チルノが遊んでいた風船を離してしまった数分後。
「(人の気配を感じる)……そこだぁ!」
せめて憂さ晴らしにと、持て余したパワーを解き放つように弾幕に乗せる。
ピースたちといつもどおり適当に遊んで、青い風船を分けてもらったんだけど、ちょっとした不注意で手放してしまった。
飛んでいく風船も面白いなぁ……と眺めてたら、一瞬で空にぐーんと昇っていく。
まだ遊びたい!撃ち落とすか?いやそんなことしたら割れちゃうぞ!なんてことを考えてたら、もうとっくに手の届かない場所まで。
あたいもすぐに飛んで追いつけばよかった!と思っても後の祭り。ああ、もったいないことをしてしまった……
だからあたいはイライラしてるんだ!せめてお前が遊び道具になれ!
「違いますわ」
あれ?さっきの気配が反対側に?てか真後ろに?
「うひゃあっなんでっ!?」
反射的に後ろに弾幕を放つ!そしてその反転の勢いで回転!フリーズタッチミー!
「だから違いますわ」
攻撃を終えてまた反対から声が!そして振り向……く。360度、静止したナイフでびっしりと囲まれていた。一歩も動けない。
「ひ、ひえぇ」
「落ち着きました?氷の妖精さん。では」
指パッチンの音が響く。同時にあたいを囲んでいたナイフが魔法のように消えて無くなった。
こんな奇っ怪な真似ができるのはあいつしかいない……あのでっかい赤い家のメイドだ!
「ひ、卑怯だぞ!弾幕ごっこでは避けられない弾幕はルール違反だこんにゃろう!」
「いいえ。今のはごっこ遊びではなく、自己防衛のためですわ。問題ありません」
「そんな屁理屈を、調子にのるなよ悪魔の犬め!」
こいつに不意打ちされたんだ。あたいだってやり返してやる!こっそりとこおりパワーを貯め……
「貴方が遊びたかったのはこれでしょう」
こいつのポケットから見覚えのある青いモノが飛び出した。あの風船だ!てかどこに入ってたの?
「驚いたかしら?ちょっとした手品よ。お返しいたしますわ」
風船の紐を差し出される。疑問があの風船のようにたくさん浮き上がるが、とりあえずギュッと握りしめた。
「今度は離さないようにね」
「あ……ありがとう。でも、どうしてこれを?なんであたいのだってわかったの?」
「日課の湖掃除をしてる時にこれが見えたのよ。そしてこの冷気。大体察しは付きますわ」
「私にとっては、飛んでいく風船も止まったマトと同じようなものですから。瀟洒に回収しました」
なんだか感心しながら話を聞いてると、どこかで嗅いだようないい香りがする。この風船から?
「あっ、わかった!これは紅茶の香りね!」
「ご明答。私、風船の匂いがあまり好きではないので、香り付けを。私なりのアレンジですわ」
「これ知ってるよ!あんたんところの主人がいつも飲んでるやつね!だーじりんだかあーるぐれいって名前の!こっそり忍び込んであたいも飲んだ!」
「冷気ですぐにバレてますので、サービスみたいなものですわ」
「あっそう。あんたいいやつと見たわ!名前教えて!覚えておいてあげる!」
「光栄ですわね。咲夜、十六夜咲夜と申しますわ」
「いざよいさくやね!あたいヒマしてるから、いつでも遊んでやるよ!」
「ふふふ、ありがとう。でも後ろに」
突然、咲夜が私の後ろを指差した。えっ?なんだろ?虫でもいたのか?
振り向……く。先の尖ったナイフが真後ろにピタリと設置されていた。
「うわっ!」
更にさっきまで目の前にいたはずの咲夜が、いつの間にか後ろに回り込んでいた。
「ひゃうっ!」
そして、持っていた風船が、勢いよくナイフの切っ先に触れた。パァンと破裂音が鳴り響く。
「ほわぁっ!?」
思わず尻もちをつく。
なんだかわけのわからないことが。
いっぺんに起きすぎて。
あたいの腰がすっかり抜けてしまった。
唖然呆然。
数秒後に自分を取り戻した。咲夜はもう居なくなっていた。そして目の前には一枚の紙切れ。
風船の中に入っていたようだ。紙切れには一言、「遊んでくれてありがとね」と書かれていた。
そして思い出した。最後に見た咲夜の顔が、今日一番の笑顔だったことを。
「あんにゃろう!!」
風船の破裂音よりも大きな声でチルノは叫んだ。
「6回、ね」
「私、手品でもなんでもいいけど、人が驚く顔を見るのが大好きなのよね」
「花壇と『不意打ち』のお返しよ、氷の妖精さん」
咲夜は上機嫌に、お嬢様にお出しする紅茶の仕込みを終えた。一応、襲撃の備えもしておこうかしらね。
「(人の気配を感じる)……そこだぁ!」
せめて憂さ晴らしにと、持て余したパワーを解き放つように弾幕に乗せる。
ピースたちといつもどおり適当に遊んで、青い風船を分けてもらったんだけど、ちょっとした不注意で手放してしまった。
飛んでいく風船も面白いなぁ……と眺めてたら、一瞬で空にぐーんと昇っていく。
まだ遊びたい!撃ち落とすか?いやそんなことしたら割れちゃうぞ!なんてことを考えてたら、もうとっくに手の届かない場所まで。
あたいもすぐに飛んで追いつけばよかった!と思っても後の祭り。ああ、もったいないことをしてしまった……
だからあたいはイライラしてるんだ!せめてお前が遊び道具になれ!
