正邪の腕の中で、少し眠たそうに、針妙丸がつぶやく。
「雨、止まないね」
その甘えた声を聞いて、正邪は思う。
(雨なんて、どうでもいい)
しかしながらこれはヒメにとっての精神的な後戯なのであって、ならば、できるだけ相手をしてやりたい。
そんな気持ちにさせられてしまう自分が、正邪は少しだけ悔しい。
だから正邪は、秘かにふてくされる。
「雨が止むまで、こうしていればいいだろ」
ぶっきらぼうに、普段は装っている敬語を脱ぎ捨てて。
しかしそれでもなお、どうしても声にこもる火照りと優しさ……結局はそれらを隠しきる事ができず、正邪はそんな自分がまた、悔しいのだ。
(ワタシはどうして、こんな風になっちまったんだ)
そういう後悔の念みたいなものは今でも確かにある。けれど、布団に横たえた己の裸体には深いよろこびの余韻がありありと残っているし、吐く息も熱ければ、身体もまた、熱い。
ああ、これが『幸せ』というやつなのだろうか……。
そういう馬鹿な事を考えたせいだろうか。
ふいに、針妙丸への想いが溢れた。
「……っ」
悶え狂いそうになる衝動を必死に抑えながら、正邪は、
「ヒメッ」
ようやくしぼりだしたその一言にありったけの想いを詰め込んで、針妙丸を強く抱く。
雨なんてどうでもいい!
他のことなんてどうでもいい!
今はそんなことよりも……!
……しかして針妙丸は、正邪の腕の中で満足気に一度、喉を鳴らすだけだった。
正邪はそれが、ちょっぴり不満である。
(こいつ、それだけかよっ)
なぁヒメよ、ワタシがいったいどれほどの重みでもって自分の気持ちを表現しているのか、お前、ちゃんとそこらへんを分かってくれているのか? いいかお前、私は……天邪鬼なんだぞ!? そのワタシがお前こんな……畜生、分かれよ! もっとこう、何かいっぱい返事をしてくれよ!
というように恨めしく思ったところで、呑気な針妙丸の前では先なき事であり、ましてや正邪は自分のそんなセンチメンタルを本当は認めたくないから、正邪はいつまでたっても針妙丸にそれをねだれない。こうして正邪は、こんな関係になった今でさえ、一人もんもんと鬱屈するのである。
そして針妙丸は、正邪が忌々しく思う所の呑気さで、また笑むのだった。
「えへへ、せーじゃ」
腕の中の針妙丸の、笑んだ声。正邪はもう、こんな時どうすればいいのか分からない。そんな正邪の内的な嘆きを、やっぱりこのヒメはまったく知ったこっちゃない。
「正邪、私もこうしていたいよ。でも……お腹がすいたら、ご飯は食べたいなぁ」
「……何だそりゃ」
「うひひ」
「……ハァ」
なんだかもう、気が抜けていく。
こういう意味のない会話を、針妙丸はとても楽しそうにする。針妙丸はそういうとき心底幸せそうである。だが、正邪はそれでは不満なのだ。もっとこう、お互いの心をぐちゃぐちゃにかき混ぜあうような、エグイ会話がしたい……。
しかし、そんな事をこの天邪鬼が、どうして打ちあけられるだろう。
そういったもどかしさをかき消すためか、あるいは、仕返しのつもりか……自分でも定かではないが、とにかく、正邪は腕に力を籠め、針妙丸の身体を己の身体に同化させんばかりに強く抱きしめた。
「ん、正邪ぁ……」
小槌の魔力を失ったヒメの肉体はそれこそ「人形」ほどの背丈しかないくせに、しかしその身体もまた正邪と同じように熱く、一生懸命によろこびを示している……正邪はそれも含めてまた、もう、本当に、何もかもがたまらなくなる。
こんな時、生まれついてのアマノジャクはもはや死にたえてしまったのかもしれないと、なんだか呆然としてしまう。その事にどういう意味があるのか、正邪はまだ、答えを持っていない。
そんな正邪の胸骨の辺り、針妙丸が全身をぎゅうぎゅうと押し付けられながら、不敵に笑った。
「だけど正邪、朝になったら、霊夢が帰ってきちゃうかもしれないよ?」
それは、針妙丸の挑発である。霊夢にこんな所を見られたら正邪はどうする?、と。
しかし正邪は、奇妙な冷静さと自信でそれを一笑に伏した。
「ふん、ヒメはお馬鹿さんだな」
「なんだとぉ?」
「だって、こんなどしゃ降り、霊夢だってわざわざ帰って来やしないだろ」
ヒメに反撃をするのは何にもおいて小気味が良い。こんな時は、なんだかかつての己が蘇ったようで、とても気分がいい……しかしながら、なんだか自分が雨を望んでいるみたいもに思えてきて、正邪はまた急に恥ずかしくなる。己の心の振動に揺さぶられ、正邪は余計にたまらなくなって、今度は、ヒメの小さな身体を両の手の平でゆるやかにすくい上げると、己の鎖骨にぎゅっと押し当てた。そうして、ぐりぐりと、イジメようとする。けれども、ヒメの肉はとても柔らかくて擦れる肌がとても心地良く、そうするうちに、イジメが、イジメじゃなくなってしまう。心が落ち着いてきて、その安心をさらに欲して、自分はヒメをより強く感じようとする。針妙丸もとっくに、体を餠のように柔らかくさせて、こねられるがまま気持ちよさそうに惚けている。
「この無礼者めぇ……だけど、そうだねぇ、正邪の言う通りかもね。雨……止まないといいなぁ……」
「……ふん。だから、止みやしないって言ってだろ、おバカさん」
「えへへ、そっか」
「……」
「ふふふ」
「……ちっ」
「舌打ちだめー」
「うるせぇ」
正邪はそれでもう、足掻くことを止めてしまったのだった。
今宵---二人の裸体は寝具の上にあられもなく、しかし夜のとばりが、それを包み隠している。
幻想郷の空は分厚い雨雲に隠されて、月星々の輝きはすべて失われ、大地に注ぐは暗闇と雨粒ばかり。二人のいる部屋もまた深い闇の底にしずみ、互いに知覚しうる世界は、外の激しい雨音と彼我の肉体から発っせらるる諸々の欲望それのみである。
その臭いにひかれ、正邪は今また再び、ヒメの身体を、食む。
左の上半身を、肩からがっぷりと咥えて、ハぐハぐとついばみ、歯はあまり強く立てず、唾液をたっぷりと塗りつけて、滑りをよくして舌で這う。
「やぁ……」
針妙丸が、身体をよじらせ、くすぐったそうになまめかしく悦ぶ。
