茜色の日差しがカーテンをにわかに染め上げる部屋の中。
集められた者たちは、ある者は不安、ある者は不遜な笑顔、様々な表情を浮かべている。
パチュリー・ノーレッジは厳かに口を開く。
「はい、それでは第3回『レミリア・スカーレット殺人事件の犯人を逮捕する会』を始めます」
「2回目以降がある時点でおかしくないそれ?」
「皆に集まってもらったのは、今朝方、絞殺死体で発見された我が友、レミリア・スカーレットの殺害犯を探しだすため。あなた方は容疑者としてここに呼ばれたのよ。
まず、一人ずつ名前を確認させてもらうわ」
腰掛けていた安楽椅子から立ち上がり、パチュリーは机の資料を手にとった。
「容疑者その一、十六夜咲夜」
「うう……お嬢様、なぜこんなことに」
「容疑者その二、レミリア・スカーレット」
「いやおかしいだろ。私一番ここにいちゃいけないヤツじゃん」
「容疑者その三、霧雨魔理沙」
「よう。めぼしい物はあらかた回収したから、早く終わらせて帰りたいぜ」
「事件とかいいからまずこいつを捕まえろ!」
「容疑者その四、八雲紫」
「ごきげんよう。凶器は庭の花壇に埋めましたわ」
「おいこいつ犯人だぞ!」
「容疑者その五、東風谷早苗」
「レミリアさん……私が人里で村人たちを相手に演説している間にそんなことが……」
「アリバイ完璧じゃねーか! なんでこいつ呼んだんだよ!」
「さっきからうるさいわよ容疑者その二。減点1ね」
「何の点数よいきなり!」
「マイナス10点に到達すると犯人という事になります」
「証拠の重要性!」
「今のところ貴女がマイナス3点で一番犯人に近いわよ」
「何しれっと余計に点数減らしてんだ!」
「ちなみに一番点数が良いのはプラス830点の容疑者その五ね」
「やっぱ疑う気ゼロじゃねーか!!」
「やはり犯人とするためには動機が必要よね」
「よく聞くとそんなに間違ってないけどやっぱり間違ってる気がするセリフやめて」
「という訳で、各々自分の動機を説明してちょうだい」
「なんで容疑者側の自己申告制なんだよ!」
「はい……その日はお嬢様の寝顔を二時間眺める日課を行っておりましたが、あまりの愛らしさに『この姿を永遠に留めておきたい』と思いあまって……」
「お前が口火を切るのかよ! そしてもう二度と寝室に上げないからな!!」
「レミリアがいなくなれば館の警備も雑になって色々借り放題だな」
「警備はなぜこいつを放置している!」
「動機は特にありませんが、どんな警備もかいくぐって獲物を殺害することができます」
「だからもうこいつ犯人でいいだろ!」
「待ってください! ここで私が真犯人である可能性を示す証拠が出て来るべきです!」
「何しに来たんだお前は!」
「騒がしいわよ容疑者その二、レミリア・スカーレット。貴女こそ、被害者レミリア・スカーレットを殺害せしめる動機があるんじゃないの?」
「まず自分のセリフに疑問を持て!」
「ふう……減点1ね。それでは調査をさらに進めていきましょう」
「え、これ私一人で全部ツッコまなきゃいけない流れ?」
「大丈夫ですよレミリアさん。この後容疑者その三とその五の間で諍いが起こり、その中で新たな動機が明らかになってさらにややこしくなるはずです」
「お前もう帰れ!」
「犯人を探しだすためには、殺害方法の調査は欠かせないわ。ここに被害者の遺体を再現した人形を用意しました」
パチュリーは横たわる人形を指し示す。
両腕があらぬ方向に折れ曲がり、腹部に大きな穴が空いて血や中身が溢れていた。
「どう見ても死因が絞殺じゃないんだけど」
「些細な事よ」
「こいつ遺体の状況を些細な事って言ったぞ!」
「落ち着いてくださいお嬢様。犯人は絞殺した後に遺体を損壊させる趣味があるのかもしれませんわ。私のように」
「しれっと何とんでもないカミングアウトしてんだ!」
「これは、まず両腕を折って抵抗できなくした後に、腹部を切り裂き、ダメ押しに首を絞めて殺害したのよ」
「だからこいつ犯人だってば!」
「待ってください! それでは私が犯人と疑われることのないままに事件が解決してしまいます!」
「お前が疑われるの一番無理があるだろ!」
「ところで腹減らないか? 台所からケーキ借りてきたからみんなで食おうぜ。後で返すからさ」
「むしろやるから返すな!」
「おかしいわね……これだけ調べても犯人を特定する証拠が出てこないなんて……」
「さっきから自供しまくってる奴がいるだろ!」
「ダメですよレミリアさん。詐欺など、違法な行為で得た自白は証拠として扱われないのです」
「聞いてもいないのに自分からベラベラ喋ってる!」
「くっ、私の図書館の本が実は全部官能小説なのを、希少な魔道書と偽ってきたツケがここに来て……」
