むか~しむかし、あるところに、気前のいい若者がおりました。
ところがこの若者、働けど働けど、一向に生活が良くなりませんでした。
霊夢「だって、誰もお賽銭入れてくれないし。」
ある日若者が寝ていると、枕元に観音様が現れました。
咲夜「これ、赤貧。」
霊夢「誰が赤貧よ!清貧って言いなさい!」
咲夜「清貧、って柄じゃないでしょう?まぁいいわ。今日は貴方に良いことを教えてあげます。」
霊夢「何?」
咲夜「旅に出なさい。そして、旅の中で最初に拾った物を、大切に持ち歩くのです。」
霊夢「それで?」
咲夜「そしたらあら不思議。貴方は必ず、そう、必ず幸せになるのです。」
霊夢「ふ~ん。」
咲夜「何よ。ノリが悪いわね。」
霊夢「何、あの兎みたいなこと言ってんのよ。誰がそんな事信じるのよ?」
咲夜「信じる信じないは貴方の勝手です。でも、うちのお嬢様の能力、お忘れかしら?」
霊夢「……む~。」
咲夜「まぁ、善は急げ、よ。さっさと出た出た。」
霊夢「わ!押さないでよ!」
観音様は、早く旅に出るようにと若者を促し、
寝ていた若者を転がしたり押したりして、外へと出します。
霊夢「ちょっと!準備の一つもさせてくれないって言うの!?」
咲夜「持っていくものなんて、何も無いでしょ?」
霊夢「ぐ……!」
咲夜「なお、未練が残らないよう、この家は消しておきます。妹様、お願いします。」
フランドール「は~い。」
屈強な仁王様っぽい人が現れました。
フランドール「それじゃあ、いくわよ。さん、にい、いち、はい。」
どかぁあああああん!
霊夢「あ~!!」
若者の家は、跡形もなく消し飛んでしまいました。
咲夜「それじゃあ、私たちはこれで失礼するわ。グッドラック。」
フランドール「またねぇ。」
霊夢「こら、待ちなさい!」
観音様と仁王様は、逃げるように消えてしまいました。
若者は不思議に思いましたが、観音様の言うことを信じて、(渋々)旅に出ることにしたのです。
霊夢「も~、とんだ観音様ね!仕方ない、とりあえずどっか行こう……って、うわっ!」
若者は、旅立ち早々、バナナの皮を踏んで、滑ってこけてしまいました。
幸先が良くありません。
霊夢「いたたたた……。バナナの皮なんて、そんなベタなもん置いてくなんて……ん?」
ふと気がつくと若者は、手に何かを握っていました。
霊夢「……これって、藁?」
そう、若者が握っていたのは、何の変哲も無い、唯の藁だったのです。
転んだ拍子で、うっかり拾ってしまったようです。
霊夢「こんなもんが、何になるって言うのかしら?」
観音様の言うことが正しければ、この藁を持っていれば、大金持ちになれるそうです。
しかし、若者は中々信じることが出来ません。
霊夢「そう言えば、お腹すいたわね…。」
無理矢理家を追い出されたので、若者は何も食べていませんでした。
何か食べれそうな物は無いかと思い、辺りを見回します。
すると、茂みで何かの気配を感じました。
霊夢「……そこっ!」
すかさず若者は、藁を投げました。
???「わ~~!痛い痛い~!」
茂みから悲鳴が聞こえました。
そして、何かが若者の前に姿を現しました。
リグル「ちょっと!いきなり何するのよ!何で私に藁なんかが刺さってるの!?」
霊夢「何だ、蟲かぁ。あんまり美味しそうじゃないわね。」
出てきたのは蟲です。
若者は持ち前の底力で、瞬時に藁を硬化させ、蟲に刺したようです。
狩って食べようとしたのでしょう。
若者のハングリー精神は、並々ならぬもののようです。
リグル「何でそこで残念そうな顔するの?大体、私を食べようだなんて百年はぶべらっ!」
霊夢「まぁ、食べないよりマシよね。どうしようも無くなったら食べましょ。」
仕方無く若者は、蟲にトドメを刺して、非常食として持ち歩くことにしました。
それから暫く、歩いていました。
霊夢「う~、お腹すいた~。これ食べようかしら?う~ん、でもなぁ。」
リグル「うぅ……。」
ちょっとお腹が空いてきた若者は、蟲を食べようかと思ったりしました。
と、そのときです。
?????「たべちゃ~うぞ たべちゃうぞ♪」
歌が聞こえてきました。
ふと、脇を見てみると、
ミスティア「いたずら 幽々子が 食べちゃうぞ~♪……わぁ~~!いやぁあああ!!」
文「もう、静かにしてください。」
泣き叫ぶ子供と、それをなだめている母親がいました。
霊夢「ちょっと。何か五月蝿いけど、どうしたのよ?」
文「ああ、実は子供がお腹を空かせてしまって……。」
ミスティア「バターたっぷり塗りつ~けて♪胡椒をパラパ~ラふりか~けて♪……いや!いやぁあああ!!」
霊夢「嘘でしょ?」
文「はい、冗談です。実は、さる貴族が、この子を追っていまして、必死で逃げてるんです。」
霊夢「……そんなお話だったっけ?」
若者は、母親から事情を聞きました。
どうやら、とある悪い貴族が、この子を狙っているようなのです。
母親はこの子を守るため、必死で逃げていると言うのです。
文「……とまぁ、そういう事情があって、色々恐怖体験をしたのですよ。」
ミスティア「おおき~な~♪おおきな~♪口あ~けて~♪……やぁあああああ!来ないでぇええええ!!」
霊夢「それで、怯えまくってるわけね。」
文「はい。あんまり五月蝿いと、一発でバレちゃいます。どうしたものやらと……。」
ミスティア「来てる~ぞゆゆこ♪ゆゆこがき~て~る~♪……ひぃぃぃいいい!!」
文「何か良い方法は無いですか?」
事情はわかりました。
でも、この子が泣きっぱなしだと、逃げるのもままなりません。
何か良い方法は無いか、若者は考えました。
霊夢「いい方法って言ったって……う~ん……。」
ミスティア「弾幕ごっこ♪勝ったら逃げろ♪」
霊夢「う~ん……。」
ミスティア「負けたらしょ~く~りょ~~~♪ぎゃああああああ!わぁああああああ!嗚呼アアアア!!」
霊夢「ああ五月蝿い!!これでも咥えて黙ってなさい!!」
ミスティア「ゴボッ………!?」
若者は子供の口に、さっき捕まえた蟲をいれてみました。
すると、どうでしょう。
文「あ、泣き止みました。」
さっきとは打って変わって、子供が静かになりました。
ミスティア「モゴモゴ……。」
文「なるほど。蟲は餌になりますし、お腹が膨れれば少しは落ち着くかもしれない。」
リグル「う~ん……。あれ、ここは…?」
ミスティア「モゴ?」
リグル「って、わ~~!何か知らないけど私食べられてる~~!?」
蟲が復活して暴れ出しましたが、弱ってるので大したことはありません。
子供は、蟲を咥えたまま、大人しくしています。
霊夢「何か、また五月蝿くなったみたいだけど、さっきよりはマシでしょ?」
文「そうですね。あ、これ。ほんのお礼です。」
母親は若者に、何かを手渡しました。
霊夢「なに、これ?」
文「から揚げ。」
霊夢「から揚げ?鳥の?ここって、蜜柑になるんじゃないの?」
文「むう…。不本意ながら、鳥のから揚げです。そして細かいことを気にしてはいけません。」
霊夢「まさかとは思うけど……。こいつの……。」
文「いえ。残念ですが、それはありません。既に出来ていたのを、
失礼させてもらっただけです。から揚げパーティーをやっていたらしくて。」
霊夢「まぁ、腹が減っては何とやらだしね。」
文「む。私は鳥は食べません!」
霊夢「じゃあ、何で盗ってきたのよ?」
