「たのもー!!」
そう叫びながら勢いよく私の部屋に入ってきたのは、かの心綺楼異変を引き起こした面霊気、秦こころ。
私が昔作成した面が面霊気と化した存在であり、ある意味私にとって娘のような存在
そうなると私としても愛着がわき、いろいろと面倒を見ているのだが・・・
「どうしました?」
「ねぇねぇ、教えてほしいことがあるのー!」
何せ意思を持ってからまだ間もないため、様々なことを知らない。
どうやらこころの中では私が一番博識だと思われているらしく、わからないことがあるとすぐに飛んでくる。
「ほう、今日は何を教えてほしいのだ?なんでも聞いてよいぞ。」
「やった!ズバリ聞くからズバリ答えやがれ!」
あえて気取って質問を促す私に、こころは派手なポーズを決めながら言った。
「じゃんけんの中で一番最強なのはどれなんだ?」
・・・・はい?
「ちょっと言ってる意味がよくわからないが・・・」
「こいしから『じゃんけん』のルールを教えてもらったんだけどね、
仕組みがよくわからないんだ。」
「あれほど簡単な仕組みのゲームもないと思いますが・・・」
「何が簡単なものか!」
ぷんすこと怒りの仮面をつけるこころ。一体何が難しいというのだろう。
「グーはチョキに勝てる、チョキはパーに勝てる、パーはグーに勝てる。
じゃあ一体どれが最強になるのー?」
・・・なるほど、そういうことか。
強いか弱いかの一直線なものさししか持ってないこころにとって
この『3すくみ』の関係というものがまだ理解できないらしい。
「なるほどあなたの疑問はわかりました。例を変えて教えてあげましょう。
ヘビとカエルとナメクジが・・・」
『3すくみ』の例でよく使われるのがヘビとカエルとナメクジの関係である
最もポピュラーな例えを使って、説明してやろうと思ったのだが・・・
「いや、待てよ・・・?」
そういえばヘビやカエルやナメクジよりも、
もっと身近に存在する『3すくみ』の関係があることに私は気がついた。
「どうしたんだ?ニヤっとして」
「いえ、丁度よい例が身近に居るなあと思いまして。
いいでしょう、その人達の話を聞かせてあげましょう。
私の身近に存在する『3すくみ』・・・いや、あえてこう表現しましょうか。」
「・・・豪族じゃんけん。」
この話は、私の身近に存在する、まるでじゃんけんのような関係の3人の話である。
――豪族じゃんけん
「なんだそれ!面白そうだな!おしえておしえて!」
こころがズイッと私に近づいて話の先を急かす。
「近い近い!ちゃんと話してあげますよ。」
「それで、その話を聞けばじゃんけんの最強がわかるのか?」
「それは聞いたあとであなたが判断しなさい。
じゃあまずはこの二人の話をしましょうか、私の側近、布都と屠自古です・・・」
~~布都と屠自古の場合~~
「太子様ぁぁ!!」
そう叫びながら私の部屋に入ってきたのは、私の側近のひとり、物部布都。
いつもは笑顔で元気に霊廟を駆け回っているのだが、今は半泣き状態である。
こういう感じで布都が私の部屋に駆け込んでくるのは実は珍しくない。
ゆえに、理由も一瞬で察する。能力を使うまでもなく。
「・・・今度は何で叱られたんですか?屠自古に。」
そう、こういう時はたいてい、屠自古に何かしらで叱られたときだ。
「うっ、えぐっ、たいしさまぁ。」
「はいはい、落ち着きなさい。よしよし。」
布都の頭を撫でてやりながら、落ち着かせる。
この状態の布都を宥めるのもすでに慣れたものだ。
「だ、弾幕に使う皿が足りなくて霊廟にあった皿を借りていったら
その中に屠自古が愛用してた皿があって、それで。」
「・・・割ってしまったと。」
コクリと頷く布都。そりゃ屠自古も怒るだろうに。
「か、匿ってくだされ!」
「同じ家の中で匿うも何もないでしょうに。毎回ここに逃げ込むから、屠自古だってすぐにここに来ますよ。」
「そ、それでもお願いします!怖いのじゃ!!」
怖い、かあ。確かに屠自古は怒ると怖い。私でも怖い。
しかし、それにしたって布都は怖がりすぎのようにも見える。
そもそも、今は布都のほうが屠自古を使役している関係のはずなのだがね。
「布都は、屠自古が怖いのですね。」
「は、はい。」
「では、屠自古のことが嫌いですか?」
私は、あえて意地悪な質問をぶつけた。
もちろん、布都がそう思ってないことは知っている。
今のように怒られた時は私のところに逃げ込むが、普段は私が嫉妬するほどに仲のよい二人なのだから。
「・・・・・そんなことはないのじゃ。」
「君が臆病なのは知っています、だから屠自古の荒い言葉が自分に向けられると萎縮してしまうのでしょう?
