命蓮寺、今日は誰もいない。
ここは魔界なので誰も来ない。喪失したものは数多く、地上に早く帰りたい。
でも迷っているから帰れない。自分の信念が正しかったのかどうか分からない。
だからまだ魔界にいる。自分の選択に答えを見い出すまで此処にいる。
いずれ誰かが自分を救い出す、来るかどうか分からない日を待ち続ける。
魔界の奥で祈りを捧げる、誰かのための経を唱える。
最初は独りだけだった。
そして孤独な虎を捕らえて二人、迷える僧侶と雲入道を得て五人、彷徨う船幽霊を見つけて十人、
毘沙門天の遣いが来た頃には数えきれない人数となった。
幸せの絶頂、最高期。奇跡があるとすれば今この時、何もかもが鮮やかに映って見えた。
ただ独り、毘沙門天の遣いだけが暗い顔を浮かべてる。
最期は災難と災厄で、必然と偶然が合わさり、周り全てが敵になった。
今までが奇跡のようなバランスで成り立っていた世界だったと今にして漸く分かる。
少し足を踏み外せば、奈落の底まで転がり落ちる。
誰も止められず、誰も逆らえず、世界は真っ逆さまにひっくり返る。
誰かが背中を押すだけで良かった、誰かが耳元で囁くだけで良かった。
そうすれば細い木の枝の支えは呆気なく折れる。
夢が醒める、夢は現に、現を抜かす。
命蓮寺は奇跡の上に成り立っている。
戦いで最初に消えたのは船幽霊、彼女は先陣切って勇ましく敵陣に切り込んだ。
制止する私の声を振り払って、私は貴方の綺麗事が気に入らなかった、と満面の笑顔で離れて行った。
ありもしない嘘を吐かれ、貴方の存在は世界から消えていた。
貴方は幽霊だ、船幽霊だ。
未練を残して地上に残っていた癖に、あっさりと彼女は消えてしまった。
良い気味だ、と尼が泣きそうな顔で吐き捨てる。あれだけ未練を持っていた幽霊が満足して逝きやがった。
大嫌い、と告げた彼女はもう居ない。皮肉や憎まれ口を叩いた彼女はもう居ない。
もう逃げることは許されない、尼の言葉に全員が無言で頷いた。
貴方は本当に幸せだったのでしょうか、ただ独り、今は消えていった彼女に現を抜かして祈りを捧げる。
命蓮寺に楔を打ち込んだのは、貴方の本心だったのでしょうか。
世界は窮屈で、より狭くなる。
人類に包囲された命蓮寺で、貴方は浮足立っていた。
貴方は命蓮寺の上で浮いていた。浮足立っていて気付けなかった。
雲入道が人類相手に威嚇して、降り注ぐ矢を振り払い、時間を稼いでいたことを知らなかった。
船幽霊に現を抜かして、貴方のことを気付けなかった。
消えて、世界がまた狭くなる。
灯りが消えた命蓮寺の片隅で、真っ暗闇の顔を見た。
誰もが熱狂や絶望に浮足立つ中で、浮かない貴方は今更ながらに泣いていた。
その訳も知らないままで気休めの言葉をかけると、貴方は半狂乱で様々なことを叫んだのだ。
貴方のやり方があまいから、貴方は理想しか見ないから、だから消えた、みんな消えてしまったんだ、と彼女は泣きながら叫んだ。
そして彼女は告げるのだ、「消えてしまえ」って告げたのだ。そして彼女が私の手から零れ落ちた。
彼女は僧侶だ、そして入道遣いだ。
いつの間にか消えていた雲入道、気付けなかった。彼女の悲しみだ。
私が後悔した時、はっとした彼女は脅えて竦み、「私もいきます」と命蓮寺から出て行った。
そして戻って来なかった。
率直で、不器用な言葉で彼女は言ったのだ。
何時だった、忘れてしまった。貴方の信仰は今はまだ聞こえが良いだけだと、確かに彼女は言ったのだ。
過去の思い出に浸る、貴方の夢を見たから、幸せな夢を見たから、何処かに歪みがなかったかと。
魔界で独り、考える。
ここまで来れたのは奇跡の連続で、いわば事故のようなものだった。
全てが上手く行きすぎた。それ故に世界は私達を見逃せなくなった。
世界の全てが敵に回っても、私は皆を守る。皆を裏切る真似はしない。
では信仰は? 私は信仰を守れるか、自分の信仰を裏切らないか。
分からない、だから今日も魔界に居る。
毘沙門天の遣いは告げる、君の二本足はしっかりと地面に着いているのかい。
魔界で独り、考える。
貴方は虎だ、孤独な虎だ。
私の手元から離れてしまった、それで良かった。
幸せになれると良いな、魔界の奥で願っている。貴方の信仰に幸あれと。
私と同じ過ちを犯さないことを望んでる。
隣の鼠と一緒の素敵な日々を願ってる。
私は愚かだ、分からない。
過ぎ去ってしまった過去に後悔をする毎日、記憶の海に溺れそうになる。
貴方達にとって、私はどのように映ったのか。きっと恨まれてる、どうすれば良かったのか分からない。
皆を奈落の底に突き落とした元凶である。
胸が苦しい、自責に苛まれる。
それでも記憶探ると時折、思い出すのは幸せだった日々だ。
皆の笑顔で満たされていた毎日、楽しかった。素晴らしかった。嬉しいと幸せがいっぱいだった。
何時かまた戻れると良いな、と懲りずにまた願っている。