文「いや、路銀の代わりになるかな、って思って。」
手渡されたのは、美味しそうなから揚げです。
どうやら、食材は母親だったりこの子だったりしていることは無いようです。
霊夢「から揚げパーティーねぇ。ひょっとしてこいつ、材料にされかかったの?」
文「それは、まぁ……はい。」
霊夢「ひょっとして、あんたも?」
文「実は……鴉は臭みが強いから、いらないって……。酷いと思いませんか?」
霊夢「う~ん、とても微妙な気持ちになれるわね…。」
何か、色々複雑な事情があるようですが、若者は深く考えるのをやめました。
文「とにかく、助けて貰って、ありがとうございました。」
ミスティア「ングング……。」
リグル「た~す~け~て~!」
母親は若者にお礼を言うと、子供を連れて去って行きました。
気がつけば、藁が蟲に、蟲が鳥のから揚げになっていました。
霊夢「ん~、まぁいいか。」
とりあえずお腹が空いたので、鳥のから揚げを食べることにしました。
霊夢「………って、から揚げが無い?」
何故か、さっきまで手に持っていたはずのから揚げが、綺麗さっぱり無くなっていました。
??「ん~、この肉の柔らかさ、このジューシーな味。」
横から声がしました。
その声の正体は…。
萃香「酒によく合うねぇ。うんうん。」
どっかの娘さんでした。
何か、酔っ払っているような気がします。
霊夢「ちょっと!勝手に私のから揚げ食べないでよ!」
萃香「まあまあ。ちょうど酒のつまみが欲しかったところだから。」
霊夢「こっちはお腹が空いてるの!朝から何も食べてないんだからね!」
萃香「大丈夫。人間なら二、三日食べなくても生きてられるよ。」
霊夢「そういう問題じゃないでしょ!」
萃香「あ~も~、ああ言えばこう言う。」
霊夢「それはこっちの台詞だってば!覚悟しなさい!」
萃香「え?あ、ちょっと何するの~!?」
若者は空腹の余りブチ切れてしまい、娘さんに襲い掛かりました。
霊夢「食べ物の恨み!これで良いからよこしなさい!」
萃香「あ、それ駄目だってば!」
霊夢「うるさい!」
若者は娘さんを殴り倒して、お酒を強奪しました。
霊夢「……お酒じゃお腹が膨れないじゃないのよ、も~……。」
萃香「きゅう………。」
ぶっ倒れた娘さんの屍を拾う者は居ません。
空腹のままの若者は、お酒を持ってさらに道を行きます。
霊夢「て言うか、ここって、お酒じゃなくて絹か何かだったような気がする。」
何か違和感を感じているようですが、空腹のせいですぐに忘れてしまいました。
さて、しばらく歩いていると、今度は、
幽香「ほれ、きりきり走りなさい、馬車馬の如く。」
小町「だから馬の役だって。て言うか、何であたいがあんたの馬何かやらされてるんだ?」
幽香「文句言う馬は、この鞭で尻を引っ叩くわよ。」
小町「ぐ、き、きりきり走らせていただきます……。」
幽香「あら残念。そっちのが好きだと思ったんだけど。」
小町「好きなもんか!」
メディスン「そっちって、何?」
小町「あ~いや、あんたは知らん方がいい。」
幽香「鞭で叩くか叩かれるか。」
何やら、騒がしいご一行が現れました。
見たところ、何処かのお侍さんとその従者と、馬のようです。
ご一行は、若者の方へ向かって来ます。
幽香「赤貧や~、そこのけそこのけ御馬が通る~。」
霊夢「赤貧とか言うな!」
小町「あ~もう、何かいい加減疲れてきた……。」
幽香「こら馬。スピードが落ちてるわよ。」
小町「無茶言わないでくれ。もう、喉が渇いて……限界だよ……。」
幽香「軟弱。でも、簡単に水や食料が見つかると思わないことね。」
小町「そんな酷い。重労働超えて虐待じゃないか……。」
馬は頑丈そうに見えますが、だいぶ疲れているようです。
このままでは、倒れてしまうかもしれません。
幽香「と、言うことなのです、そこの赤貧。」
霊夢「だから赤貧言うなって。」
幽香「じゃあ一文無し。何か持ってないかしら?」
メディスン「一文無しって、何も持ってない人って意味じゃなかった?」
霊夢「持ってるわよ!………まぁ、持ってるのは一文の価値はあると思うお酒だけなんだけど。」
幽香「あ、それでいいわ。いただくわね。」
霊夢「あ、こら!」
お侍さんは、若者から酒をふんだくりました。
幽香「はい、これでも飲んで元気出しなさい。」
小町「ングッ!」
メディスン「死神の、あ弱った~ところ見てみたい~。」
幽香「それいっき、いっき!」
小町「ングッ!ング!」
馬は無理矢理、お侍さんに酒を飲まされました。
従者は何処で覚えたのか、一気飲みを煽るような音頭を
良い子は、余り真似をしてはいけません。
小町「ぷは~!い、いきなりにゃにするんにゃほたま~……。」
幽香「あれ?一撃?」
霊夢「…あいつ、今日に限って強いの飲んでたのね……。」
小町「はにゃ?ひょへはでわふへはひゃけてばぐえあんえわ…。」
馬はいい感じに酔っ払ってしまいました。
幽香「むむむ。これじゃあ使いものにはならないわね。」
メディスン「むむむ。どうしようスーさん?」
霊夢「何がむむむよ。馬はこっちでしょ?」
小町「つぁおつぁおころしゅ~!ちね~!えはは~!」
幽香「こうなっちゃあ仕方ないわね。馬は捨てて行きましょ。」
メディスン「は~い。」
お侍さんと従者は、馬を放っておいて、歩いて行くことにしました。
幽香「二人旅の面子は……君と代だ。」
メディスン「雷は恐いと思います。」
幽香「では、日本の国歌は?」
メディスン「君が代だ!」
幽香「合格。」
メディスン「わ~い!」
何やら話をしながら、二人は若者の前から去ってしまいました。
残ったのは若者と馬だけです。
霊夢「……わけがわかんないわ。って、私が言っても説得力無いような気もするけど。」
小町「う……ぷ……。」
霊夢「ん?」
小町「お……おえ……!」
霊夢「わ~!ここで吐くな~!!」
暫くお待ちください。
・
・
・
小町「う゛~……。」
霊夢「ちょっと、大丈夫?」
若者は、弱った馬の面倒を診ていました。
その甲斐あってか、少し良くなってきたようです。
小町「あ゛~、なんとか。ちょっとすっきりした。悪いね、背中さすって貰って。」
霊夢「いいけどね。」
小町「あ~、でもどうしよう?清々したけど、結果的に捨てられたしな~。」
霊夢「野生に帰れば?」
小町「あ~?このサラブレッドに向かって、その言い草は無いだろう。」
霊夢「道産子。」
小町「まぁいい。面倒見て貰った恩もある。お前の目的地まで乗せて行ってやるよ。」
霊夢「別に目的地も無いんだけど。まぁ、楽出来るからいいわ。」
若者は、馬を連れて行くことにしました。
たった一本の藁が蟲になり、から揚げになり、お酒になり、そして今、立派な馬になったのです。
馬に乗った若者は、大きな屋敷の前を通りかかりました。
四季「よいしょ。……っと、と。」
中から、大荷物を抱えた、長者さんらしき人が出てきました。
足がふらついていて、見ていて危なっかしいです。
小町「危なっかしいなぁ。」
霊夢「まぁ、普段力仕事しなさそうだしね。放っておいていいの?」
小町「う~ん、手伝いたいところなんだが、もう少し見てもいたいんだよなぁ……。」
四季「こら。」
小町「ひん!」
霊夢「あ、ちょっと馬っぽい。」
若者と馬が様子を見ていると、長者さんが話しかけてきました。
