Coolier - 新生・東方創想話

虹の光は大空高く

2005/12/03 08:42:17
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今日も幻想郷は良い天気だ。












太陽を遮る分厚い黒雲、体に纏わりつくじっとりとした空気。
昨夜降った雨のお陰で、気温は高く寒さは感じられない。
テンション低めの私にとって、これほど過ごしやすい日は無い。

こんな日は一日中布団の中でうじうじするに限る。お休み諸君。



「ルナサ姉さーん、起きてー。ちょっと話があるんだけどー!」

あの声は……リリカか。
リリカが私を呼ぶ時は、大体下らない悪巧みがあるからな。
無視をするのが一番だろう。

「姉さーん、起きてー!」

寝たふり寝たふり。

「起きろっつてんだろ!」

がば と布団が剥ぎ取られる。
寒! なんて事をするんだリリカ! お前は自分が何をしたのか分かっているのか!
私から布団を奪うと、一体どんなことが起きるのか……。

「どんなことが起きるの?」
「私が寝れない」
「……」
「……」

しまった、ハズしたか。
ホイホイに捕われたリグルを見る様な目で私を見るな。
おのれ、姉に向かってなんだその目つきは。

ふん、気分が悪い。寝る。

「だから起きろっつてんだろーがよぉぉ!!」
「ぎゃあ! や、やめろ、脇腹を蹴るな! わかった、起きる、起きるから!」








最近、リリカが私に冷たい。

リリカの悪戯には以前から悩まされていたが、それはあくまで悪戯。
今みたいに蹴りを入れられることなんて無かった。

反抗期か?
私の妹への愛が不足していたのだろうか。
ならば、スキンシップによってそれを補充しなければなるまい。

「ったく、ちゃんと一回目で起きてよ……」

ブツブツと文句を垂れながら立ち去ろうとするリリカの背後から、そっと手を回す。

「リリカ……」
「ちょ、姉さん!? 一体何を!?」
「ふふふ、もはやのがれることはできんぞ」
「グエーッ! 姉さん、何するのよ! やめてよ、くすぐったいから!」
「仕方が無いだろう、私のお布団はお前に取られてしまった。だから今からリリカが私のお布団だ。
 さあ、その柔肌で私の体を暖めるのだ。姉妹の心の溝もこれで綺麗に埋ま……」  











バキッ





◆◇◆





「あー、世界が傾いて見える」
「姉さん遅い、もっと早く歩いてよ」

首が曲がった状態で歩くのが、こんなに難しいとは思ってもみなかった。

「ところでリリカ、姉の首を90℃へし折った件について何か謝罪は無いのか?」
「無い」
「……」

スキンシップの方法が間違っていたのだろうか。
リリカの態度がますます冷たくなる。

スキンは肌、シップは……船?
肌と肌を触れ合わせて、布団という名の大海原に出航する。
んー、ほぼ正解だと思うんだが。一体何がリリカの機嫌を損ねたのだろうか。







「あ、ルナサ姉さん、おはよ~。
 ……って、なんで首が直角に曲がってるの?」

私が居間に着いた時、
もう一人の妹、メルランは既に朝食の最中だった。

「ヒント:リリカ・布団・スキンシップ」
「あははは。リリカったら首が折れるほどの変態プレイを姉さんに強要したのね」
「全然違うわ! むしろ襲われたのはこっちよ!」
「襲うとは人聞きが悪い。あれは姉妹間のスキンシップだ」
「どこの世界に胸を弄る姉妹間スキンシップがあんのよ!」
「リリカ……私より大きかったな」
「凹むな! そして首を直せ!」

両手で頭を押さえ、強引に首を元の角度に戻す。
なんてったって騒霊。生き物じゃないから体に無理がきく。







「それでリリカ、私に話って何?
 遂に私が黒スト党のイメージキャラクターに起因されたのか?」
「……違うわよ。つーか何よそれ」
「あははは、姉さんってば、黒ストを売りにしようとしてたの?」
「うむ。私は幻想郷でも珍しい”姉”属性を持っている、これを利用しない手は無い。
 一応、吸血鬼のお嬢も姉属性を持っているが、あのぺったんこ・かるい・うすいな体型では、
 その魅力を十分に発揮することはできまいよ」
「ふーん」
「つまり、この幻想郷で姉の魅力を100%引き出せるのは、この私だけなんだよ、
 姉属性と黒ストを組み合わせることで、ルナサ・プリズムリバーの人気は爆発的に上昇するのだ」

周囲に放射線型の効果線が出るほどの勢いで主張する。

どうだ! 妹達よ。萌える姉をもってお前達も鼻が高いだろう。
幻想郷中の男から「姉、ちゃんとしようよっ!」と言われる日も近いぞ。

「……いやぁ、確かに”姉”は私と姉さんぐらいなものだけどさ、
 ”姉系”は結構いると思うよ? 特に慧音さんなんかは黒ストも似合うし。あはは」
「ルナサ姉さんの黒ストって、Extraクリアが条件でマッチモード専用の2Pカラーでしょ?
 知らない人の方が多いんじゃないの? そんなの売りにできるのかしらねぇ」
「それに姉さんの体って驚くほどに凹凸が無いのよねー。
 ストッキングとか絶対イメージに合わないってー。あははは」
「ていうか、姉さんが履いてるのストッキングじゃなくてただの靴下じゃない」


……む、予想以上に冷たい反応。
ドット絵が小さくてよく分からないのを良いことに
ストッキング説を押し通そうとしたのに、余計なことを言うな。

それよりもメルランめ、高々Cカップの分際で生意気な。
今に見ていろ。いつの日か、急に背後から手を回して揉み解してやる。
「きゃん!」とか言いながら頬を赤らめるメルランの顔が目に浮かぶようだわ。







「……って、こんなしょうもない話をするために姉さんを起こしたんじゃ無いのよ」
「しょうもないとは何だ。乳臭さだけでは生きていけない時代が来たのだ」
「五月蝿い」
「はい」

もしかして姉の威厳など、既に存在しないのだろうか。

「姉さん、これは大事な大事な話なの。ちゃんと聞いてね。」
「ん、わかった。」
「えーと、何から話せばいいんだろ。」

リリカの顔は真剣そのものだ。
私を罠にかけた時のあの狂った笑顔は微塵も感じられない。
これは本当に真面目に聞いたほうがいいな。

しかし、リリカの大事な話って一体なんだ。
見た感じ、メルランは何も聞かされていない様だ。
私をわざわざ叩き起こしたって事は、私に関わる話なのだろう。

脳内でシミュレートしてみる。








その1
『姉さん、金貸して』

……うむ、家族内の大事な話と言えば、まずはこれが基本だろう。
しかし、これはあるまい。リリカが私に自ら借りを作るなんてことはまず無いだろう。




その2
『姉さん、借金の保証人になって』

……リリカの性格から考えると、これはあり得るな。
だが、保証人になって貰いたい相手に蹴りをかましたり、首を折ったりするだろうか。
これも無いな。次だ。




その3
『姉さんに保険かけといたから、死んで』

……いや、これはやりすぎだろう。
リリカも流石にここまではやらない……かな? 否定できないのが悲しい。
どうせ死ぬ相手だから、蹴ったり折ったりしても平気って事か。

だが、残念なことに騒霊は消滅はしても死にはしない。これも無しだ。







うーむ。リリカの言う、『大事な話』というのがさっぱり予想できない。
リリカは私を見つめて黙ったままだ。話し始めるタイミングを見計らっているのだろうか。

勤労30年のリーマンが昼休みに突然上司に呼び出され、行ってみたら会社の幹部が勢揃い。
座るように指示された机の上には、なぜか就職情報誌。上司達は目を合わせようとしない。

今の状況を、一番近い例え話で表現するとこんな感じだ。
少し違う気がするな。まあいいか。


そんなことを考えていると、リリカに動きがあった。
いよいよ話を始めるのかと思い、私は姿勢を正す。そして、リリカの口がゆっくりと開く。









「姉さんって確か妖夢の事が好きなんだよね?」








……ん?







