新月の日だ。この日は私は輝夜と永遠亭にて呑むことになっている。
なんで殺し合いをしているというのに呑み会をしているのだろうか。よく分からない。
でも確実に言えるのは慧音が二人で呑んでみたらどうだ? とか言ってくれなかったらこんなことしてなかったとは言える。
まあ、呑む時の禁止事項として、殴らない、殺さない、人様に迷惑をかけない、となっている。全部これは慧音と永琳が決めたことなので逆らえない。輝夜も永琳に言われたことが堪えるらしく新月の夜は大人しい。
「ほら、呑みなさいよ」
私のお猪口に酒が注がれる。
「……ありがとう」
「うわ、やっぱりそうやって言われると気持ち悪いわね」
「バッサリ言うんじゃねえよ、お礼くらい言うだろ」
「私は姫なので言う必要ありません〜」
「そんなこと言ってると何もしてもらえなくなるぞ、私は知らんぞ」
軽口を叩きながら私たちは呑む。雰囲気に酔うだけなので実際は酔うことはないのだが。
月という肴がないのが少し寂しい。けれども月が出ると輝夜がノリノリになってしまうので落ち着いて呑める時が新月くらいしかないのだ。
暗いながらも庭を見たりして呑み進める。
こいつは憎い、とは思うがそれとは別にこいつだからそうなんだろうと言う割り切りみたいなのが生まれている。こいつは私が突っかかってきても流しているようなものだから暇潰し程度にしか思っていないのだろうが。
あー、慧音来ないかな。こいつと呑むのはいいけど軽口しか叩けないのでただ呑んでるだけなのでつまらない。こんなこと言ったら禁止事項破って殺しに来そうだが。
「あー、永琳来ないかしら」
「あ?」
「なによ、喧嘩売る気かしら?」
喧嘩売ってるのはお前だろ。あー、イライラしてきた、殴り飛ばしてやろうか……
「はいそこまで。姫様何してるんですか。禁止事項破ればお仕置きすると言っていたでしょう?」
永琳が縁側に繋がる部屋から出てきた。お仕置きって……慧音と似たようなことを言うな。永琳が来たということは……
「こら、妹紅今殴ろうとしていただろう。破るというのなら頭突きすると言っているだろう。今すぐにでもされたいのか?」
ほら、やっぱり来た。
「しようとしてない! ホントだから!」
「あーはっは、脅されてやんの!」
輝夜が笑う。
「姫様?」
永琳が恐ろしい顔で笑っている。
「……ごめんなさい」
わお、あの輝夜が一瞬で謝った。
そんなことをしながら私たちは四人で呑み始めた。
***
「待って、慧音そんなに呑ませないで……!?」
「うあーのめのめ〜」
不味った。慧音の酒の配分を間違えた。この四人の中で唯一、酒で酔う人。それなのに多く呑んでしまった。
「あらあら慧音先生はもう酔ったわね」
飄々と輝夜は他人事のように言う。他人事だけど!
「ちょっと、慧音先生、みっともないですよ」
そう言って止めてくれるのは永琳くらいしかいない。
「……永琳かぁ? いつもお世話になって……」
酔いすぎた慧音はおしゃべりになる。むしろ喋りすぎるが。捕まってしまった永琳は苦笑いをしながら相手をしている。
「助かった……」
「そう言ってもあんた、酔わないでしょうに。私もそうだけど」
ホッとしている所に輝夜がやってくる。四人で呑んでいればそうなるか。
「そりゃ、酔わないけど。雰囲気酔いはするだろうに」
「まあ、それは認めるけど」
「それにあれ以上飲まされてもお腹いっぱいなんだ。さすがにきついよ」
あれ、雰囲気に酔ってしまっているのか言葉使いが……
「言葉使いが変わってきてるわよ〜覚えているだろうけど後で弄ってやろうかしら」
「それしたら後でぶっ殺す」
いつもの様に話す。軽口だとしてもやはりこうやって話せるのは楽しい。憎いやつでもまあ、いいのかと思えるくらいには。
「妹紅、そろそろ慧音を帰してあげて。もうベロベロに酔ってるわよ」
そう言われたら長いこと呑んでいたのか。慧音が酔わないとどれだけ呑んだのか分からないのはさすがに不味いよな。
「へーへー、分かったよ。ほら、慧音大丈夫か」
「これでお開きね。じゃ、妹紅、次の満月の夜に」
それだけ言って輝夜は部屋に戻ったらしい。片付けをしていけよ。
「もこー、もこうー、可愛いなあははは」
慧音は今日はダメだね。酔いすぎだよ。
「あ、永琳ありがとうな。私は送って来るから片付け出来ないのはすまん」
「まあいいわよ。姫様は新月と満月のがあるからあなたに対しては落ち着いているからね。ま、慧音ちゃんと送ってね」
そう言いながら片付けている永琳。
「分かったよ、また次の新月に」
私はそれだけ言って慧音をおぶって歩いて行った。
***
竹林を抜けて、歩いているとおぶっている慧音が話してきた。
「もこう、もこう……どこにもいかないよな……?」
「どこにも行かないよ」
ザッザッザッ……
「もこう……どこにもいかないで」
「行かないよ」
ザッザッザッ……
「もこう……」
そう言うと慧音は寝たのか返事がなくなった。新月の夜はいつもこうだ。慧音は酔いつぶれて、寝る前に確認してから寝る。
どうしてなのだろうか。私には分からないけども、それでもどこにも行かないし、行けないのだから、確認しなくても大丈夫なのにな。
「今日も暗い夜だ。こんな日には酒を飲むに限る」
ははは、と自分で笑いながら歩いていった。
