「ねぇ、文? なんで膝枕なわけ?」
「私がしたかったからです」
「なんでしたかったのよ」
「そこにはたてが居るからですよ」
「……理由になってないわよ、それ」
突然はたての家に押しかけてきた文。押しかけてくることはしばしば有った。
それはいい。
上がるや否や「ほら、ここに」と膝を指差す文。これが問題だ。しばらくは抵抗したものの、まったくわからない理論をまくし立てられ、今に至る。
はたてには文が膝枕をしに来た理由を理解できなかった。
「まあ、最近はたてが何か悩んでるようでしたので」
「それは——」
たしかにはたては悩んでいた。深く、深く。
元はと言えば、文が悪い。
こうやって結構な頻度でウチに来ては、ご飯をたかったり、料理してくれたり、椛を誘って飲み会を開きだしたり、ゴロゴロしたり、新聞製作を手伝ってくれたり。
どうしてこれほどまでにわたしに絡んでくるんだろうか。こんな根暗で、面白くもないわたしに。
手料理はおいしいし、愚痴をこぼしたいときに来てくれるし、ふと人肌恋しくなったときに居てくれる。…………おかげですっかり勘違いしてしまった。
でも、文は、わたしには不釣り合いだ。性別こそ気にしないけど、そのうち天魔様の直属になるなんて噂されてるから、わたしにかまけている暇なんてないはず。わたしなんかが出世街道を行く文の邪魔をしてはいけない。
——本当になんでなんだろう。よくよく考えてみたら、時間が取れないほど忙しいならこっちに来るはずもない。なら、どうして?
「ねぇ、文? どうしてこんなにわたしのところに遊びに来るわけ?」
「お邪魔でしたか?」
ほらこれだ。そう言われれば返す言葉に迷う。嫌ではないし、むしろ嬉しいけども。
「い、いやっ、そういうわけじゃあないけど……その、仕事は忙しくないの?」
「これくらいの休みは許されますよ」
ふふっ、と笑う文。はぐらかされた、と思う。なにがおかしいのか。手のひらで弄ばれてるような、小馬鹿にされてるような、ちょっぴり気に食わない。
「もうっ!」
腕を背中に回してお腹に頭を押し付ける。ぐりぐり。でも優しい手つきで撫でられれば抵抗する気も起きなくなった。
「私がしたかったからです」
「なんでしたかったのよ」
「そこにはたてが居るからですよ」
「……理由になってないわよ、それ」
突然はたての家に押しかけてきた文。押しかけてくることはしばしば有った。
それはいい。
上がるや否や「ほら、ここに」と膝を指差す文。これが問題だ。しばらくは抵抗したものの、まったくわからない理論をまくし立てられ、今に至る。
はたてには文が膝枕をしに来た理由を理解できなかった。
「まあ、最近はたてが何か悩んでるようでしたので」
「それは——」
たしかにはたては悩んでいた。深く、深く。
元はと言えば、文が悪い。
こうやって結構な頻度でウチに来ては、ご飯をたかったり、料理してくれたり、椛を誘って飲み会を開きだしたり、ゴロゴロしたり、新聞製作を手伝ってくれたり。
どうしてこれほどまでにわたしに絡んでくるんだろうか。こんな根暗で、面白くもないわたしに。
手料理はおいしいし、愚痴をこぼしたいときに来てくれるし、ふと人肌恋しくなったときに居てくれる。…………おかげですっかり勘違いしてしまった。
でも、文は、わたしには不釣り合いだ。性別こそ気にしないけど、そのうち天魔様の直属になるなんて噂されてるから、わたしにかまけている暇なんてないはず。わたしなんかが出世街道を行く文の邪魔をしてはいけない。
——本当になんでなんだろう。よくよく考えてみたら、時間が取れないほど忙しいならこっちに来るはずもない。なら、どうして?
「ねぇ、文? どうしてこんなにわたしのところに遊びに来るわけ?」
「お邪魔でしたか?」
ほらこれだ。そう言われれば返す言葉に迷う。嫌ではないし、むしろ嬉しいけども。
「い、いやっ、そういうわけじゃあないけど……その、仕事は忙しくないの?」
「これくらいの休みは許されますよ」
ふふっ、と笑う文。はぐらかされた、と思う。なにがおかしいのか。手のひらで弄ばれてるような、小馬鹿にされてるような、ちょっぴり気に食わない。
「もうっ!」
腕を背中に回してお腹に頭を押し付ける。ぐりぐり。でも優しい手つきで撫でられれば抵抗する気も起きなくなった。