ヒメのそんな嬌声を耳にすると、正邪はもう、我慢ができなくなる。それがイケナイのだと、ずっと前から自分でも分かっているのに……。
「もう……また私、正邪のツバだらけになっちゃう……」
その言葉に灼熱し、より激しく、ヒメをしゃぶる。
そうして自分は、信じられないような音を立ててしまっている……。そんな自分があまりにもアレで、正邪の一部はふと冷静になり、普段の敬語を思い出した。その一方で、ほとばしる身体はもう抑えようがなく、正邪は精神と肉体の不思議な不和に直面する。
「後でまた……風呂に入れてあげますよ」
「身体、洗ってくれる?」
「ええ、綺麗にしてあげますとも」
「約束だからね、せい、じゃ……んっ」
欲望に身をまかせ、舌が求めるままにヒメを味わう。視界の効かない暗闇の中で、舌先にあたる肉の感触をたよりに、いろいろな所へと。
(ヒメの、身体)
そういう「言葉の認識」が、確固たる力を発揮し、正邪を狂わせる。
そうなってくると、むしろもう光なんていらない、正邪はそんなふうに思う。視覚という巨大な知覚情報が失われたその時、背後に隠れていたより原始的な諸感覚達が、闇の中で猛然と輝きはじめる。光の影に追いやられていたそれらの姿の、なんと巨大なことか。熱く激しい吐息、擦れあう敏感な皮膚、鼻の奥を犯す穢れた臭い、多種多様な体液の繊細かつ濃厚な味わい……ヒメの小さな身体に隠されたそれら遥かな世界。そういう秘密の領域を明かしあい、与えあい、つぶさに確認しあう。一時、二人の意識は互いの存在のみに向けられて、他の一切を認識の外へとはじき出す。よろこびが、遥か高みを目指して少しづつ少しづつ積み重ねられてゆき、最終的には激しい新星となって、何もかもを吹き飛ばしてゆく。そうしたあとに残されるのは、あらゆる不純物が取り除かれ、極限までに純化された深いよろこびただそれだけ。それは、桜舞う春の晴天の、その優しい陽光のもとで温かな湯舟にまどろむような魂の解放……それに達したとき、正邪の心身は、どこまでも浄化されてゆくのだ。
(……ワタシにも、こういう時間がある)
、
驚きともおかしみともつかない、不思議な気持ち。己の心にこびりついた価値基準が全て洗い落とされて、純粋で透明なありのままの感情のみに包みこまれているような、とらえどころのない感覚。
(それをワタシに与えているのは、ヒメ、やっぱり、お前か。何もかもを、お前はワタシに与える)
ヒメの身体を口から引き出し、唾液に濡れたその体を掌におさめ、まこと小さなその頭を、指の背で優しく撫でる。柔らかい髪の毛のサラサラとした感触が、虚脱した五感覚の中にあっては特に際立ち、その心地よさに愛撫が止まぬ。
「ん、正邪……気持ちいいよ……」
裏切り者のヒメとの、久しい逢瀬。異変に失敗して以来の、何日ぶりだろうか。会えない間、やはり知らず知らずに溜まっていたものがあったのか、心の内のそういう淀みが、今、すっかり洗い流されたように感じる。
(なぁ、昔のワタシよ……今のワタシをどう思う?)
まどろみのなかに遠い己の姿を探る。本当にもう、ずいぶんと遠くなってしまった、かつての自分を。
……今宵、博麗神社は雨の中。巫女は留守にて戸締りもせず。忍び込んだはアマノジャク。それは一匹……あるいは二匹……。
いつの間にか眠りに落ちていたらしく、正邪は目覚めた。まだ部屋は暗く、雨音もやまない。
ほっぺたに、もたれかかる針妙丸の肌を感じた。
その針妙丸が、正邪の目覚めに合わせるように、呟いた。
その言葉は、夢の続きかと錯覚するほどに、唐突だった。
「正邪。私と一緒に……死の?」
「……は?」
正邪は寝ぼけたまま、怪訝に応答する。
「ね、死の……? 私と一緒に、死の……?」
繰り返される針妙丸の言葉は、本当に、夢ににじんでいるように感じられる。
何度かその言葉が繰り返されたのち、ヒメは満足気に、何かをかみしめるように黙り込んだ。
(……うん)
正邪はわけがわからないのに、それなのに……なぜか、心が晴れていくのを感じている。
ヒメの言葉も自分の心も、まったく、何もかもワケがわからない。
だけど、針妙丸といると時々そういう体験をさせられる。ヒメの言葉は意味不明なのに、なぜかそれを受け取った自分の心は晴れているというような。
たぶん、己の心はすでに答えを知っているのだろう。それを理解をしているのだろう。ただ頭だけが、このまどろっこしい脳みそだけが、現象の把握に追いつかない。
だからこそ「言葉」があるのだろう。
そういう不思議を正邪に教えてくれたのもまた、針妙丸。
(いったいなんなだ、お前は)
針妙丸がどんな魔法を使ったのか、正邪には分からない。しかし事実として心には穏やかな風が吹いている。むしろ、しばらくはこのままそれを感じていたい。けれど、そうはさせてくれないのだ。ヒメは。
「正邪はね、一生下剋上なんてできないよ。だって正邪は、弱いもの」
ほらまた……勝手に……聞いてもいないのにペラペラとおしゃべりを始める……。
正邪は頭を起こして片肘をつき、演説を続ける針妙丸に目を向やる。口もとには、わずかに笑みが浮かんでしまっている。
「言ってくれますね」
「なのに、正邪はそれでも、死ぬまで下剋上をあきらめないんだよねぇ」
「当然でしょ」
正邪は初めから、ヒメの戯言に付き合うつもりはない。論理を追う気も無い。だから、そうか、そうか、と適当に相槌をうっている。無為な時間。けれども何か、とっても心地良い時間。
「正邪には困ったもんだねぇ。だけども私は、しかたがないから、そんな正邪にずっと力を貸してあげ続けるの」
「へぇ、ありがたい」
「もちろん、幻想郷のみんなとも仲良くやっていくつもりだよ」
「ヒメは器用だな」
「えっへん。でね、そんな日々が、きっと、ずーっとずーっと続いていくんだよ。私は正邪と一緒に異変をやって、失敗したら、またみんなに謝って……。そしたらきっと、皆は私を許してくれる。で、私はこうしてこっそりと正邪と会うの」
「なんつーか、自分勝手なやつ」
「だって、私にはもうそれができるもの!」
「あぁそうですか」
「だからね、さっきも言った通り、そういう幸せな未来はもう決まってるんだよ!」
