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文々。新聞コラム選第五弾『ロボット特集特別号「紅魔館・反・ラッダイト運動」「これからの人里の話をしよう」「未来世紀における紅魔館のあるべき姿論」』

2018/02/14 22:14:31
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◇ 前回の文々。新聞でも取り上げた紅魔館の玄関に置かれた「ロボット」(からくりで動く人形)についてコラムを頂いています。












◇ 美鈴「紅魔館・反ラッダイト運動」


 物事の盛衰を一日に喩えるとするならば、門番の仕事は日が暮れてしまったと言えるようです。あるいは最後の審判の列に並んでそわそわしている状態とも言えます。滝から落ちる直前の木の葉にでも喩えることが出来るでしょう。はっきりと言うならば「門番はもうお払い箱に近い」という事です。
そう、ついに門番の仕事は機械に負けてしまったのです。やはり門番は機械化には勝てませんでした。記事をお読みになったので皆様は事の顛末はご存じでしょう。紅魔館の表門に図書館の魔女と、妖怪の山でも指折りの河童が作った人造人間ロボットが配置されてしまったのです。
「あんたの同僚よ」
そう楽しそうに主は話すのですがこのロボットは私のように休憩を取りませんし、食事も好き嫌いがありませんし、油を差すだけで動き続けるのです。昔、外の世界で妖怪たちがどれほど機械にその存在を消されてきたか。そのことを思うと私は大きな爆弾の隣に立っているような気がしてなりません。無常の風は時を嫌わず。これからは彼が私に取ってかわって仕事をするのでしょう。
私の心の中では「最初で最後の同僚」という言葉が延々とリフレインされていました。
私も昔ながらの妖怪として一枚の写真の中にその存在を告げることしか出来ないのでしょうか。とにかく同僚ですから彼に仕事を教えなければなりません。
機械ならば調整に時間がかかり、私の手を煩わせ、その間に門番としての機能は止まってしまい、主もこのロボットの導入をあきらめるはずです。
そのような淡い期待を抱けたのは、僅か二時間ほどでした
挨拶、掃除、などの引き継ぎをするのですが。優秀でした。草むしりも優秀で、腰が痛くなっても彼は仕事を黙々と続けています。なぜなら彼には痛むべき腰が無いのです。
日が暮れて寝床に入ると様々な思いが去来します。
私はお払い箱になるのでは。いずれは、機械が主人になるのでは?
ひょっとすると彼らが反乱を企てるのでは? 眠れない夜がしばらく続きました。
私はうつむく日が多くなりました。
ある日、給金が渡されました。いつもより増えていたのです。そのことを主に聞いてみると「ロボの分も」とのことでした。何かを彼に買ってあげればいいのでしょうか?
しかしながら彼が何を喜ぶのか私には見当がつきません。
ロボの友人にどうお返しをしましょう。
人里であちこち巡って彼に似合うものを探します。
そういえば太陽の光の下では彼の身体はフライパンのように熱くなることを思い出しました。麦わら帽子を一つ買ってあげることにしました。
帽子を物珍しそうに眺めたあと、彼は帽子をかぶって門前に立ち始めました。
なんだか愛着が湧いてくる。
昔、この子に対して感じていたことを考えるとずいぶん失礼なことをしてしまった。帽子をかぶった物静かでおとなしく、理知的で、ちょっとかわいい。
まずは同僚からはじめてみようかと思います。今は彼に太極拳を教えています。
 まだまだ彼としてみたい仕事があります、それに二人になれば私たちができる門番という仕事も更に広がりを見せるでしょう。
まだまだ門番の未来は明るいのかもしれません。




◇「これからの人里の話をしよう」(上白沢慧音)

