東方想造記
プロローグ
ここは幻想郷、外の世界で失われ幻想になった物が集う場所。
その土地に遠くない未来に異変となりうるだろう者が生まれた。これから語られるのは、東方想造記に紡がれる、ある少女の未来と過去…の話。
別れと出会い
彼女の周りでは生まれながらして不思議なことが起こった。
正確には不思議なことに巻き込ままれる事が多く、その数は常識に囚われないと言われる幻想郷である事を考慮してもそれは、"異常"と思われてもおかしくないレベルのものだった。頻度は彼女が齢を重ねるほどに増えていき、いつからか彼女は"不幸を招く者""人に化けた妖怪"などと影で呼ばれるようになった。
勿論、こんな事は説明するまでもないのだが…そんな不気味な存在に人が好意を抱くわけもなく、3歳になる頃には彼女に近づく者は家族を除いて誰一人いなくなり…
そして5歳の誕生日を迎える頃には、全てを失った。
「ごめんなさい……花のことは好き、だけどもうお母さん耐えられない」
「おかあさん、どうしたの?」
「すまない。ここでは敵が多すぎる。……はここから離れた世界で暮らした方がいい。花の事が嫌いなんじゃない…お父さんのことを恨んでいい。周りの目に耐えられない弱い俺を恨んでくれ…」
「お父さん?」
「花、今からあっちの方に向かうんだ。そして誰かが来るだろうから神社に行きたいって言うんだぞ」
「神社?」
「そうだ神社だ」
「お父さんはいかないの?」
「あぁ、今は何もわからないかもしれないが…今はむこうに向かってこの道を歩くだけでいいんだ。それで全てが終わる。」
そう人間に耐えられることではなかったのだ。
親とて人間、子供よりも我が身の大切さを選んだ。
けれども、そんな事情は彼女はわからない。
ただ親に言われた通りにひたすらまっすぐに…わけがわからぬまま、歩く。歩く。歩く。
まだ成長しきっていない体で一歩一歩確実に…
そして彼女が山の麓に到達する頃には、陽がかげり夜が来ようとしていた。
時は少しさかのぼり、日没直前。山内部では二人の少女が戯れていた。
「椛、お疲れ様です。」
「あ、文さんですか…私の仕事は日没までです。まだ仕事は終わってません。」
「あややや、椛は固いですねぇ。少しくらいサボるくらいが丁度いいと思いますよ。」
「それは文さんだけです!皆自分の仕事を真面目にこなしています。」
「そう固いことを言わずに…そう笑顔に笑顔に」
そう言いながら、カラスのような羽を持った少女、射命丸文は、犬のような見た目をした少女、犬走椛に詰め寄り…
ふわふわの尻尾を鷲掴みにした。
「ひゃぁあああ!!」
これが普通の場所なら椛の妖艶な悲鳴があたりに響き渡る。と言ったイベントが起きそうなものだが、ここは滝の真裏だ全ての音を轟音がかき消してくれるだろう。
逆に言えば助けもこないのだが…
「毎度毎度いい反応してくれますねえ。もーみーじぃー」
「文さん!離してください!怒りますよ!」
「おお、怖い怖い。」
そんな微笑ましい戯れで時間が過ぎて行き、日が完全に落ち帰ろうと準備を始めた椛の目が一人の少女を捉えた。
「文さん。侵入者です」
「方角は?」
椛が指を指す。
「あっちの方角の麓です」
「椛、捕まっててくださいね」
文が、大きく羽を広げ滝壺に飛び降りる。
勿論、これは自殺などではない。ただ落ちながら飛んだ方が速いだろう、程度の考えで飛んだだけだ。だが、速く飛ぶことに慣れていない椛にたまったものじゃない、その上急に腕を掴まれ滝壺にダイブされたのだから。椛はいつも以上に感じられる浮遊感と急激な重力の変化、そして凄まじい速度で迫り来る地面からの恐怖に耐える為に目を一瞬とじ身構えた時には、もうすでに目的地に到着していた。
落ちてから到着までわずか数秒。幻想郷最速を誇る射命丸文の名は伊達ではない。
二人が降り立った場所にいたのは、こんな時間に一人で出歩いてはいけないと思えるほど、小さな少女だった。
だが二人はそこに少女がいることよりも、人間がこの場にいる事に驚きを隠せなかった。
ここは妖怪の山、人間が安易に入っていいような場所ではない。子供なんぞ以ての外だ。
何故そこまで言うかというと、それは天狗の特性にある。
天狗達に人間を食う趣味はなく好んで襲ったりはしない。なら安全か?と言えばそんなことはないのだ。先ほど好んで襲うことはないと言ったが、それは自分から出向いていって襲うことはない、というだけだ。
そう、侵入者となれば話が変わってくる。
幻想郷一排他的な集団は天狗だ。
侵入者には容赦はしない。それがたとえ子供であろうともだ。
ただ、幸運な事に文はブン屋という仕事の関係上人間の里で人間と接することが多く、そして椛もなんだかんだで文の新聞が好きで、文の好きなものは基本好きみたいなところがあるので、すぐに抹殺しようなどといった考えはない。
だが、他の天狗はどうだろうか?
