紅魔館紅美鈴殺害事件
春の陽気にうとうと。絶好のお昼寝日和だ。こんなにいい季節なのに、お昼寝を許してくれない咲夜さんは春になっても溶けきらない雪のように頑固で冷たい。
職務中に居眠りをして叱られるので悪いのは完全に私だが、腹いせに咲夜さんを驚かしてみようかと思う。
さて、どうやって驚かすのであろうか。
先程いい案が浮かんだのである。
まず、目を閉じて意識を手放して......
「美鈴!起きなさい!!」
そう美鈴を怒鳴りつけ、咲夜の放ったナイフは美鈴の眉間目掛けて一直線に飛んでいく。
ナイフが額に刺さった瞬間、赤い飛沫。みるみるうちに血だまりを作り、美鈴はそのままぐったりと動かなくなった。
「え?ウソ......」
咲夜が美鈴に駆け寄る。揺さぶってみても反応はない。恐る恐る脈をとってみる。
彼女は完全に事切れていた。
こんなの冗談に決まってるわ。震える声で逃避を始めた咲夜は急いでその場を離れた。しかし、レミリアから館内にいる全員に招集命令が出たのはすぐのことだった。
「全員揃ったわね。まず、どうしてあなた達が呼ばれたのか、お分かり?」
そうメイド達に語りかけるレミリア。面白半分でパチュリーも来たが、妖精メイドの混雑に中に勿論咲夜も居た。
「そう、これを見てちょうだい。美鈴の死体よ。先程、何者かによって殺されたの。」
メイド達がざわつく。
「今日は来客はいないわ。つまり、この館の誰かが犯人よ!」
そうビシッと言い放つと同時に、パチュリーはこの間借した推理小説に感化されて探偵ごっこが始まったのかと頭を抱えるのであった。
なんだか大変なことになったなあと地面に転がる美鈴は思う。文面とは裏腹にのほほんとしているのはこの予想以上に重たくなった事態を面白がっている面があるからだろう。しかし、誰もこの演技に気づいていない。
さすが私である、気を上手く使えば仮死状態になることも可能だ。本当は咲夜さんが心底驚いた顔も見ることができて満足だったのだが、お嬢様の登場により完全に起き上がるタイミングを逃してしまった。そうこう倒れているうちに、お嬢様が口を開いた。
「これを見なさい!」
そう言って私の額から毎度お世話になっている凶器を引き抜くと周りを囲む大勢にそれ見せる動作をする。
「今回の事件の凶器よ。見慣れた銀のナイフ。これはまさに私の側近、咲夜のものと一致しているわ。」
うろうろと左右に歩き回りながら力説する。こう申し上げるのはお嬢様に失礼であるが、演説に熱が入る酔狂はこうやってうろちょろするのが義務なのだろうか。
私の位置からでは大勢の妖精メイドやら首謀であるメイド長の姿は見えないが、急に騒々しくなったのがわかる。
「つまり犯人は......」
そこで咲夜さんを出してしまうのはあまりに興が削がれる。
折角面白そうだと思ったのだが、期待はずれだったようで、そろそろ起き上がろうかと思い始めた頃である。
「咲、夜。と、言いたいところだけれど、それはあまりに単純だわ。これは彼女以外が犯人という線が濃厚よ。」
その言葉は思いがけなかった。
私の心配は杞憂に終わったようだ。レミリアお嬢様の事だ。期待はしていなかったが、期待には答えてくれたようだ。
どうやらまだまだスイリというものは続くらしい。
「想像してご覧なさい。咲夜が美鈴にナイフを投げる事はもう紅魔館の日常だけど、殺すまではいかないわ。」
そうよね、咲夜。と、お嬢様は首謀に同意を求めるが、その通りでございます。という声は若干震えていた。
彼女の冷や汗をかいた姿が容易に想像できるが、今この体勢ではそんな彼女を見ることも叶わないことに悔やみ入る。
「つまり、これは咲夜に罪を着せる為に誰かがやった事よ!」
ええーっ、と言った驚嘆という名の騒々の第2波が私の耳にも押し寄せてきた。大真面目に推理に耳を傾ける妖精メイド達にはこの吸血鬼のお嬢様がシャーロック・ホームズに見えるかもしれないが、仰るスイリは全て少し考えてみればごく当たり前の事である。
