Coolier - 新生・東方創想話

はたたん・いん・ぶるー に

2018/11/17 23:06:15
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 ——そのまま寝てしまったようで、膝がわりに座布団が敷かれ、毛布を掛けてくれたらしい。
 らしい、というのも肝心の文の姿は見えなかったからで。でも家の奥、台所から音がする。どうやら夕食を作ってくれている、らしい。
 もそもそと起き上がると台所へ向かう。

「悪いね、作らせちゃったみたいで」
「まあ、今日はせっかくの非番ですし。あ、明日も休みなんですよ?」

 『せっかく』を使っていいんだろうか。休みだからなんなのか。うーん。

「……えっと、泊まってく?」
「ええ」



 文の料理はおいしい。どうおいしいか訊かれると困るけど、たぶんわたしの口に合うってことなんだろう。長い付き合いになる。味の好みも把握されてるのだろうか、それとも、好みが変わったのか。

「おいしいですか」
「もちろん」
「それは料理人冥利に尽きないですね」

 どっちにしろ、とにかくおいしいからそれでいいんじゃないかな。
 いや待てわたし。

「あ。食材って……」
「ないだろうと思って持ち込みました」
「ほんっとごめんね! この埋め合わせはどこかで……!」
「ほう。いいんですね? なら今日果たしてもらいましょう」
「え?」

「抱き枕になってください」

「だきまくら」
「そうです、抱き枕。なので一緒の布団で寝ましょう」
「——ッ!?」

「はたて? どうして固まってるのかは分からないですけど、あくまでも抱き枕にするだけですよ。まあ、お風呂の準備でもしてきますね」



 布団にて。
 冬の寒さは家中の隙間というすきまから入ってくるけど、今日の寝床はいつもに増して暖かい。——しかも、温かい。
 こうして文が隣にいるのは初めて。酔い潰れた状態なら雑魚寝するし、お昼寝するときは近くにいるけど。
 文の腕がわたしに回されて身体が密着しているのが伝わる。

 顔向け、できない。
 顔どころか耳まで真っ赤になってて手遅れな気もするけど、文を視界に入れられない。

「誰かを抱き枕にするのは初めての経験ですが、どうしてなかなか。暖かいのが特にいいですね、はたて?」
「んッ、うん……」

 声が上擦った。

 でも、なぜ?

 ————違う。
 実のところ、気があるのかないのかをはっきりさせたくないだけなんだ。叶わないだろうから。拒絶されたら嫌だから。この関係を壊さないがために、この関係に波風を立てない。

 ただ、これもいつまで続くか。文が訪ねてくる間隔はだんだんと長くなってきていて。

 いっそのこと、今? わたしに、壊せる? これを? この時間を——

「また何か悩んでますね。思い詰めている、と言った方が良さそなほど」
「……うん、まあ」
「吐き出してしまっては? いいですよ、私が受けとめてあげます」

 ほら、とばかりに抱きしめる力が少し増す。
 やっぱり無理だと思う。無理なんだろうか。無理だ。

「私に言いづらいことなんですね。……当ててみましょう。私の新聞の出来をやっかみを覚えている、とか?」

 違う。本人に直接言えるはずがない。

「はぁ……ま、そういうことね——」
「違いますね」

 ばれている。

「はたて、こっちを向いてください」
続きはそのうち書きます
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コメント



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1.50福音棄者削除
台詞は滑らかで、とても自然です。
続きものにせず、ちまちま書き溜めて行って、ねりねりした方が面白くなりそう。
一人称ものは好きなので、応援しています。