まだ他の天狗は少女発見には至っていないため駆けつけていないが、来たら厄介だ。
二人とて目の前で人間が殺されるには見たいわけがない。
だからこそ、二人は焦った。腕をひっつかんでどこかに捨ててくるのは簡単だ。けどこの状況の子供を何処かに運ぶのは如何なものだろうか。
もう日も暮れ月が見え始めている。こんな時間に子供を野放しとはいかない。かといってこの時間帯に人間の里に入ったり里の近づいたりする訳にはいかない為、里に運んであとはよろしくというわけにもいかない。
そして文はこの子のことを何か知ってるような気もして、思考を巡らせる。
「お姉ちゃん?どうしたの?」
二人はそう声をかけられてハッとなった。
突然妖怪が現れて、ジッと見られては怖いに決まっている。
気を取り直して二人は、少女に声をかけることにした。
「あややや、迷子ですか」
「お母さんと一緒だけど迷子じゃないもん!」
「えーと…お母さんはどこに?」
「えっとね、向こう?」
そういうと少女は人間の里の方に指をさして、ニッと笑う。
「お母さんはどうしたの?」
「よくわからないけど、お母さんとお父さんは向こうに向かって歩いて行きなさいっていったから歩いてきたの。神社があるんだって!」
二人はその言葉に首を傾げる。そもそもこの山に神社はないし、幻想郷にある有名な神社といえば博麗神社になるのだが方向が全くもってあっていない為、道を間違えたとは考え辛い。
そして何よりにこの子の親がこんな大きなミスを犯すとも思えない。妖怪の山に近づかない事これが子供が言葉を覚える前から言って聞かせるものだというのに。
「お母さんは本当にこっちだって言ったんですか?」
「うん。迎えに来てくれる人がいるって言ってた。」
何か雲行きが怪しくなってきたと二人は感じた。少しずつ理由はこれ何では?と思い始める。
「お母さん何か謝ったりしてませんでしたか?」
「何かごめんなさいしてた。」
「それで?」
「お父さんも来てくれないって」
……あぁ、この子は捨て子か
二人はそう理解した。この状況から理解せざるをえなかった。
だが、問題が一つだけ解決していない。
人間は弱い生き物だ。育児放棄などよく聞く話で二人からすれば仲間を捨てるなどありえないのだが…
何故この子はこんなやり方で捨てられた?
何故この子は?