んん~?

今なんて言ったのカナ?
姉さんは全然分からなかったヨ?

いや、一応聞こえてはいたんだけどさ、念の為もう一回言ってみてくれないかナ?

「だから、姉さんは魂魄妖夢が好きなんでしょ?」

うん、良く聞こえた。ありがとうリリカ。




……って、ええぇーーーーーー!?

背中に嫌な汗が吹き出る。

なんで? なんでリリカがそのことを知ってるの?
私が妖夢に特別な感情を抱いているのは、自分だけの秘密のハズだ!
もしかしてアレか? 私が自室で窓から見える夜空を見上げながら
『妖夢……はぁ……』と乙女溜息をついていたのを見られたか!?

いや、乙女溜息はドアには鍵をかけ、窓は締め切り、
完全な密室状態にした上で、蚊の飛ぶような声で実行するのだ。
誰かにバレるということはありえない。ならばなぜ!?

……待てよ。
『好き』にも複数ある。具体的にはライクとラブだ。
リリカが言った『好き』は、友人としての『好き』なのではないだろうか。
妖夢は真面目で礼儀正しい、人から好かれる性格だ。
そういう意味でなら、私が妖夢を好きでも何も問題は無いじゃないか。

「……リリカ、それどういうこと?」
「だからー、ルナサ姉さんは白玉楼の庭師にゾッコンラブ一直線なのよ」

……ラブの方でしたか。
リリカには全部バレてるんですね。世の中上手くいかないもんだ。

いや、バレているから何だ!
私が妖夢にゾッコンラブ一直線セルフバーニングで何が悪い!
人を好きになることがどうしていけないんだ! そうだルナサ、胸を張れ!
私にだって、恋愛感情ぐらい持っているんだ! 

「……じゃあ、姉さんはロリコンなの?」

……うん、一番言われたくなかった言葉をバッチリ言ってくれてありがとう。
確かにさ、妖夢は背丈も低いしさ、言動もどこか子供っぽい所があるけどさ。
そんなにハッキリ言ってくれなくてもいいじゃないか。

『子供が好きなのではない! 愛した女が偶然子供だったのだ!』
とっさに反論の言葉が思い浮かぶ。が、どう見てもロリコンの言い訳です。
本当にありがとうございました。


……ん? 言い訳? 

そうか! リリカの発言にはまだ証拠となるものが何も無い。
いや、そもそもこれはリリカのハッタリかも知れないのだ。
私がもっともらしい言い訳で、妖夢の件を否定すれば状況は覆せる!

「ねえ、リリカ。姉さんが妖夢を好きって本当なの?」
「本当よ。この前、姉さんの部屋を探検してたら机の中から妖夢の写真がいっぱい出てきたもん。」

逃げ場無し。

既に証拠も掴んでおられましたか。ハハハ、流石は狡猾の名を欲しいままにするリリカさん。
つーか、なに勝手に人の部屋を探検してんだコラ。

あ! さては、妖夢の写真に『大往生』って落書きしたのはお前か!
私の大切な妖夢が雷電みたいになったじゃないか! 
ツーショット写真は一枚しか無いんだぞ、どうしてくれるんだ!

「姉さん……本当に妖夢の事が好きなの?」
「そ、そ、そ、そんな訳無いじゃないか、何を言っているんだメルラン! 私はノーマルだ!」

無駄だと分かっていながら、最後の抵抗を試みる。
『正直に全てを話す。これが貴女に出来る善行よ』 閻魔の山田さんの声が頭に響く。
うるせえ、黙ってろ。

「でも、リリカが姉さんの部屋で妖夢の写真を見つけたって……」
「あ、あれは、友達だからだよ! お前達は知らないかも知れないが、私と妖夢は結構仲がいいんだ!」

もちろん、そんな事実は無い。
だが、ここで押し通さなければ色々と終わってしまう。

「そうなの? 良かったぁ、姉さんは普通なんだね。あはは」
「分かってくれたかメルラン。そうだ、私は普通の騒霊ヴァイオリニストだ」

よっしゃ! メルランの説得に成功した!
後はリリカだ、どんな手を使ってでもリリカを説得しなければ……

「あ、そうだ。写真の他にも姉さんが妖夢に宛てたラブレターが発見されたんだけど」
「ギャアァァァァァァ!!」
「姉さん? やっぱり姉さんって……」
「誤解だ! 誤解だよメルラン! そんなもの書いてないから! リリカ、悪質な嘘は止めなさい! ね?」
「そのラブレターは今、私の手元にあるんだけど」
「なっ……!!」
「えーっと、『愛しい妖夢様へ。私は一目見たときから貴女の事が……』」
「やめろっ! 読み上げるな! 頼む、止めてくれぇぇ!!」
「姉さん……そんな……」















ああ、もう嫌だ。このまま消えてなくなりたい。
そして妖夢の半身に転生したい。

糸目と同じ幅の涙を流しながら、私は力無くテーブルにうつ伏せた。

「メルラン……こんな姉さんは嫌か?」
「え? いや、その、あははは……」


メルランの声が僅かに震えているのが分かる。
顔を伏せているので、表情は読み取れないが、相当微妙な顔をしている事だろう。

そりゃそうか。自分で言うのもナンだが、私は今日この日まで
物静かな優等生と周りから思われてきた。だが、その正体はちっちゃな女の子が大好きな変態さん。
メルランが失望するのも分かる。すまんな、メルラン。

「姉さん、そんなに気にすること無いと思うよ。」
「メルラン?」
「そりゃ、急に姉さんの趣味を聞かされてちょっと動揺したけどさ、
 誰が好きだっていいじゃない。姉さんは姉さんだよ、何も変わらないよ。」
「メルラン……お前」
「だから、元気出してよ姉さん。ロリサ姉さんが元気無いと、こっちも元気なくなっちゃうよ」
「うん、ありがとうメルラン……って、今”ロリサ姉さん”って言ったか!
 何だそれは、ロリコンのルナサ姉さんの略か!?」

嗚呼、遂にメルランにまでバカにされてしまった。
もう姉の威厳とかそんなレベルじゃない。家庭内での基本的人権すら危うい。
畜生、リリカめ。私の密かな想い人をこんな所で公開しやがって。
お前は息子の部屋で見つけたエロ本をちゃぶ台に置く母親か。


「ロリコンのルナサ姉さん、落ち着いて。
 私は別に姉さんの歪んだ性癖を暴露する為に、わざわざ呼んだ訳じゃ無いのよ」
「はっきり言いやがって……じゃあ、何の為に呼んだんだ」
「メルラン姉さんの言うとおり、ルナサ姉さんが誰が好きでも別に構わないわ。
 でもね、それによって私達に迷惑がかかるのは見過ごせないのよ。」

