俺はいつもの門から、旧地獄にいた。コンガラ様からの直々のお達しで旧地獄を見てこいとの事。隣にはシンギョク、俺の半身の女がウキウキして歩いている。
「なあ、何故そんなに楽しそうにしているんだ」
「だってねえ。いつもつまらない門の前ばっかりじゃ刺激がないじゃない。せっかくの遠出だもの、楽しまなきゃ」
「そういうものか」
「そういうものよ」
俺には女の思考が分からない。生前から堅物と言われていたからな……
「ほらほら、早く行きましょ」
タッと走り出す女。俺は慌てて追いかけた。
「ちょっと待て」
「早く旧地獄行きましょうよ」
地上と縦穴と旧地獄を繋ぐ橋まで追いかけっこになった。
旧地獄を繋ぐ橋の前に着く。
「おい、半身……少しぐらい手加減してくれ……」
ハアハアと俺は女を追いかけていく。しかし今日は浮かれているのかあまり話を聞いていないようだ。こうなると女はとことん聞かない。強めに言わなければ……
「ああ、つがいかしら……妬ましい……」
橋の上の緑目の金髪の女性に話しかけられる。
「……貴女は橋姫、か」
生きていた時に橋姫は京にて見たことがある。目の前の人のような緑目に金髪では無かったが。
「何よ、あんた……いきなり人の事呼んで……」
「ああ、すまない……生前に少し見たことがあったような気がしてな……気を損ねたなら悪かった」
「あー、半身何してんの。私というものがいながら〜」
フワフワと俺と橋姫の前を飛ぶ女。
「誤解を招く言い方をするな」
「ははは、半身慌ててる。久しぶりに見たような気がするよ」
なんでそうやってからかうのだ。
「ほら、早く進みなさいよ。妬ましいわ。……あら」
橋姫はイライラとしている。それと何かに意識を向けたような気がした。
「どうかしたのか」
「……何も無いわよ。ほら進みなさい」
俺は少し気になったが、女に引きずられるように橋を渡って行った。
さて、旧地獄に着いた。ガヤガヤと色々な妖怪達が蠢いている。主に酒を飲んでいて揉め事が起こっていそうと言うか起こっているが。
「半身〜なんか食べようよ〜」
「交換出来るようなものは無いぞ」
そう言うと女は懐から袋を出した。
「コンガラ様から少し貰ってるから」
おいおい。いつの間にお金を貰っていたんだ。奪うとかはしなくていいからまあいいか。
女が食べたいものを買わせに行く。俺は椅子に座って待つ。
妖怪達が一つ大きな声を上げた。
「おお! 勇儀姉さん!」
喧嘩をしていたようだ。勇儀……と言う妖怪が勝ったみたいだ。俺には関係ないと思い、人だかりから目をそらす。
「おい、そこの陰陽師」
目を逸らしたと同時に少し背の高い妖怪に声をかけられた。
「なんだ……」
ガシャンと攻撃をしてきたので避ける。声をかけられた相手は土蜘蛛だった。
「なんでこんな所に陰陽師がいるのかね……? ぶっ殺してやる」
俺は何も言わずにひたすら避ける。土蜘蛛は陰陽師に対して憎しみを持つものも多い。服を変えてくれば良かったと後悔するが遅い。
「半身、買ってきた……って、何してるの」
女は飄々と買ってきたたこ焼き……だったか。を持ちながら言う。
「俺のせいではない……」
「陰陽師……? ぐおお!!!」
「ほらお前さん、何やってるの。やめろ。古明地の所に出されたいのか?」
俺と土蜘蛛の間に入るは、金髪の頭を一つに纏めた女性。
「や、ヤマメの姉貴……ここに陰陽師がいるなら殺さなくては……」
「客人を殺してどうするんだい? お前さんは何か出来るのか? それとも古明地のところでトラウマ漁られたいのかい? されたくないなら攻撃をやめな。それが私が殺してもいいんだよ?」
「し、しかし……」
「散れ、若造が! これ以上機嫌を損ねるようならお前さん……消えるぞ……?」
「す、すみませんでした……!」
そう言うとどこかに行った土蜘蛛。ポカンとしてしまう。
「すまなかったね、客人。さとりのやろーに聞いてたのに迎えにいくのが遅くなっちまった……」
「あ、ああ……旧地獄のトップにも話は伝わっていたのか……悪いけれども、場所を教えてくれないか」
「私がついて行くから大丈夫だ」
「ならお願いする。名前は何と言うのですか」
そうやって言って名前を聞いていないことに気がつく。