四季「人が働いている所をただ見るだけなど、悪趣味甚だしい。少しは手伝おうと言う気は無いのですか?」
霊夢「無い。」
小町「すいません、すいません。手伝わせていただきます~。」
四季「ん。小町……じゃなくて、そこの馬は良い心がけです。そこの赤貧。少し、馬を借りますよ。」
霊夢「はいはい。もう何も言わないわ。」
四季「……貴方は、ここで少し徳を積んでおこうと思わないの?」
霊夢「無い。大体、私最初から何も食べてないんだから、今力仕事何かしたら空腹で倒れるわ。」
四季「それでは、少し休憩にしますから、ご飯を食べていきなさい。」
霊夢「え、いいの?やった!」
四季「終わったら手伝って貰いますけどね。」
長者さん一人では大変なので、若者は長者さんに馬を貸して、自分も手伝うことにしました。
でもとりあえず、長者さんのお屋敷にお邪魔して、ご飯を頂きました。
霊夢「で、どういう仕事なの?」
四季「引越しです。屋敷の中の荷物を、外に運び出してください。」
霊夢「一人で?手伝いとか居なかったの?」
四季「それなら……そこに。」
霊夢「ん?」
長者さんは、隣の部屋を指差しました。
チルノ「重い~!動けない~!助けて~!」
ルーミア「暗くて何も見えないよ~あ痛!……う~、またぶつかった~……。」
見ると、お手伝いさんらしき人たちが、荷物に潰されて助けを求めていたり、
目が見えないせいか、荷物を持ったまま壁にぶつかったりしていました。
霊夢「…人選ミスね。」
四季「人選ミスです。一人でやった方がよかったのかもしれませんね。」
小町「まあ、ここは私らに、ドンとまかせてください。万馬券買ったつもりで。」
四季「それでどうやって、ドンと構えることが出来るのかしら?」
お手伝いの人たちが役に立たないので、結構大変そうです。
それでも何とか、全ての荷物を運び出すことが出来ました。
霊夢「ふ~、疲れた。」
四季「ご苦労様。良いことをしました。これからも、地味で良いですから善行を積むことです。」
霊夢「それはいいけど、この荷物、外に出しただけでどうするのよ?」
四季「ああ、それは……。」
長者さんが、どうするか言いかけたとき、
紫「他社よりお得で速い、クロネコヤクモの宅急便、引越しサービスでございま~す。」
霊夢「……なるほど。」
業者さんが現れました。
四季「ああ、ご苦労様です。早速ですが、お願いしますね。」
紫「心得ましたわ。」
業者さんは、あっと言う間に、荷物を片付けてしまいました。
何か、「吸われる~!たすけて~!」とか声がしたり、
覚えの無い黒い塊を持って行ったりしたようですが、これで引越しは終わりのようです。
霊夢「でも、これなら最初からあんたがやった方が良かったんじゃない?」
紫「分かってないわねぇ。荷物を一箇所に集めて置いたほうが楽なの。色々と。」
四季「それでは、ここまで運んでください。領収書は『小野塚 小町』で。」
小町「何でですか!?」
紫「それでは、後で取り立てに参りますわ。」
業者さんは帰って行きました。
四季「さて、私は行かねばならないのですが…。善行ついでに、もう一つ頼みを聞いてくれますか?」
霊夢「何?」
四季「新しい屋敷までは遠いので、貴方の馬を是非、譲って欲しいのです。」
小町「あ~、何かまたこき使われそうな、そんな予感が……。」
四季「何か?」
小町「あ~、いえ、何でもないです、ヒヒン。」
ここまでの作業で、この馬を気に入ってしまった長者さんは、
若者に馬を譲って欲しいと持ちかけました。
霊夢「まぁ、元々そっちのもんだし、譲るって言うのも何だと思うけど。」
四季「では、よろしいのですね?」
霊夢「好きにしていいわよ。あ、これ。躾のための鞭ね。」
四季「鞭ですか。………ふっ。」
小町「い、いやだなぁ四季さま。そんなん持って、こっち見て、流し目で、笑わないで下さいよ~。」
四季「ご主人様とお呼び。」
小町「ひっ!こ、怖っ!」
若者は、それを快諾しました。
長者さんは大喜びです。
四季「感謝します。……ふむ、善行を積み重ねた者には、相応の報いがあって然るべきですね。」
長者さんは少し考えると、若者に向かって言いました。
四季「この屋敷を、貴方に差し上げましょう。」
小町「おお、何と太っ腹な。流石四季さま!」
四季「ご主人様とお呼び。」
小町「ひん!…よ、ご主人様太っ腹!」
何と長者さんは、このお屋敷と土地を、若者に譲ると言うのです!
霊夢「あ~、それは有り難いんだけど、中には何も無いんでしょ?」
四季「と、ここに少々のお金が有りますから、好きに使いなさい。」
霊夢「え?ほんと?」
小町「って、それ私のへそくりじゃないですか~~!!」
四季「私の物は私の物。馬の物も私の物。私が進呈した物は、彼女の物なのです。」
小町「とほほ……地味にコツコツ溜めといたのに……。」
四季「さあ、行くわよ。」
小町「ひひ~ん……。」
霊夢「有効に使わせて貰うわね~。」
若者は喜んで、屋敷とお金を受け取りました。
たった一本の藁が、でっかい蟲に。
その蟲が、鳥のから揚げに。
鳥のから揚げが、一文程度の価値はあるだろうお酒に。
お酒が、道産子かサラブレッドか分からないけど、とにかく立派な馬に。
そしてその馬が、何と大きな屋敷になったのです。
霊夢「何か出来すぎてる気がするけど、まぁいいか。」
屋敷には大きな畑もあったので、若者はそれを耕して暮らしました。
若者はとてもよく働いたので、お金はあっと言う間に稼ぐことが出来ました。
働き者な若者の話を聞いた人たちは、彼のことを尊敬しました。
人々は、藁一本からお金持ちになったこの若者のことを、『わらしべ長者』と言って、敬いました。
わらしべ長者は、美人の嫁さんを貰ったりして、幸せに暮らしたそうです。
めでたし めでたし
アリス「と、言いたい所だけど。」
霊夢「何?」
ある夜、わらしべ長者は、嫁さんと話をしていました。
アリス「いや、特に何にも無いから、もう一波乱あるんじゃないかなぁ、って。」
霊夢「不吉なこと言わないでよ。」
アリス「と言うわけで、はい、離婚届。」
霊夢「早いわねえ、別れるの。」
アリス「善は急げ、よ。はい、さっさとここに血判を……。」
……~ン ズ……ン
夫婦水入らずの離婚相談中、外から何やら音がしてきました。
アリス「………。」
霊夢「血判って、それ何かの契約書なの?」
アリス「結婚なんて、一種の契約でしょ?血痕も同じ響きだし、血塗れた物なのよ。きっと。」
霊夢「ふうん。……で、この、外から聞こえる音は何なのかしら?」
アリス「あら、聞いてない?この付近を彷徨う死霊の噂。」
霊夢「死霊?」
ズシ…ン ズシ~…
音は、どんどん大きくなっています。
アリス「数年前、とある女の子が暴漢に襲われて、持っていた物を盗られたらしいのよ。」
霊夢「うん。」
アリス「で、その女の子は死んだんだけど、その霊は夜な夜な盗られた物を求めて彷徨っている。」
霊夢「それで?」
アリス「この音、実はその女の子の霊が起こしているもの、ですって。」
ズシ~ン ズシ~ン
音がはっきりと聴こえてきました。
地響きもしています。
霊夢「で、何でその霊が、こっちに向かっているような錯覚に囚われてしまうのかしら?」
アリス「知らない。けど、それを踏まえて、今日は離婚届を……。」
ズシ~ン!ズシ~ン!