でも屠自古は言葉は荒いですがとても素直で優しい人であることも、君は知っているはずですが。」
「う、うぬ・・・」
うつむく布都。ふむ、あと一押しなにかあればいいのですが。
「太子様ぁ!そこに布都いませんかぁ!?」
と、そこに扉に外から声が響く。もちろん屠自古の声である
ビクッ!と身体を震わせる布都。
私は布都の肩にそっと手を置いた。
「ほら、ちゃんと謝ってきなさい。大丈夫、きっと許してくれますよ。」
「・・・はい。」
布都は勇気を出して扉の外にいる屠自古に謝りに行った。
その後の二人の会話はあえて聞いていませんでしたが
夕飯の時に仲良く二人で話していたので、きっと仲直りできたのでしょう。
~~~~~~~~~~~~~
「・・・という感じで、布都は昔から屠自古に弱いのです。使役する関係になった今でもそれは変わっていません。
あの子は昔から臆病でしたからね、屠自古のまあその・・・ヤンキーのような言動にはどうしても怯んでしまうのでしょう。」
「なるほど!わかった!つまりとじーが最強ということだな!」
とじー?ああ屠自古のことですか。
それはともかく、私は結論を急ぐこころを制します。
「まあ待ちなさい、ここにもう一人加えましょう。私の師である邪仙、霍青娥です。
この人と屠自古を絡ませるとまた面白いものが見れましてね・・・」
~~屠自古と青娥の場合~~
「太子様ぁ!!」
そう叫びながら私の部屋に入ってきたのは、私の側近の一人、蘇我屠自古。
その表情は・・・・やばい、怒りとじこ、すなわち落雷モードである。
な、なにかやらかしましたっけ・・・
「太子様に、聞いてもらいたいことがあるんです!!」
あ、どうやら怒りの対象は私ではないらしい。とりあえず一安心。
「と、とりあえず落ち着いてください。何でしょうか?」
「太子様のほうから一言言ってほしいんですよ!あの霍青娥とかいう邪仙に!」
ああ、青娥のことか。
実は青娥は屠自古のことを大層気に入っている。
もちろん全うな理由ではなく、おもちゃとして
屠自古は気性は荒いですがとても素直な性格をしているので、いつも青娥にからかわれて遊ばれている。
もちろん屠自古にこのように青娥を止めてほしいとお願いされることも初めてではないのだが
いかんせん私が言ったところで彼女を止められるかと言ったら・・・ねえ?
「私が言ったところでどうにもならないと思いますよ?あなたは青娥のお気に入りですから。」
「冗談じゃねぇよ!私は大嫌いだあのクソ邪仙!」
「落ち着いてください、口調が荒れてますよ。」
「あっ、し、失礼しました。でも!聞いてくださいよ!!」
はいはい、聞いてあげますよ。とりあえず鬱憤をぶちまけて落ち着いてもらおう。
「この前一緒に買い物に行ったんですよ!そしたらあいつあっちへフラフラこっちへフラフラ!
