Coolier - 新生・東方創想話

地霊殿だから仕方ない

2016/07/10 20:17:41
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「おねええぇぇちゃーーーんっっ!!!」
 静かに止まっていたような時間が、動き出す時の音。
無邪気としか言いようのない声を聴いて、わたしは読みかけの本をそっと閉じる。
 テラスに面した窓を蹴破って、満面の笑みを浮かべた無意識が飛び込んでくる。
「おねええちゃん!」
後ろからスッと私の腰に回される、愛しい妹の両腕。そのぬくもりに自然と頬が緩んでしまう。
「あらあら、どうしたのこ」
「無意識だからっ!」
 どこで覚えたのこいし。そんな完璧なジャーマンスープレックス。ああ、勇儀さんかしら。今日遊びに行くとか言ってたから。
「おねえちゃんおねえちゃん、ねえおねえちゃん。」
 いい笑顔をしてるんだろうな。見たいのだけれど、むしろ抱きしめたいのだけれどここから抜け出すのは無理。声を出すのが精いっぱい。
「nnなぁ…に、こい…し」
「おねえちゃん、今わたし何回おねえちゃんって言ったでしょうおねえちゃん!」
「7回。……最後のもいれたら…8回」
「今日の晩ごはんはカレーがいい!」
 そうね。カレーにしましょうか。今日の食事当番は誰だったかしら。ああダメね、お空だったわ。あの子は辛いのが苦手だから、つくってくれないかもしれない。
「さとり様ーっ、さとり様ーっ」
 この声はお燐。さっきの音を聞いて、様子を見に来てくれたのかしら。
「さとり様、3時のおやつ何に…って、こいし様。ダメですよ、さとり様は今お休み中なんですから!」
 ありがとうお燐。心配してくれるペットを持って、わたしは幸せだわ。そこ心配するのかっていうのは置いといて。
「あっお燐。晩ごはんは麻婆豆腐がいい!」
 こいしが素直にわたしから離れてく。だいぶ楽にはなったけど温かみが減った分さみしい。
「おやつはプリンでいいわ。昨日パルスィさんからもらったのがあると思うから」
「プリンだー」
 荒ぶるグリコのポーズ、ほんとにかわいいわこいし。
「プリンですね。後で持って来ます。…こいし様もこちらでよろしいですか?」
 壊れてしまった椅子を片付けるお燐。昔と違って、もう何も言わなくても欲することをやってくれる自慢のペット。
「そうね。……いえ、下にしましょう」
 プリン食べたいとの心が見えたから。まあ、もともとお空にも食べさせるつもりだったのだけれど。お燐も、お空も甘いものが好きだから。
「お空も呼んできて。みんなで一緒に食べましょう」
「わかりました。準備ができたら、また呼びに来ます」
 心を読むまでもなく。ぴんぴんと元気な2本の尻尾。
「お空に、晩ごはんはシチューがいいって伝えておいてー」
 気が付くと、こいしはもう姿を消していた。3時までに、帰ってくるかしら。
無意識だから仕方がない。こいしがいないと落ち着かない。
 こいしだから仕方ないか。