「……そうかなぁ」
「そうなの! だけどね? もしかすると、もしかするとだよ? 正邪と私がケンカ別れしちゃう未来も、あるかもしれないでしょ?」
「幸せな未来は決まってるって、さっき言いませんでしたっけ?」
「あげ足をとらない! とにかく、それってすごく悲しいでしょ? だからワタシにとって……今がもう一番幸せってこと!」
「さいですか……うっ? ……!?」
その時、何か、満たされていなかったものが突然心にドッと流れ込んできたように感じられて、正邪はそれ以上は返事ができなかった。もし口を開けば、心の中のヨダレというか唾というか、そういう誰にも見せた事のないような恥ずかしいものをびちゃびちゃと飛ばしてしまいそうだったから。
「だからね正邪、わかるでしょう? 今一緒に死ぬのが、二人にとって一番幸せなんだよ! だから、一緒に死のっ! あはは、ねぇ死んでよぉ!」
心底幸福そうに笑って、正邪の唇にどかんと頬をぶつけて。
正邪はしばし呆然としている。自分の唇にチュッチュチュッチュと頭をこすりつけてくる針妙丸をなすがままにして。その呆然が過ぎ去った後、少しして冷静になってみると、正邪はなんだか、呆れた。
(……こいつは、そういう事を本気で言っているのかな)
本気で言っているとしたら本物のバカだし、仮にそれが喜びの表現の一種であるとしても、やっぱりそれはバカだろう。もとよりまともに取り合うつもりはなかったが……なのにそれでも、結局相手をしてしまう自分がいた。
「ヒメ、あんたってやつはねぇ」
「きゃっ……!?」
針妙丸の身体を両手で布団に押しつけ、その非力な裸体の、自由を奪う。
「あんたは本当に、おめでたいやつだなぁ」
顔全体で覆いかぶさるように、針妙丸の何もかもをじっと睨みつける。部屋は暗い。が、こうまで目を近づければ、相手の姿も一応は見通せる。
針妙丸は酔っぱらったようなうつろな笑みで、口をぎゅっとすぼめたまま、押さえつけられるままに正邪を見あげている。まるで、正邪の与えてくれる何がしかの言葉を、よだれを垂らして今か今かと待っているような。
その欲しがりやな姿にあてられたのか、正邪は、突然に興奮する。
「ヒメは、頭の中の妄想に浸ってそれで満足ですか? それで死んでしまって、本当にいいんですか? ……なら、お前、バカだろう」
罵ってから、針妙丸の頭部にかぶりつく。頭のてっぺんから首元まで、かっぷりと口に含む。
「むぐぅ!?」
吸う、吸う。
こいつめ、このバカめ!
このおバカなおつむを、どうしてやろう!
口ので、ちゅうちゅうと、ヒメの小さな頭を、唇も、鼻も、耳も、顎も、髪の毛も、すべてを舌で擦りつくす。口の中の唾液に針妙丸の味がしっかりとしみ込んだのを確認してから、ペッと針妙丸を吐き出す。
ちょっと、長くやりすぎたかもしれない。
「……ぷはぁ」
だけどもヒメは文句も言わずに黙っている。涎まみれの額に髪を張り付かせながら、うるんだ瞳でさらなる期待をこめて赤らみ顔で正邪を一心に見つめている。
そのようなヒメの無言のおねだりこそ、非常に激しく、正邪を昂らせるのである。
「……っ」
正邪は、ふいの恍惚に嘔吐しそうになる。ぐわあんぐわあんと、胸の奥で何かが膨張と収縮をくりかえしている。
たまらず正邪は、針妙丸をひっくり返し、その小さなお尻に噛みついた。と同時に、タコの吸盤のように吸いつく。
唇で吸い、歯ではぐはぐと食む。そのあいまには、獣の熱い息を吐きかける。
「やぁっ……!」
「ふは、ははは…」
針妙丸をもてあそんでいると、やはり自然と、気持ちが狂う。
「ワタシが見せてやるよ。いっぱいいっぱい、ヒメに教えてやる。知ったかぶりのお前に、ワタシが本物のよろこびを与えてやる!」
針妙丸は口もとを布団に押さえつけられて喘ぎつつも、興奮した声で、
「なら、私はずっと……正邪と一緒に異変をやってあげる!」
「言ったなぁ……! ……お?」
ふと……正邪は、ふに置落ちないものを感じる。なぜかと考えてみれば……
(そうか。異変の時だけじゃない。ワタシはもっと、ずっと一緒に、ヒメと……)
子宮が疼き、留まることをしらない欲望が肉を蹴破ろうとする。
が、
(今はここまでだ。今は、これでいいんだ)
それでよい。あまりにも一気に心を解き放つと、自分の心の中のアマノジャクが完全に死んでしまうような気がした。それでなくても、もうその一部は殺されているのだ。
自分は昔ほどもう、純粋ではなくなってしまった……。自分にとっての生涯の悦びは、下剋上ただそれだけであったのに……。
そのような考えに至ると、思い出したように、正邪はふいに怒りを覚える。
(このやろう、よくもワタシを……!)
湧き上がるその怒りは、自分でも意外なほどに強かった。感情というやつは実にやっかいなものだ。出どころは曖昧なくせに、その存在はとてもはっきりとしているし、すさまじい圧力を伴っている。
(責任、とりやがれよ!)
正邪はゆるやかに錯乱し、針妙丸を仰向けにさせると、少し強めに、針妙丸に噛みついた。今度は胴体に、ばっくりと。
「ヒメ……口ばかり達者な愚かなヒメめが!! 分かったつもりで、偉そうにっ!」
ヒメを罵倒することのなんと心地良い事だろうか。
そのまま獣欲に浸ってしまいたい。
しかし針妙丸は、こういう時に限ってとんでもなく頓珍漢な事を言って正邪を笑わせるのだ。
針妙丸が突然、発狂する。
「そうだよ私はバカだよ! 何もしらない世間知らずなおヒメ様……。だけど、それでよかったのに……むしろ姫としてそうあるべきだった。なのに……正邪のせいだよ! 正邪がいなければ、私は悪い事なんかできなかった! 自分勝手に生きる事がこんなに楽しいんだなんて、知らずにすんだのに!……許さないんだから……正邪っ、責任っ、とってもらうからねっ!」
聞いて、正邪はたまらず噴き出してしまう。
「……ぶははっ!」
針妙丸が目を丸くする。
「な、なに?」
「だって、責任をとれって……ええ? どの口が……あははっ」
「え、えぇ……?」
笑いがもう、止まらない。笑っても笑っても、あとからあとから衝動が噴き出してくる。
お前ってやつは!
