「今日もいい天気ねぇ…」
元々暇だったが最近は異変もなく、特に暇だ。
平和でいい事だが刺激がこうもないとつまらなかった。
魔理沙や萃香、紫はどうしたのだろう、最近あまり顔を見せて来ないが。いつもはめんどくさい位に絡んでくるのに最近は大人しい、心を入れ替えたのかな…と考えていた。
なんにせよ、今日も無事に一日が過ぎ去る……はずだった。
人里の方で一瞬、眩い光が見えた、その光に遅れて爆音が耳に届いた。
誰かが弾幕ごっこをやっているのかと思い、人里で派手にやるなぁと思っていた。
しかし、爆発は止まらず二回、三回…と続いて起きた、そして微かに炎の様な物も見える。
最早、スペルカードの爆発で無い事は誰の目にも明白であった。
これは…違う、ごっこ遊びの爆発ではない。明らかに人を殺傷する為の爆発だ。
「でも、なんで?」
この世界の道理に反した事が起こってる、霊夢はそう確信した。
妖怪の住んでいる所で爆発が起こるなら驚きはしない、しかし人里となると別だ。
相手は相当の馬鹿か相当の自信家のどちらかだ。大体前者だと予想はつく、人里に危害をもたらせば幻想郷中の怒りを買う事になる。無論、妖怪も例外ではない。
果たして今の幻想郷にそんな度胸のある奴は居ただろうか…
だからこそ、疑問に思った。
「全くもって命知らずな奴ね、まるでボコボコにしてくれと言っている様なものだわ」
そう言っていつも通り、異変解決の為に人里を目指そうとした。
しかし、異変の全容がわからない以上ここは紫に伝えるのが賢明だと思い、紫の住む家に向かった。
だが、まだ霊夢は気づいていなかった。これは異変という単純明快な図式ではないことを。
――――
「お前達!紫様と藍様を放せ!」
「ふむ、威勢のいい猫ちゃんだな。だが相手は選ばなきゃいけないなぁ」
「駄目だ橙!逃げろ!!」
「橙!来ては駄目よ!逃げて!」
橙は不思議だった、紫と藍が人間達相手に何故拘束されているのか。
あの二人なら人間なんて何人いても相手じゃない筈。
でも、二人を見捨てて逃げるなんてとても出来ない、しかし戦えば自分も捕まるかもしれない。
まだ幼い橙にとっては苦渋の選択だった。
「お姉さん達もああ言っている事だし逃げたらどうだい?今なら逃がしてやらなくもないぞ?」
「紫様と藍様をどうするつもりだ!」
「ふむ、まぁいいだろう話してやる」
「おい、大丈夫か?まだ制圧しきっていないのに喋ると計画が台無しになるぞ」
「いいではないか、私はこの猫ちゃんが気に入ったのだよ。少し位なら大丈夫だろう」
「はぁ…、あまり喋りすぎるなよ」
「わかっている。さて、我々が何の為にこの二人を拘束しているかだな?それはこの二人が我々の計画の危険因子だからだ、まぁいずれは消えてもらう事になるだろうな」
「そ、そんな…」
「さて、話は終わりだ猫ちゃん。」
そういうとその男は懐から取り出した物を橙に突きつけた
それは、橙にとって、初めて見る物体だった。
鈍い光を放ち、この世界には存在しない概念で固められている。
橙の額に、冷たい金属の感触が伝わった。
橙に突きつけられた拳銃と「死」という概念。
笑みを浮かべる男。
それでも橙は自分の道理に従った。
「ゆ…紫様と、藍様を…放せ」
橙は目を強く瞑り、声は微かに震えていた。
「さらばだ。」
男が引き金を引いた刹那、橙の前に何かが飛び出した。
乾いた破裂音が響き渡った。
橙が目を開けるとそこには紫がいた。
橙は目の前の光景がただただ信じられなかった。紫の腹部から流れ出る物は残酷にも橙に現実を突きつけた。
「ぐっ……。ち、橙…貴方は…生きて…貴方は…幻想郷を…継ぐ者…」
そう言い切ると紫は橙をスキマの中に落とした。
――――
「なぁアリス、今なんか聞こえなかったか?」
「何も聞こえなかったけど?魔理沙の空耳じゃない?」
「いや、絶対音がしたぜ。またなるかもしれないからよく耳を澄ませよ
二人の会話に静寂が訪れ、暫しの時間が経った頃、遠くの方から爆発音が聞こえた。
「聞こえたわね」
アリスが言った。
「聞こえたぜ」
魔理沙が言った。
「どうせ誰かが弾幕ごっこしてるんじゃないの?」
「面白そうだし行ってみようぜ、アリスの家に居るとあまり体動かせないしな、お前も偶には体動かさないと太るぜ?」
「余計なお世話よ。まぁ、誰がやってるのかも気になるし行ってみようかしら」
それはこの世界では当たり前の事であった。いや、この世界が創り出した先入観である。
しかし音のした方向を見て、二人は絶句した。
人里は炎を巻き上げ焼けていた。
それはこの世界ではありえない事だった。
「嘘……だろ…」
「嘘……よね…」
やっと絞り出した言葉も今の状況を否定し、現実を退けるものだった。
「人里に行くぞ!アリス!」
「え、えぇ、行きましょう」
二人はこの自分達の世界が何か見えない大きな物に蝕まれている感じがした。
――――
「お前がレミリアスカーレットか」
紅魔館の中にいつの間にか一人の男が立っている。
レミリアは声を出さずに振り向いた。
外の門番はいいとして、咲夜や妖精メイドに見つからずにここまでどうやってやってきたのか。
言いようのない不気味さと恐怖がレミリアを襲ったと同時に確信にした。
こいつは人間じゃない。
「貴方、どなたかしら?人の家に勝手に上がり込むなんて失礼だと思わない?」
男は笑みを浮かべている。
その異様な雰囲気にレミリアはたじろいだ。
「何がおかしいのかしら?」
「別に何もおかしくはないさ」
「あ、そう。用がないなら出て行ってくれない?紅茶が不味くなるわ」
「状況がわかって無いようだな、お前は優雅にティータイムを楽しんでいる場合じゃないんだぜ?」
そう男が言うと複数の男達が突如現れた。男達の肩にそれぞれ誰か担がれている。レミリアの表情が強張った。
それは紛れもなく紅魔館の住人達だった。
「…お前達、そんなに死にたいか?」
「おっと早まるなよ、こいつらは気絶しているだけだ。お前が我々の条件を飲めばこいつらは解放してやる。さぁ、どうする?」
「……いいわ、だけど最後に一つだけ、お前達は何者なの?」
「我々は…地獄の住人とでも言っておこう」
「地獄?なんでそんなところから?」
「…冥土の土産に話してやろう。我々は最近まで地獄に封印されていた、だがある日我々の前に外の世界から来たという人間達が我々の前に現れた、どうやらそいつらは我々を復活させようとしていたらしいがな。 そして…」
「もう結構よ。私に夢中で後ろが見えていなかった様ね。」
男達が後ろを向くとレミリアは男に襲いかかり、今まで話していた男の腹を紅い槍で貫いた。
「間抜けな奴ね、お前達を殺す事なんて私はなんとも思わないわ、残りも片付けてみんなを返してもらうわ。」
その発言を制止するように拍手が聞こえてきた。
たった今死んだはずの男が感嘆の声をあげた。
「随分と格好良い台詞じゃないか、だが我々にも使命がある。それまで死ぬつもりはないな。」
予想していた反応とは違った。いや、反応すら要らなかった。
しかし目の前の男は平気で言葉を発している。
まさか…こいつらは不老不死か…?