私にとっては他人の言ったことをあたかも自分のもののように繰り返す無能平社員にしか見えないのである。
「きっと恨みを持った者が彼女を陥れたに違いないわ!実はこの事件の犯人の候補は大方上がっているの。」
さすがお嬢様だ。咲夜さん以外の誰を犯人に仕立てあげるかなんて考えただけで頰が緩みかけそうになる。それ程私はこの思いがけない展開に胸を躍らせている。
「まず第一候補!小悪魔!」
ひえっ。っと言った声を上げる彼女。
一瞬にして周りからの注視を受ける。
「あなた、クナイの扱いはそれなりにできるでしょう?」
面食らって挙動不振になる小悪魔だが思い切って反論をする。
「そ、確かにそうですが、使えますよ?投げナイフも使おうと思えば使えますけど、肝心な動機がないじゃないですか!」
「動機?あるわ。」
えっ。と、呟いた小悪魔の目は恐らく点になっているだろう。当たり前だ、身に覚えのない罪を着せられて殺す能力も動機もあると言われたらそんな声も出る。
ただ、その反応はこの事件の真相を知らない者からすれば図星を突かれて困惑しているようにも見えるのだろうと心の中で少しだけ笑った。
「小悪魔、貴女はよく仕事でヘマをするでしょう?」
「は、はい。恥ずかしながら。」
「だから貴女はよく咲夜と比較される。つまり咲夜に対する嫉妬でこの罪を犯した。違うかしら?」
「違います!誓って殺しはやってません!」
「でもね、小悪魔。こんな回りくどいことできるの、貴女しか居ないの。」
悲しそうな目で小悪魔を見つめるお嬢様。同時に何やら禍々しい気配を感じて誰にも気づかれないようにそちらを一瞥すると、お嬢様はなんとおもむろに槍を生成し出したのである。
「私の咲夜と美鈴を手にかけた罰、その命で償ってもらいましょうか。」
ガックリと膝を落とす小悪魔。観念したように地面に雪崩れていく瞬間に彼女の目に浮かんだ涙を私は捉えてしまった。冤罪を楽しんでいたとはいえ、彼女の命まで奪われるというのは想定外だ。
もう起き上がって謝罪しようと思った刹那だった。
「小悪魔は関係ありません!私が、私が!殺しました!」
そう名乗りを上げたのは咲夜さんその人であった。
「小悪魔は関係ありません、私がやりました。罰は全て甘受します。どうか、彼女を赦してください。」
そう言い切ると咲夜さんはお嬢様に首を差し出すように項垂れる格好になる。
「そう、貴女だったのね。では、報いを受けてもらうわ。」
生成された槍が咲夜さんの首筋に触れた。
「でもね、違うわ。咲夜は真犯人では無いの。」
槍が静かに下ろされる。なぜ赦してもらえたのか、とうの咲夜さんは困惑しお嬢様を見上げている。
「言ったでしょう?小悪魔は第一候補。と言うことは第二候補がいるのよ。」
驚嘆の声がまたもや上がる。この意外性には私も素直に驚いた。
さて、犯人の第二候補とは一体誰なのだろうか。
「その第二候補っていうのは......」
瞬間、私の臀部に鋭い痛みが走った。
あまりに唐突だった為何が起きたかわからなかったが、お嬢様が槍を突き立てたらしい。
死んだふりなど等に忘れて思わず大声をあげて起き上がってしまった。
「第二候補、紅美鈴。これで分かったわ貴女が真犯人よ。」
大勢が声を上げる。私が生きていたことに対する驚きなのか、犯人が私であったことに対するものなのか、私には分からない。ただ、分かる事といえば......
「この事件の中核、それは美鈴の死んだふりによって咲夜を驚かせようとした事から始まるわ。」
咲夜さんの顔がみるみる赤くなる。まずい、これはかなり激昂している。
私は悟った。上司には二度と逆らうまい、と。
春の陽気にうとうと。絶好のお昼寝日和だ。こんなにいい季節なのに、お昼寝を許してくれない咲夜さんは春になっても溶けきらない雪のように頑固で冷たい。
職務中に居眠りをして叱られるので悪いのは完全に私だが、腹いせに咲夜さんを驚かしてみようかと思う。
さて、どうやって驚かすのであろうか。
先程いい案が浮かんだのである。
まず、目を閉じて意識を手放して......
