「姉さん。今日も寒いね」
「そうね。でも明日はきっと晴れるわ」
「本当? どうしてそんなことがわかるの?」
「そんな予感がするのよ」
「なんだ。ただの予感か」
「でも神様の予感って当たると思わない?」
「言われてみればそうかもしれないわね」
「だからきっと明日は暖かくなるわ」
――次の日
「姉さん。今日も寒いね」
「そうね。外は雪だわ」
「……昨日、明日は暖かくなるなんて言ったの誰だっけ?」
「私よ」
「姉さんのうそつき! 全然暖かくないじゃない!」
「あら、人聞き悪いわね。当然じゃない。私は神様は神様でも紅葉の神様だもの。天気の事までは関知出来ないわ」
「そんな開き直られてもなぁ……」
「ねえ、穣子。開き直るって、ある意味究極の自己防衛法だと思わない? 相手は何も言えなくなるんだもの」
「でも、その代わり自分の株を落とすことになるけどね」
「そうね。その通りよ」
わかっててやるなんてたち悪い。
と、思わず呆れてしまう穣子だった。
今日も寒い幻想郷。秋姉妹の二人は相も変わらず暇を持て余している。
「姉さん! 大変よ! こっち来て!」
朝、穣子は慌てて奥の部屋にいる静葉に呼びかける。
「何? また寝ぼけて床でも踏み抜いたの?」
「違うわよっ! 私そんなに寝相悪くないもん!」
と彼女が顔を赤くさせて地団駄を踏むと、床がミシミシと悲鳴を上げる。
その音を聞いた静葉が思わず告げる。
「もう、言ってるそばから床に負担をかけないで頂戴。ただでさえこの家壊れやすいんだから。で、何が大変なの?」
「戸よ! 戸が開かないのよ!」
そう言いながら穣子は玄関の戸を開けようとするがウンともスンとも言わない。
なるほど確かに壊れているらしい。
「あらあら。ちょっとどけなさい」
と言って静葉は穣子を押し退けて戸の前に立つ。
「大丈夫。こう言うときにとっておきの奥義があるわ」
「とっておきの奥義……?」
怪訝そうな表情を浮かべる穣子に向かって静葉は言い放った。
「さあ穣子。奥の倉庫からチェンソー持ってきなさい」
「ちょっと待てぃ!?」
「にとりがこの前持ってきてくれた奴よ。実演してるの二人で見たでしょ? 自動ノコギリって言った方がわかるかしら」
「いや、わかってるわよ。そうじゃなくて、壊れちゃうでしょ!? そんなもの使ったら戸が」
穣子の言葉を聞いた静葉はやれやれと言った調子で首を横に振る。
「わかってないわね穣子。形あるものはいつか壊れる運命にあるものなの。この扉は今日がその日だったのよ」
「それじゃあ私がそれを全力で阻止するわ! 戸がなくなったら寒いし!」
「まぁ、穣子ったらこの戸の運命を変えようとするなんて、神様にでもなったつもりなの?」
「いや、あのー。一応私、神様なんだけど……」
「あら、そう言えばそうだったわね。すっかり忘れてたわ」
「忘れるな! 凄く大切な事でしょ!? 私の存在意義の根底に関わるし」
「そうね。穣子から神を取ったらただの芋子になってしまうものね」
「芋子言うな! この枯葉!」
などと、枯葉と芋子……じゃなくて静葉と穣子が戸の前でぎゃーぎゃーと言い争いをしていると、体の底から凍り付くような寒風と雪が家の中に入り込んできたので思わず二人は悲鳴を上げてしまう。
一体どこから入り込んできたのかと二人が辺りを見回すと、廊下の納戸が人の出入り出来る程度に開いているのに気づく。
「ちょっと姉さん! 納戸開けっぱなしにしないでよ!? 凍死させる気!?」
「人聞きが悪いわね。かわいい妹にそんなことするわけないでしょ」
静葉はさらりと言い返すと、何かの気配がする事に気づき耳を澄ませる。
「……穣子。この家に何か入り込んでるわよ」
「え? まさか泥棒?」
