Coolier - 新生・東方創想話

2017/08/27 22:34:08
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ガタガタガタガタ……


目の前を音だけが通り過ぎていく
廃駅のベンチに座りながら、私こと、宇佐見蓮子はハタと気を取り戻した……

夜空には雲が厚く、星も月も見えない。
そんな夜、私は自分が何故ここに居るのかを徐々に思い出しつつあった……


きっかけは、相方の一言だった。


「ねぇ、世界の果てを見に行きましょ」


彼女が言うには、この世界には、かつての世界地図……俗に言えばTOマップと呼ばれる……のように、この世界にはこれ以上進めない、そしてアチラとコチラを区切る明確な境界が、確かに存在するらしい……

何を馬鹿げた話をするのだろうか……仮に私たちが境目を見つけたとして、そこに着く頃には境目は私たちの向こうへ、そこに行くと更にその先へと……さながらアキレスと亀の如く……辿り着けない、というのも、今立っている大地は巨視的には球形であるから……故に、そんな場所なんてある筈が無い……私は確かにそう言ったのだ……

しかし、先日彼女から一通の手紙が届いた。こんな時代にも、まだ手紙を書く習慣がある事に驚いたのだが……
要約すれば、彼女はどうやら「果て」を見つけたらしく、それを私にも見せたいらしい……そして、私が辿った道筋を示すので、此処に示されている通りにして欲しい、と書かれていた……

ここまで思い出し、また辺りを見渡す……

さてどうしたものかな……と、キョロキョロと辺りを見渡した……自分が今居るのは、もはや廃棄されて幾世紀程過ぎたように見える、無人の駅のベンチに横たわっている。

しばらくは、頭を落ち着かせる為に、ただぼーっと座っていたが、やがて線路右手に灯りがチラつき始めた……が、それらは決して文明的な、キッチリと遠くを照らすような代物ではなく、ただ薄く薄く、さながら火の玉のような……頼りない……ものだった。

やがて火の玉のような灯りが、駅との距離を縮めていくにあたって、徐々にそれらが無数の、弱々しい光源で構成されているのが見えてきた……また下駄でも履いているのか、カコンカコン……といった音が幾重にも重なっているのも耳に響いてきた……

そして、私の目の前を、光そして音の一座が、その姿をぬっと表した……

先頭からみな一様に、黒を基調とした袴を着ており、頭には虚無僧が被る傘をしていて顔は見えなかった。ただ皆が皆一様に、一言も口を聞かずに、ただ片手に提灯を持って、相変わらずカコンカコン……と音を立てながら通り過ぎていく……

やがて一抱えもありそうな匣を左右に四人ずつ、神輿を担ぐように運んでいく一団が、行列から見えた……その時私は直感的に「アァこれは死人が入っているんだな……そしてこの列は墓へ埋めに行く集団なんだな……」と思った。

ぼんやりと行進を眺めると、何か位牌の様なものを抱えた一団が目に付いた……戒名こそ読めなかったが、興味からか、ふとこの連中が埋めに行く奴の顔を拝んでやろうと考えた……

またぼんやりとしていると、視界の隅に、胸に遺影らしきモノを抱えた一団が入ってきた。しめたコレで顔が分かると、顔を其方に向け、そして叫び声を上げた……


そこには私自身が見返していた……

……列車の音がする……私はその音を聞きながら、ただただ意識が薄れていくのを感じていった……


ガタガタガタガタ……


…………


チーン……と音がした


何やら私は伽藍にて横たわっているらしい……目の前にはたった一本の蝋燭が弱々しく燃えており、その朧気な灯りが辺りの明暗をぼんやりと区切っている……

目の前に、白い顔がぬっと出てきた。髪は無く、目玉はギョロリとして、口を真一文字に結び、ただこちらをギョロギョロと見つめている。

私はどうすることも出来ずに、ただ見られるがままにされ、口も閉じたままだった……

すると、私を凝視していた顔がフッと消えた……なんてことは無い、部屋を照らしていた蝋燭が消されただけだ……

暗闇の中、ジャラジャラと数珠を合わせる音がしたと同時に、経を読む声が、伽藍の中で延々と響き始めた……すると何処からともなく……啜り泣く音……歩く音……スッチャスッチャ……スッチャスッチャ……

やがて辺りが静かになった……

しばらくすると、私が伽藍で聴いた鐘の音が、再び高く鳴ったのだった……


チーン……


…………


ザァー……


水の音がした。目の前には河が、右から左へ、白い筋を描きながら流れている。

あぁこの川を渡らなければ……と辺りをキョロキョロと見渡した…… 
すると、私の近くに相方は呆然と立っていた。
思いもよらぬ再会。私は相方に駆け寄って、声をかけた。

彼女は此方に気がつくと、ニッコリとしながら、目の前の川を指して


「ほらコレが世界の果てよ」


と説明してくれた……

私もまた笑顔になった。ナァンダ世界の果ては在ったんじゃないか……なんで気が付かなかったのだろうか……と思いながら、相方と二人で手を繋ぎながら、川上を目指して歩き出した……

私は満足しながら、水の音を聞いていた……


ザァー……ザァー……ザァー……

最初に、本作品を一読して頂きありがとうございます。

あとがきです。
マストドンの方で語ったのですが、秘封倶楽部が秘密を暴いて暴いて暴いていったその果て、最後に残るのは「死」のみではないか……と思いまして、それ以来、何処かあの二人には「死」へと向かっていく……そういった印象が、僕の中にはありました。
また、僕自身は内田百閒先生の「冥途」がとても好きで、もし書くなら百閒先生のような作風に出来たならば……といった想いもありました。
今作は、それらを意識して書いてみたのですが、筆者の学の到らなさ故に、何か間のぬけた文章が出来たわけですが……
あとがきは以上です。本作品及び、あとがきを読んで頂き、嬉しい限りであります。作品を読んでいただく、これに勝る幸福はありません。

補足……タイトルは、小泉八雲の同名の作品のように、「狐狸妖怪に化かされていただけ」とも取れるように……程度の何かです。

苦情・クレームは(gensokyo.cloud)@udemawariまで
饂飩
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コメント



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1.90怠惰流波削除
リーダが多く、なにやらこれは……怪談めいているという第一印象でした。途中からは確かに脳内で語り部が声を上げ始め、ゆっくりとしたテンポで物語を読み上げていました。

とてもよかったです。
2.20名前が無い程度の能力削除
何でこういう作品を書く人は本文量も気にせずに言い訳と自分語りばかりするんでしょうね?
4.70名前が無い程度の能力削除
静かで不思議な雰囲気の話ですね
怪談じみているけど怖さや悲劇ではなく世の無常みたいなのを感じます