リリカ達に迷惑がかかる? リリカは一体何を言っているんだ。
私が妖夢を好きなのと、全然関係無いじゃないか。

「姉さん、この前神社で開かれた宴会、覚えてるわよね」

……神社で開かれた宴会と言うと、
先月行われた魔理沙が幹事のハロウィン宴会か。


魔理沙曰く、ハロウィンとは

スペインのトマト祭りから派生したお祭りで、
街の若者達が生の南瓜を投げあい、より多くの人間の頭をカチ割った者の優勝という
大変バイオレンスなカンボジアの奥地に伝わる奇祭だそうだ。

なお先日、博麗神社で行われたハロウィン宴会では、
そのようなショッキングな儀式は一切行われず、ごく普通の宴会して事が運んだ。
魔理沙も宴会を行う名目が欲しかっただけなのだろう。

私達、騒霊演奏隊はいつものように場を盛り上げるちんどん屋として宴会に招かれたのだ。


「その宴会が一体どうしたというんだ」
「姉さん、本当に自覚無いの?」

リリカは大きく溜息をついた。

「姉さん、なんで私達が宴会に呼ばれるか分かってるの?」
「盛り上げ役でしょ?」
「そう、私達は場の雰囲気を明るくする為に、宴会に呼ばれているのよ。
 それなのに姉さんは宴会の時、ずーっと妖夢をストーキングしてたわよね!」
「あ……」
「あら、姉さんなかなか席に戻らないと思ったら、妖夢の所にいたのね、あはは」
「しかも、私達の演奏が始まる時間になっても全然戻ってこないし、
 私達が探しに行ったら、姉さん神社の裏で寝てるし、結局あの日は演奏が出来なかったのよ!」
「いや、あれはストーキング行為が幽々子さんにバレて、みぞおちを殴ら……」
「言い訳なんか聞きたくないわ!」

居間にリリカの大声が響く。
何もそこまでムキにならなくたって……。

「いい? 私達は騒霊なのよ。音を出し、騒がしくするのが仕事なの。
 でも、姉さんはあの宴会の日、演奏をしなかった。音を出さない騒霊なんて、もう騒霊じゃないのよ。
 騒霊の存在理由が無くなるの」

私を睨み付けながら、熱弁を続ける。

「無縁塚で会った説教女も言っていたでしょう?
 存在理由が無くなれば、もう私達は消滅か暴走するしかないのよ。
 姉さんだってそんなことになるのは嫌でしょう!?」
「リリカ……」
「だから、姉さんは妖夢の事をすっぱり忘れて、もっと音楽に真面目に取り組んで欲しいの。
 私が言いたかったのはこれだけよ」

ばん とテーブルを叩き、リリカは椅子に座りなおす。

私は何も言葉を返すことができず、ただ呆然としていた。



無縁塚の説教女。考えるまでも無く、花の異変の時に出会った閻魔の事だろう。
まさか、閻魔に言われた言葉を、リリカが引きずっていたとは。

”存在が曖昧な霊は消滅か暴走する”

いくら閻魔の言葉とはいえ、私やメルランは特に気にしてはいなかった。
私達の拠り所(と閻魔に言われた)だったレイラが死んでから、もう随分経つ。
だが、私達は何の問題無くこの家で暮らしてきた。今更消滅するとは思えない。
だからリリカも同じように気にしてないと思っていたのだが……。

リリカの心には、ずっとその言葉が引っかかっていたのだ。
消滅という単語に、リリカはとてつもない恐怖を感じたのかもしれない。
だから、私が演奏をしなかった事に怒ったのだ。

私はそんなリリカの心情を理解してやれなかった。……私は姉失格だ。
謝って済む問題では無いかもしれないが、リリカに謝ろう。

そう思い、リリカの席に顔を向ける。
私が言葉を発しようとした次の瞬間。


「ねえ、リリカ。少しキツく言いすぎじゃないの?」

メルランが口を挟んだ。

「確かに、姉さんが演奏に来なかったことで、私達は迷惑を被ったわ。
 でも、今の貴女の姉さんへの態度は明らかにやり過ぎよ」
「メルラン姉さん……だって……」
「さっき貴女はルナサ姉さんに向かって『音楽に真面目に取り組んで欲しい』って言ったわよね。
 でも、リリカも音楽に不真面目な点があると思うわ」
「そんな、私は真面目にやってるわよ!」
「じゃあ、キーボードに仕込んであるカメラは何かしら?」
「うっ!」

ん? キーボードにカメラ?
なんだそりゃ。

「私が知らないとでも思ったの、リリカ。貴女は演奏の最中、そのカメラで観客達を隠し撮りしているじゃない」
「メルラン? それは一体……」
「ね、姉さん、何もこのタイミングで言わなくたって!」
「ステージの上からは観客の胸の谷間がよく見えるわ。
 その写真は香霖堂で高く買い取ってくれるそうじゃない。
 幽々子さんのが1000円、紫さんのがマニア向けで4000円だったかしら?」
「ちょっと、なんで相場まで知ってるの!?」

慌てふためくリリカ。
つい先ほどまで私を責めていたとは思えない程の動揺っぷりだ。

……しかしリリカめ、
偉そうなことを言った割にはお前だって似たようなものじゃないか。

ここは一つ姉としてのお仕置きが必要だな。


「……リリカ」
「ル、ルナサ姉さん……な、なぁに?」


ゴツン!


「……っいったぁーい! 姉さん、何するのよ! ひどいじゃない!」
「ひどいも何もあるか! お前は自分の事を棚に上げて他人ばっか責めて!」
「棚に上げてって……それじゃ私のやったことが姉さんと同レベルって事!?
 馬鹿言わないでよ! 私の盗撮はちゃんと演奏の中で行っているのよ、
 姉さんみたいに演奏をサボるのとは違うの!」
「音楽に真面目に取り組んでないという点では一緒だ!」
「違うわよ!」
「一緒だ!」
「ちょっと、二人とも落ち着いてよー」
「この分からず屋! もう一発叩くぞ!」
「何度も殴られてたまるもんですか! 喰らえ、空中リリカチョップ!」
「ぐぁぁ!! くそ、よくも!」
「それ、もう一発!」
「ぎゃああ! ちょ、ちょっとまてリリカ、こっちは一発叩いただけなのに、
 何故お前は執拗に首を狙ってくるんだ! 痛、や、やめろ、折れる! また折れるからやめ……」











ゴキッ






◆◇◆






現在の時刻は午後6時15分。


……違った。午後3時ちょうど。
首が折れると時計もまともに見られないから困る。


妹達は楽器の練習のため、あの後すぐに外に出て行った。
メルランに一緒に行こうと誘われたが、流石に行く気になれなかった。
今朝の一件でリリカとの関係は最悪だ。

『姉さんのバカッ! 大嫌い! 消滅したって知らないからね!』
そう叫んだリリカは、折れた私の首に更に一発蹴りを入れて出て行った。

そりゃあ全ての原因は私にあるが、
だからと言って、一日に二度も首を折ることは無いじゃないか。
これがあの噂のルナサバキバキにして終了。って奴か。
そんなので終了になってたまるか。





……でも、やっぱりリリカには悪いことをしたな。

リリカは、花の異変以来ずっと閻魔の言葉を気にしていたのだろう。
普段はそんな素振りを全く見せないから気付かなかったが、
狡猾な性格だと言われても、やっぱり感情を持った霊。
心配事や、恐怖を感じる事だってあるだろう。

リリカ……まだ怒ってるかなぁ。
はぁ~、顔を合わせ辛いな。



窓から見える空は、朝に比べてさらに暗雲が増加している。
昼ごろから降り始めた雨で、窓ガラスは大粒の水滴で覆われている。

そういえば、妹達は出かけるときに傘を持っていっただろうか。


それにしても、一体どこまで練習しに行ったのだろう。
普段ならこの時間は既に家に戻っている時間だ。
リリカは私が居る家には帰りたくないのかな……?

