今日、こいしが地霊殿に帰って来ました。
◇◇◇
まぁ、それほど珍しい事でもありません。あの子はいつも唐突に帰って来て、そして唐突に出て行くのですから。
「どこか痛いところはない?怪我は?」
「大丈夫だよ!」
「外でもちゃんとご飯食べてるの?寝床に困ったりしない?身体はちゃんと洗ってるよね?」
「バッチリだね!」
「誰かに迷惑かけたりしてないよね?友達とは上手くいってるの?困ってる事とかあればいつでも言うのよ?」
「もーお姉ちゃんはいつも心配し過ぎだよ!」
「ごめんね、でも元気そうで何よりよ」
……この光景もまた、珍しい物ではありません。心配性な姉だと、本当は呆れられてるのかも知れません。でも、私はそれで良いんです。
だって、家族の事を大事にするのは当たり前なんですもの。
◇◇◇
こいしが居る日は、夕食の後にデザートが少し増えます。あの子はいつも、私が作ったクッキーを食べたがるのです。
「こいしさまー、あーんして下さい!」
「もーしょうがないなー、はいあーん」
「二人共、お行儀が悪いですよ」
「あれ、さとりさまもあーんして欲しいんですか?」
「え?お姉ちゃんあーんして欲しいの?」
「そんな事ありません!ちゃんと食べなさい!」
「「はーい」」
『照れなくても良いのに』
「お空、聞こえてますよ?」
「「ごめんなさーい」」
「なんでこいしも答えてるの?」
「バレちゃった!」
「バレちゃいました!」
「……全く、せめてお燐が来るまで待つべきでしょう?」
「「はーい」」
ペットたちはこいしが来ると、完全にお祭り雰囲気になります。大半はおやつ目当てなのですが、それでもやはり皆こいしに懐いでいます。
お姉さんとしては、皆仲良しで微笑ましい限りです。
◇◇◇
地霊殿の主としての仕事は、ハッキリ言って退屈です。いつも同じ内容の、喧嘩の仲裁や宴会の承認やの繰り返し。モチベーションが保つ筈も無いのです。
「ねぇねぇ、お姉ちゃん」
「こいし?どうしたの?」
「お姉ちゃんとお話したいな、駄目かな?」
「ううん、大丈夫よ」
「やったー!あのねあのね、まず森近さんの話がしたいな!」
「そうね、いっぱい話して良い……あら?」
「さとり様、差し入れを……ありゃ?」
「お燐だ!お燐こんばんは!」
「こんばんはこいし様、さとり様とお話ですか?」
「うん!お燐も一緒にやろうよ!」
「えっ?その、あたいは……」
『せっかく姉妹で話す機会なのに、邪魔したら悪いな……』
「……お燐?」
「は、はいさとり様!」
「お空と他のみんなも呼んで来て頂戴、せっかくだから家族みんなで話しましょう?」
「あ……はい!すぐ呼んで来ます!」
こいしは色んな事を話してくれます。美味しかった甘味処の事、弾幕勝負で勝った事。新しく出来た友達に……好きになった人まで、その全てを私たちに打ち明けてくれる。こいしが私たちの大切な家族であるように、こいしも私たちを『心を開ける』家族だと思ってくれるのです。
私はそれが、嬉しくて嬉しくて仕方がありません。
◇◇◇
私はこいしが己の力を、覚の能力を認めなかった事を未だ納得していません。穢れは全て私が背負い、こいしは覚として自由に生きていけば良かったのだと今も思っています。
でも、あの時のこいしはそんな私に負い目を感じてしまいました。覚の力を恐れてしまい、目を閉じて人々の無意識から逃げてしまったのです。それが私のせいなのは、自分でも分かっています。
それでもこいしに覚として生きて欲しいと思ってる私は、きっと自分勝手なお姉さんなのでしょう。
◇◇◇
でも、最近はこのままでも良いのではないかと思うようになりました。大した理由はありません。とても小さくて、単純な理由です。
「スー……スー……お姉ちゃん……むにゃむにゃ」
「あら……フフッ」
こいしは、昔と違い幸せな顔をするようになりました。人を避け、想いを閉じ込めていたあの子はもう居ません。友達も想いを寄せる人も出来て、今は幸せな顔で眠っています。それだけです……いや、それだけあれば十分なのです。
心が読めなくたって、それがなんだと言うのですか。私はこの子のお姉さんで、お姉さんは妹の事なら何でも分かるんですよ。
◇◇◇
眠りから覚めると、こいしは既に居ませんでした。
「パジャマを脱ぎ捨てる癖はどうにかならないかな……はあ」
そう愚痴をこぼしながらも、私は神様に願いました。どうかあの子が、また元気な姿で帰って来ますように。
……地底に住む者の声って、神に届くのでしょうか?