あんたってやつは!
私を殺しておきながら……!
よくもそんな事が言えたものだ……!
「え、えと、え……?」
ヒメが戸惑い、それもまた可笑しい。
「ははは、ははは、ははははは」
まったくこんなにおかしいことは他にはない。いやはや、下剋上よりもおかしいかもしれない……。
そうして笑っているうち、正邪はとてもすがすがしい気持ちになってそういう素直な気持ちで、ヒメを犯したいと思ったのだ。
それは、とても気持ちのいい考えであった。
「まったく……あんたって奴はっ」
アマノジャクが今ふたたびその素直さでもって牙をむく。針妙丸の子宮を乱暴に引きずり出してやろうと計り、にもかかわらず、己の脳髄をやすやすと撫でまわされてしまっている惨め。その滑稽さから逃れようとして正邪は絶対的な手段を行使する。すなわち、二人の体格差が正邪に与える圧倒的な暴力によって、言葉の上での敗北をくつがえす---いや、その敗北さえをも、欲情を高める興奮剤へと転化させるのだ。こうして正邪の精神において、惨めな敗北は甘美な勝利へと鮮やかにひっくり返るのだ!
普段装っている敬語などはもはや微塵も残っておらず、暴力的な原始的衝動のみが正邪の体を支配する。
「口だけしか能のない、非力なチビめがっ!」
針妙丸を両手で握り、こんどは恵方巻でも食べるかのように気高いその二本の御足を付け根まで一気にくわえる。針妙丸の下半身をほとんど丸のみだ。そうすると針妙丸の足の先端は正邪の声帯に届く。だが正邪はいつの頃からか喉奥のヒダを針妙丸のつま先に刺激されても、もはや嗚咽を感じなくなってしまった。むしろその奇妙な感触が気持ちよくすらある。もはや肉体が針妙丸の体を受け入れてしまっているのだ。
舌先を、ヒメの足の隙間に、強引にねじ込ませる。
「ぁっ……!」
だがそれでもなお、ここに至ってもなお、針妙丸は姫としての態度を少しも損なわない。
その下半身を正邪に丸ごと食われながら気取った口調で高慢に言ってのける。
「ふふんだ、言ってくれるじゃない、この卑しいアマノジャクめえっ!」
演技がかったその滑稽な様。
しかし、
「……っ!」
今の正邪にとってそれはほとんど媚薬であって、この瞬間、正邪の脳の奥にある快感のたっぷりつまった袋がパァンと爆ぜる。袋にたっぷりと詰まっていたドロドロの快感液が正邪の身体中に飛び散って全身をびちゃびちゃにしてゆく。
針妙丸はそのようにして正邪の生存本能を満たし続けてくれる。ここに正邪にとって永遠の下克上が成り立つのである。下劣な欲望の炎が正邪の性的中枢を激しく炙り濃厚な肉汁を溢れさせる。それはどうしようもないほどに正邪の精神に深く組み込まれた根源的な悦びであって、そうして針妙丸という特殊な諸元によってもたらされた屈辱は正邪の精神回路に備わった独特の加工工程を経て官能的な高揚感へと変換さていく……。
「ぁぁっ……こ、のぉっ……!」
「あぎっ……!?」
正邪がひどく強めに噛みしめたから、針妙丸が苦悶の声を上げる。
本当に正邪が思いっきり噛みつけば、針妙丸の体は切断されてしまうだろう。当然そこまでするつもりはない。が、かといって、もはやアマ噛みでは正邪は満足できない。
「ふぅぅ……ヒメっ……ヒメぇっ……!」
一切の尊厳を奪われた針妙丸の無力な肉体にしゃぶりつき、舌という恣意的な器官でもって、容赦なくそのすべてを蹂躙する。舌とは根本的に捕食のための器官であり、捕食とは、強者と弱者の立場を絶対的に固定化しうる行為である。小さなヒメがどれだけ口が達者だろうが、心がドンと太かろうが、こうなってしまえばそんな威厳にはカスほどの重みもなく、生命の保証はその一切を下衆の獣欲に奪われる。正邪に浴びせられた全ての敗北は過去へと消え去り、今その手の中にあるのは絶対的な下剋上の輝きそれのみ。
が、それでもまだ……! 針妙丸は壊れやしない……!
半身を食われつつもその妖しい笑みは少しも衰えてはおらず、またその瞳には一切の恐れも戸惑いもない。妖しく光る眼差しでもって、あくまでも正邪の性根を貫き通している。
そういった針妙丸の精神こそが、正邪の下克上の果てしない循環を駆動させている……!
「正邪って本当に……かわいいっ……ああ、幻想郷のみんなにも、教えてあげたいなぁ……っ」
「こ……のォォォォッ!」
頭の奥と下腹部の奥と、その辺りにもまたパンパンになった水泡のような膜がありその中にもまたありったけの快楽液が封じられている。今それが、妙丸の鋭い眼光にプッと刺されて膜の裂け目から快感液がドロリと排出され、いな、噴き出した。瞬間、正邪は脳を突き刺す快感に襲われもはや声が抑えられなくなってしまう。
「ああああっ、あああああああああっ!」
……これだっ!!
ヒメのこれ! こいつが私をだめにする!
正邪は随分前からそれに気づいている。が、どうしようもないのである。
アヘン……ヒメは正邪にとってアヘンなのだ。
ヒメはかつてワタシを利用した。己の野心の隠れ蓑として私を利用しやがった。
そしてそれが失敗におわると、あっさりとワタシを捨てやがった。
そのくせこいつはまだワタシにお前を誘わせる!
今やワタシは、完全に中毒にさせられてしまった……。
(それなのに、それなのに……!)
涙で滲んだ視線の先にあるものを凝視して、正邪の股間が何度も何度もねじれていく。
正邪の凝視する先にあるのは……燦然と輝く、針妙丸の恍惚!
(ちくしょおおおおお!! 何ですかヒメのその顔は!? なんですかその気持ちよさそうな顔は!? なんでそんなにお前は嬉しそうなんだよ!? このワタシがこれだけ乱暴にお前を凌辱しているのに、なんでお前はそんなに気持ちよさそうに悦ぶんだよおおおお!? お前にそんな顔をされたらワタシはもう!!! もうっ!!!!! お前は!! この最っ高の、アマノジャクめがあああ!!!)