……すぐネガティブな発想が浮かぶ自分の性格が憎い。

きっと妹達はどこかで雨宿りしているだけだ。雨が止んだら帰ってくるさ。
そう、自分に信じ込ませ、自室に戻ろうと椅子から立ち上がる。

その時。




ドンドンッ! ドンドンッ!





玄関の戸を叩く音が聞こえる。
もしかしてリリカ達が帰ってきたんだろうか。
いそいそと玄関に向かう。

「お邪魔するぜー」

違った。
まあ、自分の家に帰るのにノックする必要は無いか。
少し肩を落としながら玄関のドアを開ける。

「あれ? ルナサ、居たのか?」
「そりゃ居るさ、私の家だからな。……で、何の用だ魔理沙」

ドアを開けた先に立っていたのは霧雨魔理沙。
喋り方で大体予想はついていたがな。

「ああ、山でキノコ狩りをしていたら雨が降ってきてな、ちょっと雨宿りさせてもらうぜ」

よく見ると、魔理沙の服は雨でびしょびしょになっていた。
ただでさえ黒い服が、水に濡れてさらに色を濃くしている。

「別に構わないが」
「ありがたいぜ。でも、タダで宿らせてもらうのもアレだな」
「気にするな、別にここは旅館じゃないんだ」
「いや、それじゃ私の気が収まらん。ほら、採ってきたキノコをお裾分けだぜ」

そう言って魔理沙は、手に持った籠からキノコを取り出し、私の顔の前に持ってくる。

ふむ、普通のキノコと比べて少し大きいようだ。
傘の上には白いツブツブが付いている。真っ赤な色が食欲をそそる。


「ってこれ、ベニテングタケだろ、毒キノコなんかいるか」
「あー? 毒キノコとは失礼な。幽々子とか霊夢はこれを美味い美味いって言いながら食うぜ」
「あの二人を基準にするな」
「なあに、かえって免疫力がつく。ほら、普通に食べられるキノコもあるぜ」

次に魔理沙が籠から取り出したのは松茸。
おお、高級品じゃないか。これはありがたい。

「ほら、大きくて美味そうだろ」

松茸を私の眼前で見せ付ける。

……って、顔に近づけすぎじゃないのか?
やめろ、頬に押し付けるな、ぐりぐりするな。

「ほら、いい匂いだろ。もっと鼻を近づけてみろ」

キ、キノコが生で食べられるわけ無いだろう。
やめろ、無理矢理口に入れようとするな。
ああ……ちょっと……。

「んん、はぁん、らめぇ! そんな大きいのお口に入らない!」

うっかり叫ぶ。

ニヤリと笑う魔理沙。おのれ、全ては計略か!

「いや、なかなかいい声を出すじゃないか、
 ここまで乗ってきてくれたのはお前が始めてだぜ」
「くっ、不覚!」
「妖夢は全然乗ってくれなくてな、本気で嫌がられたぜ。
 それでも押し付け続けると、最後には涙目になっていたな」
「何? 妖夢が!?」

血走った目でキノコを片手に妖夢を襲う魔理沙。
必死の抵抗も空しく、キノコを口に押し込まれる妖夢。

くっはぁ! 魔理沙め、なんて羨ま…いや、酷い事を!

「おい、鼻血鼻血!」

おっと失礼。
ティッシュが無かったので人差し指と中指で代用する。

「雨宿りなら勝手にしていけ。濡れた服はちゃんと脱いでおくように」
「助かるぜ。」
「あ、あと……」
「ん?」
「……その時の妖夢の様子、後でじっくり聞かせてくれないか?」

スポン という軽快な音と共に、指が鼻から飛び出し、鼻腔から血が吹き出る。
ああ、妖夢かわいいよかわいいよ妖夢。









魔理沙を居間のソファーに座らせ、紅茶を入れるために水を沸かす。
一応お客様だからな。そういうのはきっちりやっておかないと。

だが、魔理沙相手に紅茶は勿体無いな、温めた麦茶でいいや。
レモンの一滴でも垂らせば分からないだろう。
トレイにカップを二つ乗せて、居間へと向かう。




「……なんかこの紅茶、変わった味だな」
「本場の紅茶とはそんなものだよ」

ホット麦茶の味を堪能しながら、魔理沙と談笑を交わす。

「お前今日は一人で家に居るのか。珍しいな」
「そう? 私達だっていつでも三人でいるわけじゃないよ」
「いや、お前の妹達が魔法の森で楽器の練習していたからな、てっきりお前もそこに居るのかと思ったぜ」
「ふーん」

リリカ達は今日は魔法の森で練習しているのか。
あそこは木々が風で揺れる音しかしないからな、練習には持って来いだ。
ただ、雨宿りする場所となると……。

「どうした? 悩み事があるような顔して」
「いや……別になんでもないよ」
「妹とケンカしたんだろ、早く何とかしたほうがいいぜ」
「!!」

カップを持った手が止まった。

今、魔理沙は確かに妹とケンカをした、と言った。
ケンカをした事を話した覚えは無いぞ、なんで魔理沙は知ってるんだ?

「おー、動揺してる所を見るとどうやら図星のようだな」
「な、なんで分かった?」
「そりゃあ見れば分かるぜ。いくら何時も三人でいるわけじゃないにしても、
 一人だけ除いて練習するなんてやっぱり不自然だからな。それに……」
「それに?」
「……お前の首が折れている。何かトラブルがあった証拠だ」

魔理沙に言われて、手を首に当てる。

……しまった、直すのを忘れていた。
自身の順応性の高さに驚く。

しかし、輝夜と妹紅のスナッフムービーを毎日のように見せ付けられる永遠亭住人ならともかく、
自称普通の魔理沙が、首の折れた女を見て眉一つ動かさないとは。

流石は数々の異変を解決してきた魔法使い、首折れごときではなんともないのか。


「で、何が原因なんだ? 歪んだ人間関係なら、この魔理沙ちゃんにおまかせだぜ」




 
 ◆◇◆





「……これで終りだ」
「なるほどな」


私は今朝、私とリリカの間に起こった出来事を、掻い摘んで魔理沙に説明した。

本当は、こんなこと他人に話したくは無かったのだが、
魔理沙がどうしても聞かせてくれと頼むので、仕方が無かったのだ。、
私も心の奥底では、誰かに話して楽になりたいと思っていたのかもしれない。

「つまり、お前が演奏に参加しなかった事にリリカが怒り、
 それを指摘されたお前は、逆上して妹に手を上げた。と
 簡潔にまとめればこんな感じか?」
「……大体合ってる」
「イエーイ、大体合ってるー!」