なんで殺し合いをしているというのに呑み会をしているのだろうか。よく分からない。
でも確実に言えるのは慧音が二人で呑んでみたらどうだ? とか言ってくれなかったらこんなことしてなかったとは言える。
まあ、呑む時の禁止事項として、殴らない、殺さない、人様に迷惑をかけない、となっている。全部これは慧音と永琳が決めたことなので逆らえない。輝夜も永琳に言われたことが堪えるらしく新月の夜は大人しい。
「ほら、呑みなさいよ」
私のお猪口に酒が注がれる。
「……ありがとう」
「うわ、やっぱりそうやって言われると気持ち悪いわね」
「バッサリ言うんじゃねえよ、お礼くらい言うだろ」
「私は姫なので言う必要ありません〜」
「そんなこと言ってると何もしてもらえなくなるぞ、私は知らんぞ」
軽口を叩きながら私たちは呑む。雰囲気に酔うだけなので実際は酔うことはないのだが。
月という肴がないのが少し寂しい。けれども月が出ると輝夜がノリノリになってしまうので落ち着いて呑める時が新月くらいしかないのだ。
暗いながらも庭を見たりして呑み進める。
こいつは憎い、とは思うがそれとは別にこいつだからそうなんだろうと言う割り切りみたいなのが生まれている。こいつは私が突っかかってきても流しているようなものだから暇潰し程度にしか思っていないのだろうが。
あー、慧音来ないかな。こいつと呑むのはいいけど軽口しか叩けないのでただ呑んでるだけなのでつまらない。こんなこと言ったら禁止事項破って殺しに来そうだが。
「あー、永琳来ないかしら」
「あ?」
「なによ、喧嘩売る気かしら?」
喧嘩売ってるのはお前だろ。あー、イライラしてきた、殴り飛ばしてやろうか……
「はいそこまで。姫様何してるんですか。禁止事項破ればお仕置きすると言っていたでしょう?」
永琳が縁側に繋がる部屋から出てきた。お仕置きって……慧音と似たようなことを言うな。永琳が来たということは……
「こら、妹紅今殴ろうとしていただろう。破るというのなら頭突きすると言っているだろう。今すぐにでもされたいのか?」
ほら、やっぱり来た。
「しようとしてない! ホントだから!」
「あーはっは、脅されてやんの!」
輝夜が笑う。
「姫様?」
永琳が恐ろしい顔で笑っている。
「……ごめんなさい」
わお、あの輝夜が一瞬で謝った。
そんなことをしながら私たちは四人で呑み始めた。
***
「待って、慧音そんなに呑ませないで……!?」
「うあーのめのめ〜」
不味った。慧音の酒の配分を間違えた。この四人の中で唯一、酒で酔う人。それなのに多く呑んでしまった。
「あらあら慧音先生はもう酔ったわね」
飄々と輝夜は他人事のように言う。他人事だけど!
「ちょっと、慧音先生、みっともないですよ」
そう言って止めてくれるのは永琳くらいしかいない。
「……永琳かぁ? いつもお世話になって……」
酔いすぎた慧音はおしゃべりになる。むしろ喋りすぎるが。捕まってしまった永琳は苦笑いをしながら相手をしている。
「助かった……」
「そう言ってもあんた、酔わないでしょうに。私もそうだけど」
ホッとしている所に輝夜がやってくる。四人で呑んでいればそうなるか。
「そりゃ、酔わないけど。雰囲気酔いはするだろうに」
「まあ、それは認めるけど」
「それにあれ以上飲まされてもお腹いっぱいなんだ。さすがにきついよ」
あれ、雰囲気に酔ってしまっているのか言葉使いが……
「言葉使いが変わってきてるわよ〜覚えているだろうけど後で弄ってやろうかしら」
「それしたら後でぶっ殺す」
いつもの様に話す。軽口だとしてもやはりこうやって話せるのは楽しい。憎いやつでもまあ、いいのかと思えるくらいには。
「妹紅、そろそろ慧音を帰してあげて。もうベロベロに酔ってるわよ」
そう言われたら長いこと呑んでいたのか。慧音が酔わないとどれだけ呑んだのか分からないのはさすがに不味いよな。
「へーへー、分かったよ。ほら、慧音大丈夫か」
「これでお開きね。じゃ、妹紅、次の満月の夜に」
それだけ言って輝夜は部屋に戻ったらしい。片付けをしていけよ。
「もこー、もこうー、可愛いなあははは」
慧音は今日はダメだね。酔いすぎだよ。
「あ、永琳ありがとうな。私は送って来るから片付け出来ないのはすまん」
「まあいいわよ。姫様は新月と満月のがあるからあなたに対しては落ち着いているからね。ま、慧音ちゃんと送ってね」
そう言いながら片付けている永琳。
「分かったよ、また次の新月に」
私はそれだけ言って慧音をおぶって歩いて行った。
***
竹林を抜けて、歩いているとおぶっている慧音が話してきた。
「もこう、もこう……どこにもいかないよな……?」
「どこにも行かないよ」
ザッザッザッ……
「もこう……どこにもいかないで」
「行かないよ」
ザッザッザッ……
「もこう……」
そう言うと慧音は寝たのか返事がなくなった。新月の夜はいつもこうだ。慧音は酔いつぶれて、寝る前に確認してから寝る。
どうしてなのだろうか。私には分からないけども、それでもどこにも行かないし、行けないのだから、確認しなくても大丈夫なのにな。
「今日も暗い夜だ。こんな日には酒を飲むに限る」
ははは、と自分で笑いながら歩いていった。
酔っぱらってる慧音先生がかわいかったです
妹紅たちの惰性で付き合っている感もよかったです