Coolier - 新生・東方創想話

煌々と

2019/03/01 19:00:04
最終更新
サイズ
1.79KB
ページ数
1
閲覧数
1024
評価数
4/7
POINT
440
Rate
11.63

分類タグ

火。
それは古代から人の象徴として扱われ、神と交信するためのものとして扱われていたといわれている。私が八卦炉で灯した煌々と燃え上がる炎を見て思う。
人はこの火でどれほど文明を発展させたのか。火が無い時代とはどれほど違ったのか。それは想像に難くない。
それがあればこの身を温めることが、ただの水をお湯に、食べることが困難なものを食べられるようにしたり。
人ともに歩むものなのだろう……この発展した(外よりは発展していないと思うが)時代でも火は必要なのだから。
八卦炉の炎の火力を弱める。机の上に置いていたろうそくに火を移す。燃え移ったと見計らって八卦炉の火を消した。
夜が落ちるこの時間。この森はもう真っ暗になる。
ふわ、とろうそくは一定の揺らぎを示している。
弱々しくも部屋を照らしている。私は意識を切り替える。

火に精神を集中させるといつものが見え始める──


~~~~~


「母様。どうかなさったのですか」
この中で見えるのは幼少の私。母の足にまとわりついて、母の寂しそうな顔を見上げているのだ。
「ああ、魔理沙。なんでもないよ」
いつもそう言って悲しそうに私の頭を撫でた母。撫でている視線の先には家に火が燃え広がった跡があるのだ。

ここの人は恨まれていたらしくて放火されたらしいよ。
確か霧雨店の子じゃなかったかい。
そうらしいけど恨みは個人的なものらしくてねぇ。

ヒソヒソと周りの人達の声が聞こえる。人の噂はなんとやら。
この中の私はまだ母を見ている。幼少の私には分からなかったが、母は泣いていたのだろうか。

その夜。私は一人で提灯の火を見ていた。
ただ、ゆらゆらと揺れる火が綺麗だと思った。それを言いたくて私は提灯を持って母の部屋に行ったのだ。
「母様、母様」
「こんな夜更けにどうしたの魔理沙……」
提灯を持って私は無邪気に残酷にこう言ったのだ──

『この火がとても──』



~~~~~



「『──綺麗ですよ』」

フッと集中が切れた。
ろうそくは一割ほど減っていた。
我ながら、なんということを言ったのだろうか。色々分かるようになってから思うものだ。

私は火に思いを馳せる。
この森の夜が落ちるこの時間に。
中身は本当に無いようなものでした。

火は美しいものだと思うのです。
ヘンプ
[email protected]
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.110簡易評価
1.80ひとなつ削除
良かったです
2.80奇声を発する程度の能力削除
面白かったです
5.80電柱.削除
いい雰囲気!
6.90モブ削除
火は心の鏡のようなものにも思えるのです。しっとりとしものを感じました