何がそんなに嬉しいんだ。


「はぁ~、私はこれからどうすればいいんだ」
「そう、深く気にするな。私の知り合いに幼児に欲情するメイドがいるんだ。
 そいつと比べれば妖夢なんてロリコンに含まれないぜ」
「……私の性癖の話ではない。リリカの話だ」

なんであの時、リリカを叩いてしまったのだろう。
好きな人をバラされて冷静に物事を考えられ無くなっていたのだろうか。
私がおとなしくリリカの話を聞いていれば、こんな事にはならなかったのに。

あー、自己嫌悪だ。
過去の自分を殴ってやりたい。

「何をそんなに悩んでいるんだ?」
「いや、何をって……」
「今聞いた通りのだとすると、ケンカの原因はお前にある。だったら、お前がリリカに謝れば万事解決じゃないか」
「そんな簡単な問題じゃ……」
「簡単な問題だ。悪いことをした方が謝って仲直り。これは宇宙の絶対法則の一つだぜ」
「……」

確かに魔理沙の言うとおりだ。

早く謝った方が良いに決まっている。
私もこんなギスギスした空気は嫌いだ。仲直りがしたい。
だが……。

「どうした?」
「……結構本気で怒っていたからさ」
「ああ?」
「リリカ、閻魔に言われた事を気にしていたみたいなんだ」
「閻魔……ああ、映姫か。私も色々言われたぜ。それがどうしたんだ?」
「”自己が曖昧すぎる霊は消滅する”。そう言われたんだ」
「……」
「リリカは演奏をしなかった私が、消滅するんじゃないかって心配で怒ってくれたんだと思う。
 だけど、私はそれに答えるどころか、反発してしまった。
 今更どんな顔でリリカに会ったら良いのか……」

今日何回目になるかわからない溜息をつく。
魔理沙の目は、じっと私を見つめている。

しばらくすると、魔理沙も私と同じ様に溜息をついた。

「だから~。それがそんなに難しい問題か?
 リリカの気持ちを分かってやれなかった事も含めて謝ればいいだけのことだろ?」
「し、しかし……」
「今、自分で言ったじゃないか。リリカは自分の事が心配で怒ってくれたって。
 心配されるって事は、大切に想われてるって事だ。大丈夫、リリカはお前を嫌ってなんかいないさ」
「そ、そうかな?」
「そうだ。あんまりウジウジしてると妖夢から嫌われるぜ。
 尤も、妖夢なら白楼剣で悩みごとお前を真っ二つにしそうだがな。はっはっは」

魔理沙は自信満々に笑った。
ここまで物事を前向きに考えられるとは大したものだ。


リリカは私を大切に想っている、か。

リリカが私を嫌っているのではなく、
私が嫌われるのを恐れて、リリカを避けていただけなのか。

……ただの都合の良い妄想かもしれないな。

だが、このまま悩んでいても何も解決しないのも事実だ。
ここは魔理沙の事を信じてみることにしよう。


「……リリカ達の所に行ってくる。魔法の森のどの辺りに居たか教えてくれ」
「おっ、やっと決心がついたか」
「ああ、私だってリリカの事を大切に想っている。それを伝えに行く」
「そうか。よしよし」

腕組みをして、満足そうに頷く魔理沙。
全ては自分の思惑通り。そんな顔をしている。

……本当に毎日楽しく生きてるんだろうな、こいつは。

「お前の妹達を見たのは、魔法の森の中央付近だ。
 あの辺りは雨を防げる場所も無いし、私みたいにどこかで雨宿りしてるんじゃないか」
「どこかに心当たりは無いか?」
「そうだな……私の家は鍵がかけてあるし、アリスの家に居るかもしれないな」
「アリス?」

魔理沙の口から一人の人物の名前が発せられた。

アリス……アリス……。
はて? 名前に聞き覚えはあるんだが、どんな人物だったか思い出せない。

「なんだ、アリスを知らないのか? 非道い奴だな」
「いや……名前だけは聞き覚えがあるんだが」
「……まあ、あまり宴会に来ないタイプだからな。思い出せないのも無理は無いか」
「宴会に来ないのか」
「ああ、あんまり人付き合いは苦手な奴なんだ。根は良い奴なんだけどな」

人付き合いは苦手か……。
そんな奴が、素直に妹達の雨宿りを受け入れてくれるだろうか。

アリスとやらは信頼が置ける人物なのだろうか。
『人付き合いは苦手』というだけで偏見を持っている訳ではないが
もし、危険な人物だったりしたら、妹達の身が危ない。
むしゃくしゃして遊ぶ金欲しさにバールのようなもので妹達を襲う可能性も考えられる。

「もっと、そのアリスについて詳しく教えてくれないか」
「ん? 魔法使いだぜ。 職業じゃなくて、種族が魔法使いな
 私と一緒に終わらない夜の事件を解決したこともあるぜ」
「……他には?」
「そうだな……普段は人形と話したり、丑の刻参りをしてるな」
「!!!」
「ま、人形を使った魔法を得意としてるからなんだけどな。
 ……って、あれ? おーい、ルナサー、どこ行ったー?」







◆◇◆








「はい、雨で体が冷えちゃったでしょ? 紅茶で暖まってね」
「アリスさん、ありがとうございます」
「リリカちゃんはココアで良かったかしら?」
「あ、どうぞお構い無く」
「それじゃあ、もうすぐお菓子が焼けるから、そこで寛いでてね」

アリスさんはそう言い残して、スリッパをパタパタ鳴らしながら部屋から出て行った。

「リリカ、アリスさんっていい人ね。あはは」
「本当、宴会にあまり顔を出してなかったし、
 たまに出ても全然喋らないから、もっと変な人かと思ってた」
「あ、リリカ、見て見てー。お人形さんがいっぱいあるよー。あはは」
「ちょっと、姉さん! 人の家で勝手に動き回らないでよー」

ここは魔法の森にぽつんと佇む、七色の人形遣い アリス・マーガトロイドさんの家。
メルラン姉さんと二人で楽器の練習をしていたら、雨が降り出しちゃって
雨宿りできる場所を探していたら、この家に辿りついたの。

事情を話したら、アリスさんは快く私達を招き入れてくれた。
アリスさんがいい人で本当に良かった。

なんていうか……落ち着いてるというか、少し影があるっていうか、
とにかく、私達と違って大人の雰囲気がある人だ。
黒ストっていうのはこういう人に良く似合うのよね。
ルナサ姉さんも少しは見習って欲しいわ。

「あー、これ魔理沙の人形だ! あ、こっちには霊夢の人形もあるー!」

そういえば私、家を出るときに姉さんに『大嫌い』って言っちゃったんだよね。
あの時の姉さんの顔、あんな悲しそうな顔を見るのは始めてだったわ。
普段、表情の変化が乏しいからなおさらね。

