真冬のある日。どこで知ったか知らないが、レミリアお嬢様が突然こたつが欲しいと言い始めた。
お嬢様が急に外の世界の物に興味を持ち、それを自分の物にしてしまうのはよくあることである。
幸い、我らがメイド長は優秀で、すぐにお嬢様のリクエストに応えてこたつを用意した。
主の部屋にこたつをドンと置いて、メイド長はお嬢様に提案する。
「お嬢様、香霖堂の主人に相談して、持ってまいりました。お試しください」
用意されたこたつは大きめのもので、四角い机に布団が付いている単純なものだった。
「ご苦労様。って、寒」
早速こたつの中に入るお嬢様。いやいや、燃料がないと暖かくないでしょう。
「あれ? こたつって暖かいものではないのですか?」
「咲夜ー、さむいよー」
「どうしましょうか……」
どうもこのメイド、肝心の、こたつを暖める方法は考えていなかったらしい。
「このままじゃ寒いわね。咲夜、何か暖める方法を探してきて」
この発言が、紅魔館で起こるちょっとした騒乱のきっかけであったことは、言うまでもない。
「お嬢様、入っていいでしょうか。パチュリー様を呼んできました」
しばらくして、メイド長が部屋に入ってくる。パチュリー様を連れてきたようだ。
「パチェじゃない。何か用?」
「何か用って、貴女がこたつを暖める方法を探しているんでしょう?」
「そうよ。で、何か思いついたの?」
「うーんそうね……暖める器具を中に入れれば良いんじゃないかしら。ほら、火鉢とか囲炉裏とか」
「火鉢。良いわね、早速用意させよう……」「持ってきました」
メイド長がすぐに火鉢を持ってきた。流石である。お嬢様とパチュリー様の二人は早速火鉢を導入しようとしてみる。
「あれ? 中に入らないわね。外の世界のこたつは火鉢で暖めるものじゃないのかしら」
レミリアお嬢様は火鉢を無理矢理こたつの中に入れようとする。
「あんまり無理にすると壊れるわよ、レミィ。うーん困ったわね……」
お嬢様は、こたつにくっついている、あるものに着目した。
「この紐、何かしらね?」
お嬢様が取り出したのは、こたつから出てきた動物の尻尾みたいな黒い紐。尻尾の先には、兎のように二本付いた金属の刃と、不思議な形状の黒い塊。何かに挿しこむ為の物だろうか?
いつのまにか、パチュリー様はこたつの中に入って座っていた。
ーーメイド長もだ。
「それを使って暖めるんだと思うわ。方法はわからないけど」
「うーん詰んだわね。やはり知識人は使えない……」
お嬢様は気怠げにこたつに入りながら鬱憤を口にする。
「うっさいわね! レミィこそ命令するだけで何もしないくせに」
まぁまぁ。喧嘩するほど仲が良いとは言いますけど。
ここで、また扉を開ける者がいた。
「お姉様ぁ、遊んで」
「今度はフランか。何の用かしら?」
「別に無いわ。ただ遊んで欲しかっただけ」
「貴女の遊びは生死に関わるのよ……死なないけど」
「じゃあ遊んでくれる?」
「望むところで……と言いたいところだけど、今は取り込み中よ」
「えー。でさ、こんなに集まって何してるの? これは、こたつかしら?」
「うんそうよ。重大な会議中なの」
「議題は?」
「こたつの暖め方」
「そんなに、重大?」
「大事でしょう。こたつを制する者は夜を征するのよ!」
「ほんといつもお姉様は変なこと思いついては実行に移すよね……」
「それ、褒めてるの?」
「褒めるの半分、呆れ半分よ。で、暖めたいのね? これをキュッとして……」
「やめて」
パチュリー様が制したが、遅かった。さっきまであった紐は爆発した。
幸い本体のこたつは無事だが。
「あーあ。もう、暖めることはできなくなった……のかしら?」
レミリアお嬢様は少し残念そうに言う。
「まあきっと他に方法がありますよ」
メイド長はなだめるように言う。