そうしてしゃにむに齧りつく度に、味が、汗が、味が、柔らかさが、熱が、体臭が、そして針妙丸の悲鳴が、正邪を喜ばせる。指をはみ、甲をはみ、手首をはみ、腕をはみ、肘をはみ、脇をはみ、肩をはむ、腕をはむだけでどれだけの時間がかかるのか。しかしまだまだ十分ではないし他にも食むべき箇所は膨大だ。顔も、胸も、尻も、股の中も、足の先までも、あらゆるところを噛んでやれねば気が済まぬ。この唾棄すべき自己中心的なヒメの全てを噛んでやらねば気がすまぬ。
しかしてそれでもなお! 針妙丸はまたそのあくなき精神的抱擁でもって正邪の無限の暴力に永遠にほほ笑み続けるのだ。
「はぶう! はぶぅ!! ふぶうぅぅぅ!!!」
今や正邪の感情の全てが爆発している。鼻水にまみれ、唾液にまみれ、涙にまみれ、ヒメを咥えたまま、それでもなお正邪は雄たけびを上げ続ける。
それは歓喜の咆哮なのであろうか
暗闇につつまれていた正邪の世界。正邪はこれまで遥か彼方の微かな光のみをたよりに生きてきた。
だが、今は違う。正邪のすぐ側に、すぐ隣に、手を伸ばせば簡単に手がとどくその近傍に、少名針妙丸という巨大な恒星が光輝いている。
彼女は正邪を満足させる。人生の喜びをあっという間に与えてくれる。かつて正邪がどれだけあがいても得られることのできなかった悦びの数々を!
敗北と反逆の途切れることのない連鎖、あるいは純情の果てしない循環、正邪の反逆欲は決して満たされることはなく強制的に掻き立てられ続けただ一時的にそれは針妙丸によって満たされるもののかつまた同時に針妙丸よって掻き立てられ続ける。
もし仮に……生命存在において肉体的欲求と精神的欲求の激烈な融合過程において生じる、あの一連の切なる感情を『愛』と呼ぶのならば……。
まぎれもなくこの瞬間、鬼人正邪は、少名針妙丸を、心から愛している。
「雨、止まないね」
その甘えた声を聞いて、正邪は思う。
(雨なんて、どうでもいい)
しかしながらこれはヒメにとっての精神的な後戯なのであって、ならば、できるだけ相手をしてやりたい。
そんな気持ちにさせられてしまう自分が、正邪は少しだけ悔しい。
だから正邪は、秘かにふてくされる。
「雨が止むまで、こうしていればいいだろ」
ぶっきらぼうに、普段は装っている敬語を脱ぎ捨てて。
しかしそれでもなお、どうしても声にこもる火照りと優しさ……結局はそれらを隠しきる事ができず、正邪はそんな自分がまた、悔しいのだ。
(ワタシはどうして、こんな風になっちまったんだ)
そういう後悔の念みたいなものは今でも確かにある。けれど、布団に横たえた己の裸体には深いよろこびの余韻がありありと残っているし、吐く息も熱ければ、身体もまた、熱い。
ああ、これが『幸せ』というやつなのだろうか……。
そういう馬鹿な事を考えたせいだろうか。
ふいに、針妙丸への想いが溢れた。
「……っ」
悶え狂いそうになる衝動を必死に抑えながら、正邪は、
「ヒメッ」
ようやくしぼりだしたその一言にありったけの想いを詰め込んで、針妙丸を強く抱く。
雨なんてどうでもいい!
他のことなんてどうでもいい!
今はそんなことよりも……!
……しかして針妙丸は、正邪の腕の中で満足気に一度、喉を鳴らすだけだった。
正邪はそれが、ちょっぴり不満である。
(こいつ、それだけかよっ)
なぁヒメよ、ワタシがいったいどれほどの重みでもって自分の気持ちを表現しているのか、お前、ちゃんとそこらへんを分かってくれているのか? いいかお前、私は……天邪鬼なんだぞ!? そのワタシがお前こんな……畜生、分かれよ! もっとこう、何かいっぱい返事をしてくれよ!
というように恨めしく思ったところで、呑気な針妙丸の前では先なき事であり、ましてや正邪は自分のそんなセンチメンタルを本当は認めたくないから、正邪はいつまでたっても針妙丸にそれをねだれない。こうして正邪は、こんな関係になった今でさえ、一人もんもんと鬱屈するのである。
そして針妙丸は、正邪が忌々しく思う所の呑気さで、また笑むのだった。
「えへへ、せーじゃ」
腕の中の針妙丸の、笑んだ声。正邪はもう、こんな時どうすればいいのか分からない。そんな正邪の内的な嘆きを、やっぱりこのヒメはまったく知ったこっちゃない。
「正邪、私もこうしていたいよ。でも……お腹がすいたら、ご飯は食べたいなぁ」
「……何だそりゃ」
「うひひ」
「……ハァ」
なんだかもう、気が抜けていく。
こういう意味のない会話を、針妙丸はとても楽しそうにする。針妙丸はそういうとき心底幸せそうである。だが、正邪はそれでは不満なのだ。もっとこう、お互いの心をぐちゃぐちゃにかき混ぜあうような、エグイ会話がしたい……。
しかし、そんな事をこの天邪鬼が、どうして打ちあけられるだろう。
そういったもどかしさをかき消すためか、あるいは、仕返しのつもりか……自分でも定かではないが、とにかく、正邪は腕に力を籠め、針妙丸の身体を己の身体に同化させんばかりに強く抱きしめた。
「ん、正邪ぁ……」
小槌の魔力を失ったヒメの肉体はそれこそ「人形」ほどの背丈しかないくせに、しかしその身体もまた正邪と同じように熱く、一生懸命によろこびを示している……正邪はそれも含めてまた、もう、本当に、何もかもがたまらなくなる。
こんな時、生まれついてのアマノジャクはもはや死にたえてしまったのかもしれないと、なんだか呆然としてしまう。その事にどういう意味があるのか、正邪はまだ、答えを持っていない。