大嫌いは言い過ぎたかなぁ。
でも、元々姉さんが悪いんだから、しょうがないよね。

「リリカー、ちょっと来てみなさいよー、こっちこっちー!」

メルラン姉さんが何かを見つけたみたい。
人形の入ったガラスケースの前で、私に手招きする。

「何? 何かあったの?」
「ほら、ここの棚。すごいでしょお」

メルラン姉さんが指をさしたのは目の前のガラスケース。
そこには、多種多様の人形達が行儀良く座っていた。

と言っても、ただの人形では無い。

実在の人物をモデルにしているのだ。
霊夢、魔理沙を始め、紅魔館の五人。白玉楼やマヨヒガ、永遠亭の住人。
さらには、ルーミアやリグルといった妖怪まで、恐らく私達が知っている人妖全ての人形が揃っていた。
三頭身にデフォルメされていたが、どの人形も本人の特徴が良く出ていた。

「見て見て、私達の人形もあるわよー」
「本当だ。ここまで良く出来てると逆に気味悪いわね」
「そう? ほらほら、リリカの人形。腹黒い性格が良く顔に出てるわー、あはは」
「む、姉さんの人形だって能天気そうに笑っているじゃない」

互い人形を手に持ち見せ付けあう。
しかし、確かに良く出来ているわ。
見た感じ、まだ魔力は注入されていない様なので、今の時点ではただの人形。

でも……あまりに精巧なので、今にも動き出しそう。

「ほら、ルナサ姉さんのもあったわよ。根暗な喪女っぽさがよく表現されてるわー」
「喪女って……姉さんどこでそんな言葉を覚えてきたのよ」




ルナサ姉さんの人形を手に取る。

姉さん、今頃何してるんだろう。最後に見た姉さんの悲しそうな目。
もしかして、自殺とかしてないよね?

……霊が自殺するわけないか。
でも、このままじゃ家に帰り辛いな。
最後に何かフォローを入れておけばよかったかな?
少し心配になってきた。

そんな事を考えてると、後ろでドアの開く音がした。


「……あら」
「あ、アリスさん! すいません、リリカが勝手に人形に触っちゃって」
「ちょっと、なんで私に押し付けようとしてんのよ!」
「いえ、いいのよ。人形はそうやって触れてもらえば、
 その人の想いが伝わるのよ。人形もその方が喜ぶと思うわ」
「へぇー、そうなんですかー」

アリスさんは、焼きたてのクッキーを持ってきてくれていた。
香ばしい良い匂い。手先が器用な人って、やっぱりお菓子作りも得意なんだ。




私達は、しばらくアリスさんとお茶を楽しんだ。
アリスさんは音楽に興味があったみたいで会話も弾んだ。
宴会での様子だと、もっと暗い人かと思っていたけど、凄くいい人じゃない。
なんでこんな人が宴会に来ないんだろう。

私はその事をアリスさんに聞こうとした。
その時。


「アリスさんって、あんまり宴会に来ませんよねー。
 この前のハロウィン宴会も来なかったし、なんでですか?」

メルラン姉さんが代わりに私の疑問をぶつけてくれた。

「そうですよ、なんでですか?」

私も姉さんに続ける。

「……」

その質問をした瞬間、アリスさんの顔が少し引きつった様な気がした。

「あなた達、新聞はとってる?」
「え、新聞って?」
「カラス天狗が発行している新聞よ」

確か、文々。新聞って言ったっけ?
何回か私達も取材を受け、記事にもなってるらしいのだが、
プリズムリバー家では購読していない。

過去に珊瑚礁に落書きをしたのを、自作自演で記事にしたとかで、
新聞としての信頼性はあんまり高くないみたいだし。

「いえ、とってませんけど……それがどうかしたんですか?」
「そう……」

アリスさんは黙って俯いてしまった。
しばらく重い空気が流れた後、アリスさんは顔を上げ言葉を続けた。

「私の事がね……記事になった時があったの」
「へぇ、どんなのですか?」
「……」
「? アリスさん?」
「……丑の刻参りをしてる所を撮られたのよ」
「えっ」

丑の刻参り。
日本に古くから伝わる、伝統的な呪術。

私もあまり詳しくは無いけど、
呪いたい相手の名前を書いた紙や、髪の毛を藁人形に仕込み、
五寸釘を打ち付けるというのが正しい作法だと聞いたわ。

「それが記事になってからよ……宴会に呼ばれなくなったのは」
「ア、アリスさん?」
「魔理沙が言うにはね、自分は全然気にしていないけど、
 宴会参加者の中には恐がる奴もいるから、
 ほとぼりが冷めるまで、しばらく参加するのを控えてくれ。だって」

アリスさんの肩がカタカタと震え始める。
なんだろう、凄く悪い予感がする。

「酷い話じゃない? 私はただ魔理沙に近づく害虫を呪っただけなのに!
 魔理沙の事を想ってしたことなのよ! なのに魔理沙は私の事を除け者にして!
 しかもあの紫もやし、私の呪いを障壁魔法で跳ね返してたっていうじゃない!
 おかげで私は一週間頭痛と胸やけに悩まされたのよ!」
「あ、あの……」
「そうでしょ! 魔理沙ってば酷いでしょ! 貴女もそう思うわよね!」

両肩をつかまれ、ガックンガックン揺らされる。

恐い、これが先ほどまで私達と楽しくお茶をしていたアリスさんなのだろうか。
目が血走り大きく見開かれている。魔力の影響だろうか、口から瘴気が出ているように見える。
その形相を例えるなら、まさに鬼。アルコール依存症の幼女鬼ではなく、御伽噺に出てくる様な鬼。

私は、その鬼の問いに対し涙目で首を縦に振るのが精一杯だった。

「……でもね、そんな寂しい生活も今日で終り」
「え?」
「あなた達が来てくれたから」

アリスさんは私の肩から手を離し、にっこりと微笑む。
鬼の形相はもう消えていた。

「私達が……?」
「そうよ、だって私達はもう友達でしょう?」
「……そ、そうですよね! お茶会楽しかったですもんね!
 ええ、ま、また来ても良いですか?」

アリスさんの機嫌を損ねないよう、言葉を選んで対応する。

ヤバい、アリスさんはヤバい人だ。
とにかく、アリスさんを上機嫌にさせてこの場を切り抜けなきゃ、
ああ、早く家に帰りたい!


「また? ……または無いわよ」
「え?」
「あなた達二人はずーっとこの家で暮らすのよ。私のお人形になってね」
「!!」
「私……考えたの。どうやったら皆が私を嫌わないかって。
 答えは簡単だったわ。人形にすればいいのよ。人形は私を嫌わないわ。丑の刻参りをしても誰も何も言わないのよ。
 あの棚にある自分達の人形を見たでしょう? あれにあなた達の魂を封印するのよ。
 そして、最終的にはあの人形全て……幻想郷の皆の魂を入れて、私のお友達にしてあげるのよ」
「……そんな、嘘でしょ?」
「恐がらなくてもいいのよ。あなた達は私のお友達になるの。
 私を絶対に裏切らない永遠の大親友になるのよ。ケヒッ、ケヒヒヒッ」
「嫌、嫌よ! 姉さん、メルラン姉さん! 逃げよう、早く逃げよう!」

震える体を押さえ、メルラン姉さんに顔を向ける。

だが、メルラン姉さんは、体に小さな人のような物が纏わり付き、
身動きどころか、喋る事もできない状態にされていた。

「逃がさないわよ、上海! 露西亜! 仏蘭西! 捕まえなさい!」

次の瞬間、私の体は何者かに床に押さえつけられた。
これは……人形?