文の脳裏に人間の里で聞いた噂が蘇る。
"この里には呪われた子がいる"
"不幸を招く者"
"人に化けた妖怪"
などと呼ばれている子供がいる事を
そしてその子供が、関わる事も危険で自分たちで殺すのも危険などと言われている事を
文の中で一つの答えが導き出された。
それは、考える事も苦になるほどの物だった。
"人間の方が妖怪と呼ばれるにふさわしい"
そう、自分たち天狗は死刑執行者に利用されそうになったのだと。
天狗の閉鎖的な考えを利用し、侵入者に対しての行動を理解した上で
人間はなんて愚かなんだ。
何事に対しても飄々とした対応を取り滅多に怒らない文であったが、今回のこの件に関しては許容を超えるものがあった。
「椛…人間の里の道までに夫婦と思わしき男女はいますか?」
「一組います。けど…」
文さんなんでそんな事を聞くんですか?
その短い言葉を言い終わった時には文は目の前から消えていた。
文は全力で空を駆ける。そしてあの少女の親を見つけるや否や土煙と轟音を立てて着陸した。
「な、なんだ!?」
「ちょっとすいません。私、ブン屋をやっている射命丸という者なんですが、先ほど迷子の女の子を見かけまして何かご存知ではありませんかね?」
「そ…それは私の娘だ」
「そうですか…」
「?」
「あなたたちのような人間が嫌いですねえ。私達を使ってあの子を殺そうとしたでしょう。」
「お前に何がわかる!あの子はうまく生きてはいけないんだ!あの子は不運でいつも何かに巻き込まれる。里の者からは疎まれ、蔑まれる。俺だってなんとかしたかった。けど出来なかったんだ」
「博麗の巫女に預ける事もできたはず。」
「あれは人間がなんとかできるものじゃない。」
「じゃあ、八雲紫なら。幻想郷のすべてを愛する彼女なら快く引き受けてくれたはずです。」
「妖怪の元なんかに行ってあの子が幸せになれるわけがないだろう」
「じゃあ何で妖怪の山に」
「死んで生まれ変わるのがあの子の為になるからだ!」
その言葉が文の耳に入った時。文は湧き上がる激情を抑えることができなかった。
「ふざけるな!そんな理由で人を殺すな。ただお前らが里で生きていくのが辛くなっただけだろう。それも輪廻転生を信じておきながら、自分の手は汚したくないときたものだ…私達はあの子を殺さない。あの子はには生きる権利がある。妖怪は呪いなんぞ恐れない。あの子は私が育ててみせます」
「お前なんかに妖怪のクズに育てられるわけがないだろうが!簡単に人間を殺し食べるお前らなんかに」
「…私は一度も人を殺したことはないですけどね。ただ今回が一度目になりそうだ」
文がゆらりと揺れながら、ふふふと笑うと文を中心にして激しい風が巻き起こった。
これが、文の能力"風を操る程度の能力"
起こった風が木々を激しく揺らし、文の髪を逆立て、文の怒りそのものを表したかの様にも二人には思えた。
「あと一言でも言葉を発したら殺します。最後にあなたたちの大切なものを一つずつ渡して、この場を立ち去れ!!」
二人はコクコクと首を縦にふると、男は懐中時計、女はブレスレットを文に手渡すと逃げる様に立ち去っていった。
一方その頃椛達はこんな会話をしていた。
「お姉ちゃんってわんちゃん?」
「わ、わんちゃん!?私は白狼天狗。犬じゃなくて狼です」
「あ、ごめんなさい。狼さん」
「大丈夫ですよ。あと私の名前は犬走椛です」
「私の名前は、花だよ!」
「ちなみにもう一人のお姉ちゃんの名前は射命丸文って言うんですよ」
「変な名前ー!」
「変な名前ですねー」
「あややや、陰口をいう様な子に育てた覚えはないんですけどねえ」
突然の文の登場に戸惑う椛は答える。
「別に文さんに育ててもらったわけじゃありません!って文さん!?どこに行ってたんですか?」
「ちょっと用事を済ませてきたんですよ。えっと花ちゃん、私はお母さんとお父さんから花ちゃんを育てる様にと言われたんです」
「お父さんとお母さんが?でもそんなこと言ってなかったよ?」
「ちょっあやs…もがっ」
椛が口を挟もうとするのを文は制し、こう続けた。
「これが証拠です。これを見せればわかるということだったので」
文は先ほど強奪した二つの品をポケットから出し、花に手渡す。