レミリアの思考に最悪の考えが過った。しかし不老不死は幻想郷にもいる、別に今更驚く事ではないはずだった。
しかし、状況が違った。自分やその仲間に仇をなす敵…それが不老不死なのだ。レミリアはどうすればいいのかわからなかった。
このままでは自分は愚か仲間まで命の危険がある。
「さて、お返しをしなくてはな」
レミリアの思考を断ち切る様に男が言った。
それに合わせて男達が一斉に何かを取り出し構えた。
「撃て」
激しい金属音が鳴り響いた。
横殴りの雨を受けるように、無数の銃弾がレミリアに降り注ぐ。
だが幸いな事にレミリアが自分の前に紅い霧の盾を出す方が僅かに速く、銃弾は受けなかった。
しかし、レミリアの顔に余裕はなかった。
「ほう…さっきの槍といい、不思議な術が使えるんだな」
「そっちこそ、不老不死なんて反則じゃない?」
「不老不死も何も、もう我々は死んでいるからな」
「なるほどね…。私ではお前達を殺す事は出来ない、でもお前達が私を殺す事も出来ないわ」
「そうかもしれないな、だがこれならどうかな?」
男達は銃口をレミリアから別の対象へ向けた。
そこにいたのは…美鈴、小悪魔、パチュリー、咲夜、フランドールだった。
レミリアは解らなかった。
自分の知らないルールで、何が正しいのか、何をすればいいのか。
考え判断する思考を、持ち合わせていなかった。
ただ、ルールに関係無く、レミリアはみんなが好きだった、大好きだった。
自分が何をして、何で喜ぶのか、そんなことは分かりきっていたのだ。
再び紅魔館が銃声で満ちていった。
――――
現界の異変を感じた妖夢は幽々子に言われ地上に降り立っていた。
「勘違いだったかなぁ…?幽々子様になんて報告すべきか…」
冥界に帰ろうとした妖夢を止めたのは紅魔館からの爆発音だった。
妖夢は急いで紅魔館の中に入り、住人達の名前を叫んだ。
もうここには誰もいないのか、返事は聞こえてこない。
崩れる壁の中を縫うように、妖夢は奥へと進んでいった。
ある部屋の入り口にゆらゆらと動く影が見える。
「あれは…咲夜さん!!」
妖夢の声に気づいたのだろう。咲夜も視線をあげた。
その目は虚ろで、まだ妖夢の姿が見えてないようだった。
妖夢が咲夜の目の前に駆け寄る。様子がおかしい彼女を問いただした。
「大丈夫ですか!?一体ここで何が起きたんですか?」
虚ろな彼女だったが、妖夢の存在に咲夜の顔は少しずつ力を取り戻していった。
「咲夜さん、何があったんですか?」
妖夢は少し落ち着きを取り戻し、再び咲夜に問いただした。
「私もわからないけど、誰かに突然殴られて気絶していて…起きたら紅魔館がこんな事に…」
「そんな…咲夜さんでも知らないなんて、今の紅魔館は一体…」
二人は今置かれている状況が理解出来ず、暫しの沈黙が訪れた。
しかし、その沈黙を破るかの様に大きな爆発音がし、壁が崩れ落ちてきた。
妖夢は我に返った。
「咲夜さん、とりあえずここから出ましょう!このままでは二人とも埋まってしまう。」
だが、返答は意外な物だった。
「………みんなが…」
「え?まだ中に誰かいるんですか?」
「…ごめんなさい、妖夢。私は行けないわ、みんなが待ってる。」
「無茶言わないで下さいよ!今、中に入ったら死んでしまいますよ!第一、みんなはもう脱出しているかもしれないじゃないですか!」
妖夢は咲夜を説得することで必死だった。
「私にはわかるわ。お嬢様は…みんなはまだこの中にいる。妖夢、貴方にお願いがあるの」
咲夜は妖夢の話に耳を傾けずに話を進め、妖夢に懐中時計を渡してきた。
「これは?」
「起きたら能力が使えなくなっていたわ。だからもうその懐中時計は私には必要の無いもの…代わりに貴方が持ってて」
「……咲夜さん、何故貴方はそこまでしてみんなと…」
「私は…紅魔館のメイドだから」
咲夜はそれだけ言って崩れ落ちる紅魔館の中に消えていった。
妖夢は懐中時計を抱き、その場に泣き崩れた。
しかし時間は止まってはくれなかった。
一際大きい爆発音が鳴り響く。
「…仇は絶対に取ります!!!」
涙を拭い、誰に言う訳でもなくそう言い残し妖夢は崩れ落ちる紅魔館を後にした。
――――
館内のあちこちに瓦礫が散乱している。
眼前に広がるのはこの前までと打って変わった紅魔館の景色。
最早、館が崩れ落ちないのが不思議なくらいの状況だった。
いつ崩れるかもわからない館内を咲夜はたった一人で歩き、普段レミリアがいる部屋に入った。
レミリアは玉座に背中を預け、目を瞑っていた。
周りには玉座を背もたれにする形で美鈴、小悪魔、パチュリー、フランドールがいた。
みんな眠っているように静かだった。その表情はとても幸せに満ちている。
ただ、レミリアの赤いドレスは真紅に染まっていた。
咲夜はみんなをレミリアが普段使っている、大きなシングルベッドに運んでいった。
一人ずつ、丁寧に、起こさない様にと…。
かなり窮屈だったがそれでも良かった。
「最後まで紅魔館のメイドの仕事が出来ました…」
そう言い、ベッドの傍らに座った。
「おやすみなさい」
咲夜は満面の笑みだった。
そして自分の場所に体を寝かせ、静かに眠りについた。
周囲を崩れ落ちた瓦礫が包み込む。
静かに紅魔館の、咲夜の世界が終わりを告げた。
――――
霊夢は紫の家に入って愕然とした。
室内は暗く、感じた事のない異様な雰囲気が漂っていた。
霊夢は中に足を踏み入れる事が出来なかった。助けを求める様に家の中に視線を送る。
「紫?藍?橙?…いないの?」
それは霊夢が出してはいけない声だった。
怯えと困惑で満たされた声。
見えてはいた。
床に横たわる『それ』が、視界に入っていた。
ただそれを受け入れられなかった。
霊夢はゆっくりと家の中に足を踏み入れる。
それを目の前にしても、まだ状況が理解出来なかった。いや、理解することが出来なかった。
床に横たわっていたのは藍だった。
そして近くに寄って初めて視認出来た大きな血溜まり。
霊夢は息を呑み、その場を離れた。
「…れ……い…む…」
微かに聞こえたその声は聞き覚えのある声だった。
声の主は紫だ。
それに気づいた霊夢はすぐさま彼女の元へ駆け寄った。
彼女は部屋の奥で頭と腹から血を流してベッドに座り壁にもたれ掛かっていた。
「ゆ……か…り?」
ち…がう。これは紫じゃない、倒れているのも藍じゃない。
これは違うんだ。じゃなきゃ、じゃなきゃ…
本当は理解していた。
ただ認めたくなかった。
この状況を、この幻想郷を、この世界を。
もう戻れない…?
そう、昨日までの日にはもう戻れない。
決断しなければならなかった。
認めなければならなかった。
「紫?何があったの?」
「急に彼らがやってきたの」
「彼ら?」
「地獄の、妖怪達よ…」
「どういうこと?わからないわよ…」
紫は霊夢の疑問をそのままにし、話を進めた。
「何故封印が解かれたのかもわからないけど…彼らは外の世界の武器を持っていたわ…」
「わからないよ…。地獄の妖怪も、外の世界の武器も、全部…」
「霊夢、もう貴方が幻想郷を守るしかないのよ。お願いだから聞いて、貴方がこの世界を…私の故郷を守って…」
「そんな…紫がいないと無理よ…」
「じゃあ…貴方はみんなが私や藍みたいに死んでいくのを…ただじっと見ているの…?」
心に突き刺さる言葉だった。
だが、霊夢は相手がどんな奴なのかも、どんな武器を持っているのかも知らない。
無理を言っているのは紫も承知だった。だが、どんなに相手が強かろうとやらなければならない。幻想郷を守る為に。
苦渋の選択だった。
「…やってやるわよ、あんた達をこんな目に遭わせた奴らを……許さない」
「その意気よ…。これは私からの餞別よ。」
「これは?」
「陰陽球よ。これはあらゆる道理を覆し、全ての倫理を否定する、とても危険な物よ」
「なんでそんなものを私に?」
「私もまさかこれを使う時が来るとは思わなかったわ。それ程今、幻想郷は危険なの。だけど、貴方なら正しく使えると信じてるわ、だって貴方は博麗の巫女だもの…。」
「…わかったわ」
「それと、橙をマヨイガに置いてきてしまったから、全部終わった後に迎えに行ってあげて…」
「えぇ…わかったわ」
霊夢の返事を聞き、紫は満足そうな笑みを浮かべ、静かに目を閉じた。
もう彼女と話すことも、笑い合うことも出来ない。
だが、霊夢はそれを今度はすんなりと受け入れられた。
心を落ち着け、出口へ行こうとしたその時、激しい衝撃が体を貫く。
気づけば家の中は炎に包まれていた。
「ふむ、やっと一番の危険因子をやったか。予定より少し遅かったがまぁいいか、後は妖怪の山と永遠亭をこの世界から切り離して人里へ行って終わりだな。やっとこの時が来たか」
「ん?」
男の目に炎の中、一つの影が揺らめいてるのが見える。
「お前達が…」
「何!?人間なら死んでいるはず…」
男は動揺を明らかにして、慌てて後ろの男達に合図を送る。
「撃て!」
霊夢は初めて見る武器だった。
しかしそんな事などどうでもよかった。
銃弾は全弾霊夢に命中した。しかし、かすり傷すらもつかなかった。
霊夢はゆっくり、着実に男達に近寄る。
まるで、ご都合主義の物語の様だった。
悪は滅び、正義は栄える。
そんな単純な事だった。
やがて、銃弾が尽きた。
しかし、相変わらず霊夢に傷はない。
「何…だと…?人間じゃなかったのか?」
男の独り言に霊夢は答えた。
「私は博麗の巫女…妖怪を問答無用で退治する巫女よ」
そう言い切ると霊夢はお札を手に構え、狙いもつけずに放った。
男達は逃げ惑ったが簡単に札に捕まってしまった。
「お前達はここで死ぬ運命だ」
そう言い切ると、札が眩しい光と同時に爆発し、男達から赤い液体が飛び散った。
あぁ…話には聞いていたが博麗の巫女というのはここまで強いのか、これでは全く持って勝負にならない。
そこのお前、どこを撃っても無駄さ、どうせ傷一つすらもつけられないのだ。
まるで御伽噺を見ているかの様だ。
絶対無敵の主人公、大切な物を失い覚醒する主人公、主人公に仇を成す悪は必ず滅びる。
まるでそんな世界だ。
どうやら我々の部隊では博麗霊夢にはどうやっても勝てない様だ。
先にあの世で…
男の意識はそこで途切れた。
――――
「人里で爆発を起こしたのは注意を引き付ける為だったが…どうやらみんな人里には関心がないようだな」
一人の男が問いかける様に言う。
「こ…れは…?お前がやったのか?」
魔理沙は男の問いかけを問いかけで返し、人里を見回した。