「さ、早速始めましょうか」
「嫌! 嫌ァ! やめなさいよぉ!」
「そんなに暴れなくても大丈夫よ、すぐに済むから。うふふ」
「イヤァァァ! 誰か、誰か助けてぇーーー!」
「聞き分けの無い子は……嫌いだな!」


アリスさんの手が私に迫ってくる。

駄目、人形達に魔力を抑えられて楽器が動かせない……。

嫌だ、人形なんかになりたくない! 助けて、助けて!










助けて!  ルナサ姉さん!!








◆◇◆ 











「リリカァー!! メルラァンー!! 無事かーー!!!」

自分でも信じられない程のスピードで空を翔る。
アリスの家の位置は知らなかったが、魔法の森には魔理沙とアリスの家しかないと聞いていたので、
消去法で探し当てた建築物の窓ガラスに向かって突撃した。

派手な音を立てて飛び散る窓ガラス。
勢い余ってそのまま部屋のドアを突き破る。

「……きゃっ! 何事!?」
「ねえ……さん? ルナサ姉さん!?」

部屋のドアを突き破ったにも関わらず、なおも勢いは衰えず私はそのまま壁に顔面を叩き付けた。

ぐっ、鼻の骨が折れたんじゃないか?
どうして今日はこうも簡単に骨が折れるんだ。
毎日牛乳飲んでるのにどういう事だ。胸も大きくならないし……。

って誰だ、私の名前を呼ぶのは!

「姉さん……助けに来てくれたのね!」
「リリカ、無事だったか! 人形に話しかける変質者の家に行ったと聞いて心配してたぞ!」

部屋の床に這いつくばっているリリカとメルランを見つけた。
妹達がいるって事は、ここがアリスの家で間違い無いな。

「リリカ……人形に押さえつけられてるんだな。今、私が取ってやる」
「姉さん! それよりも、後ろ、後ろ!」

リリカが青ざめた顔で私の背後を見つめている。
急いで振り返ると、私の周りは無数の弾幕で埋め尽くされていた。


「貴女……ルナサ・プリズムリバーね」
「お前がアリスか。悪いが妹達は連れて帰る」
「出来るのかしら? 見なさい、貴女は既に囲まれているのよ」

弾幕はゆっくりと退路を奪いながら、私に近づいてくる。
だが、この弾幕なら……。

「喝っ!」

私が一声叫ぶと、周りを囲んでいた弾幕は一瞬にして掻き消えた。

「なっ!?」
「知らないのか? 私は『鬱の音を操る程度の能力』の持ち主だ。
 お前の心は今、鬱で満たされている。そんな状態で撃った弾なんて、
 私にとってはアイシクルフォールEasy並の楽勝弾幕だ!」

ビシッ! とアリスを指差し叫ぶ。俗に言う勝利宣言だ。
お前はもう死んでいる。
ヒィート エンドッ!
おお 快なり!

「な、何よ! そのインチキ二次設定!」
「インチキでは無い! 鬱を操る者が鬱にやられる道理は無い!」

勝利を確信していたアリスの顔に焦りが見える。

空中に浮かばせていたバイオリンを手元に引き寄せ、攻撃の姿勢を取る。
別に手を使わずにも弾けるが、こっちの方が見栄えが良い。

「……ふふふ、鬱の音を操るですって?」
「何が可笑しい」
「鬱の音だなんて、ドナドナでも弾いて私を自殺させる気かしら?
 私の弾幕が鬱を操る貴女に通用しなかった様に、貴女の音は鬱状態の私には通用しないんじゃないの?」
「……」
「姉さん……」
「どう? 図星でしょ? 貴女の攻撃は私には効かないのよ」
「……ドナドナだと? 私が漫画の技をまんまパクる様な恥知らずな真似をする訳無いだろう。」
「あら、じゃあ暗い日曜日でも弾くの?」
「減らず口はそこまでだ! 受けよ、我が奥義!」
「!!」

バイオリンを握った手に力を入れる。
そして、その手を大きく上に掲げ……。







「直撃『ばいおりん爆弾(ボンバー)』!!」







アリスの頭をめがけて振り下ろした。



「ぶべっ!!」

名器ストラディ・ヴァリウスの歴史の重みを脳天で受け止め、アリスは倒れた。


「楽器を持っているから当然、音攻撃が来る。その思い込みがお前の敗因だ」
「姉さん……その技もパクりだよ」

リリカが何か言った気がしたが、
アリスが倒れる音に混じったのでよく聞こえなかった。


「リリカ、メルラン、動けるか?」
「あ……うん、動ける」
「ぷはーっ、苦しかったぁ。もう、この人形ったらずっと私の口を塞いでるんだもん」
「マスターが気絶したから、人形達も力を失ったんだな」

妹達が立ち上がるのに手を貸す。
見た感じ、外傷は見られない。間に合って本当に良かった。



「……待ちなさい……許さないわ……」

ふいに後ろから、地獄の底から響くような声が聞こえる。アリスめ、なんという執念。

「アリス、もう勝負はついた。妹も無事だったし、これ以上私達と戦う必要は無い」
「そうよ、アリスさん! もう終わったのよ!」
「……そうはいかないわ。私はもう、独りになるのは嫌なの……」

ゾンビの様にゆらりと体を起こす。

「私はずっと独りだった。友達は人形しかいなかった。
 最初はそれでも平気だった。でも、魔理沙と出会ってから私の中で何かが変わったの」
「……」
「魔理沙は、誰かと一緒にいる楽しさを教えてくれた。
 それは、長かった独りの時間よりも何倍も楽しい時間だったわ」
「……」
「だけど、魔理沙は私を裏切った。私を拒絶した。私はまた独りぼっち。
 でも、もう独りは嫌なの! あの時間が止まったような寂しい思いは、もうしたくないの!」
「アリスさん……魔理沙は別に、貴女のことを嫌ったわけじゃ……」
「貴女達に何がわかるっていうの!?
 独りになった時のあの寂しさ、貴女の内の誰か一人でも知っているの!?」
「アリスさん……」
「知っているとも!」

高らかに叫ぶ。
三人が一斉に私の方を振り向く。

「自分だけ取り残されたあの悲しみ……私には分かるぞ」
「姉さん?」
「”二人組みを作って”と言われた時、クラスの人数が偶数にも関わらず
 なぜか自分だけ余るあの悲しみ! 私にはよーく理解できるぞ!」
「……」
「……」
「あの、姉さん……もう少し空気を読んで……」
「そのぐらい何よ! 私なんか修学旅行の班決めの日に欠席したら、
 どこのグループにも私の名前が無かったのよ! その程度で悲劇ぶらないでよ!」
「ああ……話がどんどん変な方向に」
「それだけではない! 何故か私にだけ連絡網が回されず、
 調理実習に手ぶらで挑んだ事もある! あの時の絶望感は……」
「なんですって! 私なんてね……」




「……ねえ、メルラン姉さん。 ルナサ姉さん、学校とか行ってないよね」
「うん」
「じゃあ、二人で言い争っている悲惨な体験談は何かしら」
「……さあ? でも妙にリアリティがあるわね。誰かの実体験かしら?」


 


「くそっ! アリスの説得は不可能のようだ!」
「姉さんが不可能にしたんだけどね」

リリカが何か言った気がしたが、聞く気が無かったのでよく聞こえなかった。

「リリカ、メルラン! こうなったら、アレで終わらせるぞ!」

妹達に号令をかける。二人はそれに答え、軽く頷く。
アレ即ち、我らプリズムリバーの最終奥義。
”アレ”だけで話が通じる事に、姉妹の深い絆を感じる。うれしい。

「二人とも、準備はいいか?」
「大丈夫よ」
「派手にやっちゃおう!」

二人が楽器を取り出し、精神を集中させ魔力を高める。
これでトドメだ!



