「アタイこそが真のアタイだ!」
「馬鹿言ってんじゃないよ! アタイに決まってるだろう!」
「冗談きついねぇ、真のアタイはアタイ以外にないってのに」
「アタイが真だってわかんないなんて、みんなバッカみたい! きゃははは!」
「よう霊夢。じゃあな」
「待ちなさい魔理沙。生命が惜しければ逃げないでここにいる事をオススメするわよ」
「ノータイムで脅しに来たなコイツ」
「一人でこの現場に取り残される絶望を思えばなんだってできるわ」
「で、博麗神社がこのような地獄と化した経緯は一体なんだ?」
「なんでもあいつら四人、名前をなくしたらしいのよ」
「それは病院が儲かりそうな話だな」
「名乗れないし他人が名前を呼ぶ事もできない。しかも四人とも一人称が『アタイ』だから、このままだと誰が誰なのか区別できない。そこで真のアタイを決めようと骨肉の争いが始まったのよ」
「名乗れなくたって外見とか、いくらでも区別する手段はあるだろ」
「ところがね……今は外見の差異を描写して区別する手段が使えないの。なぜなら、なんとここには地の文が無いのよ!」
「おいおい地の文が無いなんてそんなバカな話があるわけ本当だぁ!」
「ありがとう。ノッてくれなかったら泣いてしまうところだったわ」
「意外とメンタル弱いなお前」
「そういう訳で、今あいつらは誰が誰だか分からない状態なの」
「いや待て待て、別に言葉で外見を説明すればいいだけだろ」
「ならやってみるといいわ」
「正直関わりたくないんだが」
「生命が惜しくないならやらなくてもいいわよ」
「お前に脅す以外の選択肢はないのか? ……えーと、おいそこの、赤い髪を両側で結わえたデカイ奴」
「お、アタイか?」
「んでそっちの、赤い髪を三つ編みにした猫耳」
「アタイだね!」
「ファンキーなカラーの服にデカイ帽子の金髪」
「それはアタイだ!」
「氷の羽根に青髪のちっこいの」
「それもアタイだ!」
「おい『も』って何だふざけんな!」
「ほら見なさい。外見で区別しても、誰がどの外見に返事をしたかは分からないのよ」
「いやそれにしたって、立ち位置で区別したりできるだろ。例えば……おい、そこの一番右にいる奴」
「右ってどこから見て右?」
「私から見て右だよ」
「私からって言うけど、魔理沙はどこに立っているんだい?」
「どこって博麗神社の境内にだな」
「博麗神社とはそもそもどこにあるのか。どこから見てどこなどという相対的な表現では正確な位置を証明できない。緯度と経度を証明する事で位置を割り出す事はできるが、地球の公転により宇宙空間における博麗神社の座標は常に動き続ける事になり、また太陽を絶対座標と考えても太陽系自体が銀河系を公転している故に太陽自体もまた移動し続けている事となり」
「分かった私が悪かったから黙れ」
「こんな具合だから、誰がどこにいるのかも分からなくなっているのよ」
「だったらそうだ、自分で自分の容姿を説明させればいい。そして説明順に一人目二人目と区別すればいいんだ。とりあえずそこのお前から」
「しかし自分とはそもそも何であるのか。他者と己との境界はどこにあるのか。我の外見を説明したとて、それを説明したる意識と外見を持つ存在との相関関係をどのように証明する事ができるのか。そもそも意識の存在を証明するためには」
「黙れ殺すぞ!」
「ちょっと口が悪いわよ。仮にも神のお膝元である神社で」
「こんな地獄絵図の現場に神がいてたまるか!」
「死神ならいるよ」
「うるさいお前が死ね!」
「いくらツッコミでも言っていい事と悪い事があると思うなアタイは」
「ともあれ何とかしないと。このままでは証明できない存在の呼称として多用された『アタイ』がゲシュタルト崩壊を起こし、幻想郷が滅亡するわ」
「説明っぽい事を言うんならせめて理由をこじつけろ!」
「そうは言っても、何が博麗大結界に悪影響があるかは分からないとアタイも思うな」
「やめろ会話に入ってくるな! どっちが喋ってるか分からなくなるだろ!」