本来買うつもりのない物までカゴに入れて!鬱々しいったらありゃしない!」
「はいはい大変でしたね・・・・ん?」
「その後食事もしたんですがね!あの女私の座ろうとしたベンチに壁抜けの術を仕込みやがって!
おかげで尻餅ついちゃいましたよ!公衆の面前で!ああ恥ずかしい!!」
ちょ、ちょっと待って、なんかおかしいですね?
「ちょっと待った、えっと、いいですか?」
「なんですか!ひどいでしょう!?」
「それは一旦置いといて・・・あなた達、一緒に買い物行ったりご飯食べに行ったりしてるんですか?」
「それぐらいしますけど・・?」
「確認ですが、あなたは青娥のことが」
「大っっ嫌いです!」
「でも一緒にそういうことするのは友」
「大っっ嫌いです!」
そ、そうですか、そういうことにしておこう・・・・
まあ、本人が言ってるよりも仲良くしてるってのはよくわかりました、うん。
~~~~~~~~~~~~~
「屠自古は素直で直情的ですからね、すぐに青娥にからかわれていいようにされます。
青娥もそれが分かっていて屠自古をおもちゃにしてるフシがありますからね。
屠自古は昔から青娥に弱いのです。」
「むむ、ということはあれだな!わかったぞ!
布都に強いとじーに強い青娥!つまり青娥が最強なわけだな!」
「ふふふ・・・」
思い通りのリアクションにニヤリとする私。
「そう思いますよね?でも面白いのはここからですよ。
今度は、布都と青娥を絡ませてみましょう・・・」
~~布都と青娥の場合~~
「豊聡耳様ぁ!!」
そう叫びながら私の部屋に入ってきたのは、私の師であり友人でもある、霍青娥。
いつもは飄々とした態度で余裕を崩すことはないのだが
今日は珍しく若干取り乱しているように見える。
そして私は知っている。
彼女をこんなに取り乱させることができるのは一人しかいない。
「ほんっっとなんとかしてください!あの物部様とかいう犬っころを!」
・・・そう、彼女は布都のことが苦手なのだ。
「私としては君のそういう姿を見れるのが愉快でしょうがないですが、どうしました?」
「どうしたもこうしたもないですよ!あいつ私が何をしてても青娥殿!青娥殿!と後ろをついてくるのです!」
「そりゃあ、布都は君になついていますからねぇ。」
布都は飛鳥時代に青娥から仙術を教えてもらっていた頃から、青娥になついている。
それはもうまるで尻尾を振っている姿が見えるかのように。
「でもあなただってそういうのは嫌いではないでしょう?芳香を連れているのを見るに。」
「芳香ちゃんは従順でいい子だからいいんです!ちゃんとおとなしくしてと言えばおとなしくします!
でも物部様は私が拒否しても付きまとって声をかけてきますの!
あの方がいるだけで疲れてしまいますわ!」
「はっはっは!なるほどなるほど!」
「何がおかしいのですか!」
ぷりぷりと怒る青娥。いやはや、これが面白くないわけがないではないか。
こんなに青娥を取り乱させることができる布都という存在
この二人の関係は実に面白い。どれ、少しつついてみますかね?