アリス「……遅かったか。」
??「で~い!」
嫁さんがつぶやくと同時に、屋敷の屋根に穴が開きました。
その穴から、巨大なお化けが顔を出したのです。
萃香「お酒かえせ~~!お酒~~!」
霊夢「げっ!」
わらしべ長者は、びっくりしました。
何と彷徨う霊の正体とは、昔わらしべ長者が殴り倒した娘さんだったのです。
萃香「さ~け~さ~け~!酒かえせ~!」
霊夢「それくらいで何時までも根に持ってんじゃないわよ!」
アリス「やっぱりあんたが原因だったのね。」
萃香「さ~け~!」
アリス「とりあえず離婚届けと、ああ、あと死亡保険に印しといて。」
霊夢「……このままじゃ、あんたも巻き添え食らうわけだけどね。」
娘さんの霊が大暴れしているので、屋敷が崩れ始めました。
霊夢「脱出は………無理か。」
アリス「まぁ、こんなこともあろうかと抜け道作っておいたから。私はここから失礼するわ。」
霊夢「何時の間にそんなの作ったのよ?って言うか、私も逃げるってば!」
アリス「だ~め。離婚届と死亡保険と魔理沙からの借り物の担保としての誓約書と………。」
霊夢「何か嫌な紙切れが増えて来てるし!」
萃香「酒!ファイヤーーー!!」
娘さんの霊が、屋敷に放火しました。
屋敷は真っ赤に燃え上がりました。
霊夢「熱い熱い!いや、ほんと死ぬから開けなさい!」
アリス「残念だけど……たった今、某観音様からお告げがあって、ここは死ぬのが正解だって。」
霊夢「何よそれ~~!?」
アリス「酒の恨みは恐いのね。よく覚えておくわ。」
霊夢「待ちなさぐふっ!」
萃香「捕まえたわよ~。酒の代わりに喰ってやるわ~。あ~ん。」
霊夢「わ~!私を食べても美味しくもなんとも……!」
ぱくっ!
お屋敷は焼かれ、嫁さんには逃げられ。
最早霊とは言えない怪獣に喰われて、わらしべ長者は死んでしまいました……。
・
・
・
何も無い空間。
わらしべ長者は、その空間を、漂っていました。
霊夢「で、ここは何処なのよ?」
怪獣に食べられて、気がつけばこんな所に居たのです。
状況がさっぱり飲み込めません。
と、そのときです
咲夜「これ、一文無し。」
目の前に、観音様が現れました。
霊夢「誰が一文無しよ!」
咲夜「何も持ってないじゃない。」
霊夢「これでも立派なお屋敷貰ったんだからね!………って、あれ?」
思い出しました。
お屋敷は、大怪獣の出現によって、焼かれてしまったことを……。
咲夜「貴方は、嫁に逃げられ家を焼かれ、そして怪獣に食べられて死んでしまったのです。」
霊夢「………何よ。必ず幸せになれるって言っておいて、こんなオチなの?」
咲夜「そう結果を急がないの。とりあえず、貴方に会いたいって人が居るから、会ってみて。」
霊夢「誰よ?」
??「ふっふっふ………。」
観音様の後ろから、誰かが現れました。
てゐ「私は人呼んで、飯食詐乙女(いくさおとめ)!」
霊夢「いくさおとめ?」
何か、明らかに怪しい、人は、自称『飯食詐乙女』と言うそうです。
飯食詐乙女は、わらしべ長者に話かけます。
てゐ「貴方は選ばれたのです。さあ、私と一緒に逝きましょう。」
霊夢「逝くって、何処に?」
咲夜「詳しくは、うさぎとかめに聞いてみなさい。」
てゐ「大丈夫大丈夫。私を信じなさいって。信じると救われるのよ。私が。」
霊夢「私は救われない気がするんだけど?」
てゐ「ぶつくさ言わずに、さっさと来る!」
霊夢「あ、こら!離しなさい!」
咲夜「お幸せにね~。」
飯食詐乙女は、何かと文句を言っているわらしべ長者を引っ張って行きます。
観音様は、それを生暖かく見送りました。
二人は何も無い空間を出て、とある場所に着きました。
幽々子「あら、これが今回の食材?」
てゐ「う~ん、先日良い食材を根こそぎゲットしちゃったもんで……。」
霊夢「まさかとは思うけど……。ここって……。」
てゐ「遠まわしに言うなら天国。ぶっちゃけて言うならヴァル腹ね。」
霊夢「やっぱり~!」
幽々子「まぁ、食べれない程度の物じゃないからいいか。」
そこには、物凄く偉そうな、威厳に溢れる人が居ました。
どっかの貴族っぽくも見えますが、とりあえず便宜上、O-ディン様とでも呼んでおきましょう。
霊夢「何でこんなネタ引っ張ってんのよ!?」
幽々子「お気に入り?」
てゐ「お気に入り。」
霊夢「誰の?」
幽々子「とりあえず、後でまとめて食べるから、食料庫に入れといて。」
妖夢「畏まりました。」
霊夢「は~な~せ~!」
幽々子「今回の貴方の働きは………まあまあね。」
てゐ「へい。今度はもっと精進いたしやす。」
わらしべ長者は、料理人らしき人に連れられて、どっかに案内されました。
その後、わらしべ長者は天国、別名ヴァル腹で、幸せに暮らし……たかどうかは、誰も知りません。
でも、観音様が、必ず幸せになれると言ったのですから、きっと幸せに暮らしたのでしょう。
リグル「あ~ん、二回も食べられるなんて嫌だ~!」
ミスティア「食べられちゃ~うぞ♪食べられちゃうぞ♪ひぃぃぃいいいいいやぁああああああ!!」
文「う~ん、ここからの決死の脱出劇、記事になるかな?あ、お久しぶりです。」
小町「馬役なだけだよあたいは!何でこんなとこ居なきゃいけないんだ!?」
霊夢「……………。」
どっかで見たような連中と一緒に、暮らすことになるようです。
多分、きっと、恐らく、彼は天国で幸せに……。
霊夢「幸せになんかなれるか~~~~!!!」
おしまい
キャスト
わらしべ長者 ・・・ 博麗 霊夢
観音様 ・・・ 十六夜 咲夜
仁王様 ・・・ フランドール・スカーレット
蟲 ・・・ リグル・ナイトバグ
子供 ・・・ ミスティア・ローレライ
母親 ・・・ 射命丸 文
娘さん ・・・ 伊吹 萃香
お侍さん ・・・ 風見 幽香
馬 ・・・ 小野塚 小町
従者 ・・・ メディスン・メランコリー
長者さん ・・・ 四季映姫・ヤマザナドゥ
お手伝い1 ・・・ チルノ
お手伝い2 ・・・ ルーミア
業者さん ・・・ 八雲 紫
嫁さん ・・・ アリス・マーガトロイド
飯食詐乙女 ・・・ 因幡 てゐ
Oーディン様 ・・・ 西行寺 幽々子
料理人 ・・・ 魂魄 妖夢
ところがこの若者、働けど働けど、一向に生活が良くなりませんでした。
霊夢「だって、誰もお賽銭入れてくれないし。」
ある日若者が寝ていると、枕元に観音様が現れました。
咲夜「これ、赤貧。」
霊夢「誰が赤貧よ!清貧って言いなさい!」
咲夜「清貧、って柄じゃないでしょう?まぁいいわ。今日は貴方に良いことを教えてあげます。」
霊夢「何?」
咲夜「旅に出なさい。そして、旅の中で最初に拾った物を、大切に持ち歩くのです。」
霊夢「それで?」
咲夜「そしたらあら不思議。貴方は必ず、そう、必ず幸せになるのです。」
霊夢「ふ~ん。」
咲夜「何よ。ノリが悪いわね。」
霊夢「何、あの兎みたいなこと言ってんのよ。誰がそんな事信じるのよ?」
咲夜「信じる信じないは貴方の勝手です。でも、うちのお嬢様の能力、お忘れかしら?」
霊夢「……む~。」
咲夜「まぁ、善は急げ、よ。さっさと出た出た。」
霊夢「わ!押さないでよ!」
観音様は、早く旅に出るようにと若者を促し、
寝ていた若者を転がしたり押したりして、外へと出します。
霊夢「ちょっと!準備の一つもさせてくれないって言うの!?」
咲夜「持っていくものなんて、何も無いでしょ?」
霊夢「ぐ……!」
咲夜「なお、未練が残らないよう、この家は消しておきます。妹様、お願いします。」
フランドール「は~い。」
屈強な仁王様っぽい人が現れました。
フランドール「それじゃあ、いくわよ。さん、にい、いち、はい。」
どかぁあああああん!