「美鈴!起きなさい!!」
そう美鈴を怒鳴りつけ、咲夜の放ったナイフは美鈴の眉間目掛けて一直線に飛んでいく。
ナイフが額に刺さった瞬間、赤い飛沫。みるみるうちに血だまりを作り、美鈴はそのままぐったりと動かなくなった。
「え?ウソ......」
咲夜が美鈴に駆け寄る。揺さぶってみても反応はない。恐る恐る脈をとってみる。
彼女は完全に事切れていた。
こんなの冗談に決まってるわ。震える声で逃避を始めた咲夜は急いでその場を離れた。しかし、レミリアから館内にいる全員に招集命令が出たのはすぐのことだった。
「全員揃ったわね。まず、どうしてあなた達が呼ばれたのか、お分かり?」
そうメイド達に語りかけるレミリア。面白半分でパチュリーも来たが、妖精メイドの混雑に中に勿論咲夜も居た。
「そう、これを見てちょうだい。美鈴の死体よ。先程、何者かによって殺されたの。」
メイド達がざわつく。
「今日は来客はいないわ。つまり、この館の誰かが犯人よ!」
そうビシッと言い放つと同時に、パチュリーはこの間借した推理小説に感化されて探偵ごっこが始まったのかと頭を抱えるのであった。
なんだか大変なことになったなあと地面に転がる美鈴は思う。文面とは裏腹にのほほんとしているのはこの予想以上に重たくなった事態を面白がっている面があるからだろう。しかし、誰もこの演技に気づいていない。
さすが私である、気を上手く使えば仮死状態になることも可能だ。本当は咲夜さんが心底驚いた顔も見ることができて満足だったのだが、お嬢様の登場により完全に起き上がるタイミングを逃してしまった。そうこう倒れているうちに、お嬢様が口を開いた。
「これを見なさい!」
そう言って私の額から毎度お世話になっている凶器を引き抜くと周りを囲む大勢にそれ見せる動作をする。
「今回の事件の凶器よ。見慣れた銀のナイフ。これはまさに私の側近、咲夜のものと一致しているわ。」
うろうろと左右に歩き回りながら力説する。こう申し上げるのはお嬢様に失礼であるが、演説に熱が入る酔狂はこうやってうろちょろするのが義務なのだろうか。
私の位置からでは大勢の妖精メイドやら首謀であるメイド長の姿は見えないが、急に騒々しくなったのがわかる。
「つまり犯人は......」
そこで咲夜さんを出してしまうのはあまりに興が削がれる。
折角面白そうだと思ったのだが、期待はずれだったようで、そろそろ起き上がろうかと思い始めた頃である。
「咲、夜。と、言いたいところだけれど、それはあまりに単純だわ。これは彼女以外が犯人という線が濃厚よ。」
その言葉は思いがけなかった。
私の心配は杞憂に終わったようだ。レミリアお嬢様の事だ。期待はしていなかったが、期待には答えてくれたようだ。
どうやらまだまだスイリというものは続くらしい。
「想像してご覧なさい。咲夜が美鈴にナイフを投げる事はもう紅魔館の日常だけど、殺すまではいかないわ。」
そうよね、咲夜。と、お嬢様は首謀に同意を求めるが、その通りでございます。という声は若干震えていた。
彼女の冷や汗をかいた姿が容易に想像できるが、今この体勢ではそんな彼女を見ることも叶わないことに悔やみ入る。
「つまり、これは咲夜に罪を着せる為に誰かがやった事よ!」
ええーっ、と言った驚嘆という名の騒々の第2波が私の耳にも押し寄せてきた。大真面目に推理に耳を傾ける妖精メイド達にはこの吸血鬼のお嬢様がシャーロック・ホームズに見えるかもしれないが、仰るスイリは全て少し考えてみればごく当たり前の事である。
私にとっては他人の言ったことをあたかも自分のもののように繰り返す無能平社員にしか見えないのである。
「きっと恨みを持った者が彼女を陥れたに違いないわ!実はこの事件の犯人の候補は大方上がっているの。」
さすがお嬢様だ。咲夜さん以外の誰を犯人に仕立てあげるかなんて考えただけで頰が緩みかけそうになる。それ程私はこの思いがけない展開に胸を躍らせている。
「まず第一候補!小悪魔!」
ひえっ。っと言った声を上げる彼女。
一瞬にして周りからの注視を受ける。