それはいつもの人里ではなかった。
建物は崩壊し、勢いの収まらない炎が人里を焼き尽くしていた。
さらに男の周囲には、人里の住人と思われる人が何人も寝転んでいた。
アリスも同じだった。
まさに今、人里は地獄絵図だった。
ある者は顔を恐怖で歪ませ、ある者は悲鳴をあげ、ある者はもう何も言えない体になっている。
「ほう…お前は霧雨魔理沙か」
男は確認する。
「これはお前がやったのか?」
魔理沙はいくらか落ち着きを取り戻し、再び男に問いただした。
もし、この男がこの惨状を起こした張本人なら、免罪符が出来るからだ。
魔理沙は冷静な人間だった。
だからこそ男の返事を待った。
「やれやれ…話にならないな。言っただろう?人里をこうしたのは俺が、お前達の注意を引き付ける為だ。」
男は不気味な笑みを浮かべ、地面に置いてあった小銃を持ち上げた。
「これは非常に優れものでな、引き金を引くだけで人が殺せるんだ。ほら、こんな風にな!」
そう言い男は近くに倒れていて、まだ意識のあった人間の頭にそれを突きつけた。
「やめてっ!」
アリスは反射的に懇願する様に叫んだ。それは当然の事だった。
しかし、男は止まらなかった。
男の気味の悪い笑い声と共に耳を劈く様な音が響く。
その人間は自身を貫く銃弾に合わせ小刻みに体を揺らせる。
そして、音が鳴り止むと共に一切の動きを止めた。
「どうだ?凄いだろう?これは外の世界の武器らしいからあまり体には馴染まないが、殺傷力は充分にある。」
男はさっき起こった出来事を当然の様に片付けた。
終始無言の魔理沙、目の前の出来事と男に恐怖し後退りするアリス。
二人の反応を面白がっているのか、男は今度は子どもに小銃を向ける。
さっきの光景を眼前で見せられた子どもは許しを請う様に泣き出した。
子どもですら理解出来る現実だった。
しかし、銃口は自分に向いたまま…、当たり前の事だった。許しを請う様な事など何もしていない、自分の全てがこの男の気持ち一つで決まるのだ。
「また、醜い死体が転がる事になるぞ?」
子どもの様子をさらに面白く思った男は笑いながらそう言った。
魔理沙はまだ躊躇っていた。
今この男とやりあっても勝てない。
しかし、この場から逃げるのは人里の住人を見捨てる事になる。
『生きたい』という意思は人間が、いや生物なら例外なく持つ意思。
まさに魔理沙は自分の命と人里の住人の命を天秤に乗せている状態だった。
方や、男の残虐さに遂に耐えきれなくなったアリスは子どもを守ろうと男に近づいて行った。
二人、共にお互いを見失っていた。
アリスの動きに気づいた男は何か思いついたのか小さく笑い出した。
「そういえば、これは妖怪には効くのか?試した事がないからわからないなぁ。」
男は子どもから視線だけ離し、アリスを見てそう言った。
「なにそれ。皮肉のつもり?」
アリスは悠然とした態度で言葉を返したはずだった。
しかし、声は明らかに震えていた。
「ならばこうしよう。子どもを撃つか…お前を撃つかだ。」
男は、答えをもう出ている。そんな様な目でアリスを見た。
アリスも答えはもう出ていた、いや、答えは出されていた。
しかし、妖怪と言えど痛覚はある、恐怖はある、死はある。
自分がそれを選んで、生きているという保証はなかった。
しかし、それを選ばなければならなかった。
「その子をこちらに渡して…」
即ち自分が受けるという意思。
選択肢など、無いものに等しかった。
「いいだろう、さぁ行け」
男はすんなりと子どもを解放した。
しかし、顔にはまだ笑みが残っていた。
泣きながら駆け寄ってくる子どもを抱き上げ、アリスは必死に宥め、そして自分の心も宥めていた。
その時だった。突然銃声が鳴り響いた。
アリスは一瞬何が起きたかわからなかった。
しかし、銃声に遅れて物凄い痛覚がアリスを襲った。
男の銃が子どもとアリスを一直線に貫いたのだ。
「…どう……し…て…」
アリスは子ども抱く手を緩め、子ども一緒にその場に倒れた。
男は最高潮の笑い声をあげる。
しかし、男はアリスと子どもに夢中になりすぎていた、もう一人の存在を忘れていた。
そして、気付いた時には遅かった。
男を包み込む光、それは簡単に山を一つ消し飛ばす程の光だった。
やがて光が消え、静寂が訪れた。
魔理沙はアリスと子どもの所に歩み寄る。
しかし、子どもは既に事切れていた。アリスはまだ息がある様だがかなり危ない状態だった。
「ごめんな…助けてやれなくて…」
魔理沙はそれだけ言い残し、アリスを抱き上げ、人里を後にした。
――――
人里の子ども達は寄り添いあい、震えている。
それを取り囲むように銃を持った男達が立っていた。
恐怖のあまり子供達は声を出せずにいた。
耳が痛くなる音の嵐。
目の前で繰り広げられる銃撃。
子ども達は息を吸い、吐くだけでも精一杯だった。
悲鳴すらあげられない。
「助けて!」
しかし助けを求める声は聞こえる。
「必ず助けるから待ってて!」
鈴仙が答える。
それを聞いた男達の顔は、鈴仙を嘲笑うか様に歪んでいた。
しかし銃弾は鈴仙当たるどころか擦りすらしない、例え一直線上に居たとしても鈴仙に銃弾が当たる事は決してない。
それは当然の事だった。
鈴仙は余裕と不安が混じった口調で言う。
「貴方達、何者?何故それを持ってるの?まぁ、それは貴方達には過ぎたものよ」
鈴仙はその武器に見覚えがある、月にいた時に使っていた物に酷似している。
しかし、幻想郷でそれを見たことはなかった。
目立った義手の男が驚嘆の声を漏らす。
「驚いたな…こいつを知っている上に全弾回避か…」
しかし、その男は既に気づいていた。
一直線上でただただ銃弾だけが消えていく異様な光景を。
間違いなく何かからくりがあると確信していた。
その近くに居た男は激しい銃弾の音に紛れて不安そうに男に言う。
「このままで大丈夫ですか?さっきから一発も当たっていませんが…」
男は少し考え、そして後ろで怯えた子ども達を見て笑みを浮かべ答える。
「そういえばこちらには人質がいたな」
その言葉を聞いて男は安堵する。
「あぁ、そうでしたね。なら良かった。」
一方、鈴仙は少し恐れていた。
自分に向かってくる無数の銃弾を恐れていたのではない。
以前、自分は戦争の恐怖に耐えきれずに月から逃げてきた。
しかし、もし今この状況が幻想郷各地で起きていたとしたら、それは…。
もしかしたら今、幻想郷は自分が一番恐れていることになっているのではないだろうか。
そんな事を考えているとこんな悠長にしてはいられない。
早くここを片付けて他の所の様子を見に行かなければならない。
しかし、いくら当たらない銃弾でも男達との距離を詰めれば無傷というわけにはいかない。
「いい?貴方達、今すぐにこの場から立ち去りなさい。これが最後よ」
鈴仙はそう言い切り、男達の反応を伺う。
「最後なのはお前の方だ、こいつの命が惜しくないのか?」
義手の男は鈴仙の忠告を無視し、煽る様な口調で言い、子どもの頭に小銃を押し当てる。
「……愚かね…」
鈴仙は同情するかの様な目で見つめ、目を閉じた。
次の瞬間、男達の頭の中に物凄いノイズが流れてきた。
あまりの衝撃に感覚器官は麻痺し、視界は眩み、男達はその場に倒れ伏す。
「相手を侮った貴方達の負けね」
そう言うと泣きじゃくる子ども達の所へ駆け寄る。
「大丈夫?怖かったよね?よしよし…」
子ども達を宥め、人里を目指した。
鈴仙は確信した。この騒ぎはここだけで起こっている訳ではない、恐らく幻想郷の各地で起こっていると。
鈴仙は胸騒ぎが止まらなかった。
誰もいなくなった後、一人の男が立ち上がる。
あの義手の男だ。
「なんだあいつは…、感覚に作用する能力か?……厄介な奴がいたもんだ」
独り言を発しながら、後ろを振り返る。
そこには既に生き絶えた部下達が倒れている。
「…俺が迂闊だったばっかりに…すまない…。」
そう言い残し、合掌をする。
そしてよろよろと歩き始めた。
――――
霊夢は人里を目指していた。
彼処こそが全ての元凶だった。
平和な時が流れていた幻想郷を一瞬で地獄に変えた元凶がいると確信していた。
霊夢に正常な思考はほぼ無かった、それどころか半分は狂気に苛まれていた。
幻想郷も、妖怪も、人間も、自分も…全てが憎かった。
何故生きているんだろう、一瞬で自分の世界も壊れ、日常も壊れる、こんな脆い世界に生きている意味なんて…。
しかし、僅かに残っている自我で考えを押し殺し進んだ。
――――
人里はもう跡形もない位に崩壊していた。
あちこちに散乱した瓦礫を見て、そこが確かに人里だったことを確認した。
無造作に横たわる人々は例外なく事切れていた。
しかし、その惨状を目の当たりにしてもなお、霊夢は驚かなかった。
「れ、霊夢かッ!?」
不意に聞こえる聞き慣れたはずの声。だが、霊夢は顔を向けない。
「霊夢だろ?なぁ、この惨状は一体どうなって…」
声を遮る様に言う。
「魔理沙、帰って…私に近寄らないで…」
それはあまりに短絡的な言葉だった。
だからといって適当に言った訳でもない、それは魔理沙にもわかっていた。
しかし、だからこそ疑問だった。
「今、幻想郷は大変な事になってるんだぞ!!アリスだってやられちゃって…もう…意識が戻るかさえも……」
霊夢は魔理沙が声を詰まらせるまでただ黙ってじっと聞いていた。
そして大きくため息をつき、こちらを振り向いた。
だが、その顔はもう魔理沙の知ってる顔ではなかった。
「れ……いむ?お前…どうしたんだ…?」
違う……これは霊夢じゃない。
霊夢は…こんな…こんな……。
でも、声、服は霊夢と瓜二つだ。
「魔理沙…。帰って」
霊夢の口調はさっきより強くなっていた。
「霊夢?お前なんだよな?…どうしちまったんだよ、その目…」
霊夢の目は赤黒く濁りその眼球からは赤い液体が流れて出ていた。
最早、目としての機能を持っているのかすら怪しかった。
「もう、私は戻れない。だからこの異変を終わらせる。それと…マヨヒガに橙がいるわ…あの子もよろしく。」
魔理沙は何が何だかわからなかった。全てがわからなかった。
「……わからないよ…。今の幻想郷も、今のお前も!!!」
心から出た叫びだった。
「今、幻想郷の各地で異変が起きてるわ。今までにないくらい残虐で無惨な異変が。私はこの異変を終わらせる。ただ、それだけ」
魔理沙が期待した答えは返ってはこなかった。
霊夢は昔からそうだった。自分一人で全てを背負っていた…なら、私には何が出来る?
