咲夜
味気ない紅茶
音もなくただティーカップを置く
レミリアの何気ない日常が今日も始まる
「ねえ、咲夜。最近ね、パチュリーが外で遊ぶようになったの」
「はい」
「幻想郷は空気が良いからもう喘息なんてへっちゃらなのかしら?」
「そうかもしれませんね」
今の健康なパチュリーから。ぜぇぜぇ、息してる姿を想像するのは難しい。
今では小悪魔が図書館の主に見えるほどだ。
「最近ね。フランドールにまた新しい友達ができたみたいなの」
「サッカーチームか野球チームが応援できるくらいでしょうか?」
フランドールが新しいお友達を連れてきた時は、嬉しかった。
最近ではその友達の多さに少し嫉妬してしまうほどである。
「最近ね。美鈴がメイド長やってるけどまだまだ駄目ねあなたには当分勝てないわ」
それなりに美味しい紅茶を淹れることはできるようになった。
美鈴はやっぱり門番の方が、しっくり来るらしくメイド長の仕事をサボって門番を勝手にしてその門番の仕事をサボって昼寝しているとのことだ。
レミリアはそのことを、きつく叱らなくてはならないのだろうか?
「それはそうでしょう」
事も何気に、咲夜はそう言い。紅茶のおかわりを注いだ。
味気ない紅茶をレミリアは一口飲んで、音もなく音もなくティーカップを置き話を続けた。
「ねえ、咲夜。窓の外が明るくなってきたわ。今日も1日が終わるのね」
灰色の外を見てレミリアは思い出したように言った。
「そうですね」
「たまには、1日の始まりにしようかしら?」
何気なくレミリアはそういう。吸血鬼の感覚、夜が昼間で夜が昼間である。
「それは良い兆しなのかもしれませんね」
「兆し?」
「はい、良い兆しですわ」
「……ねえ、咲夜?」
「…………」
時が進んだのだろうか?
そこに咲夜は居なかった。
「咲夜、そうだあなたは」
味気ない紅茶に音のない世界なのに退屈では無くとめどなく話を続けていたレミリアは思い出した。
暗い棺の中で眼を覚ましたレミリアは思った。
……そうか、咲夜は、居なくなったのだっだ。
もう、10年も経っているのに。
あの頃の記憶は今も鮮明に頭の中に刻まれていたようだ。
でも、居なくなってしまった咲夜に良い兆しなどと言わせたのは願望だったのか?
それとも、もしくは咲夜からの何かメッセージだったのか?
頭では願望だったと分かっているけれど、心ではどこか。メッセージだと思いたい。
夢の中で咲夜と話していて気が付いた事がある。
「ああ、私は最近外に出かけていない」
咲夜が居たころは、日傘を持たせて沢山沢山出かけたものだった。
だけど最近は、夜の昼間に皆が出かける様子を眠気眼にただ見ているか運命を思っているだけだった。
別に咲夜が居なくなったからといってふさぎこんでたとか感傷に浸っていたつもりはない。
ただ、なんとあなしにそうなっていただけなのだ。
しかし、結局のところ咲夜が居なくなったあの時から夜の昼間は次には進んではいなかった。
「久しぶりに、香霖堂でも行ってみようかしら? ねえ、咲夜?」
良作だな
愛してる
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その人と別れた後には無意識に避けがちになりますよね。
その人と過ごした時間が楽しければ尚更。
恐らく、館の外には咲夜と過ごした楽しい思い出が沢山あるのでしょう。
とまあ、勝手な解釈で感想を述べてみました。