そんな正邪の胸骨の辺り、針妙丸が全身をぎゅうぎゅうと押し付けられながら、不敵に笑った。
「だけど正邪、朝になったら、霊夢が帰ってきちゃうかもしれないよ?」
それは、針妙丸の挑発である。霊夢にこんな所を見られたら正邪はどうする?、と。
しかし正邪は、奇妙な冷静さと自信でそれを一笑に伏した。
「ふん、ヒメはお馬鹿さんだな」
「なんだとぉ?」
「だって、こんなどしゃ降り、霊夢だってわざわざ帰って来やしないだろ」
ヒメに反撃をするのは何にもおいて小気味が良い。こんな時は、なんだかかつての己が蘇ったようで、とても気分がいい……しかしながら、なんだか自分が雨を望んでいるみたいもに思えてきて、正邪はまた急に恥ずかしくなる。己の心の振動に揺さぶられ、正邪は余計にたまらなくなって、今度は、ヒメの小さな身体を両の手の平でゆるやかにすくい上げると、己の鎖骨にぎゅっと押し当てた。そうして、ぐりぐりと、イジメようとする。けれども、ヒメの肉はとても柔らかくて擦れる肌がとても心地良く、そうするうちに、イジメが、イジメじゃなくなってしまう。心が落ち着いてきて、その安心をさらに欲して、自分はヒメをより強く感じようとする。針妙丸もとっくに、体を餠のように柔らかくさせて、こねられるがまま気持ちよさそうに惚けている。
「この無礼者めぇ……だけど、そうだねぇ、正邪の言う通りかもね。雨……止まないといいなぁ……」
「……ふん。だから、止みやしないって言ってだろ、おバカさん」
「えへへ、そっか」
「……」
「ふふふ」
「……ちっ」
「舌打ちだめー」
「うるせぇ」
正邪はそれでもう、足掻くことを止めてしまったのだった。
今宵---二人の裸体は寝具の上にあられもなく、しかし夜のとばりが、それを包み隠している。
幻想郷の空は分厚い雨雲に隠されて、月星々の輝きはすべて失われ、大地に注ぐは暗闇と雨粒ばかり。二人のいる部屋もまた深い闇の底にしずみ、互いに知覚しうる世界は、外の激しい雨音と彼我の肉体から発っせらるる諸々の欲望それのみである。
その臭いにひかれ、正邪は今また再び、ヒメの身体を、食む。
左の上半身を、肩からがっぷりと咥えて、ハぐハぐとついばみ、歯はあまり強く立てず、唾液をたっぷりと塗りつけて、滑りをよくして舌で這う。
「やぁ……」
針妙丸が、身体をよじらせ、くすぐったそうになまめかしく悦ぶ。
ヒメのそんな嬌声を耳にすると、正邪はもう、我慢ができなくなる。それがイケナイのだと、ずっと前から自分でも分かっているのに……。
「もう……また私、正邪のツバだらけになっちゃう……」
その言葉に灼熱し、より激しく、ヒメをしゃぶる。
そうして自分は、信じられないような音を立ててしまっている……。そんな自分があまりにもアレで、正邪の一部はふと冷静になり、普段の敬語を思い出した。その一方で、ほとばしる身体はもう抑えようがなく、正邪は精神と肉体の不思議な不和に直面する。
「後でまた……風呂に入れてあげますよ」
「身体、洗ってくれる?」
「ええ、綺麗にしてあげますとも」
「約束だからね、せい、じゃ……んっ」
欲望に身をまかせ、舌が求めるままにヒメを味わう。視界の効かない暗闇の中で、舌先にあたる肉の感触をたよりに、いろいろな所へと。
(ヒメの、身体)
そういう「言葉の認識」が、確固たる力を発揮し、正邪を狂わせる。
そうなってくると、むしろもう光なんていらない、正邪はそんなふうに思う。視覚という巨大な知覚情報が失われたその時、背後に隠れていたより原始的な諸感覚達が、闇の中で猛然と輝きはじめる。光の影に追いやられていたそれらの姿の、なんと巨大なことか。熱く激しい吐息、擦れあう敏感な皮膚、鼻の奥を犯す穢れた臭い、多種多様な体液の繊細かつ濃厚な味わい……ヒメの小さな身体に隠されたそれら遥かな世界。そういう秘密の領域を明かしあい、与えあい、つぶさに確認しあう。一時、二人の意識は互いの存在のみに向けられて、他の一切を認識の外へとはじき出す。よろこびが、遥か高みを目指して少しづつ少しづつ積み重ねられてゆき、最終的には激しい新星となって、何もかもを吹き飛ばしてゆく。そうしたあとに残されるのは、あらゆる不純物が取り除かれ、極限までに純化された深いよろこびただそれだけ。それは、桜舞う春の晴天の、その優しい陽光のもとで温かな湯舟にまどろむような魂の解放……それに達したとき、正邪の心身は、どこまでも浄化されてゆくのだ。
(……ワタシにも、こういう時間がある)
、
驚きともおかしみともつかない、不思議な気持ち。己の心にこびりついた価値基準が全て洗い落とされて、純粋で透明なありのままの感情のみに包みこまれているような、とらえどころのない感覚。
(それをワタシに与えているのは、ヒメ、やっぱり、お前か。何もかもを、お前はワタシに与える)
ヒメの身体を口から引き出し、唾液に濡れたその体を掌におさめ、まこと小さなその頭を、指の背で優しく撫でる。柔らかい髪の毛のサラサラとした感触が、虚脱した五感覚の中にあっては特に際立ち、その心地よさに愛撫が止まぬ。
「ん、正邪……気持ちいいよ……」
裏切り者のヒメとの、久しい逢瀬。異変に失敗して以来の、何日ぶりだろうか。会えない間、やはり知らず知らずに溜まっていたものがあったのか、心の内のそういう淀みが、今、すっかり洗い流されたように感じる。
(なぁ、昔のワタシよ……今のワタシをどう思う?)