「黒谷ヤマメ。よろしくな」
「俺と「私がシンギョクよろしく」」
自己紹介に入ったのはいいが、半身よ、たこ焼きを食べながら言うんじゃない。
俺達はヤマメに旧地獄のトップの元に向かうことになった。
少し、何かの気配がしたような気がした。
「ほらここが地霊殿。中に入ればペットが案内してくれる。それじゃあここまでだ」
「ありがとう〜ヤマメ〜」
「おう、ギョク元気でな〜」
なぜこの短期間で半身はヤマメと仲良くなれるのだ。本当に謎すぎる。
俺達は地霊殿の扉を開ける。
「ようこそ、シンギョクさん。お待ちしておりました。私は火焔猫燐。お燐と呼んでくださいな」
ロビーにいるのは火車。
「おー猫だ」
空気を壊すような発言はやめろ。本当に空気を読まないな。
「ええと……とりあえずさとり様の所に案内しますね」
ほら、困っているではないか……俺の言いたいことが分かったのか女はクスクスと笑っていた。
「ようこそ。旧地獄の視察ですね。閻魔から聞いています」
「古明地さとり、さんだったか」
「さとり、でいいですよ」
ふむ。旧地獄は安定しているとは思う。
「ありがとうございます。そう思えてもらえるなら重畳ですよ」
ああ、そうかさとり妖怪だったな。忘れていた。
「読まれているのにそこまで驚かないのが珍しいですよ」
「そういうものですか」
「そういうものですよ」
少しはは、と笑う。そこからコンガラ様から言われていることを話す。意見の交換をしあった。
「おい、半身帰る……ぞって誰を膝の上に乗せているんだ」
「え、こいしちゃんだってさ。素直で可愛い子だよ?」
いや、そういうことを聞いていないのだが。
「こんにちはーシンギョクさん」
「こいしちゃーん、私もシンギョクだよー」
……なんだその。話が通じていないような感じは。
「おかえりなさいこいし。客人が困ってますから惑わせるようなことは言わないように」
「はーい、お姉ちゃん分かったよー」
「こいしちゃん、聞いてよぉ……」
半身よ、何をしているのだ。話を聞いてもらえなかったからなのかこいしさんを抱き締めている。
「シンギョクさん苦しいよー」
「ああ、ごめんごめん」
パッと離す半身。ええと、俺はどうすればいいのだ。
「お兄さん凄いねえ。パルスィと話してるのに嫉妬もしない、土蜘蛛に襲われているのに眉一つ動かしもしないで避ける、ヤマメにも警戒心を抱かさせないってねえ」
……?何を言っているのだ。ここに来るまでの間の話、か。まるで見ていたかのような口ぶりだな。
「お兄さんやっぱり面白いや。陰陽師の姿をしているから博麗神社から出てきた時はビックリしたな。こんな人いたっけなあ、って」
スラスラとこいしさんは話す。
「おー、こいしちゃんは博麗神社からずっと見てたのか」
半身よ。何故そこまで反応が早いのだ。
「そーそー、見てたのー」
「ふうん……だから時々誰かにいるって感じだったのね」
「あれれ、シンギョクさん分かるのー?」
「うーん、少しだけかな。ふと感じる気配だけだったけれどね」
半身は話している。
「それでなんでこいしちゃんは追いかけてきたのかな。博麗神社からいきなり出てきたとしても追いかける意味も無かったはずだよね」
「えー、それを聞いちゃうの。まあいいや。私の無意識がままに追いかけただけだよ?それだけだよー」
そういうものなのか。
「なるほどねえ。あ、さとりさんありがとうございます」
こいしさんはさとりさんに半身から引き剥がされた。
「なにー、お姉ちゃんやめてー」
「ほらこいし、客人を困らせない。ああ、出てくれていいですよ」
「ぶーお姉ちゃんの、ケチー」
「ケチで結構ですよ」
俺は半身に目配せしてさとりさんの部屋から出ていった。
そうして俺たちは帰りは何も寄らずに門の前と帰った。コンガラ様への報告も忘れずにする。
「少しは休暇になったか?まあ、部下でもないからそう言うのはないとは思うが」
「おや……そんなこと思ってくれていたのですね。いい気分転換になりましたよ。ありがとうございます」
そんなやり取りをしていつもの門番に戻る。
半身は余程、旧地獄が楽しかったようなのかよく話をした。
「また、二人で行けたら行こうよ」
「それはその時な……」
やれやれと少し呆れた俺だった。
