて、輝夜の放った刺客が迫っていたのである。
輝夜の放った刺客は月から逃亡して来た兎の兵隊で、雇われ普段から妹紅を妨害しようと狙って居た大悪党どもだ。
そして、妹紅は無防備に歩いていたものだからすぐに囲まれてしまった。その数、1人2人……兎に角沢山だ。
だけどもこんなに敵に囲まれても安心して欲しい。この話の進行上でこの兎の兵隊はいわゆる咬ませ兎である。
妹紅をすごくピンチにすれど、次の瞬間にはあっさり敗退してしまうのでは無いかと思わせる一種憐憫と儚さがあった。
「妹紅ちゃん! 大変申し訳ございませんがご臨終になっていただきますと大変光栄でございます」
ヌンチャク持った兎の兵隊が話しかけてくる。妹紅にとっては顔なじみだ。没個性に個性を持たせるため変な武器と変なしゃべり方をしている。仮にヌンチャクのNとする。
「……やあ、ごめんね君。今急いでいるんだ。遊んであげられないんだ」
実は顔なじみでも、名前も知らない兎だった。
「妹紅さん、残念なんですがその急ぎの用事もここまでですよ」
とりあえず、数だけ出しとけということで他の薙刀持った兎の兵隊が話しかけてきた。情報不足により彼女?なのか彼なのかは良く分からない。
しかも、2人目にしてすでに月からの逃亡してきたわけでもない。一般公募で輝夜の所に就職してきた兵隊なのである。
遥かなる頂きを目指し3年ほど就職浪人した結果ニートに、結局親に無理やり就職させらたと本人から妹紅は聞いたことがあった。
妹紅は友達だと思っていないがなぜか人生相談してくる。でも、やはり性別が良く分からない。
最近は性別なんて些細な事なんじゃないかとこの薙刀持った兎の兵隊を見ると思う事がある。仮に薙刀Nとしたいがヌンチャクと被るのでN´とする。
「ごめんね。本当に急いでいるの。慧音を探しているから遊んであげられないの」
「ふーん、いつも一緒じゃなかった?」
そして、3人目アメリカンショートヘアーのネコの妖怪が兎だと悪いお医者様にコントロールされている兵隊が話しかけて来た。もし妹紅と出会うときが違ったらソウルメイトになっていたかもしれない。と、勝手に思い込んでいる。
そんなことを思われているなんて妹紅は知らない。仮にアメリカなのでクラウンピースとする。
「いや、ちょっと。朝から居なくてその」
「えーなんで? 妹紅ちゃんお喧嘩でございますか?」
とNがからかいながら言った。
「うん、そんなことだよ」
「また妹紅が、慧音を怒らせるような事したですか?」
N´が回り込むように妹紅の退路を塞ぎ挟撃してくる恰好だ。
「あれれぇ? 三下り半? 三下り半?」
「いや、そういうわけじゃ」
クラウンピースが必殺の離縁状をちらつかせる攻撃してきた。
3人の波状攻撃で妹紅の頭にまた血が上って来た。
「妹紅ちゃん、甲斐性ないから当然だよね~。お当然でおございますね~」
「あれれ本当に逃げられたの?」
そして、NとN´がとうとう堪忍袋の尾を破壊しに来た。
慧音に逃げられるとか、甲斐性ないは妹紅の逆鱗に触れるには十分の効果を持って居た。
他にも数匹兎の兵隊が居るわけで、口々に妹紅と慧音について話し出す。
やれ、あんな尽くしてくれるのに輝夜と浮気するのかとか。
やれ、慧音が稼いだお金をパチンコですったとか。
やれ、パンが無ければお菓子を食べれば良いじゃないとか。
おら、こんな村嫌だへいへいほーとか好き好きに言いたいことを言い始めた。
おおよそ妹紅の尺度では全体の8割しか合ってない。確かに根も葉もあるけど、まだ2割もでまかせだった。許せない、ぶっ殺してやる。
そして、見事に噛ませ兎達は見事な連携で逆鱗というテーマの回収作業をやってのけた。
「お前等全員まとめて、倒してやるから掛かって来い!」
妹紅は怒り狂い、猛った炎を沢山出して兎の兵隊達に反撃したのだった。
兎の兵隊とドンパチやったので、妹紅は満貫全席になった。
それでも満貫全席になりながらもよちよち歩いて、ようやく寺子屋にたどり着いた。
この時間は、お昼休みだったようで寺子屋のフリースポットでは子供等が惰性でゲームを黙々としているのが見える。
無課金なので経済回すこともなくただ電力と若い命がもったい。
だが、そんな子供等の事は妹紅には関係ない。一瞥もくれず、慧音を探す。
満身創痍の身体は悲鳴をあげている。今の状態では寺子屋全体を探すと途中で力尽きてしまう。
