こいしの瞳の封印が、少しだけ緩んだようでした。
その心象はうすぼんやりとして、ただ感情だけが僅かにそこから漏れ出していて、つまりは幼子のものとそっくりのものでした。ですから、私は初め背中の方にそれを視て、ははあ、うちのペットの娘だか息子だか知りませんが、幼獣が迷子になってしまったのかしら、と思ったのです。そして振り返り声をかけようとしたのですが、そこにはただこいしが立っているだけだったのでした。
困惑した私を見て、お姉ちゃんどうしたの、とこいしははにかみながら言いました。
「つまり、貴方の瞳の封印が緩んで、その中の心象が僅かばかりに漏れ出している、と」
「多分ね。にしても吃驚したわ、たかだか糸の一縫いが切れたぐらいで、すぐに影響が出るなんて」
私の言葉に、こいしは心底不思議そうな様子で自分の瞳を撫でました。青い糸でぎちぎちに縫い付けられていたその瞳は、改めて見ると、確かに目尻のあたりで一ヶ所、途切れているのが分かりました。
それにしても不思議なことでした。こいしが瞳を閉じてからは既に千年ほども経ったと記憶しているのですが、これまでにその封印が少しばかりも緩んだことなどはありませんでした。それが何故今になって、と問うと、こいしはふむと呟きました。
「そうね、私も驚いたわ。あの二人の人間に、こんなに強く影響されるなんて」
二人の人間、というのはつまり、先日の騒ぎでうちに押し入ってきた巫女と魔法使いのことのようでした。こいしの封印の緩んだのは、彼女らに会って話した影響のようだというのです。
「あの二人、とっても強かったし、それに心を読まれてもあんまり大して気にしないなんて言うんだもの。あんな人なら、心を読むのも良いかもなって、ついそんなことを思っちゃったの」
こいしの言葉に、私は虚を突かれました。
「眼を開く気は、ありませんか」
思わず、本心を漏らしてしまうほどに。
「ねえこいし。お燐もお空も他のペットたちも、私達の眼を疎むことなどありません。地上さえも読心を気にしない者がいるのです。もう、眼を開いてしまってもいいのでは――」
「駄目だよ」
そこからたがが外れたように溢れ出てきた私の言葉に、しかしこいしは首を振りつつ口を挟みました。それに圧されて口を閉ざした私に対して「駄目だよ」ともう一度繰り返し、こいしは私と目を合わせました。
「よしんばそれが本当だとしても、心を読んでいいことなんて、本当に、何一つとしてないんだもの」
私は何も言えませんでした。
分かっていたのです。こいしは根本的に、ひとを信用できないようなのです。恐らくは、私達がまだ地上で過ごしていた頃の、そして私達が地底へ来ることとなる原因となった出来事のせいで。
けれどそれでも、私はこいしに瞳を開いてほしいのです。サトリ妖怪の性として、こいしの心が読みたいという欲求は堪えがたいものがあるのです。最も愛すべき身内の心が、そこだけ穴が開いたように視えないというのは、私としてもサトリ妖怪としても、ひどく苦しいものであるのでした。
「そんなに暗い顔しないでよ。生き別れたのでもないんだからさ」
「似たようなものでしょう。ある日突然、顔が見えなくなったようなものですから」
思わずといった様子で噴き出してみせたこいしに拗ねた様子で言い返してみせると、こいしはぽかんとした顔で私をじっと見てくるので、今度は私が噴き出してしまいました。けれどこいしは、それを気にした様子すら見せませんでした。
「そっか、確かにそうかもね。困っちゃうなあ、説き伏せられちゃった」
真実困ったようにこいしは言って、それからふむと呟きました。
「仕方がないわ。仕方ないから視せてあげる。でも一度だけよ。もう一回なんて言わせないからね」
「本当ですか」
「サトリ妖怪は嘘つかないわ」
「貴方はサトラナイ妖怪でしょうに」
「ばれちゃった」
全く、と溜息を吐いたところで、私はこいしが見えないことに気付きました。
「でも、ほら。私がお姉ちゃんに嘘を吐くとでも?」
こいしのその言葉だけが、何処からか耳元に届きました。
私は昔のことを思い出していました。