しかし、考えるにはあまりにも時間が少なかった。
「魔理沙、もう会えないかもしれないから…さよなら…。」
霊夢は初めて笑顔でそう言った。魔理沙はその時、全てを悟った。
魔理沙は目を涙ぐませ、霊夢を強く抱きしめた。
言葉なんていらない、これだけで十分だっだ。
――――
「……まだ殲滅出来ないのか」
「ただの人間なら簡単だけどねぇ…妖怪になってくると結構難しいと思うよ」
「しかし、八雲紫と八雲藍それから紅魔館はもう落しましたし、永遠亭と妖怪の山も隔離済み、地底の妖怪は地獄の妖怪には手だしは出来ませんし、残る脅威は冥界の二人と博麗霊夢、それから霧雨魔理沙だけでしょう?」
無縁塚に立ってる粗末なテントの中、3人の男が話し合っていた。
「時間の問題だな…。しかし冥界の西行寺幽々子は落とせるのか?あいつの能力は確か…」
男が言いかけた言葉を遮るように別の男が口を開く。
「大丈夫だよー、紅魔館に行った部隊の指揮官、能力無効化出来るじゃん」
「では、彼らの部隊に冥界に行ってもらう様に伝えますかね」
――――
冥界。本来なら生きた者は入る事は許されない場所、しかし春雪異変後の結界修復がまだ終わっておらず、現界と簡単に行き来の出来る場所である。
…もっとも、もうその結界を修復出来る者も、もう居ないが。
「…妖夢、遅いわね〜…」
言葉こそ悠長なものだったが、幽々子にはこれまでにないほどの胸騒ぎがしていた。
幻想郷で何かが起こっている…そう強く確信した。
その時、聞き覚えのある声が聞こえた。
「幽々子様……至急に伝えたい事があります……」
妖夢のいつもと様子の違う表情や声色に幽々子は戸惑った、だが、あくまで平然を装った。
「ど、どうしたの妖夢?そんなに畏まっちゃって」
幽々子の声は震えていた。それほど妖夢の真剣さは純粋に彼女に伝わっていた。
妖夢は自分が見た全てを話した。それを終始黙って幽々子は聞いていた。
やがて、話を聞き終わった幽々子が口を開く。
「……まさか…死んではいないわよね…?」
妖夢は下に俯き、言葉を発さない。
代わりに妖夢の顔から地面に滴り落ちるものが、死を悟らせた。
幽々子は何も言わず妖夢の小さな頭を自分の胸に抱き寄せた。
嗚咽混じりの泣き声が聞こえる。
しかし、その声をかき消す様に冥界の桜はざわめきあっていた。
幾分か経ち、妖夢は涙を拭き再び真剣な表情に戻る。
「……彼奴らを生かしておくわけにはいきません。私は……彼奴らに…剣を抜きます…!!!」
意図する殺生はこの世界ではしてはいけないことだった。
「でも妖夢…そんな事をしたら貴方が…」
すかさず妖夢を引き止めようとする。それはごく当然の事だった。
「もう…これ以上幻想郷を壊させやしない。…例え、自分が邪道に堕ちても今はやらねばならないのです!!!!!」
今までのどんな時よりも、妖夢の決意は確固たるものだった。
苦渋の選択だった、しかし、答えは最初から決まっていた。
「……わかったわ。だけどその白楼剣だけは置いていって…代わりにこれを…」
いつもらしからず、妖夢は幽々子の意図が読み取れた。
恐らく、今この白玉楼を出たらもう自分はここには帰ってこれない。
だから家宝の白楼剣だけは守ろうというのだろう。
妖夢は幽々子に白楼剣を渡し、幽々子から見知らぬ剣を受け取る。
「……この剣は?」
見たことのない剣だったが、とても禍々しい感じが見受けられた。
「それは…魂魄家に伝わるもうひとつの妖刀「毒牙」よ。剣の切っ先に劇毒が仕込んであるわ」
「…そうですか。」
妖夢はそれが嘘であるとわかっていた。
魂魄家にこんな剣はなかった。
だが否定はせず、黙って聞いていた。
「まさか…こんなに早く別れが来るなんてね……もっと…妖夢と居たかった。」
幽々子の心の底から出た言葉だった。
子供の様に泣き出す幽々子。
妖夢は表情を崩し、幽々子の頭を優しく撫でる。
「幽々子様…、私は貴方の元で仕えられてとっても幸せでした…。最後まで半人前だったけど…最期は一人前に行ってきます。どうかお元気で……」
落ち着きのある、しかしうら悲しさを漂わせる口調だった。
幽々子は何も言わなかった。
妖夢は幽々子と白玉楼に背を向け、歩み出す。
途中、内ポケットからなにやら取り出す。
咲夜から貰った懐中時計だった。
それを握りしめ、呼びかける様に呟く。
「咲夜さん…貴方は紅魔館の従者として、立派な人でした。ならば私も、幽々子様の…白玉楼の従者として最後の最後まで主人に尽くします…!!」
そして妖夢は懐中時計を首に下げ、冥界を後にした。
その背中を幽々子と満開の桜はいつまでも見送っていた。
――――
現界に再び来た妖夢はまず人里に行った。
そして初めて目にした、人の死というものを。
逃げてしまいたかった、この現実、幻想郷から。
何かの間違いかもしれない。本当はここは夢の世界で、現実ではみんな生きてて、何も変わりのないいつもの幻想郷がある。
しかし、眼前に広がる地獄絵図は今、自分が見ている紛れもない事実だった。
ふと、人影を見つける。
妖夢は必然的に構える。
この荒廃し亡骸で溢れかえった人里にいる、それだけで只者ではないと思ったからだ。
気配を消し、ゆっくりと静かに近寄って行く。
その人影が自分の知ってる人物だと気づくのはそれからすぐの事だった。
「霊夢さん!?…無事で良かった!」
その声に気づいたのか霊夢は振り返った、いや、振り返ってしまった。
「……れ、いむ、さん?」
さっきまでの呼びかけとは違う、問う様な呼びかけ。
妖夢のその反応を見て、霊夢は咄嗟に妖夢に背を向け、何も話さない。
「霊夢さん……それは陰陽球の…副作用ですか…」
「…知っているの?」
霊夢は背を向けたまま問う。
「えぇ…前に紫様と幽々子様が話していたのを偶然聞いてしまって……」
「そうよ、この異変を終わらせる為に陰陽球の力を使ったわ」
妖夢は陰陽球がどれ程の危険な物か知っていた。
しかし、妖夢は何も言えなかった。
「あんたは何しに来たの?」
こちらを向き直し、暫しの沈黙を破る霊夢。
「私も…この異変を終わらせに馳せ参じました。」
妖夢は正直に自分の心の内を明かす、すると途端に霊夢の表情が険しくなる。
「帰りなさい、主の元に」
霊夢の一際強い口調と、今まで感じた事のない妖気に思わずたじろぐ妖夢。
「私だって……私だって!!幽々子様と冥界に別れを告げてまでこの幻想郷の異変を解決に来たんです!!」
しかし、妖夢もまた、ただならぬ決意で現界に降り立ったのだ、こんなところで引き返す訳にはいかない。
「何故、そこまで固執するの?」
さっきとはうってかわって不思議そうに聞いてくる霊夢。
「……咲夜さんと約束したんです。絶対にこの仇を…この異変を終わらせるって……」
「…………」
霊夢は黙って聞いていた。
元々暇だったが最近は異変もなく、特に暇だ。
平和でいい事だが刺激がこうもないとつまらなかった。
魔理沙や萃香、紫はどうしたのだろう、最近あまり顔を見せて来ないが。いつもはめんどくさい位に絡んでくるのに最近は大人しい、心を入れ替えたのかな…と考えていた。
なんにせよ、今日も無事に一日が過ぎ去る……はずだった。
人里の方で一瞬、眩い光が見えた、その光に遅れて爆音が耳に届いた。
誰かが弾幕ごっこをやっているのかと思い、人里で派手にやるなぁと思っていた。
しかし、爆発は止まらず二回、三回…と続いて起きた、そして微かに炎の様な物も見える。
最早、スペルカードの爆発で無い事は誰の目にも明白であった。
これは…違う、ごっこ遊びの爆発ではない。明らかに人を殺傷する為の爆発だ。
「でも、なんで?」
この世界の道理に反した事が起こってる、霊夢はそう確信した。
妖怪の住んでいる所で爆発が起こるなら驚きはしない、しかし人里となると別だ。
相手は相当の馬鹿か相当の自信家のどちらかだ。大体前者だと予想はつく、人里に危害をもたらせば幻想郷中の怒りを買う事になる。無論、妖怪も例外ではない。
果たして今の幻想郷にそんな度胸のある奴は居ただろうか…
だからこそ、疑問に思った。
「全くもって命知らずな奴ね、まるでボコボコにしてくれと言っている様なものだわ」
そう言っていつも通り、異変解決の為に人里を目指そうとした。
しかし、異変の全容がわからない以上ここは紫に伝えるのが賢明だと思い、紫の住む家に向かった。
だが、まだ霊夢は気づいていなかった。これは異変という単純明快な図式ではないことを。
――――
「お前達!紫様と藍様を放せ!」
「ふむ、威勢のいい猫ちゃんだな。だが相手は選ばなきゃいけないなぁ」
「駄目だ橙!逃げろ!!」
「橙!来ては駄目よ!逃げて!」
橙は不思議だった、紫と藍が人間達相手に何故拘束されているのか。
