おえかきの日
今日は館の皆でお絵かきをする日です。私は、お砂場でお城を作っているであろうパチュリー様を呼びに行きました。
図書館の裏にある暗がりのお砂場に、華奢で可愛らしい背中を見つけます。せっせと砂を水と混ぜながら、ぺんぺんとお城に盛っています。
「パチュリー様」
私が声をかけると、パチュリー様は待っていたかのようにこちらに振り返り、駆け寄って来られました。
「こあ、みて! このたかさ、しんきろくかもね!」
目をらんらんと輝かせ、楽しそうに言葉を紡ぐご主人様をみていると、使い魔としての喜びを感じます。
「これは、新記録ですね。だってパチュリー様の背丈と同じくらいありますもの」
すると気づいておられなかったのか、パチュリー様は、
「ほ、ほんとうだ!」
と感慨深そうにお城のてっぺんを見つめながら硬直していました。そんなお姿もたいへん愛くるしいのです。
「パチュリー様、今日はお絵かきの日です。もうきっとテラスに皆様集まってらっしゃいますよ」
「あーっ、そうだった!」
慌てたように、ぱたぱたと手についた砂をはらってから、水道で手を洗うパチュリー様。絵面的にとてもグッドです。
「みんな、おくれてごめんね」
テラスに着くと、パチュリー様はまずごめんなさいをしました。
「だいじょうぶだよ」
レミリアお嬢さまが笑いかけます。パチュリー様は少し申しわけなさそうです。
「ぱちぇ、おえかきしよ」
フランドールお嬢さまの一言で、パチュリー様の表情がぱあっと明るくなりました。
「うん!」
そう元気いっぱいに答えるご主人様が可愛すぎて、幸せが飽和しそうでした。
「どうしてしろい紙に、しろいクレヨンでおえかきするの?」
レミリアお嬢さまが不思議そうに私を見つめます。
「さあ、どうしてでしょう」
にこりと笑って、私ははけをお嬢さま方に手渡します。
「多めの水で溶かした絵の具を、はけで伸ばしてみましょう」
「わあっ!」
期待していた以上の反応につい嬉しくなります。白い紙に白いクレヨンで絵を描いて、溶いた絵の具を上から薄く塗ると、まるで雪の中のような世界になりますよね。
きっとお嬢さま方には、油性も水性もさして変わらないことなのでしょう。
「すごいね、こあくま、すごい」
レミリアお嬢さまが瞳をきらきらさせています。
「もっかいしたい、もっかい」
フランドールお嬢さまは不思議な現象に夢中になってしまわれたようです。パチュリー様はというと。
「いったい、どういうしくみなんだろう……」
と、さすが研究者、幼くとも探究心は人一倍です。
その後は、色々な模様や絵を描いたり、また絵の具をたらしてみたり、レミリアお嬢さまが拾ったという花びらを用紙にひたすら貼り付けたりしました。途中夜勤前の美鈴さんが通りかかって、見事な水墨画を披露してくれました。
「さあ、そろそろお片づけの時間ですね」
咲夜さんがいらして、そう仰いました。もうすぐ夕食の時間なのです。
「やだ」
フランドールお嬢さまが机を小さな拳でたたきます。よほど楽しかったのでしょうか。嬉しい反面、咲夜さんを困らせてしまっているかな、と心配になります。
「フラン、さくやのおいしいごはん、たべたくないの?」
鶴の一声のようでした。レミリアお嬢さまがそう呟くと、フランドールお嬢さまはぴたりと駄々をこねるのをやめて、お片づけを始めました。即興で作ったであろうご飯の歌を歌いながら。こういうところで、レミリアお嬢さまはやはり館主さまにふさわしいのだな、と思わされます。
「さ、さくや、たまねぎは入ってないよね……?」
紙を乾燥棚に入れながらぎこちなくパチュリー様が尋ねました。夕食の話のようです。
「ふふふ、食べてからのお楽しみですわ」
咲夜さんのその一言で何かを悟ったのか、パチュリー様は準備体操を始めました。パチュリー様は苦手な食べ物と遭遇しそうになる前は、必ず屈伸をしたり、上体を捻ったり、準備体操をするのです。そうしていつも一緒にいらっしゃるお嬢さま方もつられて、おいっちに、と体を動かします。
私はいつまでもこんな風に、楽しく過ごせたらいいな、と思うのでした。
紅魔館は、やっぱり今日も平和でした。