それが私達の前に現れたのは、私達がまだ地上に住んでいた頃、それもサトリの集落の中で暮らしていた頃のことでした。当時の私はまだほんの子供でしたし、こいしに至ってはようやく意識がしっかりと根付いてきた頃でした。とは言ってもサトリは他のサトリと記憶を読みあうものですから、精神的には決してそこまで幼くはなかったのですが。
それは疫病でした。いえ、本質は違うのかもしれませんが、それは私にはついぞ分かることはありませんでした。
それはサトリの瞳の視界の内に入り込んだ、もやのようなものでした。それがサトリの視界の中に現れると、心を読むのにひどく気を散らされるようになり、また瞳の酷い痛みに悩まされるようになるのでした。要するに、私達サトリにとっては非常に厄介なものでした。
集落の大人達はこの病気をどうにかしようと、何度も寄合を開いたそうです。そして原因を探る中で、この病の原因はこいしではないかと思い至ったらしいのです。
この頃から既にこいしにはどこか奇妙なところがあって、時折深淵の底を覗いてきたかのような、いえ、むしろ深淵の底に住んでいるかのような、そういう奇妙な価値観を見せることがありました。とはいえそれは別段困ったことというわけではありませんでした。本来ならそれは、単なる奇妙さとして受け入れられ得る程度のもののはずでした。
けれど、時期が悪かったのです。こいしに意識が生まれてきた、丁度その頃にこの病が流行ったのです。悲しいことですが、その二つが結び付けられたのは仕方ないことだったのでしょう。
とにかく、そうしてこいしと、そしてそれを庇った私は集落を追放されました。私達は暫くの放浪を経てこの旧地獄へ辿り着き、そして幾つかの交渉の末に、再び住処を手に入れたのでした。
けれどその時にはもう、こいしの瞳はぎちぎちに糸で縫い付けられていて、決して開くことはありませんでした。
しかし、はて。
そこまで回想に耽ったところで、私は首を傾げました。
私の記憶は確かに、こいしが旅道中で瞳を閉じたと覚えているようなのですが、しかしそれが具体的にはいつ頃だったかと問われると、まるで思い出せなかったのです。
私がその、今にも破裂しそうな風船のような心象を視たのは、それから数日が経った頃でした。
それは初めて視る種類の心象でした。今まで私の視てきた心象の、そのどれとも異なる奇妙な心象がそこにありました。私にはそれが誰のものなのかも、全く判別がつきませんでした。
「お姉ちゃん」
心象と同じ方向から声がしました。振り向くとそこにこいしがいました。きつく閉ざされていたはずのその瞳は、既に殆どの糸を抜き取られていて、今や中央を通る一本だけとなっていました。
つまり、それはどうやらこいしの心象であったようなのでした。
「どうしたのですか」
「どうしたもこうしたもないわ。お姉ちゃんに心を視せてあげに来たの」
え、と思わず漏らした私の声を聞いているのかいないのか、こいしは微笑んでみせました。
「わざわざ、というわけじゃないのよ。封印が少し緩んじゃって、一度解いて閉じ直さないといけなかったの。これは単なるそのついでよ」
私は言葉が出ませんでした。こいしが心を見せてくれるという話は確かに記憶にありましたが、私はそれをいつもの冗談と思っていたのです。よしんばそれが本心の言葉だったとしても、これほどすぐにその機会が訪れるとは欠片も思っていなかったのです。
私は必死に心を落ち着けて、慌てないようにこいしに向けて焦点を合わせて、そうしているうちにこいしは瞳に手を添えたのです。
「だからお姉ちゃん、念押すけれど、一回だけだからね。よく見てて、片時も目を離さないでね」
そうして。
こいしはそう言って、瞳を縫い付けていた糸の、その最後の一本を抜き取って。
途端に私の眼前には、無限の如き心象が花咲いたのでした。
それは、断末魔でした。無数の生命の、その終焉の証でした。
それは、嗚咽でした。無数の生命の、その原初の産声でした。
そこには世界がありました。連綿と紡がれる数々の命の本能の叫びの、そのすべてがそこにありました。
私はあまりに驚き圧倒されて、二、三度たたらを踏みました。
けれど、眼が慣れてくるに従って、私の心には困惑が生じました。