「関係ないし知りたくなかった!」
「無論分かった上で借りていってるぜ」
「お前はそれでいいのか!?」
「はい、今のところ減点8で容疑者その二が犯人に一番近いわね」
「犯行の自白より重いその点数への信頼度はなんなんだ!」
「ちなみに2番目は減点6まで落ちた容疑者その五よ」
「プラス830点はどこへ行った!?」
「甘いですねレミリアさん……一見して犯人に見えなそうな者ほど、後になって証拠が続々と見つかりだすものです」
「一つたりとも証拠見つかってないだろ!」
「そうよ、決定的な証拠を突きつけられた犯人が涙ながらに自供を始めるまで、どうなるかは分からないものです」
「お前は自分から証拠を喋りまくってるけどな!」
「ちなみに彼女の減点は1よ。もっとも犯人から遠いと私の真犯人センサーが告げているわ」
「まずそのセンサーを修理に出せ!」
「ダメよ、購入額はべらぼうに安いけど修理費がバカ高いんだから。あと返品も高額の請求をされるわ」
「完全に掴まされてる!」
「平気よ。永遠亭の因幡てゐさんも『多分これ大丈夫だよ』とお墨付きの品だもの」
「多分の時点でお墨付きじゃない上に人選!」
「問題ありませんわお嬢様。その方はこの館の施工主も請け負ってくれた人物です」
「今すぐ建て替えの準備を始めろ!」
「よしきた。まず荷物を全部私の家に運びこむぞ」
「誰かこいつをふん縛れ!」
「さて、このままではラチが明かないので、ここに犯行の様子を収めた写真を用意しました」
「なぜ今まで出さなかった!?」
「ここに写っている意外な人物の正体を知りたい方は、このリンクをクリックしてください」
「それ踏んだらダメなヤツだろ!」
「心配いりませんわお嬢様。何か不具合が起きたら因幡てゐさんに相談料を払えば解決してもらえます」
「どう考えてもそいつが黒幕だ!」
「はっ……まさか全ての事件の黒幕は……」
「それはそいつじゃないから! これ以上容疑者を増やすな!」
「じゃあ間を取って私が犯人ということで!」
「いやいや私が」
「いえ、ここは私が」
「そんな流れはないからやめろ!」
「じゃあ犯人逮捕は次回に持ち越しということで」
「今回で終われ!」
「……これなら今度のコント大会は優勝できるかしら、霊夢? ちょっとオチが弱いかしらね」
「あんたら一体なにを目指してるの?」
集められた者たちは、ある者は不安、ある者は不遜な笑顔、様々な表情を浮かべている。
パチュリー・ノーレッジは厳かに口を開く。
「はい、それでは第3回『レミリア・スカーレット殺人事件の犯人を逮捕する会』を始めます」
「2回目以降がある時点でおかしくないそれ?」
「皆に集まってもらったのは、今朝方、絞殺死体で発見された我が友、レミリア・スカーレットの殺害犯を探しだすため。あなた方は容疑者としてここに呼ばれたのよ。
まず、一人ずつ名前を確認させてもらうわ」
腰掛けていた安楽椅子から立ち上がり、パチュリーは机の資料を手にとった。
「容疑者その一、十六夜咲夜」
「うう……お嬢様、なぜこんなことに」
「容疑者その二、レミリア・スカーレット」
「いやおかしいだろ。私一番ここにいちゃいけないヤツじゃん」
「容疑者その三、霧雨魔理沙」
「よう。めぼしい物はあらかた回収したから、早く終わらせて帰りたいぜ」
「事件とかいいからまずこいつを捕まえろ!」
「容疑者その四、八雲紫」
「ごきげんよう。凶器は庭の花壇に埋めましたわ」
「おいこいつ犯人だぞ!」
「容疑者その五、東風谷早苗」
「レミリアさん……私が人里で村人たちを相手に演説している間にそんなことが……」
「アリバイ完璧じゃねーか! なんでこいつ呼んだんだよ!」
「さっきからうるさいわよ容疑者その二。減点1ね」
「何の点数よいきなり!」
「マイナス10点に到達すると犯人という事になります」
「証拠の重要性!」
「今のところ貴女がマイナス3点で一番犯人に近いわよ」
「何しれっと余計に点数減らしてんだ!」
「ちなみに一番点数が良いのはプラス830点の容疑者その五ね」
「やっぱ疑う気ゼロじゃねーか!!」
「やはり犯人とするためには動機が必要よね」
「よく聞くとそんなに間違ってないけどやっぱり間違ってる気がするセリフやめて」
「という訳で、各々自分の動機を説明してちょうだい」
「なんで容疑者側の自己申告制なんだよ!」
「はい……その日はお嬢様の寝顔を二時間眺める日課を行っておりましたが、あまりの愛らしさに『この姿を永遠に留めておきたい』と思いあまって……」
「お前が口火を切るのかよ! そしてもう二度と寝室に上げないからな!!」
「レミリアがいなくなれば館の警備も雑になって色々借り放題だな」