あの二人なら人間なんて何人いても相手じゃない筈。
でも、二人を見捨てて逃げるなんてとても出来ない、しかし戦えば自分も捕まるかもしれない。
まだ幼い橙にとっては苦渋の選択だった。
「お姉さん達もああ言っている事だし逃げたらどうだい?今なら逃がしてやらなくもないぞ?」
「紫様と藍様をどうするつもりだ!」
「ふむ、まぁいいだろう話してやる」
「おい、大丈夫か?まだ制圧しきっていないのに喋ると計画が台無しになるぞ」
「いいではないか、私はこの猫ちゃんが気に入ったのだよ。少し位なら大丈夫だろう」
「はぁ…、あまり喋りすぎるなよ」
「わかっている。さて、我々が何の為にこの二人を拘束しているかだな?それはこの二人が我々の計画の危険因子だからだ、まぁいずれは消えてもらう事になるだろうな」
「そ、そんな…」
「さて、話は終わりだ猫ちゃん。」
そういうとその男は懐から取り出した物を橙に突きつけた
それは、橙にとって、初めて見る物体だった。
鈍い光を放ち、この世界には存在しない概念で固められている。
橙の額に、冷たい金属の感触が伝わった。
橙に突きつけられた拳銃と「死」という概念。
笑みを浮かべる男。
それでも橙は自分の道理に従った。
「ゆ…紫様と、藍様を…放せ」
橙は目を強く瞑り、声は微かに震えていた。
「さらばだ。」
男が引き金を引いた刹那、橙の前に何かが飛び出した。
乾いた破裂音が響き渡った。
橙が目を開けるとそこには紫がいた。
橙は目の前の光景がただただ信じられなかった。紫の腹部から流れ出る物は残酷にも橙に現実を突きつけた。
「ぐっ……。ち、橙…貴方は…生きて…貴方は…幻想郷を…継ぐ者…」
そう言い切ると紫は橙をスキマの中に落とした。
――――
「なぁアリス、今なんか聞こえなかったか?」
「何も聞こえなかったけど?魔理沙の空耳じゃない?」
「いや、絶対音がしたぜ。またなるかもしれないからよく耳を澄ませよ
二人の会話に静寂が訪れ、暫しの時間が経った頃、遠くの方から爆発音が聞こえた。
「聞こえたわね」
アリスが言った。
「聞こえたぜ」
魔理沙が言った。
「どうせ誰かが弾幕ごっこしてるんじゃないの?」
「面白そうだし行ってみようぜ、アリスの家に居るとあまり体動かせないしな、お前も偶には体動かさないと太るぜ?」
「余計なお世話よ。まぁ、誰がやってるのかも気になるし行ってみようかしら」
それはこの世界では当たり前の事であった。いや、この世界が創り出した先入観である。
しかし音のした方向を見て、二人は絶句した。
人里は炎を巻き上げ焼けていた。
それはこの世界ではありえない事だった。
「嘘……だろ…」
「嘘……よね…」
やっと絞り出した言葉も今の状況を否定し、現実を退けるものだった。
「人里に行くぞ!アリス!」
「え、えぇ、行きましょう」
二人はこの自分達の世界が何か見えない大きな物に蝕まれている感じがした。
――――
「お前がレミリアスカーレットか」
紅魔館の中にいつの間にか一人の男が立っている。
レミリアは声を出さずに振り向いた。
外の門番はいいとして、咲夜や妖精メイドに見つからずにここまでどうやってやってきたのか。
言いようのない不気味さと恐怖がレミリアを襲ったと同時に確信にした。
こいつは人間じゃない。
「貴方、どなたかしら?人の家に勝手に上がり込むなんて失礼だと思わない?」
男は笑みを浮かべている。
その異様な雰囲気にレミリアはたじろいだ。
「何がおかしいのかしら?」
「別に何もおかしくはないさ」
「あ、そう。用がないなら出て行ってくれない?紅茶が不味くなるわ」
「状況がわかって無いようだな、お前は優雅にティータイムを楽しんでいる場合じゃないんだぜ?」
そう男が言うと複数の男達が突如現れた。男達の肩にそれぞれ誰か担がれている。レミリアの表情が強張った。
それは紛れもなく紅魔館の住人達だった。
「…お前達、そんなに死にたいか?」
「おっと早まるなよ、こいつらは気絶しているだけだ。お前が我々の条件を飲めばこいつらは解放してやる。さぁ、どうする?」
「……いいわ、だけど最後に一つだけ、お前達は何者なの?」
「我々は…地獄の住人とでも言っておこう」
「地獄?なんでそんなところから?」
「…冥土の土産に話してやろう。我々は最近まで地獄に封印されていた、だがある日我々の前に外の世界から来たという人間達が我々の前に現れた、どうやらそいつらは我々を復活させようとしていたらしいがな。 そして…」
「もう結構よ。私に夢中で後ろが見えていなかった様ね。」
男達が後ろを向くとレミリアは男に襲いかかり、今まで話していた男の腹を紅い槍で貫いた。
「間抜けな奴ね、お前達を殺す事なんて私はなんとも思わないわ、残りも片付けてみんなを返してもらうわ。」
その発言を制止するように拍手が聞こえてきた。
たった今死んだはずの男が感嘆の声をあげた。
「随分と格好良い台詞じゃないか、だが我々にも使命がある。それまで死ぬつもりはないな。」
予想していた反応とは違った。いや、反応すら要らなかった。
しかし目の前の男は平気で言葉を発している。
まさか…こいつらは不老不死か…?
レミリアの思考に最悪の考えが過った。しかし不老不死は幻想郷にもいる、別に今更驚く事ではないはずだった。
しかし、状況が違った。自分やその仲間に仇をなす敵…それが不老不死なのだ。レミリアはどうすればいいのかわからなかった。
このままでは自分は愚か仲間まで命の危険がある。
「さて、お返しをしなくてはな」
レミリアの思考を断ち切る様に男が言った。
それに合わせて男達が一斉に何かを取り出し構えた。
「撃て」
激しい金属音が鳴り響いた。
横殴りの雨を受けるように、無数の銃弾がレミリアに降り注ぐ。
だが幸いな事にレミリアが自分の前に紅い霧の盾を出す方が僅かに速く、銃弾は受けなかった。
しかし、レミリアの顔に余裕はなかった。
「ほう…さっきの槍といい、不思議な術が使えるんだな」
「そっちこそ、不老不死なんて反則じゃない?」
「不老不死も何も、もう我々は死んでいるからな」
「なるほどね…。私ではお前達を殺す事は出来ない、でもお前達が私を殺す事も出来ないわ」
「そうかもしれないな、だがこれならどうかな?」
男達は銃口をレミリアから別の対象へ向けた。
そこにいたのは…美鈴、小悪魔、パチュリー、咲夜、フランドールだった。
レミリアは解らなかった。
自分の知らないルールで、何が正しいのか、何をすればいいのか。
考え判断する思考を、持ち合わせていなかった。
ただ、ルールに関係無く、レミリアはみんなが好きだった、大好きだった。
自分が何をして、何で喜ぶのか、そんなことは分かりきっていたのだ。
再び紅魔館が銃声で満ちていった。
――――
現界の異変を感じた妖夢は幽々子に言われ地上に降り立っていた。
「勘違いだったかなぁ…?幽々子様になんて報告すべきか…」
冥界に帰ろうとした妖夢を止めたのは紅魔館からの爆発音だった。
妖夢は急いで紅魔館の中に入り、住人達の名前を叫んだ。
もうここには誰もいないのか、返事は聞こえてこない。
崩れる壁の中を縫うように、妖夢は奥へと進んでいった。
ある部屋の入り口にゆらゆらと動く影が見える。
「あれは…咲夜さん!!」
妖夢の声に気づいたのだろう。咲夜も視線をあげた。
その目は虚ろで、まだ妖夢の姿が見えてないようだった。
妖夢が咲夜の目の前に駆け寄る。様子がおかしい彼女を問いただした。
「大丈夫ですか!?一体ここで何が起きたんですか?」
虚ろな彼女だったが、妖夢の存在に咲夜の顔は少しずつ力を取り戻していった。
「咲夜さん、何があったんですか?」
妖夢は少し落ち着きを取り戻し、再び咲夜に問いただした。
「私もわからないけど、誰かに突然殴られて気絶していて…起きたら紅魔館がこんな事に…」
「そんな…咲夜さんでも知らないなんて、今の紅魔館は一体…」
二人は今置かれている状況が理解出来ず、暫しの沈黙が訪れた。
しかし、その沈黙を破るかの様に大きな爆発音がし、壁が崩れ落ちてきた。
妖夢は我に返った。
「咲夜さん、とりあえずここから出ましょう!このままでは二人とも埋まってしまう。」
だが、返答は意外な物だった。
「………みんなが…」
「え?まだ中に誰かいるんですか?」
「…ごめんなさい、妖夢。私は行けないわ、みんなが待ってる。」
「無茶言わないで下さいよ!今、中に入ったら死んでしまいますよ!第一、みんなはもう脱出しているかもしれないじゃないですか!」
妖夢は咲夜を説得することで必死だった。
「私にはわかるわ。お嬢様は…みんなはまだこの中にいる。妖夢、貴方にお願いがあるの」