「あ、これお父さんとお母さんがすっごく大事にしてた物だ!ってことはお姉ちゃん本当なの?」
「ええ、本当です。それと山で暮らしていくには名前を変える必要があるんです。」
勿論、山にそんなルールはない。文が身勝手とけじめとして言っただけだ。
あの夫婦のつけた名前で少女が生き続けるのは耐えらなかった事。
そして一番の理由は名前をつける事で、この子は私が育てていくという思いを固め失わない様にするという理由があった。
「でも、そんなこと言われてもわからないよ」
「あなたの名前は、繊月の見えるこの時間に出会った。そして出会ったのは私と椛、その全てを受け入れ、全てを受け入れる幻想郷。だからあなたの繊月文樺何てどうでしょうか?」
「せんげつあやか?」
「ええ、そうです」
「よくわからないけど、お父さんとお母さんがそう言うなら行こうかな…?」
「ようこそ、妖怪の山へ。さあ、私の手をとっていきm…」
そこで、文は言葉を切った。そして息をすっと深く吸い言い直す。
もう新聞記者と射命丸文ではなく山の天狗射命丸文、仲間として接するのだから…
「さあ、私の手を取って!行くわよ!」
敬語ではおかしいでしょ?
「うん!」
「はぁ、あとで怒られても知りませんよ文さん…」
これが東方想造記の1ページ目にかかれた物語。
三人の少女の出会いである。
プロローグ
ここは幻想郷、外の世界で失われ幻想になった物が集う場所。
その土地に遠くない未来に異変となりうるだろう者が生まれた。これから語られるのは、東方想造記に紡がれる、ある少女の未来と過去…の話。
別れと出会い
彼女の周りでは生まれながらして不思議なことが起こった。
正確には不思議なことに巻き込ままれる事が多く、その数は常識に囚われないと言われる幻想郷である事を考慮してもそれは、"異常"と思われてもおかしくないレベルのものだった。頻度は彼女が齢を重ねるほどに増えていき、いつからか彼女は"不幸を招く者""人に化けた妖怪"などと影で呼ばれるようになった。
勿論、こんな事は説明するまでもないのだが…そんな不気味な存在に人が好意を抱くわけもなく、3歳になる頃には彼女に近づく者は家族を除いて誰一人いなくなり…
そして5歳の誕生日を迎える頃には、全てを失った。
「ごめんなさい……花のことは好き、だけどもうお母さん耐えられない」
「おかあさん、どうしたの?」
「すまない。ここでは敵が多すぎる。……はここから離れた世界で暮らした方がいい。花の事が嫌いなんじゃない…お父さんのことを恨んでいい。周りの目に耐えられない弱い俺を恨んでくれ…」
「お父さん?」
「花、今からあっちの方に向かうんだ。そして誰かが来るだろうから神社に行きたいって言うんだぞ」
「神社?」
「そうだ神社だ」
「お父さんはいかないの?」
「あぁ、今は何もわからないかもしれないが…今はむこうに向かってこの道を歩くだけでいいんだ。それで全てが終わる。」
そう人間に耐えられることではなかったのだ。
親とて人間、子供よりも我が身の大切さを選んだ。
けれども、そんな事情は彼女はわからない。
ただ親に言われた通りにひたすらまっすぐに…わけがわからぬまま、歩く。歩く。歩く。
まだ成長しきっていない体で一歩一歩確実に…
そして彼女が山の麓に到達する頃には、陽がかげり夜が来ようとしていた。
時は少しさかのぼり、日没直前。山内部では二人の少女が戯れていた。
「椛、お疲れ様です。」
「あ、文さんですか…私の仕事は日没までです。まだ仕事は終わってません。」
「あややや、椛は固いですねぇ。少しくらいサボるくらいが丁度いいと思いますよ。」
「それは文さんだけです!皆自分の仕事を真面目にこなしています。」
「そう固いことを言わずに…そう笑顔に笑顔に」
そう言いながら、カラスのような羽を持った少女、射命丸文は、犬のような見た目をした少女、犬走椛に詰め寄り…
ふわふわの尻尾を鷲掴みにした。
「ひゃぁあああ!!」
これが普通の場所なら椛の妖艶な悲鳴があたりに響き渡る。と言ったイベントが起きそうなものだが、ここは滝の真裏だ全ての音を轟音がかき消してくれるだろう。
逆に言えば助けもこないのだが…
「毎度毎度いい反応してくれますねえ。もーみーじぃー」
「文さん!離してください!怒りますよ!」