「私には分かりますよ、あなたが布都が苦手な理由が。」
「そんなもの私も分かっていますわ。うるさい奴は苦手ですの。」
「いいえ違いますね。自分の思うようにコントロールできないからでしょう?」
うぐっ、と息を呑む青娥。私の観察眼をなめてはいけないよ。
「あなたは気に入ったものは自分の思い通りにしたいタイプですね、その最たる子が芳香です。
でも布都はまったく思い通りにならない。それで居て自分に好意を向けてくる。
どのように接したらいいのか、わからないのでしょう。」
「・・・何を言っているのか、さっぱりですわ。」
「私からアドバイスを一つ、自分の欲望に素直になってみなさい。
私には見えますよ、あなたの心の底にある、布都に振り回されるのも悪くないという欲が・・・」
「失礼しますわ!!」
話を遮って青娥が出ていってしまった、しまった少しいじめすぎたか。
とは言え最近はこの二人を見るのが楽しくて仕方ない。
青娥を取り乱させるなんて、私にもなかなかできるものではないですからね。
~~~~~~~~~~~~
「・・・というわけなんですよ。
まったく自分の思い通りにならない布都に青娥は弱いのです。
このように私を使って布都から逃げようとしてる姿を何度も見ています。」
「ん・・・ん??わからなくなってきたぞ!?」
首を傾げるこころ。
こころの周りには困惑を表す面がぐるぐると回っている。
うむ、わかりやすいね。
「屠自古は布都に強い、青娥は屠自古に強い、布都は青娥に強い。
このような関係を『3すくみ』と呼び、
それをグーとチョキとパーでゲームにしたものを『じゃんけん』と呼ぶのです。
この関係の中に最強はいません、3つともどれかに強くどれかに弱いのです。」
「なんとなーーーくだけどわかった!でもでも!また気になることができたよ!」
はて?結構わかりやすく説明したはずだが、まだ何か分からないのだろうか。
「神子は、この中だと誰に強いんだ?」
・・・なるほど、確かにその疑問は出てくるだろう。
まあ他の人もいないし、少し見栄を張っても許されるかな!
「私はこの3人の誰にでも強いですよ!つまり最強は私ということですね!」
「なに!?それは本当か!」
ドヤ顔を決める私!
するとこころは長刀を取り出した、あ、この流れはもしや
「ならばお前を倒せば私が最強ということだな!
最強の座をかけて私と戦え!!」
あっちょっと待って今はオフモードだったから急に斬り付けられると避けられな
おわり
そう叫びながら勢いよく私の部屋に入ってきたのは、かの心綺楼異変を引き起こした面霊気、秦こころ。
私が昔作成した面が面霊気と化した存在であり、ある意味私にとって娘のような存在
そうなると私としても愛着がわき、いろいろと面倒を見ているのだが・・・
「どうしました?」
「ねぇねぇ、教えてほしいことがあるのー!」
何せ意思を持ってからまだ間もないため、様々なことを知らない。
どうやらこころの中では私が一番博識だと思われているらしく、わからないことがあるとすぐに飛んでくる。
「ほう、今日は何を教えてほしいのだ?なんでも聞いてよいぞ。」
「やった!ズバリ聞くからズバリ答えやがれ!」
あえて気取って質問を促す私に、こころは派手なポーズを決めながら言った。
「じゃんけんの中で一番最強なのはどれなんだ?」
・・・・はい?
「ちょっと言ってる意味がよくわからないが・・・」
「こいしから『じゃんけん』のルールを教えてもらったんだけどね、
仕組みがよくわからないんだ。」
「あれほど簡単な仕組みのゲームもないと思いますが・・・」
「何が簡単なものか!」
ぷんすこと怒りの仮面をつけるこころ。一体何が難しいというのだろう。
「グーはチョキに勝てる、チョキはパーに勝てる、パーはグーに勝てる。
じゃあ一体どれが最強になるのー?」
・・・なるほど、そういうことか。
強いか弱いかの一直線なものさししか持ってないこころにとって
この『3すくみ』の関係というものがまだ理解できないらしい。
「なるほどあなたの疑問はわかりました。例を変えて教えてあげましょう。
ヘビとカエルとナメクジが・・・」
『3すくみ』の例でよく使われるのがヘビとカエルとナメクジの関係である
