火。
それは古代から人の象徴として扱われ、神と交信するためのものとして扱われていたといわれている。私が八卦炉で灯した煌々と燃え上がる炎を見て思う。
人はこの火でどれほど文明を発展させたのか。火が無い時代とはどれほど違ったのか。それは想像に難くない。
それがあればこの身を温めることが、ただの水をお湯に、食べることが困難なものを食べられるようにしたり。
人ともに歩むものなのだろう……この発展した(外よりは発展していないと思うが)時代でも火は必要なのだから。
八卦炉の炎の火力を弱める。机の上に置いていたろうそくに火を移す。燃え移ったと見計らって八卦炉の火を消した。
夜が落ちるこの時間。この森はもう真っ暗になる。
ふわ、とろうそくは一定の揺らぎを示している。
弱々しくも部屋を照らしている。私は意識を切り替える。
火に精神を集中させるといつものが見え始める──
~~~~~
「母様。どうかなさったのですか」
この中で見えるのは幼少の私。母の足にまとわりついて、母の寂しそうな顔を見上げているのだ。
「ああ、魔理沙。なんでもないよ」
いつもそう言って悲しそうに私の頭を撫でた母。撫でている視線の先には家に火が燃え広がった跡があるのだ。
ここの人は恨まれていたらしくて放火されたらしいよ。
確か霧雨店の子じゃなかったかい。
そうらしいけど恨みは個人的なものらしくてねぇ。
ヒソヒソと周りの人達の声が聞こえる。人の噂はなんとやら。
この中の私はまだ母を見ている。幼少の私には分からなかったが、母は泣いていたのだろうか。
その夜。私は一人で提灯の火を見ていた。
ただ、ゆらゆらと揺れる火が綺麗だと思った。それを言いたくて私は提灯を持って母の部屋に行ったのだ。
「母様、母様」
「こんな夜更けにどうしたの魔理沙……」
提灯を持って私は無邪気に残酷にこう言ったのだ──
『この火がとても──』
~~~~~
「『──綺麗ですよ』」
フッと集中が切れた。
ろうそくは一割ほど減っていた。
我ながら、なんということを言ったのだろうか。色々分かるようになってから思うものだ。
私は火に思いを馳せる。
この森の夜が落ちるこの時間に。
それは古代から人の象徴として扱われ、神と交信するためのものとして扱われていたといわれている。私が八卦炉で灯した煌々と燃え上がる炎を見て思う。
人はこの火でどれほど文明を発展させたのか。火が無い時代とはどれほど違ったのか。それは想像に難くない。
それがあればこの身を温めることが、ただの水をお湯に、食べることが困難なものを食べられるようにしたり。
人ともに歩むものなのだろう……この発展した(外よりは発展していないと思うが)時代でも火は必要なのだから。
八卦炉の炎の火力を弱める。机の上に置いていたろうそくに火を移す。燃え移ったと見計らって八卦炉の火を消した。
夜が落ちるこの時間。この森はもう真っ暗になる。
ふわ、とろうそくは一定の揺らぎを示している。
弱々しくも部屋を照らしている。私は意識を切り替える。
火に精神を集中させるといつものが見え始める──
~~~~~
「母様。どうかなさったのですか」
この中で見えるのは幼少の私。母の足にまとわりついて、母の寂しそうな顔を見上げているのだ。
「ああ、魔理沙。なんでもないよ」
いつもそう言って悲しそうに私の頭を撫でた母。撫でている視線の先には家に火が燃え広がった跡があるのだ。
ここの人は恨まれていたらしくて放火されたらしいよ。
確か霧雨店の子じゃなかったかい。
そうらしいけど恨みは個人的なものらしくてねぇ。
ヒソヒソと周りの人達の声が聞こえる。人の噂はなんとやら。
この中の私はまだ母を見ている。幼少の私には分からなかったが、母は泣いていたのだろうか。
その夜。私は一人で提灯の火を見ていた。
ただ、ゆらゆらと揺れる火が綺麗だと思った。それを言いたくて私は提灯を持って母の部屋に行ったのだ。
「母様、母様」
「こんな夜更けにどうしたの魔理沙……」
提灯を持って私は無邪気に残酷にこう言ったのだ──
『この火がとても──』
~~~~~
「『──綺麗ですよ』」
フッと集中が切れた。
ろうそくは一割ほど減っていた。
我ながら、なんということを言ったのだろうか。色々分かるようになってから思うものだ。
私は火に思いを馳せる。
この森の夜が落ちるこの時間に。