咲夜は妖夢の話に耳を傾けずに話を進め、妖夢に懐中時計を渡してきた。
「これは?」
「起きたら能力が使えなくなっていたわ。だからもうその懐中時計は私には必要の無いもの…代わりに貴方が持ってて」
「……咲夜さん、何故貴方はそこまでしてみんなと…」
「私は…紅魔館のメイドだから」
咲夜はそれだけ言って崩れ落ちる紅魔館の中に消えていった。
妖夢は懐中時計を抱き、その場に泣き崩れた。
しかし時間は止まってはくれなかった。
一際大きい爆発音が鳴り響く。
「…仇は絶対に取ります!!!」
涙を拭い、誰に言う訳でもなくそう言い残し妖夢は崩れ落ちる紅魔館を後にした。
――――
館内のあちこちに瓦礫が散乱している。
眼前に広がるのはこの前までと打って変わった紅魔館の景色。
最早、館が崩れ落ちないのが不思議なくらいの状況だった。
いつ崩れるかもわからない館内を咲夜はたった一人で歩き、普段レミリアがいる部屋に入った。
レミリアは玉座に背中を預け、目を瞑っていた。
周りには玉座を背もたれにする形で美鈴、小悪魔、パチュリー、フランドールがいた。
みんな眠っているように静かだった。その表情はとても幸せに満ちている。
ただ、レミリアの赤いドレスは真紅に染まっていた。
咲夜はみんなをレミリアが普段使っている、大きなシングルベッドに運んでいった。
一人ずつ、丁寧に、起こさない様にと…。
かなり窮屈だったがそれでも良かった。
「最後まで紅魔館のメイドの仕事が出来ました…」
そう言い、ベッドの傍らに座った。
「おやすみなさい」
咲夜は満面の笑みだった。
そして自分の場所に体を寝かせ、静かに眠りについた。
周囲を崩れ落ちた瓦礫が包み込む。
静かに紅魔館の、咲夜の世界が終わりを告げた。
――――
霊夢は紫の家に入って愕然とした。
室内は暗く、感じた事のない異様な雰囲気が漂っていた。
霊夢は中に足を踏み入れる事が出来なかった。助けを求める様に家の中に視線を送る。
「紫?藍?橙?…いないの?」
それは霊夢が出してはいけない声だった。
怯えと困惑で満たされた声。
見えてはいた。
床に横たわる『それ』が、視界に入っていた。
ただそれを受け入れられなかった。
霊夢はゆっくりと家の中に足を踏み入れる。
それを目の前にしても、まだ状況が理解出来なかった。いや、理解することが出来なかった。
床に横たわっていたのは藍だった。
そして近くに寄って初めて視認出来た大きな血溜まり。
霊夢は息を呑み、その場を離れた。
「…れ……い…む…」
微かに聞こえたその声は聞き覚えのある声だった。
声の主は紫だ。
それに気づいた霊夢はすぐさま彼女の元へ駆け寄った。
彼女は部屋の奥で頭と腹から血を流してベッドに座り壁にもたれ掛かっていた。
「ゆ……か…り?」
ち…がう。これは紫じゃない、倒れているのも藍じゃない。
これは違うんだ。じゃなきゃ、じゃなきゃ…
本当は理解していた。
ただ認めたくなかった。
この状況を、この幻想郷を、この世界を。
もう戻れない…?
そう、昨日までの日にはもう戻れない。
決断しなければならなかった。
認めなければならなかった。
「紫?何があったの?」
「急に彼らがやってきたの」
「彼ら?」
「地獄の、妖怪達よ…」
「どういうこと?わからないわよ…」
紫は霊夢の疑問をそのままにし、話を進めた。
「何故封印が解かれたのかもわからないけど…彼らは外の世界の武器を持っていたわ…」
「わからないよ…。地獄の妖怪も、外の世界の武器も、全部…」
「霊夢、もう貴方が幻想郷を守るしかないのよ。お願いだから聞いて、貴方がこの世界を…私の故郷を守って…」
「そんな…紫がいないと無理よ…」
「じゃあ…貴方はみんなが私や藍みたいに死んでいくのを…ただじっと見ているの…?」
心に突き刺さる言葉だった。
だが、霊夢は相手がどんな奴なのかも、どんな武器を持っているのかも知らない。
無理を言っているのは紫も承知だった。だが、どんなに相手が強かろうとやらなければならない。幻想郷を守る為に。
苦渋の選択だった。
「…やってやるわよ、あんた達をこんな目に遭わせた奴らを……許さない」
「その意気よ…。これは私からの餞別よ。」
「これは?」
「陰陽球よ。これはあらゆる道理を覆し、全ての倫理を否定する、とても危険な物よ」
「なんでそんなものを私に?」
「私もまさかこれを使う時が来るとは思わなかったわ。それ程今、幻想郷は危険なの。だけど、貴方なら正しく使えると信じてるわ、だって貴方は博麗の巫女だもの…。」
「…わかったわ」
「それと、橙をマヨイガに置いてきてしまったから、全部終わった後に迎えに行ってあげて…」
「えぇ…わかったわ」
霊夢の返事を聞き、紫は満足そうな笑みを浮かべ、静かに目を閉じた。
もう彼女と話すことも、笑い合うことも出来ない。
だが、霊夢はそれを今度はすんなりと受け入れられた。
心を落ち着け、出口へ行こうとしたその時、激しい衝撃が体を貫く。
気づけば家の中は炎に包まれていた。
「ふむ、やっと一番の危険因子をやったか。予定より少し遅かったがまぁいいか、後は妖怪の山と永遠亭をこの世界から切り離して人里へ行って終わりだな。やっとこの時が来たか」
「ん?」
男の目に炎の中、一つの影が揺らめいてるのが見える。
「お前達が…」
「何!?人間なら死んでいるはず…」
男は動揺を明らかにして、慌てて後ろの男達に合図を送る。
「撃て!」
霊夢は初めて見る武器だった。
しかしそんな事などどうでもよかった。
銃弾は全弾霊夢に命中した。しかし、かすり傷すらもつかなかった。
霊夢はゆっくり、着実に男達に近寄る。
まるで、ご都合主義の物語の様だった。
悪は滅び、正義は栄える。
そんな単純な事だった。
やがて、銃弾が尽きた。
しかし、相変わらず霊夢に傷はない。
「何…だと…?人間じゃなかったのか?」
男の独り言に霊夢は答えた。
「私は博麗の巫女…妖怪を問答無用で退治する巫女よ」
そう言い切ると霊夢はお札を手に構え、狙いもつけずに放った。
男達は逃げ惑ったが簡単に札に捕まってしまった。
「お前達はここで死ぬ運命だ」
そう言い切ると、札が眩しい光と同時に爆発し、男達から赤い液体が飛び散った。
あぁ…話には聞いていたが博麗の巫女というのはここまで強いのか、これでは全く持って勝負にならない。
そこのお前、どこを撃っても無駄さ、どうせ傷一つすらもつけられないのだ。
まるで御伽噺を見ているかの様だ。
絶対無敵の主人公、大切な物を失い覚醒する主人公、主人公に仇を成す悪は必ず滅びる。
まるでそんな世界だ。
どうやら我々の部隊では博麗霊夢にはどうやっても勝てない様だ。
先にあの世で…
男の意識はそこで途切れた。
――――
「人里で爆発を起こしたのは注意を引き付ける為だったが…どうやらみんな人里には関心がないようだな」
一人の男が問いかける様に言う。
「こ…れは…?お前がやったのか?」
魔理沙は男の問いかけを問いかけで返し、人里を見回した。
それはいつもの人里ではなかった。
建物は崩壊し、勢いの収まらない炎が人里を焼き尽くしていた。
さらに男の周囲には、人里の住人と思われる人が何人も寝転んでいた。
アリスも同じだった。
まさに今、人里は地獄絵図だった。
ある者は顔を恐怖で歪ませ、ある者は悲鳴をあげ、ある者はもう何も言えない体になっている。
「ほう…お前は霧雨魔理沙か」
男は確認する。
「これはお前がやったのか?」
魔理沙はいくらか落ち着きを取り戻し、再び男に問いただした。
もし、この男がこの惨状を起こした張本人なら、免罪符が出来るからだ。
魔理沙は冷静な人間だった。
だからこそ男の返事を待った。
「やれやれ…話にならないな。言っただろう?人里をこうしたのは俺が、お前達の注意を引き付ける為だ。」
男は不気味な笑みを浮かべ、地面に置いてあった小銃を持ち上げた。
「これは非常に優れものでな、引き金を引くだけで人が殺せるんだ。ほら、こんな風にな!」
そう言い男は近くに倒れていて、まだ意識のあった人間の頭にそれを突きつけた。
「やめてっ!」
アリスは反射的に懇願する様に叫んだ。それは当然の事だった。
しかし、男は止まらなかった。
男の気味の悪い笑い声と共に耳を劈く様な音が響く。
その人間は自身を貫く銃弾に合わせ小刻みに体を揺らせる。
そして、音が鳴り止むと共に一切の動きを止めた。
「どうだ?凄いだろう?これは外の世界の武器らしいからあまり体には馴染まないが、殺傷力は充分にある。」
男はさっき起こった出来事を当然の様に片付けた。
終始無言の魔理沙、目の前の出来事と男に恐怖し後退りするアリス。
二人の反応を面白がっているのか、男は今度は子どもに小銃を向ける。
さっきの光景を眼前で見せられた子どもは許しを請う様に泣き出した。