最もポピュラーな例えを使って、説明してやろうと思ったのだが・・・
「いや、待てよ・・・?」
そういえばヘビやカエルやナメクジよりも、
もっと身近に存在する『3すくみ』の関係があることに私は気がついた。
「どうしたんだ?ニヤっとして」
「いえ、丁度よい例が身近に居るなあと思いまして。
いいでしょう、その人達の話を聞かせてあげましょう。
私の身近に存在する『3すくみ』・・・いや、あえてこう表現しましょうか。」
「・・・豪族じゃんけん。」
この話は、私の身近に存在する、まるでじゃんけんのような関係の3人の話である。
――豪族じゃんけん
「なんだそれ!面白そうだな!おしえておしえて!」
こころがズイッと私に近づいて話の先を急かす。
「近い近い!ちゃんと話してあげますよ。」
「それで、その話を聞けばじゃんけんの最強がわかるのか?」
「それは聞いたあとであなたが判断しなさい。
じゃあまずはこの二人の話をしましょうか、私の側近、布都と屠自古です・・・」
~~布都と屠自古の場合~~
「太子様ぁぁ!!」
そう叫びながら私の部屋に入ってきたのは、私の側近のひとり、物部布都。
いつもは笑顔で元気に霊廟を駆け回っているのだが、今は半泣き状態である。
こういう感じで布都が私の部屋に駆け込んでくるのは実は珍しくない。
ゆえに、理由も一瞬で察する。能力を使うまでもなく。
「・・・今度は何で叱られたんですか?屠自古に。」
そう、こういう時はたいてい、屠自古に何かしらで叱られたときだ。
「うっ、えぐっ、たいしさまぁ。」
「はいはい、落ち着きなさい。よしよし。」
布都の頭を撫でてやりながら、落ち着かせる。
この状態の布都を宥めるのもすでに慣れたものだ。
「だ、弾幕に使う皿が足りなくて霊廟にあった皿を借りていったら
その中に屠自古が愛用してた皿があって、それで。」
「・・・割ってしまったと。」
コクリと頷く布都。そりゃ屠自古も怒るだろうに。
「か、匿ってくだされ!」
「同じ家の中で匿うも何もないでしょうに。毎回ここに逃げ込むから、屠自古だってすぐにここに来ますよ。」
「そ、それでもお願いします!怖いのじゃ!!」
怖い、かあ。確かに屠自古は怒ると怖い。私でも怖い。
しかし、それにしたって布都は怖がりすぎのようにも見える。
そもそも、今は布都のほうが屠自古を使役している関係のはずなのだがね。
「布都は、屠自古が怖いのですね。」
「は、はい。」
「では、屠自古のことが嫌いですか?」
私は、あえて意地悪な質問をぶつけた。
もちろん、布都がそう思ってないことは知っている。
今のように怒られた時は私のところに逃げ込むが、普段は私が嫉妬するほどに仲のよい二人なのだから。
「・・・・・そんなことはないのじゃ。」
「君が臆病なのは知っています、だから屠自古の荒い言葉が自分に向けられると萎縮してしまうのでしょう?
でも屠自古は言葉は荒いですがとても素直で優しい人であることも、君は知っているはずですが。」
「う、うぬ・・・」
うつむく布都。ふむ、あと一押しなにかあればいいのですが。
「太子様ぁ!そこに布都いませんかぁ!?」
と、そこに扉に外から声が響く。もちろん屠自古の声である
ビクッ!と身体を震わせる布都。
私は布都の肩にそっと手を置いた。
「ほら、ちゃんと謝ってきなさい。大丈夫、きっと許してくれますよ。」
「・・・はい。」
布都は勇気を出して扉の外にいる屠自古に謝りに行った。
その後の二人の会話はあえて聞いていませんでしたが
夕飯の時に仲良く二人で話していたので、きっと仲直りできたのでしょう。
~~~~~~~~~~~~~
「・・・という感じで、布都は昔から屠自古に弱いのです。使役する関係になった今でもそれは変わっていません。
あの子は昔から臆病でしたからね、屠自古のまあその・・・ヤンキーのような言動にはどうしても怯んでしまうのでしょう。」
「なるほど!わかった!つまりとじーが最強ということだな!」
とじー?ああ屠自古のことですか。
それはともかく、私は結論を急ぐこころを制します。
「まあ待ちなさい、ここにもう一人加えましょう。私の師である邪仙、霍青娥です。