「こんな山奥の一軒家にわざわざ盗みに入る物好きな泥棒なんているわけないでしょう。違うわ。これは妖怪の類いね」
「え。そうなの? 私にはわからないんだけど……」
「しっ。どうやら台所の方にいるわね」
二人が恐る恐る台所の方に行ってみると、そこにはなんとのんきにキュウリをかじっている河城にとりの姿があった。
「ちょっとあんた。こんなとこで何してんのよ!」
「あ、こんにちは。お二人さん。いやさー。入り口から入ろうと思ったんだけど戸が開かなくてさー。だから納戸から失礼したよ」
などと言いつつ彼女はキュウリをばりばりぼりぼりとかじる。
「ちょっと! それうちのキュウリよ!? 勝手に食べないでよ!」
「ごめんごめん。美味しそうだったからつい。食べかけでいいなら返すよ?」
「帰れっ!!?」
思わず穣子は彼女を外へ放り出す。
外は相変わらず雪が舞っているようで、家の外からは「さむいよさむいよひもじいよー」と河童の呻く声が聞こえてくるが二人は無視することにした。
そして次の日、二人が外に出ると彼女は氷付けになっていた。
見事なまでにカチンコチンである。
それこそそのまま釘が打てるのではないかと思うくらいだ。
「にとりーいきてるー?」
穣子が頬をぺちぺちと叩くが返事はない。
「うーん。お湯でもかけてあげようかしら?」
と穣子が家に戻ろうとすると、静葉が呼び止める。
「大丈夫よ。穣子」
「え? なんで」
「今日は暖かくなるわ」
「なんでそんなことわかるの?」
「今はそう言う時期だからよ」
「そうなの?」
「そうよ」
「ふーん。わかったわ。じゃあ放置しておけばいいって事ね」
「ええ。そうよ」
と言うことで二人は氷付けの彼女を放って家の中に帰ることにした。
しかし、待てども暮らせども気温はなかなか上がらない。
二人は倉庫にしまっておいた木の実を並べて眺めたり煎って食べたりしているうちににとりのことなどすっかり忘れてしまった。
そして次の日の朝。穣子が外に出ると冷たくなったにとりを発見する。
それを見て穣子はようやく彼女のことを思い出し姉を呼び出す。
「姉さん! これ見てよ!」
「あらあら。にとりったらすっかり冷たくなってかわいそうに」
「そうじゃなくて、氷溶けてないじゃん! 姉さんの嘘つき!」
「あら人聞き悪いわね。私は氷が溶けるとまでは言ってないわよ」
「それに昨日全然暖かくならなかったし! 姉さんの嘘つきパート2!」
「あらあら、人聞き悪いわね第二弾だわ。前も言ったでしょう。私は天気までは関知出来ないって」
「だからそこで開き直るなっての! この枯れ葉!」
「口が悪いわよ。だからあなたはいつまでたっても芋子なのよ」
「芋子って言うな!!」
などと二人がピースカギャースカ言い争いをしているうちにお天道様はぐんぐん上り気温もぐんぐん上がっていく。
すると彼女の氷もみるみるとけていき。
「……ぷはー! あー死ぬかと思った! ったくひどいじゃないか! あんな寒い中外に放り出すなんて!」
「にとり!? あんた生きてたの?」
「あたぼうよ。河童の生命力を舐めてもらっちゃ困るね! 例え凍り付けになっても少しくらいなら平気なのさ!」
「しぶとい奴ねぇ」
穣子は呆れた様子でにとりを見やる。
それを意に介せずにとりは周りを見回す。
「それにしてもずいぶん今日は暖かいねぇ」
「そういえばそうね……っってあれ? 姉さんは?」
と、そこに手かごを持った姉が姿を現す。
その籠の中には何やら緑のものが見える。
「見なさい穣子。もう春は近いわよ」
彼女がほらと籠の中身を見せるとそこにはふきのとうが沢山入っていた。
「おおー。そんじゃ今夜はふきのとうの天ぷらにでもしましょうか」
「おひたしもお願いね。穣子」