今日は館の皆でお絵かきをする日です。私は、お砂場でお城を作っているであろうパチュリー様を呼びに行きました。
図書館の裏にある暗がりのお砂場に、華奢で可愛らしい背中を見つけます。せっせと砂を水と混ぜながら、ぺんぺんとお城に盛っています。
「パチュリー様」
私が声をかけると、パチュリー様は待っていたかのようにこちらに振り返り、駆け寄って来られました。
「こあ、みて! このたかさ、しんきろくかもね!」
目をらんらんと輝かせ、楽しそうに言葉を紡ぐご主人様をみていると、使い魔としての喜びを感じます。
「これは、新記録ですね。だってパチュリー様の背丈と同じくらいありますもの」
すると気づいておられなかったのか、パチュリー様は、
「ほ、ほんとうだ!」
と感慨深そうにお城のてっぺんを見つめながら硬直していました。そんなお姿もたいへん愛くるしいのです。
「パチュリー様、今日はお絵かきの日です。もうきっとテラスに皆様集まってらっしゃいますよ」
「あーっ、そうだった!」
慌てたように、ぱたぱたと手についた砂をはらってから、水道で手を洗うパチュリー様。絵面的にとてもグッドです。
「みんな、おくれてごめんね」
テラスに着くと、パチュリー様はまずごめんなさいをしました。
「だいじょうぶだよ」
レミリアお嬢さまが笑いかけます。パチュリー様は少し申しわけなさそうです。
「ぱちぇ、おえかきしよ」
フランドールお嬢さまの一言で、パチュリー様の表情がぱあっと明るくなりました。
「うん!」
そう元気いっぱいに答えるご主人様が可愛すぎて、幸せが飽和しそうでした。
「どうしてしろい紙に、しろいクレヨンでおえかきするの?」
レミリアお嬢さまが不思議そうに私を見つめます。
「さあ、どうしてでしょう」
にこりと笑って、私ははけをお嬢さま方に手渡します。
「多めの水で溶かした絵の具を、はけで伸ばしてみましょう」
「わあっ!」
期待していた以上の反応につい嬉しくなります。白い紙に白いクレヨンで絵を描いて、溶いた絵の具を上から薄く塗ると、まるで雪の中のような世界になりますよね。
きっとお嬢さま方には、油性も水性もさして変わらないことなのでしょう。
「すごいね、こあくま、すごい」
レミリアお嬢さまが瞳をきらきらさせています。
「もっかいしたい、もっかい」
フランドールお嬢さまは不思議な現象に夢中になってしまわれたようです。パチュリー様はというと。
「いったい、どういうしくみなんだろう……」
と、さすが研究者、幼くとも探究心は人一倍です。
その後は、色々な模様や絵を描いたり、また絵の具をたらしてみたり、レミリアお嬢さまが拾ったという花びらを用紙にひたすら貼り付けたりしました。途中夜勤前の美鈴さんが通りかかって、見事な水墨画を披露してくれました。
「さあ、そろそろお片づけの時間ですね」
咲夜さんがいらして、そう仰いました。もうすぐ夕食の時間なのです。
「やだ」
フランドールお嬢さまが机を小さな拳でたたきます。よほど楽しかったのでしょうか。嬉しい反面、咲夜さんを困らせてしまっているかな、と心配になります。
「フラン、さくやのおいしいごはん、たべたくないの?」
鶴の一声のようでした。レミリアお嬢さまがそう呟くと、フランドールお嬢さまはぴたりと駄々をこねるのをやめて、お片づけを始めました。即興で作ったであろうご飯の歌を歌いながら。こういうところで、レミリアお嬢さまはやはり館主さまにふさわしいのだな、と思わされます。
「さ、さくや、たまねぎは入ってないよね……?」
紙を乾燥棚に入れながらぎこちなくパチュリー様が尋ねました。夕食の話のようです。
「ふふふ、食べてからのお楽しみですわ」
咲夜さんのその一言で何かを悟ったのか、パチュリー様は準備体操を始めました。パチュリー様は苦手な食べ物と遭遇しそうになる前は、必ず屈伸をしたり、上体を捻ったり、準備体操をするのです。そうしていつも一緒にいらっしゃるお嬢さま方もつられて、おいっちに、と体を動かします。
私はいつまでもこんな風に、楽しく過ごせたらいいな、と思うのでした。
紅魔館は、やっぱり今日も平和でした。
私も幼稚園パロを書きたいと思っていたので、色々と参考にさせていただきます。