「なあ、何故そんなに楽しそうにしているんだ」
「だってねえ。いつもつまらない門の前ばっかりじゃ刺激がないじゃない。せっかくの遠出だもの、楽しまなきゃ」
「そういうものか」
「そういうものよ」
俺には女の思考が分からない。生前から堅物と言われていたからな……
「ほらほら、早く行きましょ」
タッと走り出す女。俺は慌てて追いかけた。
「ちょっと待て」
「早く旧地獄行きましょうよ」
地上と縦穴と旧地獄を繋ぐ橋まで追いかけっこになった。
旧地獄を繋ぐ橋の前に着く。
「おい、半身……少しぐらい手加減してくれ……」
ハアハアと俺は女を追いかけていく。しかし今日は浮かれているのかあまり話を聞いていないようだ。こうなると女はとことん聞かない。強めに言わなければ……
「ああ、つがいかしら……妬ましい……」
橋の上の緑目の金髪の女性に話しかけられる。
「……貴女は橋姫、か」
生きていた時に橋姫は京にて見たことがある。目の前の人のような緑目に金髪では無かったが。
「何よ、あんた……いきなり人の事呼んで……」
「ああ、すまない……生前に少し見たことがあったような気がしてな……気を損ねたなら悪かった」
「あー、半身何してんの。私というものがいながら〜」
フワフワと俺と橋姫の前を飛ぶ女。
「誤解を招く言い方をするな」
「ははは、半身慌ててる。久しぶりに見たような気がするよ」
なんでそうやってからかうのだ。
「ほら、早く進みなさいよ。妬ましいわ。……あら」
橋姫はイライラとしている。それと何かに意識を向けたような気がした。
「どうかしたのか」
「……何も無いわよ。ほら進みなさい」
俺は少し気になったが、女に引きずられるように橋を渡って行った。
さて、旧地獄に着いた。ガヤガヤと色々な妖怪達が蠢いている。主に酒を飲んでいて揉め事が起こっていそうと言うか起こっているが。
「半身〜なんか食べようよ〜」
「交換出来るようなものは無いぞ」
そう言うと女は懐から袋を出した。
「コンガラ様から少し貰ってるから」
おいおい。いつの間にお金を貰っていたんだ。奪うとかはしなくていいからまあいいか。
女が食べたいものを買わせに行く。俺は椅子に座って待つ。
妖怪達が一つ大きな声を上げた。
「おお! 勇儀姉さん!」
喧嘩をしていたようだ。勇儀……と言う妖怪が勝ったみたいだ。俺には関係ないと思い、人だかりから目をそらす。
「おい、そこの陰陽師」
目を逸らしたと同時に少し背の高い妖怪に声をかけられた。
「なんだ……」
ガシャンと攻撃をしてきたので避ける。声をかけられた相手は土蜘蛛だった。
「なんでこんな所に陰陽師がいるのかね……? ぶっ殺してやる」
俺は何も言わずにひたすら避ける。土蜘蛛は陰陽師に対して憎しみを持つものも多い。服を変えてくれば良かったと後悔するが遅い。
「半身、買ってきた……って、何してるの」
女は飄々と買ってきたたこ焼き……だったか。を持ちながら言う。
「俺のせいではない……」
「陰陽師……? ぐおお!!!」
「ほらお前さん、何やってるの。やめろ。古明地の所に出されたいのか?」
俺と土蜘蛛の間に入るは、金髪の頭を一つに纏めた女性。
「や、ヤマメの姉貴……ここに陰陽師がいるなら殺さなくては……」
「客人を殺してどうするんだい? お前さんは何か出来るのか? それとも古明地のところでトラウマ漁られたいのかい? されたくないなら攻撃をやめな。それが私が殺してもいいんだよ?」
「し、しかし……」
「散れ、若造が! これ以上機嫌を損ねるようならお前さん……消えるぞ……?」
「す、すみませんでした……!」
そう言うとどこかに行った土蜘蛛。ポカンとしてしまう。
「すまなかったね、客人。さとりのやろーに聞いてたのに迎えにいくのが遅くなっちまった……」
「あ、ああ……旧地獄のトップにも話は伝わっていたのか……悪いけれども、場所を教えてくれないか」
「私がついて行くから大丈夫だ」
「ならお願いする。名前は何と言うのですか」
そうやって言って名前を聞いていないことに気がつく。
「黒谷ヤマメ。よろしくな」
「俺と「私がシンギョクよろしく」」
自己紹介に入ったのはいいが、半身よ、たこ焼きを食べながら言うんじゃない。