「やったー! 私も食べてってもいい?」
「ええ。もちろんよ。誰かさんが氷付けにしてしまったお詫びにね」
と、静葉は穣子を見やると不敵な笑みを見せる。
穣子は思わずばつが悪そうに目をそらす。
「……そ、それはそうとあれよね。春って事は花見の季節って事よね。今年も妖怪の山お花見大会とかやるのかしら?」
「あ! 目だけでなく話もそらそうとしたぞ。この神様」
「まったくしょうがない子ね」
「もういいじゃないよー……」
などと言いながら三人は家の中に入ろうとするが、玄関が開かない。
「あ、そういえばすっかり忘れてた! 玄関の戸壊れてたんだっけ!」
「仕方ないわね。納戸から入りましょ……」
「ちょーっと待ったぁ! ここは私に任せなさい!」
二人を呼び止めるとにとりは背中のリュックから何やら鉄の筒のようなものを取り出すと肩に担ぐ。
「ちょっ!? あんた何する気!?」
「開かないドアは叩き続けるより壊すのが一番! にとりバズーカー発射!」
「うわなにするやめ」
穣子が止める間もなくバズーカーは発射され戸は無情にも粉々に砕け散ってしまった。
「よし! これで悪は滅びた!」
「あらあら。やっぱりこの戸はどのみち壊れる運命だったのね」
「このバカ河童ぁっ!! 戸がなくちゃ寒いでしょ!? 姉さんも笑ってないで何か言ってやってよ!!」
「大丈夫よ。穣子」
「え?」
「明日も暖かいわ」
「そうなの?」
「ええ。今はそういう時期なの。三寒四温って言ってね。寒いと暖かいを繰り返して段々春になっていくのよ」
「ふーん……?」
いまいち飲み込めてない様子の穣子を尻目に静葉はニヤリと笑みを浮かべる。
と、その時辺りに生暖かい一陣の風が吹き抜けていく。
それは春の訪れを感じさせるには十分過ぎるくらい爽やかな風だった。
ちなみに次の日は雪だった。
「そうね。でも明日はきっと晴れるわ」
「本当? どうしてそんなことがわかるの?」
「そんな予感がするのよ」
「なんだ。ただの予感か」
「でも神様の予感って当たると思わない?」
「言われてみればそうかもしれないわね」
「だからきっと明日は暖かくなるわ」
――次の日
「姉さん。今日も寒いね」
「そうね。外は雪だわ」
「……昨日、明日は暖かくなるなんて言ったの誰だっけ?」
「私よ」
「姉さんのうそつき! 全然暖かくないじゃない!」
「あら、人聞き悪いわね。当然じゃない。私は神様は神様でも紅葉の神様だもの。天気の事までは関知出来ないわ」
「そんな開き直られてもなぁ……」
「ねえ、穣子。開き直るって、ある意味究極の自己防衛法だと思わない? 相手は何も言えなくなるんだもの」
「でも、その代わり自分の株を落とすことになるけどね」
「そうね。その通りよ」
わかっててやるなんてたち悪い。
と、思わず呆れてしまう穣子だった。
今日も寒い幻想郷。秋姉妹の二人は相も変わらず暇を持て余している。
「姉さん! 大変よ! こっち来て!」
朝、穣子は慌てて奥の部屋にいる静葉に呼びかける。
「何? また寝ぼけて床でも踏み抜いたの?」
「違うわよっ! 私そんなに寝相悪くないもん!」
と彼女が顔を赤くさせて地団駄を踏むと、床がミシミシと悲鳴を上げる。
その音を聞いた静葉が思わず告げる。
「もう、言ってるそばから床に負担をかけないで頂戴。ただでさえこの家壊れやすいんだから。で、何が大変なの?」
「戸よ! 戸が開かないのよ!」
そう言いながら穣子は玄関の戸を開けようとするがウンともスンとも言わない。
なるほど確かに壊れているらしい。
「あらあら。ちょっとどけなさい」
と言って静葉は穣子を押し退けて戸の前に立つ。
「大丈夫。こう言うときにとっておきの奥義があるわ」
「とっておきの奥義……?」
