幽香さん!
チョコを解き放つっす!!
今日はバレンタインデーっす!
戸隠が得た情報では幽香がバレンタインデーに備えて手作りチョコレートを造り蓄えている。米騒動しかりええじゃないかしかりモテナイ男でもチョコレート開放を訴えれば戸隠にもワンちゃんあるかもしれない。
「……本命が貰えないのは分かっているっす。でも、義理チョコ様でも戸隠が生きるのには十分すぎるほどのエネルギーを得ることが出来るっす」
チョコのカロリー的なことではなくて精神的な栄養で生きることが出来る。
「黙れ戸隠、バレンタインデーのチョコはお前のような下等作者に差し出すようなものじゃないぞ」
戸隠が幽香の家の前で騒いで居ると幽香が家から出てきて怒った。
「トゲゲ?」
「……お前は醜い駄作者……時機に誰からも評価されず消えていく身」
それは哀れみなのか蔑げずみなのか或いは両方なのかもしれないが……とても悲しいということだけはわかる。
「とろげげげ」
「・・・・・・バレンタインデーのチョコがもらえる筈無いじゃないか!」
心のどこかに残っていた淡い期待は絶たれた。
「た、確かにっす」
戸隠は納得してそれ以上はもう何も言えなかった。
「わかったか?」
「はいっす。生意気言ってすみませんっす」
戸隠は淋しいおっさん。淋しい。
「そうだ。丁度良い、お前にこれを渡そう。同じの買ってくるんだ」
落ち込む戸隠に、幽香は紙袋を渡した。
紙袋のなかちっちゃなチョコみたいなものが入っているようだ。
もしかしてこれってと、戸隠は袋の中身を出してみたのだった。
「……ナットっす」
あの、スパナとかモンキーレンチで締めるあれだ。
「ナットを買って来いってことなんだけど他に何かあるっていうの?」
「い、いえないっす」
ちょっと、期待した戸隠が悪かったのだ。戸隠は金物屋にパシリに向かったのだった。その足取りは、溶けたチョコのように鈍重な動きだった。
書いて下さいよ