「おお、怖い怖い。」
そんな微笑ましい戯れで時間が過ぎて行き、日が完全に落ち帰ろうと準備を始めた椛の目が一人の少女を捉えた。
「文さん。侵入者です」
「方角は?」
椛が指を指す。
「あっちの方角の麓です」
「椛、捕まっててくださいね」
文が、大きく羽を広げ滝壺に飛び降りる。
勿論、これは自殺などではない。ただ落ちながら飛んだ方が速いだろう、程度の考えで飛んだだけだ。だが、速く飛ぶことに慣れていない椛にたまったものじゃない、その上急に腕を掴まれ滝壺にダイブされたのだから。椛はいつも以上に感じられる浮遊感と急激な重力の変化、そして凄まじい速度で迫り来る地面からの恐怖に耐える為に目を一瞬とじ身構えた時には、もうすでに目的地に到着していた。
落ちてから到着までわずか数秒。幻想郷最速を誇る射命丸文の名は伊達ではない。
二人が降り立った場所にいたのは、こんな時間に一人で出歩いてはいけないと思えるほど、小さな少女だった。
だが二人はそこに少女がいることよりも、人間がこの場にいる事に驚きを隠せなかった。
ここは妖怪の山、人間が安易に入っていいような場所ではない。子供なんぞ以ての外だ。
何故そこまで言うかというと、それは天狗の特性にある。
天狗達に人間を食う趣味はなく好んで襲ったりはしない。なら安全か?と言えばそんなことはないのだ。先ほど好んで襲うことはないと言ったが、それは自分から出向いていって襲うことはない、というだけだ。
そう、侵入者となれば話が変わってくる。
幻想郷一排他的な集団は天狗だ。
侵入者には容赦はしない。それがたとえ子供であろうともだ。
ただ、幸運な事に文はブン屋という仕事の関係上人間の里で人間と接することが多く、そして椛もなんだかんだで文の新聞が好きで、文の好きなものは基本好きみたいなところがあるので、すぐに抹殺しようなどといった考えはない。
だが、他の天狗はどうだろうか?
まだ他の天狗は少女発見には至っていないため駆けつけていないが、来たら厄介だ。
二人とて目の前で人間が殺されるには見たいわけがない。
だからこそ、二人は焦った。腕をひっつかんでどこかに捨ててくるのは簡単だ。けどこの状況の子供を何処かに運ぶのは如何なものだろうか。
もう日も暮れ月が見え始めている。こんな時間に子供を野放しとはいかない。かといってこの時間帯に人間の里に入ったり里の近づいたりする訳にはいかない為、里に運んであとはよろしくというわけにもいかない。
そして文はこの子のことを何か知ってるような気もして、思考を巡らせる。
「お姉ちゃん?どうしたの?」
二人はそう声をかけられてハッとなった。
突然妖怪が現れて、ジッと見られては怖いに決まっている。
気を取り直して二人は、少女に声をかけることにした。
「あややや、迷子ですか」
「お母さんと一緒だけど迷子じゃないもん!」
「えーと…お母さんはどこに?」
「えっとね、向こう?」
そういうと少女は人間の里の方に指をさして、ニッと笑う。
「お母さんはどうしたの?」
「よくわからないけど、お母さんとお父さんは向こうに向かって歩いて行きなさいっていったから歩いてきたの。神社があるんだって!」
二人はその言葉に首を傾げる。そもそもこの山に神社はないし、幻想郷にある有名な神社といえば博麗神社になるのだが方向が全くもってあっていない為、道を間違えたとは考え辛い。
そして何よりにこの子の親がこんな大きなミスを犯すとも思えない。妖怪の山に近づかない事これが子供が言葉を覚える前から言って聞かせるものだというのに。
「お母さんは本当にこっちだって言ったんですか?」
「うん。迎えに来てくれる人がいるって言ってた。」
何か雲行きが怪しくなってきたと二人は感じた。少しずつ理由はこれ何では?と思い始める。
「お母さん何か謝ったりしてませんでしたか?」
「何かごめんなさいしてた。」
「それで?」
「お父さんも来てくれないって」
……あぁ、この子は捨て子か
二人はそう理解した。この状況から理解せざるをえなかった。
だが、問題が一つだけ解決していない。
人間は弱い生き物だ。育児放棄などよく聞く話で二人からすれば仲間を捨てるなどありえないのだが…
何故この子はこんなやり方で捨てられた?