怪訝そうな表情を浮かべる穣子に向かって静葉は言い放った。
「さあ穣子。奥の倉庫からチェンソー持ってきなさい」
「ちょっと待てぃ!?」
「にとりがこの前持ってきてくれた奴よ。実演してるの二人で見たでしょ? 自動ノコギリって言った方がわかるかしら」
「いや、わかってるわよ。そうじゃなくて、壊れちゃうでしょ!? そんなもの使ったら戸が」
穣子の言葉を聞いた静葉はやれやれと言った調子で首を横に振る。
「わかってないわね穣子。形あるものはいつか壊れる運命にあるものなの。この扉は今日がその日だったのよ」
「それじゃあ私がそれを全力で阻止するわ! 戸がなくなったら寒いし!」
「まぁ、穣子ったらこの戸の運命を変えようとするなんて、神様にでもなったつもりなの?」
「いや、あのー。一応私、神様なんだけど……」
「あら、そう言えばそうだったわね。すっかり忘れてたわ」
「忘れるな! 凄く大切な事でしょ!? 私の存在意義の根底に関わるし」
「そうね。穣子から神を取ったらただの芋子になってしまうものね」
「芋子言うな! この枯葉!」
などと、枯葉と芋子……じゃなくて静葉と穣子が戸の前でぎゃーぎゃーと言い争いをしていると、体の底から凍り付くような寒風と雪が家の中に入り込んできたので思わず二人は悲鳴を上げてしまう。
一体どこから入り込んできたのかと二人が辺りを見回すと、廊下の納戸が人の出入り出来る程度に開いているのに気づく。
「ちょっと姉さん! 納戸開けっぱなしにしないでよ!? 凍死させる気!?」
「人聞きが悪いわね。かわいい妹にそんなことするわけないでしょ」
静葉はさらりと言い返すと、何かの気配がする事に気づき耳を澄ませる。
「……穣子。この家に何か入り込んでるわよ」
「え? まさか泥棒?」
「こんな山奥の一軒家にわざわざ盗みに入る物好きな泥棒なんているわけないでしょう。違うわ。これは妖怪の類いね」
「え。そうなの? 私にはわからないんだけど……」
「しっ。どうやら台所の方にいるわね」
二人が恐る恐る台所の方に行ってみると、そこにはなんとのんきにキュウリをかじっている河城にとりの姿があった。
「ちょっとあんた。こんなとこで何してんのよ!」
「あ、こんにちは。お二人さん。いやさー。入り口から入ろうと思ったんだけど戸が開かなくてさー。だから納戸から失礼したよ」
などと言いつつ彼女はキュウリをばりばりぼりぼりとかじる。
「ちょっと! それうちのキュウリよ!? 勝手に食べないでよ!」
「ごめんごめん。美味しそうだったからつい。食べかけでいいなら返すよ?」
「帰れっ!!?」
思わず穣子は彼女を外へ放り出す。
外は相変わらず雪が舞っているようで、家の外からは「さむいよさむいよひもじいよー」と河童の呻く声が聞こえてくるが二人は無視することにした。
そして次の日、二人が外に出ると彼女は氷付けになっていた。
見事なまでにカチンコチンである。
それこそそのまま釘が打てるのではないかと思うくらいだ。
「にとりーいきてるー?」
穣子が頬をぺちぺちと叩くが返事はない。
「うーん。お湯でもかけてあげようかしら?」
と穣子が家に戻ろうとすると、静葉が呼び止める。
「大丈夫よ。穣子」
「え? なんで」
「今日は暖かくなるわ」
「なんでそんなことわかるの?」
「今はそう言う時期だからよ」
「そうなの?」
「そうよ」
「ふーん。わかったわ。じゃあ放置しておけばいいって事ね」
「ええ。そうよ」
と言うことで二人は氷付けの彼女を放って家の中に帰ることにした。
しかし、待てども暮らせども気温はなかなか上がらない。
二人は倉庫にしまっておいた木の実を並べて眺めたり煎って食べたりしているうちににとりのことなどすっかり忘れてしまった。