「警備はなぜこいつを放置している!」
「動機は特にありませんが、どんな警備もかいくぐって獲物を殺害することができます」
「だからもうこいつ犯人でいいだろ!」
「待ってください! ここで私が真犯人である可能性を示す証拠が出て来るべきです!」
「何しに来たんだお前は!」
「騒がしいわよ容疑者その二、レミリア・スカーレット。貴女こそ、被害者レミリア・スカーレットを殺害せしめる動機があるんじゃないの?」
「まず自分のセリフに疑問を持て!」
「ふう……減点1ね。それでは調査をさらに進めていきましょう」
「え、これ私一人で全部ツッコまなきゃいけない流れ?」
「大丈夫ですよレミリアさん。この後容疑者その三とその五の間で諍いが起こり、その中で新たな動機が明らかになってさらにややこしくなるはずです」
「お前もう帰れ!」
「犯人を探しだすためには、殺害方法の調査は欠かせないわ。ここに被害者の遺体を再現した人形を用意しました」
パチュリーは横たわる人形を指し示す。
両腕があらぬ方向に折れ曲がり、腹部に大きな穴が空いて血や中身が溢れていた。
「どう見ても死因が絞殺じゃないんだけど」
「些細な事よ」
「こいつ遺体の状況を些細な事って言ったぞ!」
「落ち着いてくださいお嬢様。犯人は絞殺した後に遺体を損壊させる趣味があるのかもしれませんわ。私のように」
「しれっと何とんでもないカミングアウトしてんだ!」
「これは、まず両腕を折って抵抗できなくした後に、腹部を切り裂き、ダメ押しに首を絞めて殺害したのよ」
「だからこいつ犯人だってば!」
「待ってください! それでは私が犯人と疑われることのないままに事件が解決してしまいます!」
「お前が疑われるの一番無理があるだろ!」
「ところで腹減らないか? 台所からケーキ借りてきたからみんなで食おうぜ。後で返すからさ」
「むしろやるから返すな!」
「おかしいわね……これだけ調べても犯人を特定する証拠が出てこないなんて……」
「さっきから自供しまくってる奴がいるだろ!」
「ダメですよレミリアさん。詐欺など、違法な行為で得た自白は証拠として扱われないのです」
「聞いてもいないのに自分からベラベラ喋ってる!」
「くっ、私の図書館の本が実は全部官能小説なのを、希少な魔道書と偽ってきたツケがここに来て……」
「関係ないし知りたくなかった!」
「無論分かった上で借りていってるぜ」
「お前はそれでいいのか!?」
「はい、今のところ減点8で容疑者その二が犯人に一番近いわね」
「犯行の自白より重いその点数への信頼度はなんなんだ!」
「ちなみに2番目は減点6まで落ちた容疑者その五よ」
「プラス830点はどこへ行った!?」
「甘いですねレミリアさん……一見して犯人に見えなそうな者ほど、後になって証拠が続々と見つかりだすものです」
「一つたりとも証拠見つかってないだろ!」
「そうよ、決定的な証拠を突きつけられた犯人が涙ながらに自供を始めるまで、どうなるかは分からないものです」
「お前は自分から証拠を喋りまくってるけどな!」
「ちなみに彼女の減点は1よ。もっとも犯人から遠いと私の真犯人センサーが告げているわ」
「まずそのセンサーを修理に出せ!」
「ダメよ、購入額はべらぼうに安いけど修理費がバカ高いんだから。あと返品も高額の請求をされるわ」
「完全に掴まされてる!」
「平気よ。永遠亭の因幡てゐさんも『多分これ大丈夫だよ』とお墨付きの品だもの」
「多分の時点でお墨付きじゃない上に人選!」
「問題ありませんわお嬢様。その方はこの館の施工主も請け負ってくれた人物です」
「今すぐ建て替えの準備を始めろ!」
「よしきた。まず荷物を全部私の家に運びこむぞ」
「誰かこいつをふん縛れ!」
「さて、このままではラチが明かないので、ここに犯行の様子を収めた写真を用意しました」
「なぜ今まで出さなかった!?」
「ここに写っている意外な人物の正体を知りたい方は、このリンクをクリックしてください」
「それ踏んだらダメなヤツだろ!」
「心配いりませんわお嬢様。何か不具合が起きたら因幡てゐさんに相談料を払えば解決してもらえます」
「どう考えてもそいつが黒幕だ!」
「はっ……まさか全ての事件の黒幕は……」
「それはそいつじゃないから! これ以上容疑者を増やすな!」
「じゃあ間を取って私が犯人ということで!」
「いやいや私が」
「いえ、ここは私が」
「そんな流れはないからやめろ!」
「じゃあ犯人逮捕は次回に持ち越しということで」
「今回で終われ!」
「……これなら今度のコント大会は優勝できるかしら、霊夢? ちょっとオチが弱いかしらね」
「あんたら一体なにを目指してるの?」
満点!
抱いて!