「違いますわ」
あれ?さっきの気配が反対側に?てか真後ろに?
「うひゃあっなんでっ!?」
反射的に後ろに弾幕を放つ!そしてその反転の勢いで回転!フリーズタッチミー!
「だから違いますわ」
攻撃を終えてまた反対から声が!そして振り向……く。360度、静止したナイフでびっしりと囲まれていた。一歩も動けない。
「ひ、ひえぇ」
「落ち着きました?氷の妖精さん。では」
指パッチンの音が響く。同時にあたいを囲んでいたナイフが魔法のように消えて無くなった。
こんな奇っ怪な真似ができるのはあいつしかいない……あのでっかい赤い家のメイドだ!
「ひ、卑怯だぞ!弾幕ごっこでは避けられない弾幕はルール違反だこんにゃろう!」
「いいえ。今のはごっこ遊びではなく、自己防衛のためですわ。問題ありません」
「そんな屁理屈を、調子にのるなよ悪魔の犬め!」
こいつに不意打ちされたんだ。あたいだってやり返してやる!こっそりとこおりパワーを貯め……
「貴方が遊びたかったのはこれでしょう」
こいつのポケットから見覚えのある青いモノが飛び出した。あの風船だ!てかどこに入ってたの?
「驚いたかしら?ちょっとした手品よ。お返しいたしますわ」
風船の紐を差し出される。疑問があの風船のようにたくさん浮き上がるが、とりあえずギュッと握りしめた。
「今度は離さないようにね」
「あ……ありがとう。でも、どうしてこれを?なんであたいのだってわかったの?」
「日課の湖掃除をしてる時にこれが見えたのよ。そしてこの冷気。大体察しは付きますわ」
「私にとっては、飛んでいく風船も止まったマトと同じようなものですから。瀟洒に回収しました」
なんだか感心しながら話を聞いてると、どこかで嗅いだようないい香りがする。この風船から?
「あっ、わかった!これは紅茶の香りね!」
「ご明答。私、風船の匂いがあまり好きではないので、香り付けを。私なりのアレンジですわ」
「これ知ってるよ!あんたんところの主人がいつも飲んでるやつね!だーじりんだかあーるぐれいって名前の!こっそり忍び込んであたいも飲んだ!」
「冷気ですぐにバレてますので、サービスみたいなものですわ」
「あっそう。あんたいいやつと見たわ!名前教えて!覚えておいてあげる!」
「光栄ですわね。咲夜、十六夜咲夜と申しますわ」
「いざよいさくやね!あたいヒマしてるから、いつでも遊んでやるよ!」
「ふふふ、ありがとう。でも後ろに」
突然、咲夜が私の後ろを指差した。えっ?なんだろ?虫でもいたのか?
振り向……く。先の尖ったナイフが真後ろにピタリと設置されていた。
「うわっ!」
更にさっきまで目の前にいたはずの咲夜が、いつの間にか後ろに回り込んでいた。
「ひゃうっ!」
そして、持っていた風船が、勢いよくナイフの切っ先に触れた。パァンと破裂音が鳴り響く。
「ほわぁっ!?」
思わず尻もちをつく。
なんだかわけのわからないことが。
いっぺんに起きすぎて。
あたいの腰がすっかり抜けてしまった。
唖然呆然。
数秒後に自分を取り戻した。咲夜はもう居なくなっていた。そして目の前には一枚の紙切れ。
風船の中に入っていたようだ。紙切れには一言、「遊んでくれてありがとね」と書かれていた。
そして思い出した。最後に見た咲夜の顔が、今日一番の笑顔だったことを。
「あんにゃろう!!」
風船の破裂音よりも大きな声でチルノは叫んだ。
「6回、ね」
「私、手品でもなんでもいいけど、人が驚く顔を見るのが大好きなのよね」
「花壇と『不意打ち』のお返しよ、氷の妖精さん」
咲夜は上機嫌に、お嬢様にお出しする紅茶の仕込みを終えた。一応、襲撃の備えもしておこうかしらね。
咲夜さんがおちゃめでよかったです
悔しがるチルノもかわいそうだけどかわいかったです
次の作品がとても楽しみです。