そして次の日の朝。穣子が外に出ると冷たくなったにとりを発見する。
それを見て穣子はようやく彼女のことを思い出し姉を呼び出す。
「姉さん! これ見てよ!」
「あらあら。にとりったらすっかり冷たくなってかわいそうに」
「そうじゃなくて、氷溶けてないじゃん! 姉さんの嘘つき!」
「あら人聞き悪いわね。私は氷が溶けるとまでは言ってないわよ」
「それに昨日全然暖かくならなかったし! 姉さんの嘘つきパート2!」
「あらあら、人聞き悪いわね第二弾だわ。前も言ったでしょう。私は天気までは関知出来ないって」
「だからそこで開き直るなっての! この枯れ葉!」
「口が悪いわよ。だからあなたはいつまでたっても芋子なのよ」
「芋子って言うな!!」
などと二人がピースカギャースカ言い争いをしているうちにお天道様はぐんぐん上り気温もぐんぐん上がっていく。
すると彼女の氷もみるみるとけていき。
「……ぷはー! あー死ぬかと思った! ったくひどいじゃないか! あんな寒い中外に放り出すなんて!」
「にとり!? あんた生きてたの?」
「あたぼうよ。河童の生命力を舐めてもらっちゃ困るね! 例え凍り付けになっても少しくらいなら平気なのさ!」
「しぶとい奴ねぇ」
穣子は呆れた様子でにとりを見やる。
それを意に介せずにとりは周りを見回す。
「それにしてもずいぶん今日は暖かいねぇ」
「そういえばそうね……っってあれ? 姉さんは?」
と、そこに手かごを持った姉が姿を現す。
その籠の中には何やら緑のものが見える。
「見なさい穣子。もう春は近いわよ」
彼女がほらと籠の中身を見せるとそこにはふきのとうが沢山入っていた。
「おおー。そんじゃ今夜はふきのとうの天ぷらにでもしましょうか」
「おひたしもお願いね。穣子」
「やったー! 私も食べてってもいい?」
「ええ。もちろんよ。誰かさんが氷付けにしてしまったお詫びにね」
と、静葉は穣子を見やると不敵な笑みを見せる。
穣子は思わずばつが悪そうに目をそらす。
「……そ、それはそうとあれよね。春って事は花見の季節って事よね。今年も妖怪の山お花見大会とかやるのかしら?」
「あ! 目だけでなく話もそらそうとしたぞ。この神様」
「まったくしょうがない子ね」
「もういいじゃないよー……」
などと言いながら三人は家の中に入ろうとするが、玄関が開かない。
「あ、そういえばすっかり忘れてた! 玄関の戸壊れてたんだっけ!」
「仕方ないわね。納戸から入りましょ……」
「ちょーっと待ったぁ! ここは私に任せなさい!」
二人を呼び止めるとにとりは背中のリュックから何やら鉄の筒のようなものを取り出すと肩に担ぐ。
「ちょっ!? あんた何する気!?」
「開かないドアは叩き続けるより壊すのが一番! にとりバズーカー発射!」
「うわなにするやめ」
穣子が止める間もなくバズーカーは発射され戸は無情にも粉々に砕け散ってしまった。
「よし! これで悪は滅びた!」
「あらあら。やっぱりこの戸はどのみち壊れる運命だったのね」
「このバカ河童ぁっ!! 戸がなくちゃ寒いでしょ!? 姉さんも笑ってないで何か言ってやってよ!!」
「大丈夫よ。穣子」
「え?」
「明日も暖かいわ」
「そうなの?」
「ええ。今はそういう時期なの。三寒四温って言ってね。寒いと暖かいを繰り返して段々春になっていくのよ」
「ふーん……?」
いまいち飲み込めてない様子の穣子を尻目に静葉はニヤリと笑みを浮かべる。
と、その時辺りに生暖かい一陣の風が吹き抜けていく。
それは春の訪れを感じさせるには十分過ぎるくらい爽やかな風だった。
ちなみに次の日は雪だった。
テンポよくて大好きです!
戸〈解せぬ!
静葉様がマイペースで神様っぽかったです
読んでいて楽しかったです