「せめて会話文の特徴で区別できればいいんだけど」
「だったら変な語尾でもつけりゃいいだろ。ピョンとかベシとか」
「アタイだベシ!」
「略して」
「あべし!」
「うるせぇ!」
「こうなっちゃうから難しいのよね」
「何を想定内の出来事みたいな顔してやがる!」
「せめて個体を識別できる呼称があればいいんだけど」
「だったらもう新しい名前にしろよ」
「それは危険よ。元と無関係な名前を付けては存在が変質してしまう可能性があるわ。例えば一人の名前を魔梨沙としたとする」
「はぁいアタイ魔梨沙よ。きゃはははは」
「よしわかった殺す」
「このように別個の存在へと成り果ててしまいかねない。もし四人全員が紫になったらと想像してみなさい」
「それは確かに世界の終わりだが、だったら四人の元の名前を混ぜればいいんじゃないか?」
「じゃあアタイは小野ウン燐ノで」
「ならアタイがクラ焔チ町ね」
「アタイは火塚ルース」
「そしてアタイが猫小ピ……待って! 一人だけ名前が三文字で足りない!」
「どうやら平和的解決にはまだ問題があるようね」
「そうだな、この煎餅うまいな」
「協議の結果、アタイが日焼け猫小ース」
「アタイがクラ焔塚ルノ」
「アタイは火ウンチ町」
「そしてアタイが小野したピ燐、という事になりました」
「本当に大丈夫か? 特に三人目」
「「「「これからは四人で力を合わせて生きていくよ」」」」
「おいもうすでに大丈夫じゃなさそうだぞ」
「まあ平気でしょう。そのうち外見も四人分混ざり合って、四人で一つの存在として覚醒するわ」
「解決してないじゃないか」
「ところであんたも昔、自分をあたいって呼んでた事があったわね」
「まったく記憶に無いな」
「あんたが覚えてなくても世界は覚えているわ。いずれあの四人は『アタイ』という名を無差別に取り込む集合体となり、あんたもその中の一人になるでしょう」
「よし、やっぱりあいつら殺そう」
「馬鹿言ってんじゃないよ! アタイに決まってるだろう!」
「冗談きついねぇ、真のアタイはアタイ以外にないってのに」
「アタイが真だってわかんないなんて、みんなバッカみたい! きゃははは!」
「よう霊夢。じゃあな」
「待ちなさい魔理沙。生命が惜しければ逃げないでここにいる事をオススメするわよ」
「ノータイムで脅しに来たなコイツ」
「一人でこの現場に取り残される絶望を思えばなんだってできるわ」
「で、博麗神社がこのような地獄と化した経緯は一体なんだ?」
「なんでもあいつら四人、名前をなくしたらしいのよ」
「それは病院が儲かりそうな話だな」
「名乗れないし他人が名前を呼ぶ事もできない。しかも四人とも一人称が『アタイ』だから、このままだと誰が誰なのか区別できない。そこで真のアタイを決めようと骨肉の争いが始まったのよ」
「名乗れなくたって外見とか、いくらでも区別する手段はあるだろ」
「ところがね……今は外見の差異を描写して区別する手段が使えないの。なぜなら、なんとここには地の文が無いのよ!」
「おいおい地の文が無いなんてそんなバカな話があるわけ本当だぁ!」
「ありがとう。ノッてくれなかったら泣いてしまうところだったわ」
「意外とメンタル弱いなお前」
「そういう訳で、今あいつらは誰が誰だか分からない状態なの」
「いや待て待て、別に言葉で外見を説明すればいいだけだろ」
「ならやってみるといいわ」
「正直関わりたくないんだが」
「生命が惜しくないならやらなくてもいいわよ」
「お前に脅す以外の選択肢はないのか? ……えーと、おいそこの、赤い髪を両側で結わえたデカイ奴」
「お、アタイか?」
「んでそっちの、赤い髪を三つ編みにした猫耳」
「アタイだね!」
「ファンキーなカラーの服にデカイ帽子の金髪」
「それはアタイだ!」
「氷の羽根に青髪のちっこいの」
「それもアタイだ!」
「おい『も』って何だふざけんな!」
「ほら見なさい。外見で区別しても、誰がどの外見に返事をしたかは分からないのよ」