この人と屠自古を絡ませるとまた面白いものが見れましてね・・・」
~~屠自古と青娥の場合~~
「太子様ぁ!!」
そう叫びながら私の部屋に入ってきたのは、私の側近の一人、蘇我屠自古。
その表情は・・・・やばい、怒りとじこ、すなわち落雷モードである。
な、なにかやらかしましたっけ・・・
「太子様に、聞いてもらいたいことがあるんです!!」
あ、どうやら怒りの対象は私ではないらしい。とりあえず一安心。
「と、とりあえず落ち着いてください。何でしょうか?」
「太子様のほうから一言言ってほしいんですよ!あの霍青娥とかいう邪仙に!」
ああ、青娥のことか。
実は青娥は屠自古のことを大層気に入っている。
もちろん全うな理由ではなく、おもちゃとして
屠自古は気性は荒いですがとても素直な性格をしているので、いつも青娥にからかわれて遊ばれている。
もちろん屠自古にこのように青娥を止めてほしいとお願いされることも初めてではないのだが
いかんせん私が言ったところで彼女を止められるかと言ったら・・・ねえ?
「私が言ったところでどうにもならないと思いますよ?あなたは青娥のお気に入りですから。」
「冗談じゃねぇよ!私は大嫌いだあのクソ邪仙!」
「落ち着いてください、口調が荒れてますよ。」
「あっ、し、失礼しました。でも!聞いてくださいよ!!」
はいはい、聞いてあげますよ。とりあえず鬱憤をぶちまけて落ち着いてもらおう。
「この前一緒に買い物に行ったんですよ!そしたらあいつあっちへフラフラこっちへフラフラ!
本来買うつもりのない物までカゴに入れて!鬱々しいったらありゃしない!」
「はいはい大変でしたね・・・・ん?」
「その後食事もしたんですがね!あの女私の座ろうとしたベンチに壁抜けの術を仕込みやがって!
おかげで尻餅ついちゃいましたよ!公衆の面前で!ああ恥ずかしい!!」
ちょ、ちょっと待って、なんかおかしいですね?
「ちょっと待った、えっと、いいですか?」
「なんですか!ひどいでしょう!?」
「それは一旦置いといて・・・あなた達、一緒に買い物行ったりご飯食べに行ったりしてるんですか?」
「それぐらいしますけど・・?」
「確認ですが、あなたは青娥のことが」
「大っっ嫌いです!」
「でも一緒にそういうことするのは友」
「大っっ嫌いです!」
そ、そうですか、そういうことにしておこう・・・・
まあ、本人が言ってるよりも仲良くしてるってのはよくわかりました、うん。
~~~~~~~~~~~~~
「屠自古は素直で直情的ですからね、すぐに青娥にからかわれていいようにされます。
青娥もそれが分かっていて屠自古をおもちゃにしてるフシがありますからね。
屠自古は昔から青娥に弱いのです。」
「むむ、ということはあれだな!わかったぞ!
布都に強いとじーに強い青娥!つまり青娥が最強なわけだな!」
「ふふふ・・・」
思い通りのリアクションにニヤリとする私。
「そう思いますよね?でも面白いのはここからですよ。
今度は、布都と青娥を絡ませてみましょう・・・」
~~布都と青娥の場合~~
「豊聡耳様ぁ!!」
そう叫びながら私の部屋に入ってきたのは、私の師であり友人でもある、霍青娥。
いつもは飄々とした態度で余裕を崩すことはないのだが
今日は珍しく若干取り乱しているように見える。
そして私は知っている。
彼女をこんなに取り乱させることができるのは一人しかいない。
「ほんっっとなんとかしてください!あの物部様とかいう犬っころを!」
・・・そう、彼女は布都のことが苦手なのだ。
「私としては君のそういう姿を見れるのが愉快でしょうがないですが、どうしました?」
「どうしたもこうしたもないですよ!あいつ私が何をしてても青娥殿!青娥殿!と後ろをついてくるのです!」
「そりゃあ、布都は君になついていますからねぇ。」
布都は飛鳥時代に青娥から仙術を教えてもらっていた頃から、青娥になついている。
それはもうまるで尻尾を振っている姿が見えるかのように。
「でもあなただってそういうのは嫌いではないでしょう?芳香を連れているのを見るに。」
「芳香ちゃんは従順でいい子だからいいんです!ちゃんとおとなしくしてと言えばおとなしくします!