霊夢「あ~!!」
若者の家は、跡形もなく消し飛んでしまいました。
咲夜「それじゃあ、私たちはこれで失礼するわ。グッドラック。」
フランドール「またねぇ。」
霊夢「こら、待ちなさい!」
観音様と仁王様は、逃げるように消えてしまいました。
若者は不思議に思いましたが、観音様の言うことを信じて、(渋々)旅に出ることにしたのです。
霊夢「も~、とんだ観音様ね!仕方ない、とりあえずどっか行こう……って、うわっ!」
若者は、旅立ち早々、バナナの皮を踏んで、滑ってこけてしまいました。
幸先が良くありません。
霊夢「いたたたた……。バナナの皮なんて、そんなベタなもん置いてくなんて……ん?」
ふと気がつくと若者は、手に何かを握っていました。
霊夢「……これって、藁?」
そう、若者が握っていたのは、何の変哲も無い、唯の藁だったのです。
転んだ拍子で、うっかり拾ってしまったようです。
霊夢「こんなもんが、何になるって言うのかしら?」
観音様の言うことが正しければ、この藁を持っていれば、大金持ちになれるそうです。
しかし、若者は中々信じることが出来ません。
霊夢「そう言えば、お腹すいたわね…。」
無理矢理家を追い出されたので、若者は何も食べていませんでした。
何か食べれそうな物は無いかと思い、辺りを見回します。
すると、茂みで何かの気配を感じました。
霊夢「……そこっ!」
すかさず若者は、藁を投げました。
???「わ~~!痛い痛い~!」
茂みから悲鳴が聞こえました。
そして、何かが若者の前に姿を現しました。
リグル「ちょっと!いきなり何するのよ!何で私に藁なんかが刺さってるの!?」
霊夢「何だ、蟲かぁ。あんまり美味しそうじゃないわね。」
出てきたのは蟲です。
若者は持ち前の底力で、瞬時に藁を硬化させ、蟲に刺したようです。
狩って食べようとしたのでしょう。
若者のハングリー精神は、並々ならぬもののようです。
リグル「何でそこで残念そうな顔するの?大体、私を食べようだなんて百年はぶべらっ!」
霊夢「まぁ、食べないよりマシよね。どうしようも無くなったら食べましょ。」
仕方無く若者は、蟲にトドメを刺して、非常食として持ち歩くことにしました。
それから暫く、歩いていました。
霊夢「う~、お腹すいた~。これ食べようかしら?う~ん、でもなぁ。」
リグル「うぅ……。」
ちょっとお腹が空いてきた若者は、蟲を食べようかと思ったりしました。
と、そのときです。
?????「たべちゃ~うぞ たべちゃうぞ♪」
歌が聞こえてきました。
ふと、脇を見てみると、
ミスティア「いたずら 幽々子が 食べちゃうぞ~♪……わぁ~~!いやぁあああ!!」
文「もう、静かにしてください。」
泣き叫ぶ子供と、それをなだめている母親がいました。
霊夢「ちょっと。何か五月蝿いけど、どうしたのよ?」
文「ああ、実は子供がお腹を空かせてしまって……。」
ミスティア「バターたっぷり塗りつ~けて♪胡椒をパラパ~ラふりか~けて♪……いや!いやぁあああ!!」
霊夢「嘘でしょ?」
文「はい、冗談です。実は、さる貴族が、この子を追っていまして、必死で逃げてるんです。」
霊夢「……そんなお話だったっけ?」
若者は、母親から事情を聞きました。
どうやら、とある悪い貴族が、この子を狙っているようなのです。
母親はこの子を守るため、必死で逃げていると言うのです。
文「……とまぁ、そういう事情があって、色々恐怖体験をしたのですよ。」
ミスティア「おおき~な~♪おおきな~♪口あ~けて~♪……やぁあああああ!来ないでぇええええ!!」
霊夢「それで、怯えまくってるわけね。」
文「はい。あんまり五月蝿いと、一発でバレちゃいます。どうしたものやらと……。」
ミスティア「来てる~ぞゆゆこ♪ゆゆこがき~て~る~♪……ひぃぃぃいいい!!」
文「何か良い方法は無いですか?」
事情はわかりました。
でも、この子が泣きっぱなしだと、逃げるのもままなりません。
何か良い方法は無いか、若者は考えました。
霊夢「いい方法って言ったって……う~ん……。」
ミスティア「弾幕ごっこ♪勝ったら逃げろ♪」
霊夢「う~ん……。」
ミスティア「負けたらしょ~く~りょ~~~♪ぎゃああああああ!わぁああああああ!嗚呼アアアア!!」
霊夢「ああ五月蝿い!!これでも咥えて黙ってなさい!!」
ミスティア「ゴボッ………!?」
若者は子供の口に、さっき捕まえた蟲をいれてみました。
すると、どうでしょう。
文「あ、泣き止みました。」
さっきとは打って変わって、子供が静かになりました。
ミスティア「モゴモゴ……。」
文「なるほど。蟲は餌になりますし、お腹が膨れれば少しは落ち着くかもしれない。」
リグル「う~ん……。あれ、ここは…?」
ミスティア「モゴ?」
リグル「って、わ~~!何か知らないけど私食べられてる~~!?」
蟲が復活して暴れ出しましたが、弱ってるので大したことはありません。
子供は、蟲を咥えたまま、大人しくしています。
霊夢「何か、また五月蝿くなったみたいだけど、さっきよりはマシでしょ?」
文「そうですね。あ、これ。ほんのお礼です。」
母親は若者に、何かを手渡しました。
霊夢「なに、これ?」
文「から揚げ。」
霊夢「から揚げ?鳥の?ここって、蜜柑になるんじゃないの?」
文「むう…。不本意ながら、鳥のから揚げです。そして細かいことを気にしてはいけません。」
霊夢「まさかとは思うけど……。こいつの……。」
文「いえ。残念ですが、それはありません。既に出来ていたのを、
失礼させてもらっただけです。から揚げパーティーをやっていたらしくて。」
霊夢「まぁ、腹が減っては何とやらだしね。」
文「む。私は鳥は食べません!」
霊夢「じゃあ、何で盗ってきたのよ?」
文「いや、路銀の代わりになるかな、って思って。」
手渡されたのは、美味しそうなから揚げです。
どうやら、食材は母親だったりこの子だったりしていることは無いようです。
霊夢「から揚げパーティーねぇ。ひょっとしてこいつ、材料にされかかったの?」
文「それは、まぁ……はい。」
霊夢「ひょっとして、あんたも?」
文「実は……鴉は臭みが強いから、いらないって……。酷いと思いませんか?」
霊夢「う~ん、とても微妙な気持ちになれるわね…。」
何か、色々複雑な事情があるようですが、若者は深く考えるのをやめました。
文「とにかく、助けて貰って、ありがとうございました。」
ミスティア「ングング……。」
リグル「た~す~け~て~!」
母親は若者にお礼を言うと、子供を連れて去って行きました。
気がつけば、藁が蟲に、蟲が鳥のから揚げになっていました。
霊夢「ん~、まぁいいか。」
とりあえずお腹が空いたので、鳥のから揚げを食べることにしました。
霊夢「………って、から揚げが無い?」