「あっつい。暑い。むしろ熱い」
 核融合炉の熱さが半端じゃない。ドレスなんて脱ぎ捨ててやろうかと思う。いやさすがにダメか。さとり様に見つかったら、お仕置きされるかもしれない。意外とそういうところには厳しい。もともとは素っ裸がデフォなだけにちょっとキツイ。
 いや待て。逆に考えるんだ。裸じゃないさとり様が間違えているんだと。さとり様も裸でいいさと。むしろそれをお仕置きするくらいの気持ちで……。
「地霊殿核融合炉裸祭り……」
「汚物は消毒だー!!!」
 親友の声。汚物って何のことだろう。白黒の魔法使いでも出たのかな。
 なんでもいいや。早く用件を済ませて帰らないと焼き猫になっちまう。お空の声のした方に振り返る。今まで見たことのないような、視界いっぱいの太陽。ああやっぱり太陽はでかいねえ。ああ、そうか。汚物ってわたs
「うにゃーーーっ!!!!」
 脇巫女も顔負けのグレイズ。猫だから。
「あれ?おかしいな。もう一発」
「にゃー!!!あほかーっ!!」
 渾身の猫パンチ。
 お空には悪いけど。…いやこれは全く悪くないよね。あほか。
「あ、お燐。あれ?汚物はどこ?」
「わたs…。お空、昨日の晩ごはんは何だった?3足す5はいくつ?今日のおやつは何だと思う?」
「うん…?えっと、昨日は秋刀魚で。3足す5は…⑨で。今日のおやつは、おやつ何?あれ、わたし何してたんだっけ?」
 ちなみにあたいは3日前のことはほとんど覚えちゃいない。
「今日のおやつはプリンだよ。さとり様がみんなで食べようって言ってるから、早く食堂へ行こう」
「プリン!やったー!」
 やれやれ身体は大きくなったのに、中身は昔からほとんど変わっちゃいないねえ。まあこれがお空のいいとこなのさ。お空だから仕方ないね。いや、お空だからいいんだ。
「お燐、早く早く!」
「待ちなよ。それと、今日の晩ごはんは…、いやなんでもないや」
 もう行っちゃってるし。まあ鳥だから、仕方ないね。



「今日の晩ごはんはー…、シチューでしたっけ?」
「ええ、とても楽しみにしているわ」
さとり様がにこにこしてる。わたしも嬉しい。きっと、こいし様と一緒におやつが食べれたからだ。ん?いやでも、いつもにこにこしてるような気がする。さとり様はいつでもにこにこなんだ。じゃあわたしはいつでも嬉しいのか。あれ?これって最強じゃね?今度チルノに自慢しよっと。
「お空、大丈夫かい。手伝おうか?」
 お燐が、少し心配そうに私の手元を見てる。
「大丈夫だよ!任せておいて!」
こう見えても地霊殿の中では、一番おいしくできる自信があるんだから。
「そうかい。じゃああたいはお風呂でも沸かしてくるよ」
 ぴょんぴょんとお燐が跳ねてく。みんな嬉しそうだなあ。
「何を入れようかな」
 シチューの中に何を入れるのか。これが実はなかなか難しい。お肉は入れないから、代わりに何か魚を入れようか。野菜は、ニンジンとジャガイモと。玉ねぎは入れちゃダメなんだよね。お燐がシチュー食べられなくなっちゃうから。猫だから仕方ないね。お燐は魚が好きだから、魚は多めにしとこう。お燐だから仕方ないよね。
「お空、ちょっと来てー」
 さとり様に呼ばれた。なんだろう?
「はーい。今行きまーす」



 おねえちゃんおねえちゃん。お燐燐。お空ー空。
 おねえちゃんは、とってもやわらかい。ぬくぬく。いい匂いー。
 お燐は、つやつや毛並なでなで。まじめー。ありがとー。
 お空は、ふっさふさ。素直元気。ありがとー。
 おねえちゃんは、心配し過ぎ。おねえちゃんだから仕方ない?おねえちゃんのが心配。おねえちゃんだから仕方ないね。
 おねえちゃんは優しい。おねえちゃんだから仕方ない。おねえちゃんがいるから優しい。おねえちゃんだから仕方ないね。
 おねえちゃんおねえちゃん。おねえちゃんありがとー。



「ふああ。もうこんな時間かあ」
「……」
「お空、眠っちゃったー」
「お燐、もう先に休んでていいわよ」
「はい。先に失礼します。…ほらお空おきて。ベッドに行くよ」
「……うにゅー。お燐、連れてってー」
「はいはい。さあ、行くよ」
「おやすみなさい二人とも」
「また明日ねー」
「おやすみなさい、さとり様、こいし様。」
「…おやすみなさーい」

「わたしたちもそろそろ眠りましょうか」
「ねえねえ、おねえちゃん」
「どうしたの、こいし?」
「ありがとー」
勢いだから仕方ない 
しゅぜん から名前を変えました。
いろは
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コメント



0.120簡易評価
3.無評価名前が無い程度の能力削除
数年前に投稿してたいろは氏とは別人?
5.無評価名前が無い程度の能力削除
なにこれ