まどろみのなかに遠い己の姿を探る。本当にもう、ずいぶんと遠くなってしまった、かつての自分を。
……今宵、博麗神社は雨の中。巫女は留守にて戸締りもせず。忍び込んだはアマノジャク。それは一匹……あるいは二匹……。
いつの間にか眠りに落ちていたらしく、正邪は目覚めた。まだ部屋は暗く、雨音もやまない。
ほっぺたに、もたれかかる針妙丸の肌を感じた。
その針妙丸が、正邪の目覚めに合わせるように、呟いた。
その言葉は、夢の続きかと錯覚するほどに、唐突だった。
「正邪。私と一緒に……死の?」
「……は?」
正邪は寝ぼけたまま、怪訝に応答する。
「ね、死の……? 私と一緒に、死の……?」
繰り返される針妙丸の言葉は、本当に、夢ににじんでいるように感じられる。
何度かその言葉が繰り返されたのち、ヒメは満足気に、何かをかみしめるように黙り込んだ。
(……うん)
正邪はわけがわからないのに、それなのに……なぜか、心が晴れていくのを感じている。
ヒメの言葉も自分の心も、まったく、何もかもワケがわからない。
だけど、針妙丸といると時々そういう体験をさせられる。ヒメの言葉は意味不明なのに、なぜかそれを受け取った自分の心は晴れているというような。
たぶん、己の心はすでに答えを知っているのだろう。それを理解をしているのだろう。ただ頭だけが、このまどろっこしい脳みそだけが、現象の把握に追いつかない。
だからこそ「言葉」があるのだろう。
そういう不思議を正邪に教えてくれたのもまた、針妙丸。
(いったいなんなだ、お前は)
針妙丸がどんな魔法を使ったのか、正邪には分からない。しかし事実として心には穏やかな風が吹いている。むしろ、しばらくはこのままそれを感じていたい。けれど、そうはさせてくれないのだ。ヒメは。
「正邪はね、一生下剋上なんてできないよ。だって正邪は、弱いもの」
ほらまた……勝手に……聞いてもいないのにペラペラとおしゃべりを始める……。
正邪は頭を起こして片肘をつき、演説を続ける針妙丸に目を向やる。口もとには、わずかに笑みが浮かんでしまっている。
「言ってくれますね」
「なのに、正邪はそれでも、死ぬまで下剋上をあきらめないんだよねぇ」
「当然でしょ」
正邪は初めから、ヒメの戯言に付き合うつもりはない。論理を追う気も無い。だから、そうか、そうか、と適当に相槌をうっている。無為な時間。けれども何か、とっても心地良い時間。
「正邪には困ったもんだねぇ。だけども私は、しかたがないから、そんな正邪にずっと力を貸してあげ続けるの」
「へぇ、ありがたい」
「もちろん、幻想郷のみんなとも仲良くやっていくつもりだよ」
「ヒメは器用だな」
「えっへん。でね、そんな日々が、きっと、ずーっとずーっと続いていくんだよ。私は正邪と一緒に異変をやって、失敗したら、またみんなに謝って……。そしたらきっと、皆は私を許してくれる。で、私はこうしてこっそりと正邪と会うの」
「なんつーか、自分勝手なやつ」
「だって、私にはもうそれができるもの!」
「あぁそうですか」
「だからね、さっきも言った通り、そういう幸せな未来はもう決まってるんだよ!」
「……そうかなぁ」
「そうなの! だけどね? もしかすると、もしかするとだよ? 正邪と私がケンカ別れしちゃう未来も、あるかもしれないでしょ?」
「幸せな未来は決まってるって、さっき言いませんでしたっけ?」
「あげ足をとらない! とにかく、それってすごく悲しいでしょ? だからワタシにとって……今がもう一番幸せってこと!」
「さいですか……うっ? ……!?」
その時、何か、満たされていなかったものが突然心にドッと流れ込んできたように感じられて、正邪はそれ以上は返事ができなかった。もし口を開けば、心の中のヨダレというか唾というか、そういう誰にも見せた事のないような恥ずかしいものをびちゃびちゃと飛ばしてしまいそうだったから。
「だからね正邪、わかるでしょう? 今一緒に死ぬのが、二人にとって一番幸せなんだよ! だから、一緒に死のっ! あはは、ねぇ死んでよぉ!」
心底幸福そうに笑って、正邪の唇にどかんと頬をぶつけて。
正邪はしばし呆然としている。自分の唇にチュッチュチュッチュと頭をこすりつけてくる針妙丸をなすがままにして。その呆然が過ぎ去った後、少しして冷静になってみると、正邪はなんだか、呆れた。
(……こいつは、そういう事を本気で言っているのかな)
本気で言っているとしたら本物のバカだし、仮にそれが喜びの表現の一種であるとしても、やっぱりそれはバカだろう。もとよりまともに取り合うつもりはなかったが……なのにそれでも、結局相手をしてしまう自分がいた。
「ヒメ、あんたってやつはねぇ」
「きゃっ……!?」
針妙丸の身体を両手で布団に押しつけ、その非力な裸体の、自由を奪う。
「あんたは本当に、おめでたいやつだなぁ」
顔全体で覆いかぶさるように、針妙丸の何もかもをじっと睨みつける。部屋は暗い。が、こうまで目を近づければ、相手の姿も一応は見通せる。
針妙丸は酔っぱらったようなうつろな笑みで、口をぎゅっとすぼめたまま、押さえつけられるままに正邪を見あげている。まるで、正邪の与えてくれる何がしかの言葉を、よだれを垂らして今か今かと待っているような。
その欲しがりやな姿にあてられたのか、正邪は、突然に興奮する。
「ヒメは、頭の中の妄想に浸ってそれで満足ですか? それで死んでしまって、本当にいいんですか? ……なら、お前、バカだろう」
罵ってから、針妙丸の頭部にかぶりつく。頭のてっぺんから首元まで、かっぷりと口に含む。
「むぐぅ!?」
吸う、吸う。
こいつめ、このバカめ!
このおバカなおつむを、どうしてやろう!
口ので、ちゅうちゅうと、ヒメの小さな頭を、唇も、鼻も、耳も、顎も、髪の毛も、すべてを舌で擦りつくす。口の中の唾液に針妙丸の味がしっかりとしみ込んだのを確認してから、ペッと針妙丸を吐き出す。
ちょっと、長くやりすぎたかもしれない。
「……ぷはぁ」
だけどもヒメは文句も言わずに黙っている。涎まみれの額に髪を張り付かせながら、うるんだ瞳でさらなる期待をこめて赤らみ顔で正邪を一心に見つめている。
そのようなヒメの無言のおねだりこそ、非常に激しく、正邪を昂らせるのである。
「……っ」
正邪は、ふいの恍惚に嘔吐しそうになる。ぐわあんぐわあんと、胸の奥で何かが膨張と収縮をくりかえしている。
たまらず正邪は、針妙丸をひっくり返し、その小さなお尻に噛みついた。と同時に、タコの吸盤のように吸いつく。
唇で吸い、歯ではぐはぐと食む。そのあいまには、獣の熱い息を吐きかける。
「やぁっ……!」
「ふは、ははは…」
針妙丸をもてあそんでいると、やはり自然と、気持ちが狂う。
「ワタシが見せてやるよ。いっぱいいっぱい、ヒメに教えてやる。知ったかぶりのお前に、ワタシが本物のよろこびを与えてやる!」
針妙丸は口もとを布団に押さえつけられて喘ぎつつも、興奮した声で、
「なら、私はずっと……正邪と一緒に異変をやってあげる!」
「言ったなぁ……! ……お?」
ふと……正邪は、ふに置落ちないものを感じる。なぜかと考えてみれば……
(そうか。異変の時だけじゃない。ワタシはもっと、ずっと一緒に、ヒメと……)
子宮が疼き、留まることをしらない欲望が肉を蹴破ろうとする。
が、
(今はここまでだ。今は、これでいいんだ)
それでよい。あまりにも一気に心を解き放つと、自分の心の中のアマノジャクが完全に死んでしまうような気がした。それでなくても、もうその一部は殺されているのだ。
自分は昔ほどもう、純粋ではなくなってしまった……。自分にとっての生涯の悦びは、下剋上ただそれだけであったのに……。
そのような考えに至ると、思い出したように、正邪はふいに怒りを覚える。
(このやろう、よくもワタシを……!)
