私は新月の夜道を歩いていた。隣には美鈴もいる。
魔法の森に必要な研究材料を取りに行くためだ。他の人に任せれば良いのだろうけれど、何故か気分が向いたのだ。
「パチュリー様、なにか近づいてくるようですが」
魔法の森手前でなにかが近づいてきているのが私にも分かった。
「……いきなりですけれど始末します?」
「いいえ、しなくても良いわ。話が通じそうな相手だしね」
ふわふわと飛んできていたその子に話しかけられた。
「あら、あなたは食べてもいい人類?」
私の後ろで臨戦態勢になる美鈴。
「いいえ、御生憎様、私は人間じゃないわよ」
「ちぇっ、やっぱりそうか。二つ気配あると思ってきたらどっちも人間じゃ無さそうだし。あーあ、めんどくさい」
飛ぶのを辞めたその子は地面に座っている。美鈴は普段に戻っている。
「ねえ、あなた」
「ルーミア。そう呼んでくれればいいよ」
ああ。私としたことが自己紹介を忘れていた。
「ルーミアって言うのね。私はパチュリー。パチュリー・ノーレッジ。魔法使いよ」
「魔法使い? ああ、魔理沙と同業さんなのか」
「まあ、そうだけど……あまり一緒にはされたくないわね」
「ああ、ごめんなさい。そして後ろの背が高いお姉さんは?」
ルーミアは美鈴に話しかけている。
「紅美鈴と申します」
「めーりん? あーチルノとかと時々遊んでるんだっけ? 大妖精とかもいたずらが好きすぎて困るレベルだよねー」
「おや、知っているのですね」
「なんかその硬い口調嫌だからやめて欲しいな。気軽にルーミアって呼んでくれていいし」
「なら、そうしましょうか」
美鈴はニコリと笑っている。
「パチュリーさんって呼んでいいかな? 美鈴はともかくそっちの方がなんかいい感じ」
ルーミアは話をどんどん進めていく。そういう所が親友と少し似ているかもと思った。
「好きに呼んでもらっていいわよ。それで聞きたいことがあるんだけれど」
「ん? なに?」
「ルーミアって魔法の森は詳しいのかしら?」
取りに行きたい材料はキノコ。しかし魔理沙の手は望めない。あいつは逃げ回るから、アテにもならないし、何より私の大切な本たちを盗んでいるのだから。
「んー、入口付近くらいまでしか知らないよ? あとは詳しいのは魔理沙かな。それかアリスさん。香霖堂の店主は……お察しだよね。そのぐらいしか知らない」
入口付近を知っているならそれでいい。あまり深くにも入りたくないから。
「入口付近でもいいから案内してくれないかしら。タダでとは言わないから」
交渉を持ちかけていく。そうやってした方がやりやすい。
「狩りを1回手伝ってもらえればそれでいいかな。恐らくなにか探してるみたいだしそれが終わってから手伝ってくれればいいし」
狩り、狩り……ね。まあいいでしょう。
「契約成立、ね。私の目的を果たしたらルーミアの目的をするわね。それでいいかしら?」
「うん、それでいい。それじゃ、なにを探してるの?」
「光るキノコなんだけれど」
「あーそれなら見たね。私の闇の中で光るかどうか試したんだった。こっちこっち」
私の裾を引っ張られながらルーミアを先頭に私たちは歩いていく。
「ちょっと待って……少し休んでもいいかしら……」
「あれ、疲れたの? 体弱いんだねえ?」
「私は引きこもり、だからね……ふー……」
私が座った隣にはルーミアは座る。美鈴は立ったまま警戒しているようだ。
「パチュリー様大丈夫です?」
「少し休めば大丈夫よ……」
全く、美鈴は心配性なんだから。
「パチュリーさんは普段何してるの?」
ふう、少しづつ治まってきた。そうしてルーミアからの質問。
「私? 私はね、ずっと本を読んでいるわ。新しい知識を求めてずっとね」
「凄いね。そんなパチュリーさんの図書館は大きいって聞くけどどのくらい大きいの?」
「えっと……どのくらいかしら? 私はそこまで気にしてはいなかったわ」
「大きいならどのくらい大きいか知りたいとは思わない?」
「なるほどね、そういう知識の求め方もあるというわけなのね。さ、私も治まったから行きましょうか」