「鬱と」

「躁と」

「幻想の名の下に!」






「大合葬『霊車コンチェルトグロッソ』!!」






「ぎゃあああああああああ!」









アリスは今度こそ倒れた。

出会い方によっては、私と良い友人になれたのかもしれない。
だが、妹達に手を出した以上、黙っている訳にはいかない。

次に会った時には、八目鰻屋で酒でも酌み交わそう。
さらばアリス。



「あの、姉さん」
「ん?」
「朝は、色々酷いこと言って……ごめんね」
「……ああ、私こそ悪かった。リリカの気持ちも分かってやれなくて。
 私は自分自身の存在理由を見失っていた。今日からはまた、真面目に音楽に取り組むよ」
「ルナサ姉さん……」
「それと、私はお前達のことを大切に想っている。私にはお前達が必要だ。
 だから、私は消滅なんかしない。お前達も、ずっと傍にいてくれ」
「……うん」

ゆっくりとリリカを抱きしめる。
私は、何よりも妹達が大切だ。

「あれ、じゃあ妖夢の事も諦めるの? あははは」
「……むう」
「いいよ姉さん、姉さんが妖夢を好きなのも本気なんでしょ。私、応援してるから」
「そ、そうか! よし、次の宴会の時こそきっと……」
「ストーキングとかじゃなくて、せめて世間話出来るぐらい進展してね」
「あははは。私達に新しい姉ができちゃうかもねー」

私達は笑った。

これで何もかも元通りだ。
いや、前よりも一層姉妹の絆が深まったように感じる。
雨降って地固まるとは、まさにこの事だ。

明日から、また三人で一緒に演奏ができる。
その演奏は、以前より素晴らしいものになっているに違いない。






「……待ちなさい……まだ、まだよ」

再び背後から響く声。

「うわっ、まだ動いてる」
「もう、折角綺麗に纏まったのにー」
「どうする? これ以上攻撃すると本当に死ぬかもよ」
「うーむ、どうしたものか」






『アリス! 大丈夫か!』






「……ま、魔理沙?」
『アリス、すまない! 私が宴会に呼ばなかったばっかりに、お前を辛い目に合わせた!』
「魔理沙……」
『実は、アリスを宴会に呼べなかったのは、もう一つ理由があるんだ』
「……もう一つ?」
『私……アリスと一緒にいると、胸がドキドキして……何も考えられなくなって、
 でも、そんな姿を皆に見せたくなかったから……本当にすまなかった!』
「魔理沙、それって」
『この指輪……受け取って貰えるか?』
「……」
『アリス?』
「うれしいっ!」
『お、おいおい、ルナサ達が見てるぜ』



「行こう、リリカ、メルラン」
「……そうだね」


 





私達は玄関の戸を開け、外に出た。
いつの間にか雨は上がり、草花に付いた水滴が日光を反射させて
森全体がキラキラと光っていた。

「姉さん、見て見て! 虹が出てるよ」

リリカが空を眺めて無邪気にはしゃぐ。
私達もつられて空を見上げる。そこには、空の端から端まで届くような、大きな虹が掛かっていた。。

「さあ、帰ろう」

私達は手を繋ぎ、七色の空に飛び出した。

虹はしばらくしたら消えてしまうだろう。
だが、私達姉妹の絆は虹よりも強く輝き、そして消えることは無い。


そんな私達を祝福するかのように、虹の光は大空高く煌いていた。





        終








 













~おまけ~


「ところで姉さん」
「うん?」
「アリスさん、最後マネキンと話してたけど……あれなに?」
「……さあ?」
「マネキンを魔理沙って呼んでたわね」
「バイオリンで殴打された挙句、コンチェルトグロッソをまともに喰らったし、
 頭のネジが外れちゃったのかな?」
「元々外れてた気もするけどな」
「裁判沙汰とかにならないよね?」
「……」
「……」





















<永遠亭 隔離病棟>


「それでね、魔理沙が私にプロポーズしてくれたのよ」

私はそう言いました。

「そう、それは良かったわね」

お医者さんはそう言いました。

「師匠、患者の容態は?」
「命には別状は無いわ。魔理沙が早めに見つけてくれたおかげでね、
 ただ、この状態からの回復となると、三分……いや、五分の確率ね」
「魔理沙……泣いてましたね」
「ええ、魔理沙の為にも私達は彼女を元に戻さなければならないのよ」
「師匠、頑張りましょう!」

お医者さんはそう言ってお部屋から出て行きました。
がしゃん とお部屋のドアに鍵が掛かる音がしました。

お空には大きな虹がかかっています。
外に出られればもっと綺麗に見えるのになぁ、と少し残念に思いました。






BAD ENDING.
 
もっとアリスに優しくしよう!
二回目の投稿になります、ら です。

長いですね。
最後まで読んで下さった方、お疲れ様でした。

アリスの扱いが酷いですが、
この話はオチの部分を最初に思いついたので、
どうしてもこうなってしまうのです。許してください。

感想、お待ちしております。
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コメント



0.3900簡易評価
9.90名前が無い程度の能力削除
>なあに、かえって免疫力がつく
いや、ちょ、これはww

最後まで笑わせてもらいました。
グッドエンドは勝手に想像させていただきまつw
20.80削除
うはっ、みんなテラヤバスwwwww
グッドエンドへの道は相当遠そうだ。アリスがんがれ、超がんがれ。
30.80名前が無い程度の能力削除
私には十分に暴走しているように見えるのですが…。ロリサ姉さん最高!!
32.60MIM.E削除
>「イエーイ、大体合ってるー!」
なぜか、ものすごくツボにはまりました
イエーイ 大体合ってるー!

ラストに少し驚きましたが……
楽しいひとときをありがとう。
40.90復路鵜削除
わはー、とてもアホな作品をありがとうございます。
首がへし折れたルナサさんがとてもステキ。
62.80名前が無い程度の能力削除
アリスが頑張れ・・・。
大変楽しく読ませていただきました。
65.90名前が無い程度の能力削除
ロリサ姉さんのダメダメッぷりがたまらないですw
66.90名前が無い程度の能力削除
アリス頑張れ……。
グッドエンドになるその日まで
67.80名前が無い程度の能力削除
笑ってしまったwww
アwwwwリwwwwスwwww
68.70名前が無い程度の能力削除
なんというハーメルンのルナサ。
アリスの最期に涙が隠せません。なんてこった。
71.100名前が無い程度の能力削除
アリスゥゥゥッー!www
82.100名前が無い程度の能力削除
やっぱり三姉妹は最高だなー。 苦労人の長女、お気楽な次女、姉いじりの三女、特にルナサのやられっぷりが圧巻!リリカ手加減してやれwww、メルラン・・ロリサってwww!! アリスも凄いことになってて最後はルナサが長女の威厳を魅せる!!素晴らしい作品有難う。
85.90名前が無い程度の能力削除
俺はアリスに愛を注ぐ