文樺を私が育てると声を大に宣言した文だったのだが、文はいきなり弱気になっていた。それどころか弱気どころではない、手足が震え、冷や汗が頬をつたっている。
病院に運ばれてもおかしくないこの状況は、椛の怒られても知りませんよ?という言葉が以前こっぴどく大天狗に怒られたという記憶を呼び覚ましたからというものであった。
震える体で文は問う。
「も、椛?一人で怒られろなんて言いませんよね?」
「文さん。私を巻き込まないでください」
一刀両断。どこぞの剣豪も真っ青なほどの切れ味である。
椛は、文の言葉を取り合わずに踵を返すように歩き出す。結論から言うと椛も大天狗が怖いのだ。そんなものに巻き込まれてたまるか、というオーラをバンバン出して、文の方を見ようともしない。
「そうつれないことをいわないでくださいよ!もみじぃ!もみじぃ!!!」
去ろうとする椛を文が腕を掴んで阻止、さながら人間綱引き状態だ。
そこになんの事情も知らない文樺は、きゃっきゃとぴょんぴょん飛び跳ね、私綱引きするー!と文と椛の腕を掴み後ろに引っ張り出した。
少女×3の人間綱引き。
まさにカオスである。
「もーーーみーーじぃいい!!」
絶叫する文
「嫌です!私は持ち場に戻らないといけないんです!」
同じく、声を荒げる椛
「わーーーーい」
わけも分からず大きな声を出す文樺。
「あら、随分面白そうなことをしているようね」
「「面白くありません!。命がかかっている…んです……?」」
ガバッという音がよく合う様な大袈裟な振り向き方で声の方を向いた二人だったが、どんどん声は小さくなっていく。
二人が見たものそれは、さきほどから話題に上がっていた大天狗である。
文たちを見下ろす事ができる高い背丈、透き通り肌にスラリとした足、背中に生えるのは金色の羽。
まさに大天狗のと言うべき貫禄だ。
「大天狗様 何故このような所に?」
「いや、椛が持ち場を離れたっきり帰ってこないときいたから、椛では対応しきれない賊が出たのかもしれないという事で出向いてみたのよ。まさか、遊んでいるとは予想外だったけれど」
はたから見れば、にこやかに話しているように見える大天狗なのだが、あや達の見解はちがった。
やばい、めちゃくちゃ怒ってる。
こうなったら下手のそのまた下手にでなければ、命がいくつあっても足りない。
「申し訳ありません、大天狗様。持ち場を離れてしまったのは事実です。私の不甲斐なさでこんなところまで足を運んでいただいてもらう事になってしまって……」
「そういうのいいから。なんで離れたのかしら?」
「えっとですね……侵入者を発見しましてその対応の為持ち場を離れました」
大天狗は、ふむ。と少し考え込むように俯向く素振りを見せたと思うと、すぐに文の方に顔を向けた。
「それで文は何でここにいるのかしら?」
「ええとですね。その不審者が現れた際に、"たまたま"その場にいまして、私も一緒にその対応に動きました」
「そう。そういうことなら、わかったわ」
文は、自分がその場にいた事の正当性を理解してもらった事でホッとしたのもつかの間、大天狗がこの場で最も重要かつ、文が遅かれ早かれ絶対に説明しなくてはいけなかったであろう事を聞く。
「じゃあ、その不審者はどうしたのかしら?」
その言葉が文の頭の中に響く。
言葉を一字一句理解はしている。答えが見当もつかないわけでもない。それでも、文はその質問に即答することができなかった。
聞かれる事は分かっていたのだが、それでも文はすぐには答えられなかった。
通常今回のような事案が起きた場合の報告とは、対処する事それは前提条件だろう。
不審者が侵入しても放置なんぞしていては、監視の意味など全くないし、管理者としてあまりにも杜撰な行為だ。
では先ほどの報告はどこが問題か。
それは"どのように対処をしたか"を報告に含めてない事。
どのように対応したかは、聞かれていないので答えませんでした。そんな事が通るわけがないのだ。相手の捉え方によってはこれは反逆罪だと捉えるだろう。
文は見た目は少女ながら1000年以上の時を生きている、若気の何たらでは済まされるような年ではない。
「その事に関して話があります」
「聞かせてもらおうかしら。事の"全て"を」
文は話した。先ほどの起きた事の全てを一字一句違える事がないように、記憶を掘り起こし言葉を紡ぐ。
「そう、話は分かったわ。この子は文樺って言うのね。では最後の質問よ」
"この子は貴方にとっての何かしら?"