そこには本来あるべきものが、こいし自身の心象というものがどうにも見当たらないのです。
私は混乱しました。
まさかこいしには心象がないのではないのかと想像し、
慌ててそれを振り払いました。
同時に私の第三の瞳が、酷い痛みを訴えました。
心象の量が多すぎて、瞳に負荷がかかり過ぎているのです。
私は必死で眼を凝らしました。
きっと私はこいしの心象を見落としているに違いないと、
そう考えたのです。
根拠はありませんでした。
ほとんど妄信の域でした。
けれど私は必死で眼を凝らし続けたのです。
瞳の痛みは激しさを増し続けました。
けれど私は視続けるのを止めませんでした。
そして漸く私はそれを見つけました。
ひどく小さな心象でした。
確かにこいしの心でした。
根拠はなくとも、
私には分かりました。
私は更に眼を凝らし、
その心象を
探りました。
そこに
映ったのは
私への
強烈な
愛
と
感
謝
こいしの声が聞こえた気がして、私は目を覚ましました。
第三の眼が酷い痛みを訴えました。昨日は随分と無理をしましたから当然でしょう、と思ったところで私は首を傾げました。はて、昨日の私は一体何をやったのでしたか、と。頭を何度巡らせてみても私は結局何一つ思い出せませんでした。
廊下に出たところで、私はこいしとぶつかりかけました。危ないなあと笑うこいしの瞳はいつものようにぎちぎちに糸で縫い付けられていて、そこからは僅かばかりの心象も見出すことはできませんでした。
けれど私はもう、こいしの心を読みたいというあの強い欲求を感じることはありませんでした。不思議なことだとは思いましたが、けれどそれを思うたびに私の中から暖かい心象が溢れてくるものですから、まあ、きっと悪いことではないのでしょう。
その心象はうすぼんやりとして、ただ感情だけが僅かにそこから漏れ出していて、つまりは幼子のものとそっくりのものでした。ですから、私は初め背中の方にそれを視て、ははあ、うちのペットの娘だか息子だか知りませんが、幼獣が迷子になってしまったのかしら、と思ったのです。そして振り返り声をかけようとしたのですが、そこにはただこいしが立っているだけだったのでした。
困惑した私を見て、お姉ちゃんどうしたの、とこいしははにかみながら言いました。
「つまり、貴方の瞳の封印が緩んで、その中の心象が僅かばかりに漏れ出している、と」
「多分ね。にしても吃驚したわ、たかだか糸の一縫いが切れたぐらいで、すぐに影響が出るなんて」
私の言葉に、こいしは心底不思議そうな様子で自分の瞳を撫でました。青い糸でぎちぎちに縫い付けられていたその瞳は、改めて見ると、確かに目尻のあたりで一ヶ所、途切れているのが分かりました。
それにしても不思議なことでした。こいしが瞳を閉じてからは既に千年ほども経ったと記憶しているのですが、これまでにその封印が少しばかりも緩んだことなどはありませんでした。それが何故今になって、と問うと、こいしはふむと呟きました。
「そうね、私も驚いたわ。あの二人の人間に、こんなに強く影響されるなんて」
二人の人間、というのはつまり、先日の騒ぎでうちに押し入ってきた巫女と魔法使いのことのようでした。こいしの封印の緩んだのは、彼女らに会って話した影響のようだというのです。
「あの二人、とっても強かったし、それに心を読まれてもあんまり大して気にしないなんて言うんだもの。あんな人なら、心を読むのも良いかもなって、ついそんなことを思っちゃったの」
こいしの言葉に、私は虚を突かれました。
「眼を開く気は、ありませんか」
思わず、本心を漏らしてしまうほどに。
「ねえこいし。お燐もお空も他のペットたちも、私達の眼を疎むことなどありません。地上さえも読心を気にしない者がいるのです。もう、眼を開いてしまってもいいのでは――」
「駄目だよ」
そこからたがが外れたように溢れ出てきた私の言葉に、しかしこいしは首を振りつつ口を挟みました。それに圧されて口を閉ざした私に対して「駄目だよ」ともう一度繰り返し、こいしは私と目を合わせました。
「よしんばそれが本当だとしても、心を読んでいいことなんて、本当に、何一つとしてないんだもの」
私は何も言えませんでした。