何故この子は?
文の脳裏に人間の里で聞いた噂が蘇る。
"この里には呪われた子がいる"
"不幸を招く者"
"人に化けた妖怪"
などと呼ばれている子供がいる事を
そしてその子供が、関わる事も危険で自分たちで殺すのも危険などと言われている事を
文の中で一つの答えが導き出された。
それは、考える事も苦になるほどの物だった。
"人間の方が妖怪と呼ばれるにふさわしい"
そう、自分たち天狗は死刑執行者に利用されそうになったのだと。
天狗の閉鎖的な考えを利用し、侵入者に対しての行動を理解した上で
人間はなんて愚かなんだ。
何事に対しても飄々とした対応を取り滅多に怒らない文であったが、今回のこの件に関しては許容を超えるものがあった。
「椛…人間の里の道までに夫婦と思わしき男女はいますか?」
「一組います。けど…」
文さんなんでそんな事を聞くんですか?
その短い言葉を言い終わった時には文は目の前から消えていた。
文は全力で空を駆ける。そしてあの少女の親を見つけるや否や土煙と轟音を立てて着陸した。
「な、なんだ!?」
「ちょっとすいません。私、ブン屋をやっている射命丸という者なんですが、先ほど迷子の女の子を見かけまして何かご存知ではありませんかね?」
「そ…それは私の娘だ」
「そうですか…」
「?」
「あなたたちのような人間が嫌いですねえ。私達を使ってあの子を殺そうとしたでしょう。」
「お前に何がわかる!あの子はうまく生きてはいけないんだ!あの子は不運でいつも何かに巻き込まれる。里の者からは疎まれ、蔑まれる。俺だってなんとかしたかった。けど出来なかったんだ」
「博麗の巫女に預ける事もできたはず。」
「あれは人間がなんとかできるものじゃない。」
「じゃあ、八雲紫なら。幻想郷のすべてを愛する彼女なら快く引き受けてくれたはずです。」
「妖怪の元なんかに行ってあの子が幸せになれるわけがないだろう」
「じゃあ何で妖怪の山に」
「死んで生まれ変わるのがあの子の為になるからだ!」
その言葉が文の耳に入った時。文は湧き上がる激情を抑えることができなかった。
「ふざけるな!そんな理由で人を殺すな。ただお前らが里で生きていくのが辛くなっただけだろう。それも輪廻転生を信じておきながら、自分の手は汚したくないときたものだ…私達はあの子を殺さない。あの子はには生きる権利がある。妖怪は呪いなんぞ恐れない。あの子は私が育ててみせます」
「お前なんかに妖怪のクズに育てられるわけがないだろうが!簡単に人間を殺し食べるお前らなんかに」
「…私は一度も人を殺したことはないですけどね。ただ今回が一度目になりそうだ」
文がゆらりと揺れながら、ふふふと笑うと文を中心にして激しい風が巻き起こった。
これが、文の能力"風を操る程度の能力"
起こった風が木々を激しく揺らし、文の髪を逆立て、文の怒りそのものを表したかの様にも二人には思えた。
「あと一言でも言葉を発したら殺します。最後にあなたたちの大切なものを一つずつ渡して、この場を立ち去れ!!」
二人はコクコクと首を縦にふると、男は懐中時計、女はブレスレットを文に手渡すと逃げる様に立ち去っていった。
一方その頃椛達はこんな会話をしていた。
「お姉ちゃんってわんちゃん?」
「わ、わんちゃん!?私は白狼天狗。犬じゃなくて狼です」
「あ、ごめんなさい。狼さん」
「大丈夫ですよ。あと私の名前は犬走椛です」