何故か、さっきまで手に持っていたはずのから揚げが、綺麗さっぱり無くなっていました。
??「ん~、この肉の柔らかさ、このジューシーな味。」
横から声がしました。
その声の正体は…。
萃香「酒によく合うねぇ。うんうん。」
どっかの娘さんでした。
何か、酔っ払っているような気がします。
霊夢「ちょっと!勝手に私のから揚げ食べないでよ!」
萃香「まあまあ。ちょうど酒のつまみが欲しかったところだから。」
霊夢「こっちはお腹が空いてるの!朝から何も食べてないんだからね!」
萃香「大丈夫。人間なら二、三日食べなくても生きてられるよ。」
霊夢「そういう問題じゃないでしょ!」
萃香「あ~も~、ああ言えばこう言う。」
霊夢「それはこっちの台詞だってば!覚悟しなさい!」
萃香「え?あ、ちょっと何するの~!?」
若者は空腹の余りブチ切れてしまい、娘さんに襲い掛かりました。
霊夢「食べ物の恨み!これで良いからよこしなさい!」
萃香「あ、それ駄目だってば!」
霊夢「うるさい!」
若者は娘さんを殴り倒して、お酒を強奪しました。
霊夢「……お酒じゃお腹が膨れないじゃないのよ、も~……。」
萃香「きゅう………。」
ぶっ倒れた娘さんの屍を拾う者は居ません。
空腹のままの若者は、お酒を持ってさらに道を行きます。
霊夢「て言うか、ここって、お酒じゃなくて絹か何かだったような気がする。」
何か違和感を感じているようですが、空腹のせいですぐに忘れてしまいました。
さて、しばらく歩いていると、今度は、
幽香「ほれ、きりきり走りなさい、馬車馬の如く。」
小町「だから馬の役だって。て言うか、何であたいがあんたの馬何かやらされてるんだ?」
幽香「文句言う馬は、この鞭で尻を引っ叩くわよ。」
小町「ぐ、き、きりきり走らせていただきます……。」
幽香「あら残念。そっちのが好きだと思ったんだけど。」
小町「好きなもんか!」
メディスン「そっちって、何?」
小町「あ~いや、あんたは知らん方がいい。」
幽香「鞭で叩くか叩かれるか。」
何やら、騒がしいご一行が現れました。
見たところ、何処かのお侍さんとその従者と、馬のようです。
ご一行は、若者の方へ向かって来ます。
幽香「赤貧や~、そこのけそこのけ御馬が通る~。」
霊夢「赤貧とか言うな!」
小町「あ~もう、何かいい加減疲れてきた……。」
幽香「こら馬。スピードが落ちてるわよ。」
小町「無茶言わないでくれ。もう、喉が渇いて……限界だよ……。」
幽香「軟弱。でも、簡単に水や食料が見つかると思わないことね。」
小町「そんな酷い。重労働超えて虐待じゃないか……。」
馬は頑丈そうに見えますが、だいぶ疲れているようです。
このままでは、倒れてしまうかもしれません。
幽香「と、言うことなのです、そこの赤貧。」
霊夢「だから赤貧言うなって。」
幽香「じゃあ一文無し。何か持ってないかしら?」
メディスン「一文無しって、何も持ってない人って意味じゃなかった?」
霊夢「持ってるわよ!………まぁ、持ってるのは一文の価値はあると思うお酒だけなんだけど。」
幽香「あ、それでいいわ。いただくわね。」
霊夢「あ、こら!」
お侍さんは、若者から酒をふんだくりました。
幽香「はい、これでも飲んで元気出しなさい。」
小町「ングッ!」
メディスン「死神の、あ弱った~ところ見てみたい~。」
幽香「それいっき、いっき!」
小町「ングッ!ング!」
馬は無理矢理、お侍さんに酒を飲まされました。
従者は何処で覚えたのか、一気飲みを煽るような音頭を
良い子は、余り真似をしてはいけません。
小町「ぷは~!い、いきなりにゃにするんにゃほたま~……。」
幽香「あれ?一撃?」
霊夢「…あいつ、今日に限って強いの飲んでたのね……。」
小町「はにゃ?ひょへはでわふへはひゃけてばぐえあんえわ…。」
馬はいい感じに酔っ払ってしまいました。
幽香「むむむ。これじゃあ使いものにはならないわね。」
メディスン「むむむ。どうしようスーさん?」
霊夢「何がむむむよ。馬はこっちでしょ?」
小町「つぁおつぁおころしゅ~!ちね~!えはは~!」
幽香「こうなっちゃあ仕方ないわね。馬は捨てて行きましょ。」
メディスン「は~い。」
お侍さんと従者は、馬を放っておいて、歩いて行くことにしました。
幽香「二人旅の面子は……君と代だ。」
メディスン「雷は恐いと思います。」
幽香「では、日本の国歌は?」
メディスン「君が代だ!」
幽香「合格。」
メディスン「わ~い!」
何やら話をしながら、二人は若者の前から去ってしまいました。
残ったのは若者と馬だけです。
霊夢「……わけがわかんないわ。って、私が言っても説得力無いような気もするけど。」
小町「う……ぷ……。」
霊夢「ん?」
小町「お……おえ……!」
霊夢「わ~!ここで吐くな~!!」
暫くお待ちください。
・
・
・
小町「う゛~……。」
霊夢「ちょっと、大丈夫?」
若者は、弱った馬の面倒を診ていました。
その甲斐あってか、少し良くなってきたようです。
小町「あ゛~、なんとか。ちょっとすっきりした。悪いね、背中さすって貰って。」
霊夢「いいけどね。」
小町「あ~、でもどうしよう?清々したけど、結果的に捨てられたしな~。」
霊夢「野生に帰れば?」
小町「あ~?このサラブレッドに向かって、その言い草は無いだろう。」
霊夢「道産子。」
小町「まぁいい。面倒見て貰った恩もある。お前の目的地まで乗せて行ってやるよ。」
霊夢「別に目的地も無いんだけど。まぁ、楽出来るからいいわ。」
若者は、馬を連れて行くことにしました。
たった一本の藁が蟲になり、から揚げになり、お酒になり、そして今、立派な馬になったのです。
馬に乗った若者は、大きな屋敷の前を通りかかりました。
四季「よいしょ。……っと、と。」
中から、大荷物を抱えた、長者さんらしき人が出てきました。
足がふらついていて、見ていて危なっかしいです。
小町「危なっかしいなぁ。」
霊夢「まぁ、普段力仕事しなさそうだしね。放っておいていいの?」
小町「う~ん、手伝いたいところなんだが、もう少し見てもいたいんだよなぁ……。」
四季「こら。」
小町「ひん!」
霊夢「あ、ちょっと馬っぽい。」
若者と馬が様子を見ていると、長者さんが話しかけてきました。
四季「人が働いている所をただ見るだけなど、悪趣味甚だしい。少しは手伝おうと言う気は無いのですか?」
霊夢「無い。」
小町「すいません、すいません。手伝わせていただきます~。」
四季「ん。小町……じゃなくて、そこの馬は良い心がけです。そこの赤貧。少し、馬を借りますよ。」
霊夢「はいはい。もう何も言わないわ。」
四季「……貴方は、ここで少し徳を積んでおこうと思わないの?」
霊夢「無い。大体、私最初から何も食べてないんだから、今力仕事何かしたら空腹で倒れるわ。」