「(どう答えればいい…何が正解?大天狗様の雰囲気から言って間違いは許されない。何が正解……)」
そこにさっきまで騒いで疲れたせいでウトウトしていた文樺がポソリと小さい声で何かを言った。
「文お姉ちゃんは、お姉ちゃんだから家族……」
お母さんは、お父さんは、お兄ちゃんは、お姉ちゃんは、家族。
正確ではないが、単純明快な答え。
文はこれが答えだよ確信した。
「私の家族です」
その言葉を聞いた大天狗は、ニコリと笑うと言った。
「正解よ。貴方の家族なら我々天狗の仲間ね。彼女を私たちは受け入れるわ。勿論、私たちの仲間になった以上、最低限の仕事はしてもらうにはなるけれどね。繊月文樺いい名前だわ」
「「ありがとうございます!」」
「いいのよ。けどまだ罰を与えていないわ。文、椛、その子を家まで運んだたら私の母屋まで来なさい。 わかっていると思うけれど一応言っておくわ。」
逃げたら殺す
「「わ、わかりました!!!!」」
その二人の悲痛の声が山に響き渡った。
「寝ている子がいるんだから静かにしなさい」
ゴツン
病院に運ばれてもおかしくないこの状況は、椛の怒られても知りませんよ?という言葉が以前こっぴどく大天狗に怒られたという記憶を呼び覚ましたからというものであった。
震える体で文は問う。
「も、椛?一人で怒られろなんて言いませんよね?」
「文さん。私を巻き込まないでください」
一刀両断。どこぞの剣豪も真っ青なほどの切れ味である。
椛は、文の言葉を取り合わずに踵を返すように歩き出す。結論から言うと椛も大天狗が怖いのだ。そんなものに巻き込まれてたまるか、というオーラをバンバン出して、文の方を見ようともしない。
「そうつれないことをいわないでくださいよ!もみじぃ!もみじぃ!!!」
去ろうとする椛を文が腕を掴んで阻止、さながら人間綱引き状態だ。
そこになんの事情も知らない文樺は、きゃっきゃとぴょんぴょん飛び跳ね、私綱引きするー!と文と椛の腕を掴み後ろに引っ張り出した。
少女×3の人間綱引き。
まさにカオスである。
「もーーーみーーじぃいい!!」
絶叫する文
「嫌です!私は持ち場に戻らないといけないんです!」
同じく、声を荒げる椛
「わーーーーい」
わけも分からず大きな声を出す文樺。
「あら、随分面白そうなことをしているようね」
「「面白くありません!。命がかかっている…んです……?」」
ガバッという音がよく合う様な大袈裟な振り向き方で声の方を向いた二人だったが、どんどん声は小さくなっていく。
二人が見たものそれは、さきほどから話題に上がっていた大天狗である。
文たちを見下ろす事ができる高い背丈、透き通り肌にスラリとした足、背中に生えるのは金色の羽。
まさに大天狗のと言うべき貫禄だ。
「大天狗様 何故このような所に?」
「いや、椛が持ち場を離れたっきり帰ってこないときいたから、椛では対応しきれない賊が出たのかもしれないという事で出向いてみたのよ。まさか、遊んでいるとは予想外だったけれど」
はたから見れば、にこやかに話しているように見える大天狗なのだが、あや達の見解はちがった。
やばい、めちゃくちゃ怒ってる。
こうなったら下手のそのまた下手にでなければ、命がいくつあっても足りない。
「申し訳ありません、大天狗様。持ち場を離れてしまったのは事実です。私の不甲斐なさでこんなところまで足を運んでいただいてもらう事になってしまって……」
「そういうのいいから。なんで離れたのかしら?」
「えっとですね……侵入者を発見しましてその対応の為持ち場を離れました」
大天狗は、ふむ。と少し考え込むように俯向く素振りを見せたと思うと、すぐに文の方に顔を向けた。
「それで文は何でここにいるのかしら?」
「ええとですね。その不審者が現れた際に、"たまたま"その場にいまして、私も一緒にその対応に動きました」
「そう。そういうことなら、わかったわ」
文は、自分がその場にいた事の正当性を理解してもらった事でホッとしたのもつかの間、大天狗がこの場で最も重要かつ、文が遅かれ早かれ絶対に説明しなくてはいけなかったであろう事を聞く。
「じゃあ、その不審者はどうしたのかしら?」
その言葉が文の頭の中に響く。
言葉を一字一句理解はしている。答えが見当もつかないわけでもない。それでも、文はその質問に即答することができなかった。
聞かれる事は分かっていたのだが、それでも文はすぐには答えられなかった。
通常今回のような事案が起きた場合の報告とは、対処する事それは前提条件だろう。
不審者が侵入しても放置なんぞしていては、監視の意味など全くないし、管理者としてあまりにも杜撰な行為だ。
では先ほどの報告はどこが問題か。
それは"どのように対処をしたか"を報告に含めてない事。
どのように対応したかは、聞かれていないので答えませんでした。そんな事が通るわけがないのだ。相手の捉え方によってはこれは反逆罪だと捉えるだろう。
文は見た目は少女ながら1000年以上の時を生きている、若気の何たらでは済まされるような年ではない。
「その事に関して話があります」
「聞かせてもらおうかしら。事の"全て"を」
文は話した。先ほどの起きた事の全てを一字一句違える事がないように、記憶を掘り起こし言葉を紡ぐ。
「そう、話は分かったわ。この子は文樺って言うのね。では最後の質問よ」
"この子は貴方にとっての何かしら?"