子どもですら理解出来る現実だった。
しかし、銃口は自分に向いたまま…、当たり前の事だった。許しを請う様な事など何もしていない、自分の全てがこの男の気持ち一つで決まるのだ。
「また、醜い死体が転がる事になるぞ?」
子どもの様子をさらに面白く思った男は笑いながらそう言った。
魔理沙はまだ躊躇っていた。
今この男とやりあっても勝てない。
しかし、この場から逃げるのは人里の住人を見捨てる事になる。
『生きたい』という意思は人間が、いや生物なら例外なく持つ意思。
まさに魔理沙は自分の命と人里の住人の命を天秤に乗せている状態だった。
方や、男の残虐さに遂に耐えきれなくなったアリスは子どもを守ろうと男に近づいて行った。
二人、共にお互いを見失っていた。
アリスの動きに気づいた男は何か思いついたのか小さく笑い出した。
「そういえば、これは妖怪には効くのか?試した事がないからわからないなぁ。」
男は子どもから視線だけ離し、アリスを見てそう言った。
「なにそれ。皮肉のつもり?」
アリスは悠然とした態度で言葉を返したはずだった。
しかし、声は明らかに震えていた。
「ならばこうしよう。子どもを撃つか…お前を撃つかだ。」
男は、答えをもう出ている。そんな様な目でアリスを見た。
アリスも答えはもう出ていた、いや、答えは出されていた。
しかし、妖怪と言えど痛覚はある、恐怖はある、死はある。
自分がそれを選んで、生きているという保証はなかった。
しかし、それを選ばなければならなかった。
「その子をこちらに渡して…」
即ち自分が受けるという意思。
選択肢など、無いものに等しかった。
「いいだろう、さぁ行け」
男はすんなりと子どもを解放した。
しかし、顔にはまだ笑みが残っていた。
泣きながら駆け寄ってくる子どもを抱き上げ、アリスは必死に宥め、そして自分の心も宥めていた。
その時だった。突然銃声が鳴り響いた。
アリスは一瞬何が起きたかわからなかった。
しかし、銃声に遅れて物凄い痛覚がアリスを襲った。
男の銃が子どもとアリスを一直線に貫いたのだ。
「…どう……し…て…」
アリスは子ども抱く手を緩め、子ども一緒にその場に倒れた。
男は最高潮の笑い声をあげる。
しかし、男はアリスと子どもに夢中になりすぎていた、もう一人の存在を忘れていた。
そして、気付いた時には遅かった。
男を包み込む光、それは簡単に山を一つ消し飛ばす程の光だった。
やがて光が消え、静寂が訪れた。
魔理沙はアリスと子どもの所に歩み寄る。
しかし、子どもは既に事切れていた。アリスはまだ息がある様だがかなり危ない状態だった。
「ごめんな…助けてやれなくて…」
魔理沙はそれだけ言い残し、アリスを抱き上げ、人里を後にした。
――――
人里の子ども達は寄り添いあい、震えている。
それを取り囲むように銃を持った男達が立っていた。
恐怖のあまり子供達は声を出せずにいた。
耳が痛くなる音の嵐。
目の前で繰り広げられる銃撃。
子ども達は息を吸い、吐くだけでも精一杯だった。
悲鳴すらあげられない。
「助けて!」
しかし助けを求める声は聞こえる。
「必ず助けるから待ってて!」
鈴仙が答える。
それを聞いた男達の顔は、鈴仙を嘲笑うか様に歪んでいた。
しかし銃弾は鈴仙当たるどころか擦りすらしない、例え一直線上に居たとしても鈴仙に銃弾が当たる事は決してない。
それは当然の事だった。
鈴仙は余裕と不安が混じった口調で言う。
「貴方達、何者?何故それを持ってるの?まぁ、それは貴方達には過ぎたものよ」
鈴仙はその武器に見覚えがある、月にいた時に使っていた物に酷似している。
しかし、幻想郷でそれを見たことはなかった。
目立った義手の男が驚嘆の声を漏らす。
「驚いたな…こいつを知っている上に全弾回避か…」
しかし、その男は既に気づいていた。
一直線上でただただ銃弾だけが消えていく異様な光景を。
間違いなく何かからくりがあると確信していた。
その近くに居た男は激しい銃弾の音に紛れて不安そうに男に言う。
「このままで大丈夫ですか?さっきから一発も当たっていませんが…」
男は少し考え、そして後ろで怯えた子ども達を見て笑みを浮かべ答える。
「そういえばこちらには人質がいたな」
その言葉を聞いて男は安堵する。
「あぁ、そうでしたね。なら良かった。」
一方、鈴仙は少し恐れていた。
自分に向かってくる無数の銃弾を恐れていたのではない。
以前、自分は戦争の恐怖に耐えきれずに月から逃げてきた。
しかし、もし今この状況が幻想郷各地で起きていたとしたら、それは…。
もしかしたら今、幻想郷は自分が一番恐れていることになっているのではないだろうか。
そんな事を考えているとこんな悠長にしてはいられない。
早くここを片付けて他の所の様子を見に行かなければならない。
しかし、いくら当たらない銃弾でも男達との距離を詰めれば無傷というわけにはいかない。
「いい?貴方達、今すぐにこの場から立ち去りなさい。これが最後よ」
鈴仙はそう言い切り、男達の反応を伺う。
「最後なのはお前の方だ、こいつの命が惜しくないのか?」
義手の男は鈴仙の忠告を無視し、煽る様な口調で言い、子どもの頭に小銃を押し当てる。
「……愚かね…」
鈴仙は同情するかの様な目で見つめ、目を閉じた。
次の瞬間、男達の頭の中に物凄いノイズが流れてきた。
あまりの衝撃に感覚器官は麻痺し、視界は眩み、男達はその場に倒れ伏す。
「相手を侮った貴方達の負けね」
そう言うと泣きじゃくる子ども達の所へ駆け寄る。
「大丈夫?怖かったよね?よしよし…」
子ども達を宥め、人里を目指した。
鈴仙は確信した。この騒ぎはここだけで起こっている訳ではない、恐らく幻想郷の各地で起こっていると。
鈴仙は胸騒ぎが止まらなかった。
誰もいなくなった後、一人の男が立ち上がる。
あの義手の男だ。
「なんだあいつは…、感覚に作用する能力か?……厄介な奴がいたもんだ」
独り言を発しながら、後ろを振り返る。
そこには既に生き絶えた部下達が倒れている。
「…俺が迂闊だったばっかりに…すまない…。」
そう言い残し、合掌をする。
そしてよろよろと歩き始めた。
――――
霊夢は人里を目指していた。
彼処こそが全ての元凶だった。
平和な時が流れていた幻想郷を一瞬で地獄に変えた元凶がいると確信していた。
霊夢に正常な思考はほぼ無かった、それどころか半分は狂気に苛まれていた。
幻想郷も、妖怪も、人間も、自分も…全てが憎かった。
何故生きているんだろう、一瞬で自分の世界も壊れ、日常も壊れる、こんな脆い世界に生きている意味なんて…。
しかし、僅かに残っている自我で考えを押し殺し進んだ。
――――
人里はもう跡形もない位に崩壊していた。
あちこちに散乱した瓦礫を見て、そこが確かに人里だったことを確認した。
無造作に横たわる人々は例外なく事切れていた。
しかし、その惨状を目の当たりにしてもなお、霊夢は驚かなかった。
「れ、霊夢かッ!?」
不意に聞こえる聞き慣れたはずの声。だが、霊夢は顔を向けない。
「霊夢だろ?なぁ、この惨状は一体どうなって…」
声を遮る様に言う。
「魔理沙、帰って…私に近寄らないで…」
それはあまりに短絡的な言葉だった。
だからといって適当に言った訳でもない、それは魔理沙にもわかっていた。
しかし、だからこそ疑問だった。
「今、幻想郷は大変な事になってるんだぞ!!アリスだってやられちゃって…もう…意識が戻るかさえも……」
霊夢は魔理沙が声を詰まらせるまでただ黙ってじっと聞いていた。
そして大きくため息をつき、こちらを振り向いた。
だが、その顔はもう魔理沙の知ってる顔ではなかった。
「れ……いむ?お前…どうしたんだ…?」
違う……これは霊夢じゃない。
霊夢は…こんな…こんな……。
でも、声、服は霊夢と瓜二つだ。
「魔理沙…。帰って」
霊夢の口調はさっきより強くなっていた。
「霊夢?お前なんだよな?…どうしちまったんだよ、その目…」
霊夢の目は赤黒く濁りその眼球からは赤い液体が流れて出ていた。
最早、目としての機能を持っているのかすら怪しかった。
「もう、私は戻れない。だからこの異変を終わらせる。それと…マヨヒガに橙がいるわ…あの子もよろしく。」
魔理沙は何が何だかわからなかった。全てがわからなかった。
「……わからないよ…。今の幻想郷も、今のお前も!!!」
心から出た叫びだった。
「今、幻想郷の各地で異変が起きてるわ。今までにないくらい残虐で無惨な異変が。私はこの異変を終わらせる。ただ、それだけ」
魔理沙が期待した答えは返ってはこなかった。
霊夢は昔からそうだった。自分一人で全てを背負っていた…なら、私には何が出来る?