四季「それでは、少し休憩にしますから、ご飯を食べていきなさい。」
霊夢「え、いいの?やった!」
四季「終わったら手伝って貰いますけどね。」
長者さん一人では大変なので、若者は長者さんに馬を貸して、自分も手伝うことにしました。
でもとりあえず、長者さんのお屋敷にお邪魔して、ご飯を頂きました。
霊夢「で、どういう仕事なの?」
四季「引越しです。屋敷の中の荷物を、外に運び出してください。」
霊夢「一人で?手伝いとか居なかったの?」
四季「それなら……そこに。」
霊夢「ん?」
長者さんは、隣の部屋を指差しました。
チルノ「重い~!動けない~!助けて~!」
ルーミア「暗くて何も見えないよ~あ痛!……う~、またぶつかった~……。」
見ると、お手伝いさんらしき人たちが、荷物に潰されて助けを求めていたり、
目が見えないせいか、荷物を持ったまま壁にぶつかったりしていました。
霊夢「…人選ミスね。」
四季「人選ミスです。一人でやった方がよかったのかもしれませんね。」
小町「まあ、ここは私らに、ドンとまかせてください。万馬券買ったつもりで。」
四季「それでどうやって、ドンと構えることが出来るのかしら?」
お手伝いの人たちが役に立たないので、結構大変そうです。
それでも何とか、全ての荷物を運び出すことが出来ました。
霊夢「ふ~、疲れた。」
四季「ご苦労様。良いことをしました。これからも、地味で良いですから善行を積むことです。」
霊夢「それはいいけど、この荷物、外に出しただけでどうするのよ?」
四季「ああ、それは……。」
長者さんが、どうするか言いかけたとき、
紫「他社よりお得で速い、クロネコヤクモの宅急便、引越しサービスでございま~す。」
霊夢「……なるほど。」
業者さんが現れました。
四季「ああ、ご苦労様です。早速ですが、お願いしますね。」
紫「心得ましたわ。」
業者さんは、あっと言う間に、荷物を片付けてしまいました。
何か、「吸われる~!たすけて~!」とか声がしたり、
覚えの無い黒い塊を持って行ったりしたようですが、これで引越しは終わりのようです。
霊夢「でも、これなら最初からあんたがやった方が良かったんじゃない?」
紫「分かってないわねぇ。荷物を一箇所に集めて置いたほうが楽なの。色々と。」
四季「それでは、ここまで運んでください。領収書は『小野塚 小町』で。」
小町「何でですか!?」
紫「それでは、後で取り立てに参りますわ。」
業者さんは帰って行きました。
四季「さて、私は行かねばならないのですが…。善行ついでに、もう一つ頼みを聞いてくれますか?」
霊夢「何?」
四季「新しい屋敷までは遠いので、貴方の馬を是非、譲って欲しいのです。」
小町「あ~、何かまたこき使われそうな、そんな予感が……。」
四季「何か?」
小町「あ~、いえ、何でもないです、ヒヒン。」
ここまでの作業で、この馬を気に入ってしまった長者さんは、
若者に馬を譲って欲しいと持ちかけました。
霊夢「まぁ、元々そっちのもんだし、譲るって言うのも何だと思うけど。」
四季「では、よろしいのですね?」
霊夢「好きにしていいわよ。あ、これ。躾のための鞭ね。」
四季「鞭ですか。………ふっ。」
小町「い、いやだなぁ四季さま。そんなん持って、こっち見て、流し目で、笑わないで下さいよ~。」
四季「ご主人様とお呼び。」
小町「ひっ!こ、怖っ!」
若者は、それを快諾しました。
長者さんは大喜びです。
四季「感謝します。……ふむ、善行を積み重ねた者には、相応の報いがあって然るべきですね。」
長者さんは少し考えると、若者に向かって言いました。
四季「この屋敷を、貴方に差し上げましょう。」
小町「おお、何と太っ腹な。流石四季さま!」
四季「ご主人様とお呼び。」
小町「ひん!…よ、ご主人様太っ腹!」
何と長者さんは、このお屋敷と土地を、若者に譲ると言うのです!
霊夢「あ~、それは有り難いんだけど、中には何も無いんでしょ?」
四季「と、ここに少々のお金が有りますから、好きに使いなさい。」
霊夢「え?ほんと?」
小町「って、それ私のへそくりじゃないですか~~!!」
四季「私の物は私の物。馬の物も私の物。私が進呈した物は、彼女の物なのです。」
小町「とほほ……地味にコツコツ溜めといたのに……。」
四季「さあ、行くわよ。」
小町「ひひ~ん……。」
霊夢「有効に使わせて貰うわね~。」
若者は喜んで、屋敷とお金を受け取りました。
たった一本の藁が、でっかい蟲に。
その蟲が、鳥のから揚げに。
鳥のから揚げが、一文程度の価値はあるだろうお酒に。
お酒が、道産子かサラブレッドか分からないけど、とにかく立派な馬に。
そしてその馬が、何と大きな屋敷になったのです。
霊夢「何か出来すぎてる気がするけど、まぁいいか。」
屋敷には大きな畑もあったので、若者はそれを耕して暮らしました。
若者はとてもよく働いたので、お金はあっと言う間に稼ぐことが出来ました。
働き者な若者の話を聞いた人たちは、彼のことを尊敬しました。
人々は、藁一本からお金持ちになったこの若者のことを、『わらしべ長者』と言って、敬いました。
わらしべ長者は、美人の嫁さんを貰ったりして、幸せに暮らしたそうです。
めでたし めでたし
アリス「と、言いたい所だけど。」
霊夢「何?」
ある夜、わらしべ長者は、嫁さんと話をしていました。
アリス「いや、特に何にも無いから、もう一波乱あるんじゃないかなぁ、って。」
霊夢「不吉なこと言わないでよ。」
アリス「と言うわけで、はい、離婚届。」
霊夢「早いわねえ、別れるの。」
アリス「善は急げ、よ。はい、さっさとここに血判を……。」
……~ン ズ……ン
夫婦水入らずの離婚相談中、外から何やら音がしてきました。
アリス「………。」
霊夢「血判って、それ何かの契約書なの?」
アリス「結婚なんて、一種の契約でしょ?血痕も同じ響きだし、血塗れた物なのよ。きっと。」
霊夢「ふうん。……で、この、外から聞こえる音は何なのかしら?」
アリス「あら、聞いてない?この付近を彷徨う死霊の噂。」
霊夢「死霊?」
ズシ…ン ズシ~…
音は、どんどん大きくなっています。
アリス「数年前、とある女の子が暴漢に襲われて、持っていた物を盗られたらしいのよ。」
霊夢「うん。」
アリス「で、その女の子は死んだんだけど、その霊は夜な夜な盗られた物を求めて彷徨っている。」
霊夢「それで?」
アリス「この音、実はその女の子の霊が起こしているもの、ですって。」
ズシ~ン ズシ~ン
音がはっきりと聴こえてきました。
地響きもしています。
霊夢「で、何でその霊が、こっちに向かっているような錯覚に囚われてしまうのかしら?」
アリス「知らない。けど、それを踏まえて、今日は離婚届を……。」
ズシ~ン!ズシ~ン!