「(どう答えればいい…何が正解?大天狗様の雰囲気から言って間違いは許されない。何が正解……)」
そこにさっきまで騒いで疲れたせいでウトウトしていた文樺がポソリと小さい声で何かを言った。
「文お姉ちゃんは、お姉ちゃんだから家族……」
お母さんは、お父さんは、お兄ちゃんは、お姉ちゃんは、家族。
正確ではないが、単純明快な答え。
文はこれが答えだよ確信した。
「私の家族です」
その言葉を聞いた大天狗は、ニコリと笑うと言った。
「正解よ。貴方の家族なら我々天狗の仲間ね。彼女を私たちは受け入れるわ。勿論、私たちの仲間になった以上、最低限の仕事はしてもらうにはなるけれどね。繊月文樺いい名前だわ」
「「ありがとうございます!」」
「いいのよ。けどまだ罰を与えていないわ。文、椛、その子を家まで運んだたら私の母屋まで来なさい。 わかっていると思うけれど一応言っておくわ。」
逃げたら殺す
「「わ、わかりました!!!!」」
その二人の悲痛の声が山に響き渡った。
「寝ている子がいるんだから静かにしなさい」
ゴツン
若輩者で恐縮ですが、この場でコメントさせていただきます。
今回読んで思ったこととしては、文の感情は確かに文字を通して伝わってきました。
ですがその分、場面の描写や人物描写が丸ごと抜けてしまったように思われます。書くことが大変、という事は自分にも分かりますが、読み手からはどう話が進んでいるのか着いていけなくなるので(文量が少ないのですし)改めて編集・加筆をするか、3話から気を付けていただければ、と思います。
それと、ボリュームがやはり…うーん。
続き物はある程度ストックを作ってから短期的に出したほうがいいかもしれません(持論)。そうでないと多くの作品が連日投稿されるそそわでは折角の作品が埋もれてしまいかねないですよ!(現に、文樺ちゃんがどんな容姿なのか、歳はいくつ位なのか記憶から完全に抜けてましたから)
ぐだぐだと長文失礼しました。
今後に期待して今回はこの点数で。続きがどうなるか気になるので応援しますよ
また、文章から作者の頑張りが見てとれて良いと思う。
今回は天狗ふたりに焦点を当てた内容だから仕方ないのだが、やはりまだ主人公の文樺のキャラクター性が掴めないので、その辺りも含めて今後も期待したい。
妖怪の山を舞台にして、とても優しい世界が広がっていると思う、いまのところは。
新たな登場人物の大天狗も良いキャラクターに仕上がっている。
そして、射命丸文の描き方が今回、妙にツボにはまった。
飄々としているイメージのある文だが、こういう子供っぽいのも有りだなと思う。
ここからは指摘になるのだが。
文章に誤字脱字が所々見られる。
投稿する前に一呼吸おいて、自分の文章をきちんと見直す事をお薦めする。
折角、頑張って書いたのだから、こんな下らないミスで台無しにしたくはないだろう?
また、冒頭の辺りに『機微を返すように歩き出す』と有るのだが、これは『機微』ではなくて『踵(きびす)』ではなかろうかと推察したのだが、どうだろうか?
そして今回は情景描写が不足しているように思う。
登場人物のやりとりが何処で行われているのか分からない。
今回、感情描写に力を入れたのならば、次回はそれに加えて、情景描写にも力を入れてみては如何だろうか?
面白くなりそうな話だと思うので、今後の作者の頑張りに期待してる。
コメントありがとうございます。
勝手に文達は前作の場所から移動していないと事で話を進めていたのですが、それはあくまでも作者の自分だけがわかっている事ということをわかっていませんでした。
人物描写も同じくですね。
3話から、その点も注意して書いていきたいと思います。
それと投稿スピードなのですが、最近大学の方で忙しく中々書けていない状況が続いてしまっています。
なんとか時間を見つけて遅くても2週間に一度は投稿を目指したいと思います。
これからも応援よろしくお願いします。
前作に引き続き読んでいただきありがとうございます。
前作はキャラクターの感情が書けていないとの指摘を受けてしまいましたので、そこに注意して書いてみました。
頑張りがわかると言ってもらえるとすごく嬉しいです。
そうですね、文樺が主人公にも関わらずまだどんな子なのかなど書けていません……
次回には文樺を掘り下げることができればと思っています。
あややは、私が一番好きなキャラなのでついつい力が入ってしまい、こんな文もいいなといった感じで今回はこんな感じになりました。
お気に召してもらったのであれば幸いです。
誤字脱字……作った直後にそれをしたつもりではいたのですが、今一度確認すると誤字がちらほらある事がわかりました。
次からは今以上に注意してみていきたいと思います。
踵を返すであってます。大学生にもなんてこんな勘違い恥ずかしいです……すいません。
次回は情景描写も踏まえ書いていきたいと思います。
長文ありがとうございました!
このサイトに投稿してよかったと本当に思います。
これからも応援よろしくお願いします。