◇◇◇
昨日はこいしが居る分、いつもより少しだけ長い一日のように感じました。
そしてそれは、私にとってかけがえの無い大切な一日でもあったのです。
◇◇◇
まぁ、それほど珍しい事でもありません。あの子はいつも唐突に帰って来て、そして唐突に出て行くのですから。
「どこか痛いところはない?怪我は?」
「大丈夫だよ!」
「外でもちゃんとご飯食べてるの?寝床に困ったりしない?身体はちゃんと洗ってるよね?」
「バッチリだね!」
「誰かに迷惑かけたりしてないよね?友達とは上手くいってるの?困ってる事とかあればいつでも言うのよ?」
「もーお姉ちゃんはいつも心配し過ぎだよ!」
「ごめんね、でも元気そうで何よりよ」
……この光景もまた、珍しい物ではありません。心配性な姉だと、本当は呆れられてるのかも知れません。でも、私はそれで良いんです。
だって、家族の事を大事にするのは当たり前なんですもの。
◇◇◇
こいしが居る日は、夕食の後にデザートが少し増えます。あの子はいつも、私が作ったクッキーを食べたがるのです。
「こいしさまー、あーんして下さい!」
「もーしょうがないなー、はいあーん」
「二人共、お行儀が悪いですよ」
「あれ、さとりさまもあーんして欲しいんですか?」
「え?お姉ちゃんあーんして欲しいの?」
「そんな事ありません!ちゃんと食べなさい!」
「「はーい」」
『照れなくても良いのに』
「お空、聞こえてますよ?」
「「ごめんなさーい」」
「なんでこいしも答えてるの?」
「バレちゃった!」
「バレちゃいました!」
「……全く、せめてお燐が来るまで待つべきでしょう?」
「「はーい」」
ペットたちはこいしが来ると、完全にお祭り雰囲気になります。大半はおやつ目当てなのですが、それでもやはり皆こいしに懐いでいます。
お姉さんとしては、皆仲良しで微笑ましい限りです。
◇◇◇
地霊殿の主としての仕事は、ハッキリ言って退屈です。いつも同じ内容の、喧嘩の仲裁や宴会の承認やの繰り返し。モチベーションが保つ筈も無いのです。
「ねぇねぇ、お姉ちゃん」
「こいし?どうしたの?」
「お姉ちゃんとお話したいな、駄目かな?」
「ううん、大丈夫よ」
「やったー!あのねあのね、まず森近さんの話がしたいな!」
「そうね、いっぱい話して良い……あら?」
「さとり様、差し入れを……ありゃ?」
「お燐だ!お燐こんばんは!」
「こんばんはこいし様、さとり様とお話ですか?」
「うん!お燐も一緒にやろうよ!」
「えっ?その、あたいは……」
『せっかく姉妹で話す機会なのに、邪魔したら悪いな……』
「……お燐?」
「は、はいさとり様!」
「お空と他のみんなも呼んで来て頂戴、せっかくだから家族みんなで話しましょう?」
「あ……はい!すぐ呼んで来ます!」
こいしは色んな事を話してくれます。美味しかった甘味処の事、弾幕勝負で勝った事。新しく出来た友達に……好きになった人まで、その全てを私たちに打ち明けてくれる。こいしが私たちの大切な家族であるように、こいしも私たちを『心を開ける』家族だと思ってくれるのです。
私はそれが、嬉しくて嬉しくて仕方がありません。
◇◇◇
私はこいしが己の力を、覚の能力を認めなかった事を未だ納得していません。穢れは全て私が背負い、こいしは覚として自由に生きていけば良かったのだと今も思っています。
でも、あの時のこいしはそんな私に負い目を感じてしまいました。覚の力を恐れてしまい、目を閉じて人々の無意識から逃げてしまったのです。それが私のせいなのは、自分でも分かっています。
それでもこいしに覚として生きて欲しいと思ってる私は、きっと自分勝手なお姉さんなのでしょう。
◇◇◇
でも、最近はこのままでも良いのではないかと思うようになりました。大した理由はありません。とても小さくて、単純な理由です。
「スー……スー……お姉ちゃん……むにゃむにゃ」
「あら……フフッ」
こいしは、昔と違い幸せな顔をするようになりました。人を避け、想いを閉じ込めていたあの子はもう居ません。友達も想いを寄せる人も出来て、今は幸せな顔で眠っています。それだけです……いや、それだけあれば十分なのです。
心が読めなくたって、それがなんだと言うのですか。私はこの子のお姉さんで、お姉さんは妹の事なら何でも分かるんですよ。
◇◇◇
眠りから覚めると、こいしは既に居ませんでした。
「パジャマを脱ぎ捨てる癖はどうにかならないかな……はあ」
そう愚痴をこぼしながらも、私は神様に願いました。どうかあの子が、また元気な姿で帰って来ますように。
……地底に住む者の声って、神に届くのでしょうか?
◇◇◇
昨日はこいしが居る分、いつもより少しだけ長い一日のように感じました。
そしてそれは、私にとってかけがえの無い大切な一日でもあったのです。
ふんわりと、優しく包み込む思いが伝わってきてとても良かったです。
一寸だけこい霖入ってるのは気のせいでしょうか…?
妹が帰ってきたことがうれしくてしょうがないのが伝わってくるようでした
お姉ちゃんはいつもこいしを大切にしてますよね
ほのぼの系もいいと思います