Coolier - 新生・東方創想話

あんた

2017/04/22 09:45:43
最終更新
サイズ
3.49KB
ページ数
1
閲覧数
2629
評価数
23/48
POINT
3380
Rate
13.90

分類タグ

最近、お姉ちゃんが変わった

変わったと言っても性格が変わったとか、見た目が変わったとか、そういう類ではない
相変わらず髪はぼさぼさだしオシャレには無縁だしじと目だし
性格だってドSだしその割に面倒見良かったり、まあさほど変化ないと思う。
じゃあどこが変わったのか、というと…

「あら、あんた帰ってたの。帰ってたなら帰ってるってちゃんと言いなさいよ。」

私への、接し方が変わったのだ。

「あ、お姉ちゃんいたんだ。」
「いたんだ、って当たり前でしょう。私の家なんだから。」
「引き篭もりだもんね。」
「あんたが家に居なさすぎなの。3日に1回ぐらいは帰ってきなさいよ。」

こんな感じで、前より私に対してざっくばらんに話すようになった。
ちょっと前までは、帰ってくるたびに

『こいし、今回はどこに行ってたんですか?ケガはないですか?』

とか

『こいし、お風呂沸かしていますよ。今夜はここに泊まるのよね?』

とか、今とはだいぶ違う接し方だった気がする。
思い切って、疑問をぶつけてみることにした。


「あのさお姉ちゃん。」
「なによ。」
「最近お姉ちゃん、私への接し方、変わったよね。結構、かなり。」

お姉ちゃんはそれを聞くと、何を言っているんだという顔して答えた。

「変わったんじゃないわ、戻したのよ。」

戻した?あれ、昔はこんなんだったっけ?

「覚えてないのかしら?あんたが瞳閉じる前はこんな感じだったじゃない。」
「あー、瞳閉じる前のことは、覚えているようないないような…ってそれ!
 前までは絶対それ関係のこと言わなかったじゃない!
 私に対しても、『あんた』じゃなくて『こいし』だったし!
 もうちょっとなんかいろいろ優しかった!」
「違うわよ…」

お姉ちゃんはちょっとだけ言い辛そうにして、話を続けた。

「『優しかった』んじゃなくて、『気を遣っていた』のよ。」

気を、遣ってた?

「そりゃ私だって、あんたが瞳閉じたときはショックだったわ。
 それでどう接していいか分からなくなったのよ。
 ましてやあんたの心が分からなくなっちゃったからね。
 だから名前で呼ぶようにしたり、敬語っぽく話して顔色を伺うようにしたり、
 第三の瞳のことに出来るだけ触れないようにしたり、毎日神経使ってたわ。」

気付いていない…わけでは無かった。
ずっと私も気付いてはいたんだ、お姉ちゃんが私に気を遣っていることを。
でもそれをできるだけ気にしないように、意識しないようにしていた。
そういうのは私、得意だから。

「驚いたかしら?」
「んー、やっぱりねって感じ。薄々は気付いてた。」
「でしょうね。あんたそういうとこは私より鋭いし。」
「じゃあ、なんで戻したの?こんな話、前じゃ絶対しなかったよね。」

閉じた瞳のことに触れるなんて、前じゃ絶対にありえなかった。
なんというか、腫れ物に触るみたいに扱われていた気がする、今にして思えば。

「なんていうのかしら、最近あんた友達も出来たみたいだし、交流も広げてるみたいだし。」
「うん、こころちゃんとか寺のみんなとか。他にも友達いっぱいいるよ!」
「だからね、思ったのよ。あんたが瞳閉じた直後は、なんとか瞳を開けてもらおうって思ってたけど…
 あんた今楽しそうだし、それならそれでいいのかなって。つまりね…」

お姉ちゃんは少しだけ、ほんの少しだけ照れくさそうに言った。

「瞳を開いていようが閉じていようが、あんたはあんた。そう思えるようになったのよ。」

…やだ、ちょっと嬉しいかも。
確かにちょっと前までのほうが優しかったけど。いろいろ気を遣ってくれたけど。
それよりも何よりも、お姉ちゃんが今のわたしを認めてくれてるってことのほうが、100倍嬉しい。

「えへへ…」
「何よ、にやにやして。気持ち悪い。」

き、きもっ…?
や、やっぱり前言撤回!

「気持ち悪いって何よ!」
「いや、そのままの意味だけど。」
「理由は分かったけど、やっぱり変わりすぎだと思います!
 もうちょっと気を遣って!優しくして!」
「今更あんたに気を遣うことなんてないじゃない。」
「極端すぎだよ!」

びっくりするぐらい変わったけど、こっちのほうがお姉ちゃんらしいや。
素直で優しいわけが無かった、だって私のお姉ちゃんだもん。
『こいし』と呼びかけ続けなくても
もうあんたはちゃんと返事をしてくれるって分かったから
タマー
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.1160簡易評価
5.100名前が無い程度の能力削除
よかったです
仲良さそうな姉妹でほっこりしました
6.100名前が無い程度の能力削除
控えめに言って最高でした。
良い姉妹仲です。尊いとさえ思えました。
8.90名前が無い程度の能力削除
こういうさとこいもよいと思います
9.100名前が無い程度の能力削除
こいしのことを「あんた」と呼ぶさとりんは公式ですけど
深のEDでの登場だからいまひとつ広がらないですね
こういうさとりんたくましくてすごく好きです
もちろんこいしちゃんもかわいかった
10.100名前が無い程度の能力削除
ほっこりした
11.90奇声を発する程度の能力削除
良い雰囲気でした
12.100怠惰流波削除
原作プレイしてて、途端にぶっきらぼうになるさとりんかわええなぁとか思ってました。やっぱい可愛かった…!
口調のちぐはぐに整合性が取れていて、短いのにうおんと、唸ってしまいました。
14.100名前が無い程度の能力削除
 
15.90名前が無い程度の能力削除
読んでよかったです
16.100名前が無い程度の能力削除
さとりんがよい・・・いい味出している
18.100SPII削除
いい話だ…
19.90名前が無い程度の能力削除
原作のあんた呼び好きです。なんだか距離が近くて良いですよね
20.100名前が無い程度の能力削除
理想の姉妹だなぁ…
21.100名前が無い程度の能力削除
思わずHNを二度見しました。ほのぼのと読ませていただきました。
23.100名前が無い程度の能力削除
ぎゅっと詰め込まれた姉妹愛
とても良かったです
24.100名前が無い程度の能力削除
こういうのでいいんだよこういうので
26.90名前が無い程度の能力削除
公式のちょっとした要素を拾ってssにできるのすごい
27.90絶望を司る程度の能力削除
ほのぼのしました。
28.100南条削除
非常に面白かったです
肩の力を抜いたさとりもそれを受け入れるこいしも非常に良かったです
何気ない日常を取り戻したような幸福を感じました
29.100名前が無い程度の能力削除
原作のEDから、このようなSSが出るのをどこかで期待しておりました。
面白かったです!
36.100名前が無い程度の能力削除
あとがきがまた素敵に響くなぁ
39.80名前が無い程度の能力削除
本編も面白いしあとがきがすごくいい
48.100名前が無い程度の能力削除
それが自然なのだなと、良かったです