「いやそれにしたって、立ち位置で区別したりできるだろ。例えば……おい、そこの一番右にいる奴」
「右ってどこから見て右?」
「私から見て右だよ」
「私からって言うけど、魔理沙はどこに立っているんだい?」
「どこって博麗神社の境内にだな」
「博麗神社とはそもそもどこにあるのか。どこから見てどこなどという相対的な表現では正確な位置を証明できない。緯度と経度を証明する事で位置を割り出す事はできるが、地球の公転により宇宙空間における博麗神社の座標は常に動き続ける事になり、また太陽を絶対座標と考えても太陽系自体が銀河系を公転している故に太陽自体もまた移動し続けている事となり」
「分かった私が悪かったから黙れ」
「こんな具合だから、誰がどこにいるのかも分からなくなっているのよ」
「だったらそうだ、自分で自分の容姿を説明させればいい。そして説明順に一人目二人目と区別すればいいんだ。とりあえずそこのお前から」
「しかし自分とはそもそも何であるのか。他者と己との境界はどこにあるのか。我の外見を説明したとて、それを説明したる意識と外見を持つ存在との相関関係をどのように証明する事ができるのか。そもそも意識の存在を証明するためには」
「黙れ殺すぞ!」
「ちょっと口が悪いわよ。仮にも神のお膝元である神社で」
「こんな地獄絵図の現場に神がいてたまるか!」
「死神ならいるよ」
「うるさいお前が死ね!」
「いくらツッコミでも言っていい事と悪い事があると思うなアタイは」
「ともあれ何とかしないと。このままでは証明できない存在の呼称として多用された『アタイ』がゲシュタルト崩壊を起こし、幻想郷が滅亡するわ」
「説明っぽい事を言うんならせめて理由をこじつけろ!」
「そうは言っても、何が博麗大結界に悪影響があるかは分からないとアタイも思うな」
「やめろ会話に入ってくるな! どっちが喋ってるか分からなくなるだろ!」
「せめて会話文の特徴で区別できればいいんだけど」
「だったら変な語尾でもつけりゃいいだろ。ピョンとかベシとか」
「アタイだベシ!」
「略して」
「あべし!」
「うるせぇ!」
「こうなっちゃうから難しいのよね」
「何を想定内の出来事みたいな顔してやがる!」
「せめて個体を識別できる呼称があればいいんだけど」
「だったらもう新しい名前にしろよ」
「それは危険よ。元と無関係な名前を付けては存在が変質してしまう可能性があるわ。例えば一人の名前を魔梨沙としたとする」
「はぁいアタイ魔梨沙よ。きゃはははは」
「よしわかった殺す」
「このように別個の存在へと成り果ててしまいかねない。もし四人全員が紫になったらと想像してみなさい」
「それは確かに世界の終わりだが、だったら四人の元の名前を混ぜればいいんじゃないか?」
「じゃあアタイは小野ウン燐ノで」
「ならアタイがクラ焔チ町ね」
「アタイは火塚ルース」
「そしてアタイが猫小ピ……待って! 一人だけ名前が三文字で足りない!」
「どうやら平和的解決にはまだ問題があるようね」
「そうだな、この煎餅うまいな」
「協議の結果、アタイが日焼け猫小ース」
「アタイがクラ焔塚ルノ」
「アタイは火ウンチ町」
「そしてアタイが小野したピ燐、という事になりました」
「本当に大丈夫か? 特に三人目」
「「「「これからは四人で力を合わせて生きていくよ」」」」
「おいもうすでに大丈夫じゃなさそうだぞ」
「まあ平気でしょう。そのうち外見も四人分混ざり合って、四人で一つの存在として覚醒するわ」
「解決してないじゃないか」
「ところであんたも昔、自分をあたいって呼んでた事があったわね」
「まったく記憶に無いな」
「あんたが覚えてなくても世界は覚えているわ。いずれあの四人は『アタイ』という名を無差別に取り込む集合体となり、あんたもその中の一人になるでしょう」
「よし、やっぱりあいつら殺そう」
ヘブンオアヘル
内容で笑ったあと、「これ、名前をミックスする場面書く時真剣に組み合わせを考えたんだよなぁ」と想像してしまいまた笑ってしまいました
火ウンチ町好き。