「フラン、さっきの行いは咎めないであげるから、こっちに来て、入りなさい。たまには話を聞いてあげるから」
妹様は、レミリアお嬢様の隣に座った。どうやら、最近こんな夢を見ただとか、こんな本を読んだとか、他愛のない話をしている。
「爆発音がしたんですけど、大丈夫ですか?」
数分が経って、今度も主の部屋に誰かが入ってきた。ここの門番だ。
「美鈴か。別に大丈夫よ。ちょっと物が壊れたけど」
「てか……これどう言う状況なんですか……? みんな集まって」
「みんなでこたつを暖める方法を考えていた所よ。ほら、美鈴も入って考えなさい」
「え……?」
「まあ美鈴じゃ思いつかないか……」
「そんなの、みんなで入ったら暖かくなるんじゃないですか?」
こたつに入っている四人はポカンとしている。
「ほら、もう暖かいんじゃ……失礼します。暖かい……良いですね。こういうのも」
「美鈴、意外と良いこと言うのね」
「え、え、何のことですか……?」
「まあ良いのよ。折角集まってるし、みんなでお茶会しましょうか、咲夜」
「はい」
一瞬で紅茶と菓子が用意される。相変わらずの手際の速さだ。
「ほら、そこのメイドも入りなさい。複数いた方がいいんだから」
レミリアお嬢様のお声かけ。メイド長がいる辺の方に座りこむ。
「小悪魔も呼んでくるわ……」
席を立つパチュリー様。
「私が呼んできましょうか?」
気を利かせるメイド長。
「ああ、お願い」
さあ、楽しいお茶会が始まった。
隣はメイド長。向かいには美鈴さん。また横の辺にはパチュリー様と、小悪魔さん。それに向き合って、レミリアお嬢様と妹様。
ほんと、面白い人達だなぁ。何気ない冬の日。楽しいこたつの魔力に、心が温まった。
お嬢様が急に外の世界の物に興味を持ち、それを自分の物にしてしまうのはよくあることである。
幸い、我らがメイド長は優秀で、すぐにお嬢様のリクエストに応えてこたつを用意した。
主の部屋にこたつをドンと置いて、メイド長はお嬢様に提案する。
「お嬢様、香霖堂の主人に相談して、持ってまいりました。お試しください」
用意されたこたつは大きめのもので、四角い机に布団が付いている単純なものだった。
「ご苦労様。って、寒」
早速こたつの中に入るお嬢様。いやいや、燃料がないと暖かくないでしょう。
「あれ? こたつって暖かいものではないのですか?」
「咲夜ー、さむいよー」
「どうしましょうか……」
どうもこのメイド、肝心の、こたつを暖める方法は考えていなかったらしい。
「このままじゃ寒いわね。咲夜、何か暖める方法を探してきて」
この発言が、紅魔館で起こるちょっとした騒乱のきっかけであったことは、言うまでもない。
「お嬢様、入っていいでしょうか。パチュリー様を呼んできました」
しばらくして、メイド長が部屋に入ってくる。パチュリー様を連れてきたようだ。
「パチェじゃない。何か用?」
「何か用って、貴女がこたつを暖める方法を探しているんでしょう?」
「そうよ。で、何か思いついたの?」
「うーんそうね……暖める器具を中に入れれば良いんじゃないかしら。ほら、火鉢とか囲炉裏とか」
「火鉢。良いわね、早速用意させよう……」「持ってきました」
メイド長がすぐに火鉢を持ってきた。流石である。お嬢様とパチュリー様の二人は早速火鉢を導入しようとしてみる。
「あれ? 中に入らないわね。外の世界のこたつは火鉢で暖めるものじゃないのかしら」
レミリアお嬢様は火鉢を無理矢理こたつの中に入れようとする。
「あんまり無理にすると壊れるわよ、レミィ。うーん困ったわね……」
お嬢様は、こたつにくっついている、あるものに着目した。
「この紐、何かしらね?」
お嬢様が取り出したのは、こたつから出てきた動物の尻尾みたいな黒い紐。尻尾の先には、兎のように二本付いた金属の刃と、不思議な形状の黒い塊。何かに挿しこむ為の物だろうか?
