「やあ、やあやあこれはこれは。ようこそ夢の世界へ。いらっしゃいませ、歓迎しますよ」
「サグメ…そう、稀神サグメさんでしたね?」
「ええ、ええ。警戒されるのも無理はないですが、至極簡単なことです」
「単にここが夢の中で、私はここを管理している。というそれだけのことです」
「何者か、と問われるのであればこうお答えしましょう」
「私はドレミー、ドレミー・スイート。」
「少しばかり夢を管理しているだけの、しがない獏ですよ」
獏はそう笑って、一つ指を鳴らした。
――どこが地面かも分からぬような白い世界に、テーブルと椅子が2組ばかり現れていた。
「まあ、お掛けになってください。聞きたいこともあるでしょうし、ね」
そうして、獏と白鷺が向かい合うことになった。
獏は何が可笑しいのやらにこにこしていて、白鷺の方はきょろきょろと辺りを見渡している。
「ああ、これはいけない。私としたことが」
「せっかくお持て成ししようというのに、こう殺風景ではね」
「そうですね、あなたの見慣れているものにしましょうか」
獏は笑顔のまま、今度は手を鳴らす。
パッと映像が切り替わるように、辺りは星空になっていた。
感嘆するかのように、思わず声を漏らした白鷺はしかし、己の口を手で塞いだ。
その顔色は決して良いとは言えず、まるで自分が喋ったことで何か良からぬ事が起きるのではないかと心配するようだ。
「そうでした、そうでした」
獏は言う。
「貴女のその能力。その厄介な力――ここでは使えませんから」
「なにせ此処は夢の中。いくら寝言を喚いたところで、それは現となり得ない」
「ですから、お好きなように喋っていただいて構いませんよ」
獏は、言う。
相も変わらずへらへらした笑みで、しかし真剣な色をしたその瞳を向けて。
「なに、難しいことを言っているんじゃありません」
「それともこう言った方がいいですかね」
「……私とお喋りしませんか?」
にこり、と今度こそ獏は微笑んだ。
ゆらりと揺れる尻尾と共に、白鷺の心もゆらゆら揺れる。
やがて意を決したように一つ羽ばたきをするまで、獏は笑ったままだった。
「………私は稀神サグメ。よろしく、ドレミー」
「! ええ、よろしくお願いしますねサグメさん」
…白鷺と獏の友好は、握手から始まったのだという。
そうして、秘密のお茶会が開かれるようになった。
時刻は真夜中、チケットは微睡みの中で。
目覚めの時は…まだ来ない。
「サグメ…そう、稀神サグメさんでしたね?」
「ええ、ええ。警戒されるのも無理はないですが、至極簡単なことです」
「単にここが夢の中で、私はここを管理している。というそれだけのことです」
「何者か、と問われるのであればこうお答えしましょう」
「私はドレミー、ドレミー・スイート。」
「少しばかり夢を管理しているだけの、しがない獏ですよ」
獏はそう笑って、一つ指を鳴らした。
――どこが地面かも分からぬような白い世界に、テーブルと椅子が2組ばかり現れていた。
「まあ、お掛けになってください。聞きたいこともあるでしょうし、ね」
そうして、獏と白鷺が向かい合うことになった。
獏は何が可笑しいのやらにこにこしていて、白鷺の方はきょろきょろと辺りを見渡している。
「ああ、これはいけない。私としたことが」
「せっかくお持て成ししようというのに、こう殺風景ではね」
「そうですね、あなたの見慣れているものにしましょうか」
獏は笑顔のまま、今度は手を鳴らす。
パッと映像が切り替わるように、辺りは星空になっていた。
感嘆するかのように、思わず声を漏らした白鷺はしかし、己の口を手で塞いだ。
その顔色は決して良いとは言えず、まるで自分が喋ったことで何か良からぬ事が起きるのではないかと心配するようだ。
「そうでした、そうでした」
獏は言う。
「貴女のその能力。その厄介な力――ここでは使えませんから」
「なにせ此処は夢の中。いくら寝言を喚いたところで、それは現となり得ない」
「ですから、お好きなように喋っていただいて構いませんよ」
獏は、言う。
相も変わらずへらへらした笑みで、しかし真剣な色をしたその瞳を向けて。
「なに、難しいことを言っているんじゃありません」
「それともこう言った方がいいですかね」
「……私とお喋りしませんか?」
にこり、と今度こそ獏は微笑んだ。
ゆらりと揺れる尻尾と共に、白鷺の心もゆらゆら揺れる。
やがて意を決したように一つ羽ばたきをするまで、獏は笑ったままだった。
「………私は稀神サグメ。よろしく、ドレミー」
「! ええ、よろしくお願いしますねサグメさん」
…白鷺と獏の友好は、握手から始まったのだという。
そうして、秘密のお茶会が開かれるようになった。
時刻は真夜中、チケットは微睡みの中で。
目覚めの時は…まだ来ない。