「私の名前は、花だよ!」
「ちなみにもう一人のお姉ちゃんの名前は射命丸文って言うんですよ」
「変な名前ー!」
「変な名前ですねー」
「あややや、陰口をいう様な子に育てた覚えはないんですけどねえ」
突然の文の登場に戸惑う椛は答える。
「別に文さんに育ててもらったわけじゃありません!って文さん!?どこに行ってたんですか?」
「ちょっと用事を済ませてきたんですよ。えっと花ちゃん、私はお母さんとお父さんから花ちゃんを育てる様にと言われたんです」
「お父さんとお母さんが?でもそんなこと言ってなかったよ?」
「ちょっあやs…もがっ」
椛が口を挟もうとするのを文は制し、こう続けた。
「これが証拠です。これを見せればわかるということだったので」
文は先ほど強奪した二つの品をポケットから出し、花に手渡す。
「あ、これお父さんとお母さんがすっごく大事にしてた物だ!ってことはお姉ちゃん本当なの?」
「ええ、本当です。それと山で暮らしていくには名前を変える必要があるんです。」
勿論、山にそんなルールはない。文が身勝手とけじめとして言っただけだ。
あの夫婦のつけた名前で少女が生き続けるのは耐えらなかった事。
そして一番の理由は名前をつける事で、この子は私が育てていくという思いを固め失わない様にするという理由があった。
「でも、そんなこと言われてもわからないよ」
「あなたの名前は、繊月の見えるこの時間に出会った。そして出会ったのは私と椛、その全てを受け入れ、全てを受け入れる幻想郷。だからあなたの繊月文樺何てどうでしょうか?」
「せんげつあやか?」
「ええ、そうです」
「よくわからないけど、お父さんとお母さんがそう言うなら行こうかな…?」
「ようこそ、妖怪の山へ。さあ、私の手をとっていきm…」
そこで、文は言葉を切った。そして息をすっと深く吸い言い直す。
もう新聞記者と射命丸文ではなく山の天狗射命丸文、仲間として接するのだから…
「さあ、私の手を取って!行くわよ!」
敬語ではおかしいでしょ?
「うん!」
「はぁ、あとで怒られても知りませんよ文さん…」
これが東方想造記の1ページ目にかかれた物語。
三人の少女の出会いである。
作品が可哀想。
地の文も不足がちで、描き方も淡々というよりは単調でどうにもテンポが悪く感じるのがまた辛い
もうちょい話全体を俯瞰しての整合性を取りつつシーン毎の肉付けを盛ってみるのはどうでしょう
PS.ここでの評価は唐辛子も甘く感じるくらい辛口なものが多いので創作の上で凹むこともあるかと思いますが、できればメゲずに続けていただきたいです。
せっかく物語を書くという楽しみを見つけられたのに、それを放り出してしまうのはあまりにもったいない。
そうすれば、少女が周囲の人間から疎まれる、果ては実の両親からも見捨てられる、という部分に多少なりとも説得力が生まれると思う。
また
少女自身は自分の周りで起こる不思議な出来事に対して、どう思っているのだろうか?
両親に言われるがまま、訳も分からず、妖怪の山の麓までひとりで歩き続ける事に対しての疑問、心細さからくる恐怖といったものは無かったのだろうか?
突如として目の前に現れた天狗達に対する警戒心といったものは無かったのだろうか?
両親に頼まれて貴女を育てるように言われた、という射命丸文に対しての拒絶感、それでも尚、両親の元に帰りたいという気持ちはまるで無かったのだろうか?
