随分と昔の話だ。
私が里にいた時の事だった。確か、友達とかごめかごめをしていたはず、だったんだ。
私は金の髪をかがめてしゃがんだ。
みんなで私を囲んで歌い始めた。
かーごめ かーごめ
かーごのなぁーかのとーりは
いーついーつでぇーやる
よーあーけのばぁーんに
つーるとかーめがすーべった
うしろのしょうめんだーあれ?
『『『『『だーれだ?』』』』』
その時、私はぞっとしたよ。友達が囲んでいたはずの輪から同じ声が聞こえたんだ。しかも後ろからじゃなかった。輪全体から聞こえてきたんだ。
「……!?」
『だーれだ?』
ここでやっと後から一人の声が聞こえたんだ。
『だーれだ?』
「……分からないよ」
本当に分からなかった。友達の声でもなく、知らない女の子の声だった。
『後ろ向いていいよ』
そう言われておそるおそる向いたんだ。
そうしたら一つ目を紐で浮かしたつばの広い帽子を被った女の子がいたんだ。
「あなたは誰?」
『名無しの女の子よ』
「名前は……?」
『名無しと読んでちょうだい』
そういった女の子は私に近づいてきた。
「どうして名無しさんがいるの。ここは里じゃなかったの?」
そう。さっきまで里の中にいたはずなのに。どこかの草原に私と名無しさんはいた。
『知らないよそんなこと。私はここにいたもの。それより金髪さん。少し遊ばない?』
「……私は里に帰りたいな。それと私はまりさって言うの」
『そう。まりさちゃんね。あなた、妖怪に名乗ってはいけないと教えてもらわなかったの?』
「……妖怪……」
妖怪と出会うなんて微塵も思っていなかった。友達と遊んでいただけなのに。
『まあ、そんなことはいいの。まりさちゃん、あーそびーましょ?』
にこりと私にとっては不気味に見えた笑顔で笑った。
妖怪に触れてはならない。近づいてはならない。そんなこと言われていたはずなのに。なぜかこの時は私が分からなくなっていたんだ。
「うん、良いよ。何して遊ぶの?」
『そうだねえ。二人で遊べる鬼ごっこでもしようかな? 私が鬼で、まりさちゃんが逃げる。捕まったら殺されちゃうよ?』
冗談めかして言う名無しさん。私はその時、冗談と受け止めていたのだがこれは本当に殺す気でいたのかもしれない。
「分かった。逃げるね。ねえ、名無しさん、どこにでも逃げていいの?」
『うん、いいよ。どこにでも逃げて。私はそれを追いかけるから。まりさちゃんが忘れてもね』
そう言った名無しさんは帽子のつばで目元を隠した。
『ほら行くよ。ひとーつ、ふたーつ、みっーつ……』
私は駆け出した。意地でも捕まりたくない。逃げ切って見せると。なぜその時私は妖怪相手に本気になっていたのか。今でも分からないのである。
『……とーお。鬼ごっこ、始め!』
遠くでそう聞こえた。私は隠れながら逃げていく。
名無しさんは音を聞いて追いかけていきていた。
「はっ、はっ、はっ……」
金の髪が荒ぶっている。服の帯も解けかけている。それでも私は走った。走っていった。
後ろでガサガサと音がしている。名無しさんの音だろうか。
そうして必死に逃げていたらいつの間にか里の前まで来ていたのだ。
「……おや、魔理沙ちゃんじゃないか。どうした、そんな乱した格好をして」
里の前の門番さんに声をかけられた。
「えっ……なんで里の前にいるの? えっと……鬼ごっこしてて……ってあれ?」
もう名無しさんが追いかけてくる様子はなかったのだ。
「どうしたんだい? 妖怪にでも化かされたか?」
「……分からないです……」
もう本当にその時は分からなかった。そうして家に帰ると母様に怒られて。みっともないと。
それだけの話だったのに──
間欠泉騒ぎが終わった後の守矢神社に何かあるだとかで行ったら……
『やあっと、つーかまーえた。まりさちゃん。忘れても追いかけるって言ったでしょう?』
「お前……まさか!?」
『やあっと思い出してくれた。まりさちゃん逃げるの上手いんだから。捕まえたけどもう殺さないし大丈夫だよ』
純粋に、怖かった。
忘れた時に追いかけてきた名無しさん。
弾幕という力を持ってしても。
この恐怖には、敵わなかった。
名無しさんは──
『ほら、まりさちゃん、もっとあそびましょう?』
私が里にいた時の事だった。確か、友達とかごめかごめをしていたはず、だったんだ。
私は金の髪をかがめてしゃがんだ。
みんなで私を囲んで歌い始めた。
かーごめ かーごめ
かーごのなぁーかのとーりは
いーついーつでぇーやる
よーあーけのばぁーんに
つーるとかーめがすーべった
うしろのしょうめんだーあれ?