アリス「……遅かったか。」
??「で~い!」
嫁さんがつぶやくと同時に、屋敷の屋根に穴が開きました。
その穴から、巨大なお化けが顔を出したのです。
萃香「お酒かえせ~~!お酒~~!」
霊夢「げっ!」
わらしべ長者は、びっくりしました。
何と彷徨う霊の正体とは、昔わらしべ長者が殴り倒した娘さんだったのです。
萃香「さ~け~さ~け~!酒かえせ~!」
霊夢「それくらいで何時までも根に持ってんじゃないわよ!」
アリス「やっぱりあんたが原因だったのね。」
萃香「さ~け~!」
アリス「とりあえず離婚届けと、ああ、あと死亡保険に印しといて。」
霊夢「……このままじゃ、あんたも巻き添え食らうわけだけどね。」
娘さんの霊が大暴れしているので、屋敷が崩れ始めました。
霊夢「脱出は………無理か。」
アリス「まぁ、こんなこともあろうかと抜け道作っておいたから。私はここから失礼するわ。」
霊夢「何時の間にそんなの作ったのよ?って言うか、私も逃げるってば!」
アリス「だ~め。離婚届と死亡保険と魔理沙からの借り物の担保としての誓約書と………。」
霊夢「何か嫌な紙切れが増えて来てるし!」
萃香「酒!ファイヤーーー!!」
娘さんの霊が、屋敷に放火しました。
屋敷は真っ赤に燃え上がりました。
霊夢「熱い熱い!いや、ほんと死ぬから開けなさい!」
アリス「残念だけど……たった今、某観音様からお告げがあって、ここは死ぬのが正解だって。」
霊夢「何よそれ~~!?」
アリス「酒の恨みは恐いのね。よく覚えておくわ。」
霊夢「待ちなさぐふっ!」
萃香「捕まえたわよ~。酒の代わりに喰ってやるわ~。あ~ん。」
霊夢「わ~!私を食べても美味しくもなんとも……!」
ぱくっ!
お屋敷は焼かれ、嫁さんには逃げられ。
最早霊とは言えない怪獣に喰われて、わらしべ長者は死んでしまいました……。
・
・
・
何も無い空間。
わらしべ長者は、その空間を、漂っていました。
霊夢「で、ここは何処なのよ?」
怪獣に食べられて、気がつけばこんな所に居たのです。
状況がさっぱり飲み込めません。
と、そのときです
咲夜「これ、一文無し。」
目の前に、観音様が現れました。
霊夢「誰が一文無しよ!」
咲夜「何も持ってないじゃない。」
霊夢「これでも立派なお屋敷貰ったんだからね!………って、あれ?」
思い出しました。
お屋敷は、大怪獣の出現によって、焼かれてしまったことを……。
咲夜「貴方は、嫁に逃げられ家を焼かれ、そして怪獣に食べられて死んでしまったのです。」
霊夢「………何よ。必ず幸せになれるって言っておいて、こんなオチなの?」
咲夜「そう結果を急がないの。とりあえず、貴方に会いたいって人が居るから、会ってみて。」
霊夢「誰よ?」
??「ふっふっふ………。」
観音様の後ろから、誰かが現れました。
てゐ「私は人呼んで、飯食詐乙女(いくさおとめ)!」
霊夢「いくさおとめ?」
何か、明らかに怪しい、人は、自称『飯食詐乙女』と言うそうです。
飯食詐乙女は、わらしべ長者に話かけます。
てゐ「貴方は選ばれたのです。さあ、私と一緒に逝きましょう。」
霊夢「逝くって、何処に?」
咲夜「詳しくは、うさぎとかめに聞いてみなさい。」
てゐ「大丈夫大丈夫。私を信じなさいって。信じると救われるのよ。私が。」
霊夢「私は救われない気がするんだけど?」
てゐ「ぶつくさ言わずに、さっさと来る!」
霊夢「あ、こら!離しなさい!」
咲夜「お幸せにね~。」
飯食詐乙女は、何かと文句を言っているわらしべ長者を引っ張って行きます。
観音様は、それを生暖かく見送りました。
二人は何も無い空間を出て、とある場所に着きました。
幽々子「あら、これが今回の食材?」
てゐ「う~ん、先日良い食材を根こそぎゲットしちゃったもんで……。」
霊夢「まさかとは思うけど……。ここって……。」
てゐ「遠まわしに言うなら天国。ぶっちゃけて言うならヴァル腹ね。」
霊夢「やっぱり~!」
幽々子「まぁ、食べれない程度の物じゃないからいいか。」
そこには、物凄く偉そうな、威厳に溢れる人が居ました。
どっかの貴族っぽくも見えますが、とりあえず便宜上、O-ディン様とでも呼んでおきましょう。
霊夢「何でこんなネタ引っ張ってんのよ!?」
幽々子「お気に入り?」
てゐ「お気に入り。」
霊夢「誰の?」
幽々子「とりあえず、後でまとめて食べるから、食料庫に入れといて。」
妖夢「畏まりました。」
霊夢「は~な~せ~!」
幽々子「今回の貴方の働きは………まあまあね。」
てゐ「へい。今度はもっと精進いたしやす。」
わらしべ長者は、料理人らしき人に連れられて、どっかに案内されました。
その後、わらしべ長者は天国、別名ヴァル腹で、幸せに暮らし……たかどうかは、誰も知りません。
でも、観音様が、必ず幸せになれると言ったのですから、きっと幸せに暮らしたのでしょう。
リグル「あ~ん、二回も食べられるなんて嫌だ~!」
ミスティア「食べられちゃ~うぞ♪食べられちゃうぞ♪ひぃぃぃいいいいいやぁああああああ!!」
文「う~ん、ここからの決死の脱出劇、記事になるかな?あ、お久しぶりです。」
小町「馬役なだけだよあたいは!何でこんなとこ居なきゃいけないんだ!?」
霊夢「……………。」
どっかで見たような連中と一緒に、暮らすことになるようです。
多分、きっと、恐らく、彼は天国で幸せに……。
霊夢「幸せになんかなれるか~~~~!!!」
おしまい
キャスト
わらしべ長者 ・・・ 博麗 霊夢
観音様 ・・・ 十六夜 咲夜
仁王様 ・・・ フランドール・スカーレット
蟲 ・・・ リグル・ナイトバグ
子供 ・・・ ミスティア・ローレライ
母親 ・・・ 射命丸 文
娘さん ・・・ 伊吹 萃香
お侍さん ・・・ 風見 幽香
馬 ・・・ 小野塚 小町
従者 ・・・ メディスン・メランコリー
長者さん ・・・ 四季映姫・ヤマザナドゥ
お手伝い1 ・・・ チルノ
お手伝い2 ・・・ ルーミア
業者さん ・・・ 八雲 紫
嫁さん ・・・ アリス・マーガトロイド
飯食詐乙女 ・・・ 因幡 てゐ
Oーディン様 ・・・ 西行寺 幽々子
料理人 ・・・ 魂魄 妖夢
割とオチは巧く引っ張れてるんじゃないかな。
霊夢がそんな上手く行けても困るs(腋
咲夜さんの観音様という響きに何かを感じてしまう私は、きっとヴァル腹には
逝けぬでしょう。
自分で歌ってトラウマ引き出してちゃ、世話ないよw..
誰でも知ってる昔話って、やっぱり偉大ですよね。
丁度日本昔話も復活したみたいですし、こういうネタは皆の宝にしたいです。
地獄の閻魔様絡みネタが見たいと、こっそりリクしてみたり。
誰よりもヒドイ扱いな小町に同情の人参を。つ▼
いやもう、ほんと、腹抱えて笑いましたw
あんた最高だ! って、叫びたいです。
あれ?請求書じゃ?(間違ってたらごめんなさい)