この辺りの心理描写が不足している、あるいは納得のいく心理的背景が不足している為、現状だと、どうにも少女に対して無機質で機械的な印象を受けてしまい、感情移入をするのが難しいと思う。
飽くまでも、この物語は少女を主軸として進むのだろうから、少女に関する描写はもっと増やして良いと思う。書くのが面倒だと思うかも知れないが、この少女が沢山の人達に受け入れられるかどうかは、この少女の事を誰よりも知っている作者の力量にかかっているのだから、面倒臭がらずに頑張って欲しい。
最後、物語に関してだが
ふたりの天狗と少女はこれからどういった暮らしをしていくのか、また、舞台が妖怪の山という事もあって、文や椛以外の天狗達、河童や山に住む神様達なども登場するのだろうか、といった先の楽しみがあり、今後の展開に期待出来る部分があると思う。
そういった期待を込めて、今回はこの点数を入れさせて貰った。
登場キャラの両親と同じというと、他人任せという事でしょうか?
確かにそう言う部分があったかもしれません。
自分が書いてるだけでは、わからない部分を指摘してもらえたらと思ってましたので…
不快な思いをさせてしまってすいませんでした。
自分でもよく考える事にします…
コメントありがとうございました。
描写を表す少なさというと、キャラの行動や風景諸々ですか……
文だけを見て目に浮かぶくらいのものを書き上げる。これを目標にやっていきたいと思います。
それに合わせ矛盾などが発生しない様に話を練り上げ、アップダウン……話を盛り上げるところは盛り上げるといったような読者さんに飽きられるような事はないようにしていきいきたいです。
PS
実はここのサイトに投稿したのは厳しいコメントを貰いたかったからなので、願ったり叶ったりです。
豆腐メンタルなのでメゲる可能性はありますけど、逃げるつもりはありません!
これからも応援よろしくお願いします。
期待に応えられるように頑張ります。
コメントありがとうございました
はい。文樺の生い立ちなどは、物語を進めていくのに応じて、出していければいいなと思います。
一応、文樺が自身がどう思っているのかというのは考えてありますのでお楽しみにです。
投稿時に少し強引だったかな?程度の考えだったのが指摘をされて初めて、事の重大さに気づきました。
考えれば考えるほど何て文樺に行動に謎が生まれてしまってますね……
本当にありがとうございます。気づかせてくれてありがとうございます。
これからも文樺と文が主軸でやっていきたいと思ってますので、もっと文樺の行動を想いを文に乗せて表していけたら思います。
物語はまだぼんやりとしか考えていませんが、山の妖怪に合わせいろんなキャラクターを登場させる予定です。
最後に期待に応えられればと思います!!
裏切らないように頑張ります。
これからも応援よろしくお願いします。
コメントありがとうございました!
文の性格も幼女の性格もこのままでいいと思います
そっちのが個人的に興味深いですから
んでこれも個人的な考えで恐縮ですが
歴史やらを見るに文章というのはすべて重い意味があると思っています
それは書き方は勿論、そもそもあえて書くか書かないかという点も大きいと思います
マスコミ批判に使われる書かない自由書く自由というやつですね
古今東西色んな書物に共通することはこの書く自由書かない自由を大変巧妙に行使していることです
それからそれらをどのようにして書くかですかね
ですから書く書かないは大事な作者の選択肢であると思いますし、その読み物の肝のひとつだと思います
何を書くか書かないかという選択肢と
書くならどのように書くかという選択肢
それらを選択することが文章を書くということだと勝手に私は思ってます
じゃあそれらが意味するのがなんだというと身も蓋もない話ですが世の中結局敵か味方かだと思うので読み物の意義を突き詰めれば何をどれほど愛すべきか何をどれほど憎むべきかの塩梅を主張することであると私は勝手に思ってます
クソ長々しくなってしまいましたが何がいいたいのかというと作者さんの好きにしたらいいと思います
勿論好意的な意味で