分かっていたのです。こいしは根本的に、ひとを信用できないようなのです。恐らくは、私達がまだ地上で過ごしていた頃の、そして私達が地底へ来ることとなる原因となった出来事のせいで。
けれどそれでも、私はこいしに瞳を開いてほしいのです。サトリ妖怪の性として、こいしの心が読みたいという欲求は堪えがたいものがあるのです。最も愛すべき身内の心が、そこだけ穴が開いたように視えないというのは、私としてもサトリ妖怪としても、ひどく苦しいものであるのでした。
「そんなに暗い顔しないでよ。生き別れたのでもないんだからさ」
「似たようなものでしょう。ある日突然、顔が見えなくなったようなものですから」
思わずといった様子で噴き出してみせたこいしに拗ねた様子で言い返してみせると、こいしはぽかんとした顔で私をじっと見てくるので、今度は私が噴き出してしまいました。けれどこいしは、それを気にした様子すら見せませんでした。
「そっか、確かにそうかもね。困っちゃうなあ、説き伏せられちゃった」
真実困ったようにこいしは言って、それからふむと呟きました。
「仕方がないわ。仕方ないから視せてあげる。でも一度だけよ。もう一回なんて言わせないからね」
「本当ですか」
「サトリ妖怪は嘘つかないわ」
「貴方はサトラナイ妖怪でしょうに」
「ばれちゃった」
全く、と溜息を吐いたところで、私はこいしが見えないことに気付きました。
「でも、ほら。私がお姉ちゃんに嘘を吐くとでも?」
こいしのその言葉だけが、何処からか耳元に届きました。
私は昔のことを思い出していました。
それが私達の前に現れたのは、私達がまだ地上に住んでいた頃、それもサトリの集落の中で暮らしていた頃のことでした。当時の私はまだほんの子供でしたし、こいしに至ってはようやく意識がしっかりと根付いてきた頃でした。とは言ってもサトリは他のサトリと記憶を読みあうものですから、精神的には決してそこまで幼くはなかったのですが。
それは疫病でした。いえ、本質は違うのかもしれませんが、それは私にはついぞ分かることはありませんでした。
それはサトリの瞳の視界の内に入り込んだ、もやのようなものでした。それがサトリの視界の中に現れると、心を読むのにひどく気を散らされるようになり、また瞳の酷い痛みに悩まされるようになるのでした。要するに、私達サトリにとっては非常に厄介なものでした。
集落の大人達はこの病気をどうにかしようと、何度も寄合を開いたそうです。そして原因を探る中で、この病の原因はこいしではないかと思い至ったらしいのです。
この頃から既にこいしにはどこか奇妙なところがあって、時折深淵の底を覗いてきたかのような、いえ、むしろ深淵の底に住んでいるかのような、そういう奇妙な価値観を見せることがありました。とはいえそれは別段困ったことというわけではありませんでした。本来ならそれは、単なる奇妙さとして受け入れられ得る程度のもののはずでした。
けれど、時期が悪かったのです。こいしに意識が生まれてきた、丁度その頃にこの病が流行ったのです。悲しいことですが、その二つが結び付けられたのは仕方ないことだったのでしょう。
とにかく、そうしてこいしと、そしてそれを庇った私は集落を追放されました。私達は暫くの放浪を経てこの旧地獄へ辿り着き、そして幾つかの交渉の末に、再び住処を手に入れたのでした。
けれどその時にはもう、こいしの瞳はぎちぎちに糸で縫い付けられていて、決して開くことはありませんでした。
しかし、はて。
そこまで回想に耽ったところで、私は首を傾げました。
私の記憶は確かに、こいしが旅道中で瞳を閉じたと覚えているようなのですが、しかしそれが具体的にはいつ頃だったかと問われると、まるで思い出せなかったのです。
私がその、今にも破裂しそうな風船のような心象を視たのは、それから数日が経った頃でした。
それは初めて視る種類の心象でした。今まで私の視てきた心象の、そのどれとも異なる奇妙な心象がそこにありました。私にはそれが誰のものなのかも、全く判別がつきませんでした。
「お姉ちゃん」