「パチュリーさん無理しないでよね。倒れられたら私だけじゃ困るよ」
「美鈴がいるから大丈夫よ」
そんなことを言いながら目的地に向かっていく。
ルーミアが見たいというキノコは私が今欲しいものだった。あっていたのだ。それが少しで良かったのにまわりに多めにあったので取っていく。手伝ってくれているのに取るのまでするものだからお返しも少し多めにしないとね。
「このぐらいで十分よ。美鈴、持っておいてくれるかしら」
「了解しました」
荷物持ちの美鈴に持たせてルーミアと話す。
「さ、狩りの手伝いってことだけれどなにをすればいいのかしら?」
「人間を見つけたら逃げられない場所を作るか、誘導して欲しいんだ。そしてそこに私が闇を纏ったまま食べる。これで完璧」
なるほどね。作戦はあるようでないのかな。
「新月の夜はいつも外の人間が迷い込みやすくなってるんだ。だから私は新月が狩りの時間。さ、見つかるまで探しましょ」
そう言いながらルーミアは浮かぶ。
「上から探すの?」
「違うよ、足音たてると逃げちゃうからね。だから基本は浮いておくの」
狩りのレクチャーを受けているみたいで面白い。言われた通りに私と美鈴は少し浮いた。
ルーミアはきょろきょろと周りを見ている。私も気配探知をする。
「みーつけた。さ、狩るよ」
私はその声に合わせて人間がいると思われる方に弾幕を放つ。
「うわぁぁあ!?」
慌てふためく人間。森の暗闇に誘い込むようにトントンと弾幕を当たらない所に放っていく。
それにルーミアがついてきて、暗闇の端に来てからこう言ったのだ。
「あなたは食べてもいい人類?」
後ろから見ていてもニコリと笑っているように思えた。
暗闇を展開するルーミア。
魔法の森に悲鳴が響き渡っていた。
***
「それじゃあまたいつか会いましょう」
「うん、ありがとうパチュリーさん。またどこかで会おうね」
そうやって別れて行った。
まあ、幻想郷にいる限りどこかで会えるでしょう。
魔法の森に必要な研究材料を取りに行くためだ。他の人に任せれば良いのだろうけれど、何故か気分が向いたのだ。
「パチュリー様、なにか近づいてくるようですが」
魔法の森手前でなにかが近づいてきているのが私にも分かった。
「……いきなりですけれど始末します?」
「いいえ、しなくても良いわ。話が通じそうな相手だしね」
ふわふわと飛んできていたその子に話しかけられた。
「あら、あなたは食べてもいい人類?」
私の後ろで臨戦態勢になる美鈴。
「いいえ、御生憎様、私は人間じゃないわよ」
「ちぇっ、やっぱりそうか。二つ気配あると思ってきたらどっちも人間じゃ無さそうだし。あーあ、めんどくさい」
飛ぶのを辞めたその子は地面に座っている。美鈴は普段に戻っている。
「ねえ、あなた」
「ルーミア。そう呼んでくれればいいよ」
ああ。私としたことが自己紹介を忘れていた。
「ルーミアって言うのね。私はパチュリー。パチュリー・ノーレッジ。魔法使いよ」
「魔法使い? ああ、魔理沙と同業さんなのか」
「まあ、そうだけど……あまり一緒にはされたくないわね」
「ああ、ごめんなさい。そして後ろの背が高いお姉さんは?」
ルーミアは美鈴に話しかけている。
「紅美鈴と申します」
「めーりん? あーチルノとかと時々遊んでるんだっけ? 大妖精とかもいたずらが好きすぎて困るレベルだよねー」
「おや、知っているのですね」
「なんかその硬い口調嫌だからやめて欲しいな。気軽にルーミアって呼んでくれていいし」
「なら、そうしましょうか」
美鈴はニコリと笑っている。
「パチュリーさんって呼んでいいかな? 美鈴はともかくそっちの方がなんかいい感じ」
ルーミアは話をどんどん進めていく。そういう所が親友と少し似ているかもと思った。
「好きに呼んでもらっていいわよ。それで聞きたいことがあるんだけれど」
「ん? なに?」
「ルーミアって魔法の森は詳しいのかしら?」