「あなた、クナイの扱いはそれなりにできるでしょう?」
面食らって挙動不振になる小悪魔だが思い切って反論をする。
「そ、確かにそうですが、使えますよ?投げナイフも使おうと思えば使えますけど、肝心な動機がないじゃないですか!」
「動機?あるわ。」
えっ。と、呟いた小悪魔の目は恐らく点になっているだろう。当たり前だ、身に覚えのない罪を着せられて殺す能力も動機もあると言われたらそんな声も出る。
ただ、その反応はこの事件の真相を知らない者からすれば図星を突かれて困惑しているようにも見えるのだろうと心の中で少しだけ笑った。
「小悪魔、貴女はよく仕事でヘマをするでしょう?」
「は、はい。恥ずかしながら。」
「だから貴女はよく咲夜と比較される。つまり咲夜に対する嫉妬でこの罪を犯した。違うかしら?」
「違います!誓って殺しはやってません!」
「でもね、小悪魔。こんな回りくどいことできるの、貴女しか居ないの。」
悲しそうな目で小悪魔を見つめるお嬢様。同時に何やら禍々しい気配を感じて誰にも気づかれないようにそちらを一瞥すると、お嬢様はなんとおもむろに槍を生成し出したのである。
「私の咲夜と美鈴を手にかけた罰、その命で償ってもらいましょうか。」
ガックリと膝を落とす小悪魔。観念したように地面に雪崩れていく瞬間に彼女の目に浮かんだ涙を私は捉えてしまった。冤罪を楽しんでいたとはいえ、彼女の命まで奪われるというのは想定外だ。
もう起き上がって謝罪しようと思った刹那だった。
「小悪魔は関係ありません!私が、私が!殺しました!」
そう名乗りを上げたのは咲夜さんその人であった。
「小悪魔は関係ありません、私がやりました。罰は全て甘受します。どうか、彼女を赦してください。」
そう言い切ると咲夜さんはお嬢様に首を差し出すように項垂れる格好になる。
「そう、貴女だったのね。では、報いを受けてもらうわ。」
生成された槍が咲夜さんの首筋に触れた。
「でもね、違うわ。咲夜は真犯人では無いの。」
槍が静かに下ろされる。なぜ赦してもらえたのか、とうの咲夜さんは困惑しお嬢様を見上げている。
「言ったでしょう?小悪魔は第一候補。と言うことは第二候補がいるのよ。」
驚嘆の声がまたもや上がる。この意外性には私も素直に驚いた。
さて、犯人の第二候補とは一体誰なのだろうか。
「その第二候補っていうのは......」
瞬間、私の臀部に鋭い痛みが走った。
あまりに唐突だった為何が起きたかわからなかったが、お嬢様が槍を突き立てたらしい。
死んだふりなど等に忘れて思わず大声をあげて起き上がってしまった。
「第二候補、紅美鈴。これで分かったわ貴女が真犯人よ。」
大勢が声を上げる。私が生きていたことに対する驚きなのか、犯人が私であったことに対するものなのか、私には分からない。ただ、分かる事といえば......
「この事件の中核、それは美鈴の死んだふりによって咲夜を驚かせようとした事から始まるわ。」
咲夜さんの顔がみるみる赤くなる。まずい、これはかなり激昂している。
私は悟った。上司には二度と逆らうまい、と。
小悪魔の下りが最後フォローしてるせいで意味不明になってる。
何回か読み直したら?
第一にこれだとレミリアはただの嫌な奴
なにも悪くない小悪魔に殺すまでいうなど。
第二に咲夜もなぜこういうこと美鈴にされるのかわからないやな嫌な奴
寝てると見るや顔を狙ってナイフ投げてくる等
今日もいい天気である。からカットしてれば、タグであるようにギャグで終わったと思う。
とりあえず私見でもいいので、その意見を取り入れさせてもらいます。
おぜうの探偵ネタはありで。
できればもう少し話が長ければいいかと。
激昂したと思った咲夜さんが、ぽろぽろと泣きながら「私、本当に美鈴を殺しちゃったのかと思って……」くらいあってもいいような。
ごちそうさまでした。
実はもう少し長かったのですが、助言があって削らさせてもらいました。
考案の地点でめーさく要素を入れるか悩んだのですが、いかんせん色恋沙汰は苦手でして...
次回、挑戦させていただきます。