ここは魔界なので誰も来ない。喪失したものは数多く、地上に早く帰りたい。
でも迷っているから帰れない。自分の信念が正しかったのかどうか分からない。
だからまだ魔界にいる。自分の選択に答えを見い出すまで此処にいる。
いずれ誰かが自分を救い出す、来るかどうか分からない日を待ち続ける。
魔界の奥で祈りを捧げる、誰かのための経を唱える。
最初は独りだけだった。
そして孤独な虎を捕らえて二人、迷える僧侶と雲入道を得て五人、彷徨う船幽霊を見つけて十人、
毘沙門天の遣いが来た頃には数えきれない人数となった。
幸せの絶頂、最高期。奇跡があるとすれば今この時、何もかもが鮮やかに映って見えた。
ただ独り、毘沙門天の遣いだけが暗い顔を浮かべてる。
最期は災難と災厄で、必然と偶然が合わさり、周り全てが敵になった。
今までが奇跡のようなバランスで成り立っていた世界だったと今にして漸く分かる。
少し足を踏み外せば、奈落の底まで転がり落ちる。
誰も止められず、誰も逆らえず、世界は真っ逆さまにひっくり返る。
誰かが背中を押すだけで良かった、誰かが耳元で囁くだけで良かった。
そうすれば細い木の枝の支えは呆気なく折れる。
夢が醒める、夢は現に、現を抜かす。
命蓮寺は奇跡の上に成り立っている。
戦いで最初に消えたのは船幽霊、彼女は先陣切って勇ましく敵陣に切り込んだ。
制止する私の声を振り払って、私は貴方の綺麗事が気に入らなかった、と満面の笑顔で離れて行った。
ありもしない嘘を吐かれ、貴方の存在は世界から消えていた。
貴方は幽霊だ、船幽霊だ。
未練を残して地上に残っていた癖に、あっさりと彼女は消えてしまった。
良い気味だ、と尼が泣きそうな顔で吐き捨てる。あれだけ未練を持っていた幽霊が満足して逝きやがった。
大嫌い、と告げた彼女はもう居ない。皮肉や憎まれ口を叩いた彼女はもう居ない。
もう逃げることは許されない、尼の言葉に全員が無言で頷いた。
貴方は本当に幸せだったのでしょうか、ただ独り、今は消えていった彼女に現を抜かして祈りを捧げる。
命蓮寺に楔を打ち込んだのは、貴方の本心だったのでしょうか。
世界は窮屈で、より狭くなる。
人類に包囲された命蓮寺で、貴方は浮足立っていた。
貴方は命蓮寺の上で浮いていた。浮足立っていて気付けなかった。
雲入道が人類相手に威嚇して、降り注ぐ矢を振り払い、時間を稼いでいたことを知らなかった。
船幽霊に現を抜かして、貴方のことを気付けなかった。
消えて、世界がまた狭くなる。
灯りが消えた命蓮寺の片隅で、真っ暗闇の顔を見た。
誰もが熱狂や絶望に浮足立つ中で、浮かない貴方は今更ながらに泣いていた。
その訳も知らないままで気休めの言葉をかけると、貴方は半狂乱で様々なことを叫んだのだ。
貴方のやり方があまいから、貴方は理想しか見ないから、だから消えた、みんな消えてしまったんだ、と彼女は泣きながら叫んだ。
そして彼女は告げるのだ、「消えてしまえ」って告げたのだ。そして彼女が私の手から零れ落ちた。
彼女は僧侶だ、そして入道遣いだ。
いつの間にか消えていた雲入道、気付けなかった。彼女の悲しみだ。
私が後悔した時、はっとした彼女は脅えて竦み、「私もいきます」と命蓮寺から出て行った。
そして戻って来なかった。
率直で、不器用な言葉で彼女は言ったのだ。
何時だった、忘れてしまった。貴方の信仰は今はまだ聞こえが良いだけだと、確かに彼女は言ったのだ。
過去の思い出に浸る、貴方の夢を見たから、幸せな夢を見たから、何処かに歪みがなかったかと。
魔界で独り、考える。
ここまで来れたのは奇跡の連続で、いわば事故のようなものだった。
全てが上手く行きすぎた。それ故に世界は私達を見逃せなくなった。
世界の全てが敵に回っても、私は皆を守る。皆を裏切る真似はしない。
では信仰は? 私は信仰を守れるか、自分の信仰を裏切らないか。
分からない、だから今日も魔界に居る。
毘沙門天の遣いは告げる、君の二本足はしっかりと地面に着いているのかい。
魔界で独り、考える。
貴方は虎だ、孤独な虎だ。
私の手元から離れてしまった、それで良かった。
幸せになれると良いな、魔界の奥で願っている。貴方の信仰に幸あれと。
私と同じ過ちを犯さないことを望んでる。
隣の鼠と一緒の素敵な日々を願ってる。
私は愚かだ、分からない。
過ぎ去ってしまった過去に後悔をする毎日、記憶の海に溺れそうになる。
貴方達にとって、私はどのように映ったのか。きっと恨まれてる、どうすれば良かったのか分からない。
皆を奈落の底に突き落とした元凶である。
胸が苦しい、自責に苛まれる。
それでも記憶探ると時折、思い出すのは幸せだった日々だ。
皆の笑顔で満たされていた毎日、楽しかった。素晴らしかった。嬉しいと幸せがいっぱいだった。
何時かまた戻れると良いな、と懲りずにまた願っている。
ただ、やるならもっと徹底的にやるべきですよ
これ元曲にあわせて歌えないじゃないですか