心象と同じ方向から声がしました。振り向くとそこにこいしがいました。きつく閉ざされていたはずのその瞳は、既に殆どの糸を抜き取られていて、今や中央を通る一本だけとなっていました。
つまり、それはどうやらこいしの心象であったようなのでした。
「どうしたのですか」
「どうしたもこうしたもないわ。お姉ちゃんに心を視せてあげに来たの」
え、と思わず漏らした私の声を聞いているのかいないのか、こいしは微笑んでみせました。
「わざわざ、というわけじゃないのよ。封印が少し緩んじゃって、一度解いて閉じ直さないといけなかったの。これは単なるそのついでよ」
私は言葉が出ませんでした。こいしが心を見せてくれるという話は確かに記憶にありましたが、私はそれをいつもの冗談と思っていたのです。よしんばそれが本心の言葉だったとしても、これほどすぐにその機会が訪れるとは欠片も思っていなかったのです。
私は必死に心を落ち着けて、慌てないようにこいしに向けて焦点を合わせて、そうしているうちにこいしは瞳に手を添えたのです。
「だからお姉ちゃん、念押すけれど、一回だけだからね。よく見てて、片時も目を離さないでね」
そうして。
こいしはそう言って、瞳を縫い付けていた糸の、その最後の一本を抜き取って。
途端に私の眼前には、無限の如き心象が花咲いたのでした。
それは、断末魔でした。無数の生命の、その終焉の証でした。
それは、嗚咽でした。無数の生命の、その原初の産声でした。
そこには世界がありました。連綿と紡がれる数々の命の本能の叫びの、そのすべてがそこにありました。
私はあまりに驚き圧倒されて、二、三度たたらを踏みました。
けれど、眼が慣れてくるに従って、私の心には困惑が生じました。
そこには本来あるべきものが、こいし自身の心象というものがどうにも見当たらないのです。
私は混乱しました。
まさかこいしには心象がないのではないのかと想像し、
慌ててそれを振り払いました。
同時に私の第三の瞳が、酷い痛みを訴えました。
心象の量が多すぎて、瞳に負荷がかかり過ぎているのです。
私は必死で眼を凝らしました。
きっと私はこいしの心象を見落としているに違いないと、
そう考えたのです。
根拠はありませんでした。
ほとんど妄信の域でした。
けれど私は必死で眼を凝らし続けたのです。
瞳の痛みは激しさを増し続けました。
けれど私は視続けるのを止めませんでした。
そして漸く私はそれを見つけました。
ひどく小さな心象でした。
確かにこいしの心でした。
根拠はなくとも、
私には分かりました。
私は更に眼を凝らし、
その心象を
探りました。
そこに
映ったのは
私への
強烈な
愛
と
感
謝
こいしの声が聞こえた気がして、私は目を覚ましました。
第三の眼が酷い痛みを訴えました。昨日は随分と無理をしましたから当然でしょう、と思ったところで私は首を傾げました。はて、昨日の私は一体何をやったのでしたか、と。頭を何度巡らせてみても私は結局何一つ思い出せませんでした。
廊下に出たところで、私はこいしとぶつかりかけました。危ないなあと笑うこいしの瞳はいつものようにぎちぎちに糸で縫い付けられていて、そこからは僅かばかりの心象も見出すことはできませんでした。
けれど私はもう、こいしの心を読みたいというあの強い欲求を感じることはありませんでした。不思議なことだとは思いましたが、けれどそれを思うたびに私の中から暖かい心象が溢れてくるものですから、まあ、きっと悪いことではないのでしょう。
瞳を閉ざしたとしても、それでもさとりへの感謝、愛情がとても良かったです。
本当に姉は分からぬものなのですね。
美しく澄んだ姉妹の愛を感じたように思います。
とても良かったです。
なんだよーおもしれーじゃねーかよーこのやろう!
綺麗で、素敵で、良かったです。好きです
こいしの中にはさとりですら耐えられないほどの心象が渦巻いているというのですね
深淵の一端を垣間見た気分になりました
またこいしが目を閉じたタイミングとか、誰が縫い付けたのかなど考えが止まらないです。
上の疑問とか、こいしの台詞と生い立ちと心象で何とか判断しようと、こいしの心情を探るのが読者の私も難しいのですごくお姉ちゃんに感情移入できました!
救われて欲しいですね