俺達はヤマメに旧地獄のトップの元に向かうことになった。
少し、何かの気配がしたような気がした。
「ほらここが地霊殿。中に入ればペットが案内してくれる。それじゃあここまでだ」
「ありがとう〜ヤマメ〜」
「おう、ギョク元気でな〜」
なぜこの短期間で半身はヤマメと仲良くなれるのだ。本当に謎すぎる。
俺達は地霊殿の扉を開ける。
「ようこそ、シンギョクさん。お待ちしておりました。私は火焔猫燐。お燐と呼んでくださいな」
ロビーにいるのは火車。
「おー猫だ」
空気を壊すような発言はやめろ。本当に空気を読まないな。
「ええと……とりあえずさとり様の所に案内しますね」
ほら、困っているではないか……俺の言いたいことが分かったのか女はクスクスと笑っていた。
「ようこそ。旧地獄の視察ですね。閻魔から聞いています」
「古明地さとり、さんだったか」
「さとり、でいいですよ」
ふむ。旧地獄は安定しているとは思う。
「ありがとうございます。そう思えてもらえるなら重畳ですよ」
ああ、そうかさとり妖怪だったな。忘れていた。
「読まれているのにそこまで驚かないのが珍しいですよ」
「そういうものですか」
「そういうものですよ」
少しはは、と笑う。そこからコンガラ様から言われていることを話す。意見の交換をしあった。
「おい、半身帰る……ぞって誰を膝の上に乗せているんだ」
「え、こいしちゃんだってさ。素直で可愛い子だよ?」
いや、そういうことを聞いていないのだが。
「こんにちはーシンギョクさん」
「こいしちゃーん、私もシンギョクだよー」
……なんだその。話が通じていないような感じは。
「おかえりなさいこいし。客人が困ってますから惑わせるようなことは言わないように」
「はーい、お姉ちゃん分かったよー」
「こいしちゃん、聞いてよぉ……」
半身よ、何をしているのだ。話を聞いてもらえなかったからなのかこいしさんを抱き締めている。
「シンギョクさん苦しいよー」
「ああ、ごめんごめん」
パッと離す半身。ええと、俺はどうすればいいのだ。
「お兄さん凄いねえ。パルスィと話してるのに嫉妬もしない、土蜘蛛に襲われているのに眉一つ動かしもしないで避ける、ヤマメにも警戒心を抱かさせないってねえ」
……?何を言っているのだ。ここに来るまでの間の話、か。まるで見ていたかのような口ぶりだな。
「お兄さんやっぱり面白いや。陰陽師の姿をしているから博麗神社から出てきた時はビックリしたな。こんな人いたっけなあ、って」
スラスラとこいしさんは話す。
「おー、こいしちゃんは博麗神社からずっと見てたのか」
半身よ。何故そこまで反応が早いのだ。
「そーそー、見てたのー」
「ふうん……だから時々誰かにいるって感じだったのね」
「あれれ、シンギョクさん分かるのー?」
「うーん、少しだけかな。ふと感じる気配だけだったけれどね」
半身は話している。
「それでなんでこいしちゃんは追いかけてきたのかな。博麗神社からいきなり出てきたとしても追いかける意味も無かったはずだよね」
「えー、それを聞いちゃうの。まあいいや。私の無意識がままに追いかけただけだよ?それだけだよー」
そういうものなのか。
「なるほどねえ。あ、さとりさんありがとうございます」
こいしさんはさとりさんに半身から引き剥がされた。
「なにー、お姉ちゃんやめてー」
「ほらこいし、客人を困らせない。ああ、出てくれていいですよ」
「ぶーお姉ちゃんの、ケチー」
「ケチで結構ですよ」
俺は半身に目配せしてさとりさんの部屋から出ていった。
そうして俺たちは帰りは何も寄らずに門の前と帰った。コンガラ様への報告も忘れずにする。
「少しは休暇になったか?まあ、部下でもないからそう言うのはないとは思うが」
「おや……そんなこと思ってくれていたのですね。いい気分転換になりましたよ。ありがとうございます」
そんなやり取りをしていつもの門番に戻る。
半身は余程、旧地獄が楽しかったようなのかよく話をした。
「また、二人で行けたら行こうよ」
「それはその時な……」
やれやれと少し呆れた俺だった。
win版キャラとの絡みはあんまり無いから嬉しいです
たまの供給が嬉しいです
確かに地獄の門番だから旧地獄と関係があってもおかしくないかも……