 子どもたちは遊びについては発明家だと言わざるを得ない。
木の棒一本でも何か遊び始めるし、石ころを幾つか集めてまた遊び始めるし、何もなければ鬼ごっこをし始めたりする。
そういう彼らが紅魔館の玄関に新しく「発明された」ロボットがあると聞いたらどうなるだろうか。
もう話をするだけでも大騒ぎになるし、結局その日のうちに見に行かざるを得なくなった。
からくり人形は遠くからでもすぐに分かった。それは一見四角い箱のように見える、だけど手足があり、私たちが近寄るとこちらを向き(あのからくりに目があるとするならば)こちらを注意深く見ているように思う。
思慮深いように見える。寺子屋の子どもたちに一番必要とされていることかもしれない。
大人か、子供か、男女の別は分からない。古い甲冑のようにも見える。
紅魔館の人々はそれを「ロボット」と呼ぶらしい。
紅魔館の玄関にロボットという名前のからくり人形が置かれていて、それは門番としての役割をこなして、受け答えも出来るらしい。
 物腰穏やかな門番の説明を聞きながら紅魔館に向かう。私の後ろにははち切れんばかりの好奇心を抱いた子どもたちがぞろぞろと付いてきている。
門番と魔法使いの二人にこの機械について話してもらう事にした。

 門番は随分と落ち込んでいた。彼女のような心優しい妖怪が雇用の機会を失うのは誠に残念なことだと思う。彼女はロボットが人間を支配するようになるのではないかと恐れている様子だった。彼女からすればもうすでに支配されたのだとこっそりと教えてくれた。
さて子どもたちがこのロボットを目の前にして何もせずに帰ってくるはずもなく、駆け寄るとあちこち触り始めた。
そのうちこの館の魔法使いがやってきて一緒にそのロボットと遊んでいた。
かけっこをしたり、鬼ごっこをしたり、何かじゃんけんで遊んでいるものもいた。
子供を相手にしたことがあれば分かるだろうが、彼らは次々と新しい遊びを発明していくのだ。そして毎度ロボットがそれを覚える頃には次の遊びを発明している。
ロボットはまだ子どもたちにはついて行けないようだった。
 彼が寺子屋にやってきたらどうなるだろうか。ひょっとすると子供にいろいろなことを教えるかもしれないが、子どもたちはもっと別の方法で彼と関わろうとするに違いない。
それは縄跳びであったり、鬼ごっこであったり、あるいは新しい遊びを発明するかもしれない。
 子どもたちは理解できない速さで新しい発明を続けていく。
まだ私達の将来がロボットに支配されることはないだろうと思う。腕白で自由な子どもたちが存在する限りは

◇「未来世紀における紅魔館のあるべき姿論」(レミリア・スカーレット)