でも物部様は私が拒否しても付きまとって声をかけてきますの!
あの方がいるだけで疲れてしまいますわ!」
「はっはっは!なるほどなるほど!」
「何がおかしいのですか!」
ぷりぷりと怒る青娥。いやはや、これが面白くないわけがないではないか。
こんなに青娥を取り乱させることができる布都という存在
この二人の関係は実に面白い。どれ、少しつついてみますかね?
「私には分かりますよ、あなたが布都が苦手な理由が。」
「そんなもの私も分かっていますわ。うるさい奴は苦手ですの。」
「いいえ違いますね。自分の思うようにコントロールできないからでしょう?」
うぐっ、と息を呑む青娥。私の観察眼をなめてはいけないよ。
「あなたは気に入ったものは自分の思い通りにしたいタイプですね、その最たる子が芳香です。
でも布都はまったく思い通りにならない。それで居て自分に好意を向けてくる。
どのように接したらいいのか、わからないのでしょう。」
「・・・何を言っているのか、さっぱりですわ。」
「私からアドバイスを一つ、自分の欲望に素直になってみなさい。
私には見えますよ、あなたの心の底にある、布都に振り回されるのも悪くないという欲が・・・」
「失礼しますわ!!」
話を遮って青娥が出ていってしまった、しまった少しいじめすぎたか。
とは言え最近はこの二人を見るのが楽しくて仕方ない。
青娥を取り乱させるなんて、私にもなかなかできるものではないですからね。
~~~~~~~~~~~~
「・・・というわけなんですよ。
まったく自分の思い通りにならない布都に青娥は弱いのです。
このように私を使って布都から逃げようとしてる姿を何度も見ています。」
「ん・・・ん??わからなくなってきたぞ!?」
首を傾げるこころ。
こころの周りには困惑を表す面がぐるぐると回っている。
うむ、わかりやすいね。
「屠自古は布都に強い、青娥は屠自古に強い、布都は青娥に強い。
このような関係を『3すくみ』と呼び、
それをグーとチョキとパーでゲームにしたものを『じゃんけん』と呼ぶのです。
この関係の中に最強はいません、3つともどれかに強くどれかに弱いのです。」
「なんとなーーーくだけどわかった!でもでも!また気になることができたよ!」
はて?結構わかりやすく説明したはずだが、まだ何か分からないのだろうか。
「神子は、この中だと誰に強いんだ?」
・・・なるほど、確かにその疑問は出てくるだろう。
まあ他の人もいないし、少し見栄を張っても許されるかな!
「私はこの3人の誰にでも強いですよ!つまり最強は私ということですね!」
「なに!?それは本当か!」
ドヤ顔を決める私!
するとこころは長刀を取り出した、あ、この流れはもしや
「ならばお前を倒せば私が最強ということだな!
最強の座をかけて私と戦え!!」
あっちょっと待って今はオフモードだったから急に斬り付けられると避けられな
おわり
いろいろと妄想させられますね
途中の三人のエピソードについては、特に青娥と布都の描写はもう一捻り欲しかった気もしました。
ところで、余計なお世話かもしれませんが三点リーダーは中点3つではなく「…」のほうが読みやすいと思います。
あなたの作品がまた読めて嬉しい。
しかしみんなに好かれている太子こそやっぱ最強なんじゃ
キャラ一人一人が魅力的で素敵でした