『『『『『だーれだ?』』』』』
その時、私はぞっとしたよ。友達が囲んでいたはずの輪から同じ声が聞こえたんだ。しかも後ろからじゃなかった。輪全体から聞こえてきたんだ。
「……!?」
『だーれだ?』
ここでやっと後から一人の声が聞こえたんだ。
『だーれだ?』
「……分からないよ」
本当に分からなかった。友達の声でもなく、知らない女の子の声だった。
『後ろ向いていいよ』
そう言われておそるおそる向いたんだ。
そうしたら一つ目を紐で浮かしたつばの広い帽子を被った女の子がいたんだ。
「あなたは誰?」
『名無しの女の子よ』
「名前は……?」
『名無しと読んでちょうだい』
そういった女の子は私に近づいてきた。
「どうして名無しさんがいるの。ここは里じゃなかったの?」
そう。さっきまで里の中にいたはずなのに。どこかの草原に私と名無しさんはいた。
『知らないよそんなこと。私はここにいたもの。それより金髪さん。少し遊ばない?』
「……私は里に帰りたいな。それと私はまりさって言うの」
『そう。まりさちゃんね。あなた、妖怪に名乗ってはいけないと教えてもらわなかったの?』
「……妖怪……」
妖怪と出会うなんて微塵も思っていなかった。友達と遊んでいただけなのに。
『まあ、そんなことはいいの。まりさちゃん、あーそびーましょ?』
にこりと私にとっては不気味に見えた笑顔で笑った。
妖怪に触れてはならない。近づいてはならない。そんなこと言われていたはずなのに。なぜかこの時は私が分からなくなっていたんだ。
「うん、良いよ。何して遊ぶの?」
『そうだねえ。二人で遊べる鬼ごっこでもしようかな? 私が鬼で、まりさちゃんが逃げる。捕まったら殺されちゃうよ?』
冗談めかして言う名無しさん。私はその時、冗談と受け止めていたのだがこれは本当に殺す気でいたのかもしれない。
「分かった。逃げるね。ねえ、名無しさん、どこにでも逃げていいの?」
『うん、いいよ。どこにでも逃げて。私はそれを追いかけるから。まりさちゃんが忘れてもね』
そう言った名無しさんは帽子のつばで目元を隠した。
『ほら行くよ。ひとーつ、ふたーつ、みっーつ……』
私は駆け出した。意地でも捕まりたくない。逃げ切って見せると。なぜその時私は妖怪相手に本気になっていたのか。今でも分からないのである。
『……とーお。鬼ごっこ、始め!』
遠くでそう聞こえた。私は隠れながら逃げていく。
名無しさんは音を聞いて追いかけていきていた。
「はっ、はっ、はっ……」
金の髪が荒ぶっている。服の帯も解けかけている。それでも私は走った。走っていった。
後ろでガサガサと音がしている。名無しさんの音だろうか。
そうして必死に逃げていたらいつの間にか里の前まで来ていたのだ。
「……おや、魔理沙ちゃんじゃないか。どうした、そんな乱した格好をして」
里の前の門番さんに声をかけられた。
「えっ……なんで里の前にいるの? えっと……鬼ごっこしてて……ってあれ?」
もう名無しさんが追いかけてくる様子はなかったのだ。
「どうしたんだい? 妖怪にでも化かされたか?」
「……分からないです……」
もう本当にその時は分からなかった。そうして家に帰ると母様に怒られて。みっともないと。
それだけの話だったのに──
間欠泉騒ぎが終わった後の守矢神社に何かあるだとかで行ったら……
『やあっと、つーかまーえた。まりさちゃん。忘れても追いかけるって言ったでしょう?』
「お前……まさか!?」
『やあっと思い出してくれた。まりさちゃん逃げるの上手いんだから。捕まえたけどもう殺さないし大丈夫だよ』
純粋に、怖かった。
忘れた時に追いかけてきた名無しさん。
弾幕という力を持ってしても。
この恐怖には、敵わなかった。
名無しさんは──
『ほら、まりさちゃん、もっとあそびましょう?』
弾幕?
雰囲気が良かったです
姿は子供なこいしちゃんの不気味な内面が引き立っていてぞくぞくしました
これから何をして遊ぶのか…
幻想郷でかごめかごめとかやったらいけないぞ
昔と変わらないこいしちゃんがよかったです