 ご承知のことかと思うが、私の友人であり、燃え滾る情熱の塊である魔法使いと、妖怪の山きってのエンジニアの河童がロボットを創り出した。そしてそれは紅魔館の玄関にある。
いくつか誤解を受けていることがあると思うのでここで言っておきたい。
それは私が紅魔館の玄関に置いたロボットは何かを侵略するために創ったのではないということだ。
あれは単なる私の友人の知識欲と河童の創造能力が合わさり止む無く世界に現れた代物だ。人間の形をしたロボットは門番の補助としてだけではなく、窓拭きや簡単な庭仕事もできるようになっている。多少動きは緩慢だし、天気について何か一言語ることはできないがそれなりに働くわけで、我が館の福祉につながれば良いと考えていた。彼らは従順な機械だ。
残念ながら私は機械のことについては門外漢だ。
他の人が機械を作り上げる。ギアが噛み合い、ポンプが動き、ビリビリと電気が流れるその様は私からすれば魔法よりも高次元なものと言っても差し支えない。
その上私は機械音痴だ。ちょっとした機械を扱おうものなら機械は直ぐさま私に歯向かい、機械と私の絶望的な闘争が始まる。機械が壊れるか、私が疲れ切るか、あるいは機械の所有者が止めに入るまでその闘いは続く。機械との闘争のあと私は自分が機械に負けてしまったのだと感じる。いつもこうだ。
機械に負けまいと私も製図板を用意して貰いその前に座ることにした。機械を一つでも作り上げれば機械も私に対しての態度を改めるだろうと期待しているのだ。
紅魔館にあるロボットは今のところ私に対して反乱を起こしていない。
しかしながらどうやらこのロボットが私達の知らないところで革命を起こして居たらしい。
シュプレヒコールの声は聞こえない。ギロチンを用意する不穏な音も聞こえない。紅魔館の廊下の硝子が割られることもなければ、横断幕を持って廊下を練り歩くものも居ない。 ただ紅魔館の廊下で幼いメイド妖精が泣いていたことで私は革命が起きている事を知った。  仕事がうまく行かなかったのだろうか? それとも喧嘩なのだろうか。近寄ってお菓子と   お茶があるからと近くの部屋で話を聞くことにした。
「私はあのロボットに仕事を取られてしまうのでしょうか?」
 小さなメイド妖精が居場所をなくしてしまうのかと怯えている。紅魔館の門にいるロボットは謂わば廊下掃除をするモップやちりとりと同じものだと説明をして、その場から離れた。部屋に戻り、私は再び製図板の前に座った。そしてしばらく考えた。
機械の主になることはとても喜ばしいことであるが、機械の隣に泣いている妖精メイドがいればそれは私達が機械に敗北したことになる。
私は機械の導入に子供のように熱中していた。だがメイド妖精に同じくらい熱中をしていたのかと言われたならば現段階では私はあの機械に敗北したことになる
そうなったならば私はまだまだ機械に負けないように製図板の前に座って考える必要がある。彼女たちに露命をほそぼそつながせるような事はさせまい。
泣いていたメイド妖精が百年後も笑っていられるように。無愛想なあのロボに負けないよう考える。
これは天使たちの世界ほどよく出来ていない紅魔館を良くしようという徳義的な行いでもあり、機械音痴の私なりのエンジニアリングであるのだ。
ここまでお読みいただきありがとうございます!
SYSTEMA
http://twitter.com/integer_
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コメント



0.310簡易評価
1.100名前が無い程度の能力削除
幻想郷や紅魔館の優しさが何だかとても心に沁みました。彼女たちが彼女たちである限り、ロボットと共存しながら百年後も笑って暮らしているんでしょうね
3.90電動ドリル削除
レミリアの戦いは続く。
寺小屋の子供たちのくだりが好きでした。
4.70奇声を発する程度の能力削除
面白かったです
6.100怠惰流波削除
なーんか、不穏な筋書きから一転、優しいなぁ…
機械仕掛けの冷徹も、そのうち紅魔館の熱にほだされてまーるいロボットになるのかもしれません
7.70名前が無い程度の能力削除
不安になってる姿が可愛い
8.90もなじろう削除
緩やかに見え隠れする明るい未来
素敵でした
9.80大豆まめ削除
こういうことを書くといろいろな方に怒られるかもしれないけど、敢えてコラム調にする必要性をあんまり感じませんでした。なぜロボットをメインにした群像劇短編集ではダメだったのか? と考えてしまって。いや、それだとだいぶ読後感変わってきちゃうかな……うーん。
もっというと、なぜ敢えての「文々。新聞」なのか……文が書く記事っていう体で書くんじゃなかったら、そもそも新聞記事にこだわること自体にあんまり意味が無いような。

話の中核、導入されたロボットをめぐるエピソードたちは面白くて好きでした。ちょっとレミリアが物分りが良すぎる感があるけど。
10.100名前が無い程度の能力削除
良かったです!
11.90名前が無い程度の能力削除
慧音の考え方が好きでした。美鈴のゆるさもいい。
12.100南条削除
面白かったです
ロボットひとつに沸き立ちその上で受け入れていく過程に、すべてを受け入れるという紫の思想が人々にまで浸透しているように思えて素敵でした
18.100うみー削除