場所を絞って探すしか無いだろう。
1.小動物飼育小屋
2.教室の水槽
3.牛舎
4.紅魔館
まずは寺子屋の小動物飼育小屋を探した。そこには慧音は居なかった。
慧音は心拍数が無駄に多い小動物ではないので間違っていることに気が付く。
次に教室まで言って罠が無いことを確認して水槽を見た。
飢えた狼のような魚が居るだけだった。
唐突だったけど、紅魔館に居るんじゃないかと歩いて行った。
困ったときは、紅魔館だ。紅魔館なら何とかなると踏んだのが間違いだった。その道中で妹紅は力尽きて気絶してしまった。
『おお、もこうよ、ちからつきてしまうとはなさけない』
所持金が十分の一になってしまった。
もはや、残っている場所は約束の地、フリーストール牛舎しかない。約束の地に、妹紅は進んでいった。
そして、ようやく牛舎で慧音を見つけたのだった。まさか、慧音に牛っぽいところがあるからと言って安直に牛舎に居るだろうとは思わなかった。
それでもそこに居たのだった。沢山の仔牛に紛れて、牧歌を綺麗な声で1人謳って居たのだった。
「慧音! やっとみつけた!」
妹紅は駆け付けつもりだったが、消化不良の満貫全席が……満身創痍の身体がそれを許さなかった。
ぬるぬるした速度で近づいて行った。ただし、それが功を制したのだろう。もし、急いで近づいて居たら、その動きにおののき恐慌を起こした仔牛達に襲われたかも知れなかった。
辛くも、その動きは仔牛が興奮するのを抑えたのであった。
「あら、誰か知りませんがこんな仔牛ばっかりの色気無い所にお客さん? 私に何か御用ですか?」
仔牛のぬらぬらした鼻をなでながら、慧音はそれに答えた。嘗て、妹紅と初めて出会った時を思い起こさせる。
「慧音何を言ってるんだ?」
「あら、あなた怪我をしているじゃないですか? あら嫌だわ。重症じゃないですか」
妹紅の損傷は、妹紅を蓬莱人と知らないエンジニアが見ると修理に時間が掛かりそうである。
「慧音、怪我なんて蓬莱人の私には関係ない」
「あなた、何を言って? ご自身を大事にしてください」
慧音のその態度に不信感というか、嫌な予感。いや、予感では無くほぼ革新的な事をに気が付いた。
考えたくはもないその事実。
「もしかして、慧音。私との昨日歴史を食べたのか?」
「あなたとの歴史?」
……慧音は昨日夜は、ハクタクの日だった。
同室で寝息を立て安らかに眠っている妹紅の横顔を見ながら歴史喰いになっていた。
ハクタクの日だったからそれが始まる前から心が普段よりも開放的になり大胆な発言をしまったのだった。
『……ホルスタインにする? それとも、わ、た、し?』
『え? じゃあ、そのう。け、け』
『け?』
『けが白黒なホルスタインで』
激しいホルスタインへの怒りと嫉妬心のせいで今夜本来の仕事にはまったく手を付けていない。
妹紅は自分じゃなくて他の牛を選んだ。
妹紅が白黒牛のホルスタインを選んだ歴史を喰って、自身を選んだことにしようと思った。
喰ってしまおうと喰う直前まで思っていたが、自身が泣いていることに気が付く。
歴史を改竄すれば、ホルスタインは歴史の闇に溶け込んで妹紅を手に入れることができる。
窓から見える月が高ぶる思いに答えたかのようにはそれでも良いのではないかと語り掛けてくる気がした。
でも、それは偽りの歴史と偽りの記憶で妹紅を縛り付けることになってしまう。
慧音はだったら自分の歴史を喰ってしまうことにしたのだった。
夢を毎日語りながら一緒に座り一緒に食事をした。そんな思い出が詰まるちゃぶ台に別れのメッセージを書いて妹紅との歴史を喰って居たのだった。
喰った後は、寺子屋の為にセプテット謳いながらまだ夜分だというのに牛……寺子屋に夢遊病患者のように向かい何故か分からないがあふれる涙が抑えられず朝を迎えていたのだった。
全ては慧音の腹の中に葬られてしまったのだった。また再び新しい絆で二人が結ばれるその日までサヨウナラ。
妹紅は、再び『黒毛和牛にする? ホルスタインにする? それとも、わ、た、し?』と慧音に言ってもらうために綺麗なお花を持って、慧音の元に毎日通うのだった。
ここテストに出ます!
良かったです
不条理物というか。慧音からのメッセージとか、まさにそういう感情の連続性がないのが最高に悪い夢って感じだ。
しかしまあそんな中でも亡き友を追い求める妹紅はよかったなあ
まさに不条理
ホルスタイン