Coolier - 新生・東方創想話

はたたん・いん・ぶるー さん

2018/12/02 22:58:56
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「《《違いますね》》」

 ばれている。

「はたて、こっちを向いてください」

 向けない、今は。

「はたて」



「……そうですね、私から話すとしましょう。ええ。私ははたてのことが好きです」
「——」

 文はわたしに馬乗りになり身体を重ねて密着させると、耳にほとんど口を付けながら。

「さしずめ『絡んでくるなんてなぜ?』とでも考えてたんじゃあないですか? ……おや、そこまで赤面してくれているなら私のことを想っているようですね。もちろん嬉しいですとも。つまるところ『自分に気があるのかどうかもやもやしてる』という方が正鵠を射ているでしょうか。杞憂ですよ、杞憂。私ははたてのことが好き、これは絶対不変です。巷では私が天魔様の直属になるかも、なんて話があるそうですが、安心してくださいはたて。仕事が、天魔が、何だって言うんですか? はたてのことを優先します、無論。幻想郷は広いです。もしも山が許さないのならそんな所は捨て置いて逃げましょう。取材で得た人脈を使えば逃げるのはそう難しくないはずです。地底へ行くのもいいかもしれませんね。幻想の果てまで逃避行をする覚悟ですよ? それくらいはたてが好きです。あ、衣食住は私が全部用意しましょう。当然自分で選んでも構わないですし、はたての手料理も食べたいですし、箸であーん、いやいっそのこと口移ししてみて欲しかったりしますね。ああでも本当に良かった。はたても慕ってくれているのですね。私もはたてが大好きです。ええ、たしかにはたてが私に気を向けるよう仕向けましたが上手く行っていて良かったです」

 ——。

「おっと、こんな私を軽蔑しますか?」

 二の句が継げないとはこういう時のためにある言葉だと思った。
 それでも。

「軽蔑なんて出来ない、でしょう。だいたいはたてはわかりやすいです。……どうしようもなく魅かれてしまったみたいですね。私もです——はたて」

 朱い双眼がわたしの顔を覗き込む。ふとした瞬間で、互いの呼吸音が響くほどまで近付く文。

「はたて」

 なんだ。文もだったんだ。
 わかってしまえば、なんてことはなくて。……ちょっと重過ぎるかもしれないけど。
 それでも、わたしは。

「文」

 わたしは名前を呼んで——



 それからというもの、隣には四六時中文が居る。
 仕事? 毎朝、文に仕事場まで連れて行かれる。おかげさまで生活習慣が良くなった。上はサクッと丸め込んだらしい。

「丸め込んだって……文、何したの?」
「そうそう、そうです。はたては私の部下扱いになりました。やりましたね、殉職以外での特別昇進ですよ」
「あの噂話もあるのに大丈夫なの?」
「天魔様行きですか? 形式上断れる命令はこの間来てましたよ。最も断る選択肢なんて形骸化してますが。まあ、そこでちょちょっと」
「ぇ……」
「でも、行ったらはたてと離れちゃうじゃあないですか!」



 それと、トイレまで付いて来ようとしたのはさすがに引いた。ただ付いて来たときは『?』と首を傾げてたのに、断ればあっけらかんと、

「まさか本気にしてたんですか?」

なんて。文は絶対わたしで遊んでる。思わず手刀を入れたのは間違ってないはず。



 いつもより温かな日常。まあ——もしも運命なんてものがあったとしても、しばらくはこの幸せの温かさに浸からせてくれてもいいと思う。
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