いつのまにか、パチュリー様はこたつの中に入って座っていた。
ーーメイド長もだ。
「それを使って暖めるんだと思うわ。方法はわからないけど」
「うーん詰んだわね。やはり知識人は使えない……」
お嬢様は気怠げにこたつに入りながら鬱憤を口にする。
「うっさいわね! レミィこそ命令するだけで何もしないくせに」
まぁまぁ。喧嘩するほど仲が良いとは言いますけど。
ここで、また扉を開ける者がいた。
「お姉様ぁ、遊んで」
「今度はフランか。何の用かしら?」
「別に無いわ。ただ遊んで欲しかっただけ」
「貴女の遊びは生死に関わるのよ……死なないけど」
「じゃあ遊んでくれる?」
「望むところで……と言いたいところだけど、今は取り込み中よ」
「えー。でさ、こんなに集まって何してるの? これは、こたつかしら?」
「うんそうよ。重大な会議中なの」
「議題は?」
「こたつの暖め方」
「そんなに、重大?」
「大事でしょう。こたつを制する者は夜を征するのよ!」
「ほんといつもお姉様は変なこと思いついては実行に移すよね……」
「それ、褒めてるの?」
「褒めるの半分、呆れ半分よ。で、暖めたいのね? これをキュッとして……」
「やめて」
パチュリー様が制したが、遅かった。さっきまであった紐は爆発した。
幸い本体のこたつは無事だが。
「あーあ。もう、暖めることはできなくなった……のかしら?」
レミリアお嬢様は少し残念そうに言う。
「まあきっと他に方法がありますよ」
メイド長はなだめるように言う。
「フラン、さっきの行いは咎めないであげるから、こっちに来て、入りなさい。たまには話を聞いてあげるから」
妹様は、レミリアお嬢様の隣に座った。どうやら、最近こんな夢を見ただとか、こんな本を読んだとか、他愛のない話をしている。
「爆発音がしたんですけど、大丈夫ですか?」
数分が経って、今度も主の部屋に誰かが入ってきた。ここの門番だ。
「美鈴か。別に大丈夫よ。ちょっと物が壊れたけど」
「てか……これどう言う状況なんですか……? みんな集まって」
「みんなでこたつを暖める方法を考えていた所よ。ほら、美鈴も入って考えなさい」
「え……?」
「まあ美鈴じゃ思いつかないか……」
「そんなの、みんなで入ったら暖かくなるんじゃないですか?」
こたつに入っている四人はポカンとしている。
「ほら、もう暖かいんじゃ……失礼します。暖かい……良いですね。こういうのも」
「美鈴、意外と良いこと言うのね」
「え、え、何のことですか……?」
「まあ良いのよ。折角集まってるし、みんなでお茶会しましょうか、咲夜」
「はい」
一瞬で紅茶と菓子が用意される。相変わらずの手際の速さだ。
「ほら、そこのメイドも入りなさい。複数いた方がいいんだから」
レミリアお嬢様のお声かけ。メイド長がいる辺の方に座りこむ。
「小悪魔も呼んでくるわ……」
席を立つパチュリー様。
「私が呼んできましょうか?」
気を利かせるメイド長。
「ああ、お願い」
さあ、楽しいお茶会が始まった。
隣はメイド長。向かいには美鈴さん。また横の辺にはパチュリー様と、小悪魔さん。それに向き合って、レミリアお嬢様と妹様。
ほんと、面白い人達だなぁ。何気ない冬の日。楽しいこたつの魔力に、心が温まった。
面白かったです。
この調子でほんわかした紅魔館や幻想郷を書いてくれるのを楽しみにしてます
シンプルながらも心温まるお話でした
幻想郷では人がコタツを暖める!
逆転の発想、素敵です。
この作品で一番暖かいのは紅魔館のみんななのかもしれないですね。
フランちゃんとお嬢様がコタツで雑談するシーンが微笑ましく個人的にすごく好きでした。