取りに行きたい材料はキノコ。しかし魔理沙の手は望めない。あいつは逃げ回るから、アテにもならないし、何より私の大切な本たちを盗んでいるのだから。
「んー、入口付近くらいまでしか知らないよ? あとは詳しいのは魔理沙かな。それかアリスさん。香霖堂の店主は……お察しだよね。そのぐらいしか知らない」
入口付近を知っているならそれでいい。あまり深くにも入りたくないから。
「入口付近でもいいから案内してくれないかしら。タダでとは言わないから」
交渉を持ちかけていく。そうやってした方がやりやすい。
「狩りを1回手伝ってもらえればそれでいいかな。恐らくなにか探してるみたいだしそれが終わってから手伝ってくれればいいし」
狩り、狩り……ね。まあいいでしょう。
「契約成立、ね。私の目的を果たしたらルーミアの目的をするわね。それでいいかしら?」
「うん、それでいい。それじゃ、なにを探してるの?」
「光るキノコなんだけれど」
「あーそれなら見たね。私の闇の中で光るかどうか試したんだった。こっちこっち」
私の裾を引っ張られながらルーミアを先頭に私たちは歩いていく。
「ちょっと待って……少し休んでもいいかしら……」
「あれ、疲れたの? 体弱いんだねえ?」
「私は引きこもり、だからね……ふー……」
私が座った隣にはルーミアは座る。美鈴は立ったまま警戒しているようだ。
「パチュリー様大丈夫です?」
「少し休めば大丈夫よ……」
全く、美鈴は心配性なんだから。
「パチュリーさんは普段何してるの?」
ふう、少しづつ治まってきた。そうしてルーミアからの質問。
「私? 私はね、ずっと本を読んでいるわ。新しい知識を求めてずっとね」
「凄いね。そんなパチュリーさんの図書館は大きいって聞くけどどのくらい大きいの?」
「えっと……どのくらいかしら? 私はそこまで気にしてはいなかったわ」
「大きいならどのくらい大きいか知りたいとは思わない?」
「なるほどね、そういう知識の求め方もあるというわけなのね。さ、私も治まったから行きましょうか」
「パチュリーさん無理しないでよね。倒れられたら私だけじゃ困るよ」
「美鈴がいるから大丈夫よ」
そんなことを言いながら目的地に向かっていく。
ルーミアが見たいというキノコは私が今欲しいものだった。あっていたのだ。それが少しで良かったのにまわりに多めにあったので取っていく。手伝ってくれているのに取るのまでするものだからお返しも少し多めにしないとね。
「このぐらいで十分よ。美鈴、持っておいてくれるかしら」
「了解しました」
荷物持ちの美鈴に持たせてルーミアと話す。
「さ、狩りの手伝いってことだけれどなにをすればいいのかしら?」
「人間を見つけたら逃げられない場所を作るか、誘導して欲しいんだ。そしてそこに私が闇を纏ったまま食べる。これで完璧」
なるほどね。作戦はあるようでないのかな。
「新月の夜はいつも外の人間が迷い込みやすくなってるんだ。だから私は新月が狩りの時間。さ、見つかるまで探しましょ」
そう言いながらルーミアは浮かぶ。
「上から探すの?」
「違うよ、足音たてると逃げちゃうからね。だから基本は浮いておくの」
狩りのレクチャーを受けているみたいで面白い。言われた通りに私と美鈴は少し浮いた。
ルーミアはきょろきょろと周りを見ている。私も気配探知をする。
「みーつけた。さ、狩るよ」
私はその声に合わせて人間がいると思われる方に弾幕を放つ。
「うわぁぁあ!?」
慌てふためく人間。森の暗闇に誘い込むようにトントンと弾幕を当たらない所に放っていく。
それにルーミアがついてきて、暗闇の端に来てからこう言ったのだ。
「あなたは食べてもいい人類?」
後ろから見ていてもニコリと笑っているように思えた。
暗闇を展開するルーミア。
魔法の森に悲鳴が響き渡っていた。
***
「それじゃあまたいつか会いましょう」
「うん、ありがとうパチュリーさん。またどこかで会おうね」
そうやって別れて行った。
まあ、幻想郷にいる限りどこかで会えるでしょう。