しかし、考えるにはあまりにも時間が少なかった。
「魔理沙、もう会えないかもしれないから…さよなら…。」
霊夢は初めて笑顔でそう言った。魔理沙はその時、全てを悟った。
魔理沙は目を涙ぐませ、霊夢を強く抱きしめた。
言葉なんていらない、これだけで十分だっだ。
――――
「……まだ殲滅出来ないのか」
「ただの人間なら簡単だけどねぇ…妖怪になってくると結構難しいと思うよ」
「しかし、八雲紫と八雲藍それから紅魔館はもう落しましたし、永遠亭と妖怪の山も隔離済み、地底の妖怪は地獄の妖怪には手だしは出来ませんし、残る脅威は冥界の二人と博麗霊夢、それから霧雨魔理沙だけでしょう?」
無縁塚に立ってる粗末なテントの中、3人の男が話し合っていた。
「時間の問題だな…。しかし冥界の西行寺幽々子は落とせるのか?あいつの能力は確か…」
男が言いかけた言葉を遮るように別の男が口を開く。
「大丈夫だよー、紅魔館に行った部隊の指揮官、能力無効化出来るじゃん」
「では、彼らの部隊に冥界に行ってもらう様に伝えますかね」
――――
冥界。本来なら生きた者は入る事は許されない場所、しかし春雪異変後の結界修復がまだ終わっておらず、現界と簡単に行き来の出来る場所である。
…もっとも、もうその結界を修復出来る者も、もう居ないが。
「…妖夢、遅いわね〜…」
言葉こそ悠長なものだったが、幽々子にはこれまでにないほどの胸騒ぎがしていた。
幻想郷で何かが起こっている…そう強く確信した。
その時、聞き覚えのある声が聞こえた。
「幽々子様……至急に伝えたい事があります……」
妖夢のいつもと様子の違う表情や声色に幽々子は戸惑った、だが、あくまで平然を装った。
「ど、どうしたの妖夢?そんなに畏まっちゃって」
幽々子の声は震えていた。それほど妖夢の真剣さは純粋に彼女に伝わっていた。
妖夢は自分が見た全てを話した。それを終始黙って幽々子は聞いていた。
やがて、話を聞き終わった幽々子が口を開く。
「……まさか…死んではいないわよね…?」
妖夢は下に俯き、言葉を発さない。
代わりに妖夢の顔から地面に滴り落ちるものが、死を悟らせた。
幽々子は何も言わず妖夢の小さな頭を自分の胸に抱き寄せた。
嗚咽混じりの泣き声が聞こえる。
しかし、その声をかき消す様に冥界の桜はざわめきあっていた。
幾分か経ち、妖夢は涙を拭き再び真剣な表情に戻る。
「……彼奴らを生かしておくわけにはいきません。私は……彼奴らに…剣を抜きます…!!!」
意図する殺生はこの世界ではしてはいけないことだった。
「でも妖夢…そんな事をしたら貴方が…」
すかさず妖夢を引き止めようとする。それはごく当然の事だった。
「もう…これ以上幻想郷を壊させやしない。…例え、自分が邪道に堕ちても今はやらねばならないのです!!!!!」
今までのどんな時よりも、妖夢の決意は確固たるものだった。
苦渋の選択だった、しかし、答えは最初から決まっていた。
「……わかったわ。だけどその白楼剣だけは置いていって…代わりにこれを…」
いつもらしからず、妖夢は幽々子の意図が読み取れた。
恐らく、今この白玉楼を出たらもう自分はここには帰ってこれない。
だから家宝の白楼剣だけは守ろうというのだろう。
妖夢は幽々子に白楼剣を渡し、幽々子から見知らぬ剣を受け取る。
「……この剣は?」
見たことのない剣だったが、とても禍々しい感じが見受けられた。
「それは…魂魄家に伝わるもうひとつの妖刀「毒牙」よ。剣の切っ先に劇毒が仕込んであるわ」
「…そうですか。」
妖夢はそれが嘘であるとわかっていた。
魂魄家にこんな剣はなかった。
だが否定はせず、黙って聞いていた。
「まさか…こんなに早く別れが来るなんてね……もっと…妖夢と居たかった。」
幽々子の心の底から出た言葉だった。
子供の様に泣き出す幽々子。
妖夢は表情を崩し、幽々子の頭を優しく撫でる。
「幽々子様…、私は貴方の元で仕えられてとっても幸せでした…。最後まで半人前だったけど…最期は一人前に行ってきます。どうかお元気で……」
落ち着きのある、しかしうら悲しさを漂わせる口調だった。
幽々子は何も言わなかった。
妖夢は幽々子と白玉楼に背を向け、歩み出す。
途中、内ポケットからなにやら取り出す。
咲夜から貰った懐中時計だった。
それを握りしめ、呼びかける様に呟く。
「咲夜さん…貴方は紅魔館の従者として、立派な人でした。ならば私も、幽々子様の…白玉楼の従者として最後の最後まで主人に尽くします…!!」
そして妖夢は懐中時計を首に下げ、冥界を後にした。
その背中を幽々子と満開の桜はいつまでも見送っていた。
――――
現界に再び来た妖夢はまず人里に行った。
そして初めて目にした、人の死というものを。
逃げてしまいたかった、この現実、幻想郷から。
何かの間違いかもしれない。本当はここは夢の世界で、現実ではみんな生きてて、何も変わりのないいつもの幻想郷がある。
しかし、眼前に広がる地獄絵図は今、自分が見ている紛れもない事実だった。
ふと、人影を見つける。
妖夢は必然的に構える。
この荒廃し亡骸で溢れかえった人里にいる、それだけで只者ではないと思ったからだ。
気配を消し、ゆっくりと静かに近寄って行く。
その人影が自分の知ってる人物だと気づくのはそれからすぐの事だった。
「霊夢さん!?…無事で良かった!」
その声に気づいたのか霊夢は振り返った、いや、振り返ってしまった。
「……れ、いむ、さん?」
さっきまでの呼びかけとは違う、問う様な呼びかけ。
妖夢のその反応を見て、霊夢は咄嗟に妖夢に背を向け、何も話さない。
「霊夢さん……それは陰陽球の…副作用ですか…」
「…知っているの?」
霊夢は背を向けたまま問う。
「えぇ…前に紫様と幽々子様が話していたのを偶然聞いてしまって……」
「そうよ、この異変を終わらせる為に陰陽球の力を使ったわ」
妖夢は陰陽球がどれ程の危険な物か知っていた。
しかし、妖夢は何も言えなかった。
「あんたは何しに来たの?」
こちらを向き直し、暫しの沈黙を破る霊夢。
「私も…この異変を終わらせに馳せ参じました。」
妖夢は正直に自分の心の内を明かす、すると途端に霊夢の表情が険しくなる。
「帰りなさい、主の元に」
霊夢の一際強い口調と、今まで感じた事のない妖気に思わずたじろぐ妖夢。
「私だって……私だって!!幽々子様と冥界に別れを告げてまでこの幻想郷の異変を解決に来たんです!!」
しかし、妖夢もまた、ただならぬ決意で現界に降り立ったのだ、こんなところで引き返す訳にはいかない。
「何故、そこまで固執するの?」
さっきとはうってかわって不思議そうに聞いてくる霊夢。
「……咲夜さんと約束したんです。絶対にこの仇を…この異変を終わらせるって……」
「…………」
霊夢は黙って聞いていた。
棲み分けという意味でもそれが一番幸せだ
この分じゃきちんと原作に触れているのかさえ怪しいですな
あそこはゴミの不法投棄スポットじゃないんで
作者の書きたい場面が先走り過ぎて、正直、内容についていけない。
もっと、登場人物の心の動きや展開など、きちんと段階を踏んで描写した方が良いと思う。
こんなことを言うのは心苦しいが、小説として杜撰な出来の作品な上、作中で東方キャラが次々と蹂躙される内容では叩かれても致し方ないと思う。
小説が好きな人、東方が好きな人、そのどちらに於いても、なんの面白味も感じない作品になっているからだ。
この作品を楽しめるのは精々、東方が心底嫌いな人だけだろう。
その前になんと言うか、コメントって自分の思いを伝えるだけじゃなくて作者さんにどうしてほしいか、どう作品を創って欲しいかを伝えるためのものだと思うんだよ。
だから作品に全く触れていない批判コメントは作者さんに対して何の糧にもならないし、第三者としては(コメントを)見てて不愉快になってくるし…
とにかく、このサイトにおいてそれらは「毒」みたいなもので誰にも利が無いのだから自重すべきだよ、うん。
(過去の先人の残したコメントの方が民度も作者さんに対する誠意も高かったように思えるのは気のせいかな?)。
せめて作品について一言だけでも糧になるような事柄を入れなくちゃ。
というわけで、言い出しっぺの自分からコメントをしようと思います。
まず場所は忘れましたが、ちょいちょい誤字が見られます(無責任)。もう一度作者さんの目で校閲してみると気付けると思います。
次にオリキャラですね。自分はオリキャラ肯定派ですが、やはり第三者に読ませる以上その装束姿といいますか、外見上の特徴はもう少し濃く描写した方が宜しいかと。これでは「部隊」の人たちが幻想郷の住人のように着流しなどの和服を着ているのか、それとも外の軍隊のように軍服を着ているのか…などが完全にこちらの想像にお任せ、って感じになっていますよ。
ストーリー上の諸々思うところは置いといて、話の運び方は(あくまで運び方。すみません)好ましく、内容も読みやすかったです。
最後に余計なことを言えば、シリーズものを一度投降した以上は続投、もしくは続ける気がないのであれば削除することをお勧めします。中途半端に一話だけ残してしまうのはどうも…(そそわには結構多いのですよ。「さぁて、次の話は…ない!?」なんてことが)
とりま、一話ということで批評はここまででいいですかね。
願わくばタイトル通り、これが『悪い夢』であるように祈りながら続きを気長に待つことにしましょうか。
長文、失礼しました。色々頑張ってくださいな
しかも内容は自分勝手なうえにをそこだけ口調を変えるという正に「お前が言うな」そのもの。
このコメ自体も完全にアウトなんですが、言わなきゃわからない(多分言ってもわからない)から言うんです。
とりあえずその不謹慎な作者の名前を変えてオリキャラ出さないように書けば違った感想もらえると思うよ
あれだねお寿司に醤油をかけて食べるのが普通だと思うんだけどそこにケチャップを加えてる感じ(?)
まぁあれだねそこに良さがあるんだけど違うもので打ち消してるって感じ
自分はこの小説結構良くないと思ってる
まぁでも頑張ってるとは思うよ
これからも頑張ってください