湧き上がるその怒りは、自分でも意外なほどに強かった。感情というやつは実にやっかいなものだ。出どころは曖昧なくせに、その存在はとてもはっきりとしているし、すさまじい圧力を伴っている。
(責任、とりやがれよ!)
正邪はゆるやかに錯乱し、針妙丸を仰向けにさせると、少し強めに、針妙丸に噛みついた。今度は胴体に、ばっくりと。
「ヒメ……口ばかり達者な愚かなヒメめが!! 分かったつもりで、偉そうにっ!」
ヒメを罵倒することのなんと心地良い事だろうか。
そのまま獣欲に浸ってしまいたい。
しかし針妙丸は、こういう時に限ってとんでもなく頓珍漢な事を言って正邪を笑わせるのだ。
針妙丸が突然、発狂する。
「そうだよ私はバカだよ! 何もしらない世間知らずなおヒメ様……。だけど、それでよかったのに……むしろ姫としてそうあるべきだった。なのに……正邪のせいだよ! 正邪がいなければ、私は悪い事なんかできなかった! 自分勝手に生きる事がこんなに楽しいんだなんて、知らずにすんだのに!……許さないんだから……正邪っ、責任っ、とってもらうからねっ!」
聞いて、正邪はたまらず噴き出してしまう。
「……ぶははっ!」
針妙丸が目を丸くする。
「な、なに?」
「だって、責任をとれって……ええ? どの口が……あははっ」
「え、えぇ……?」
笑いがもう、止まらない。笑っても笑っても、あとからあとから衝動が噴き出してくる。
お前ってやつは!
あんたってやつは!
私を殺しておきながら……!
よくもそんな事が言えたものだ……!
「え、えと、え……?」
ヒメが戸惑い、それもまた可笑しい。
「ははは、ははは、ははははは」
まったくこんなにおかしいことは他にはない。いやはや、下剋上よりもおかしいかもしれない……。
そうして笑っているうち、正邪はとてもすがすがしい気持ちになってそういう素直な気持ちで、ヒメを犯したいと思ったのだ。
それは、とても気持ちのいい考えであった。
「まったく……あんたって奴はっ」
アマノジャクが今ふたたびその素直さでもって牙をむく。針妙丸の子宮を乱暴に引きずり出してやろうと計り、にもかかわらず、己の脳髄をやすやすと撫でまわされてしまっている惨め。その滑稽さから逃れようとして正邪は絶対的な手段を行使する。すなわち、二人の体格差が正邪に与える圧倒的な暴力によって、言葉の上での敗北をくつがえす---いや、その敗北さえをも、欲情を高める興奮剤へと転化させるのだ。こうして正邪の精神において、惨めな敗北は甘美な勝利へと鮮やかにひっくり返るのだ!
普段装っている敬語などはもはや微塵も残っておらず、暴力的な原始的衝動のみが正邪の体を支配する。
「口だけしか能のない、非力なチビめがっ!」
針妙丸を両手で握り、こんどは恵方巻でも食べるかのように気高いその二本の御足を付け根まで一気にくわえる。針妙丸の下半身をほとんど丸のみだ。そうすると針妙丸の足の先端は正邪の声帯に届く。だが正邪はいつの頃からか喉奥のヒダを針妙丸のつま先に刺激されても、もはや嗚咽を感じなくなってしまった。むしろその奇妙な感触が気持ちよくすらある。もはや肉体が針妙丸の体を受け入れてしまっているのだ。
舌先を、ヒメの足の隙間に、強引にねじ込ませる。
「ぁっ……!」
だがそれでもなお、ここに至ってもなお、針妙丸は姫としての態度を少しも損なわない。
その下半身を正邪に丸ごと食われながら気取った口調で高慢に言ってのける。
「ふふんだ、言ってくれるじゃない、この卑しいアマノジャクめえっ!」
演技がかったその滑稽な様。
しかし、
「……っ!」
今の正邪にとってそれはほとんど媚薬であって、この瞬間、正邪の脳の奥にある快感のたっぷりつまった袋がパァンと爆ぜる。袋にたっぷりと詰まっていたドロドロの快感液が正邪の身体中に飛び散って全身をびちゃびちゃにしてゆく。
針妙丸はそのようにして正邪の生存本能を満たし続けてくれる。ここに正邪にとって永遠の下克上が成り立つのである。下劣な欲望の炎が正邪の性的中枢を激しく炙り濃厚な肉汁を溢れさせる。それはどうしようもないほどに正邪の精神に深く組み込まれた根源的な悦びであって、そうして針妙丸という特殊な諸元によってもたらされた屈辱は正邪の精神回路に備わった独特の加工工程を経て官能的な高揚感へと変換さていく……。
「ぁぁっ……こ、のぉっ……!」
「あぎっ……!?」
正邪がひどく強めに噛みしめたから、針妙丸が苦悶の声を上げる。
本当に正邪が思いっきり噛みつけば、針妙丸の体は切断されてしまうだろう。当然そこまでするつもりはない。が、かといって、もはやアマ噛みでは正邪は満足できない。
「ふぅぅ……ヒメっ……ヒメぇっ……!」
一切の尊厳を奪われた針妙丸の無力な肉体にしゃぶりつき、舌という恣意的な器官でもって、容赦なくそのすべてを蹂躙する。舌とは根本的に捕食のための器官であり、捕食とは、強者と弱者の立場を絶対的に固定化しうる行為である。小さなヒメがどれだけ口が達者だろうが、心がドンと太かろうが、こうなってしまえばそんな威厳にはカスほどの重みもなく、生命の保証はその一切を下衆の獣欲に奪われる。正邪に浴びせられた全ての敗北は過去へと消え去り、今その手の中にあるのは絶対的な下剋上の輝きそれのみ。
が、それでもまだ……! 針妙丸は壊れやしない……!
半身を食われつつもその妖しい笑みは少しも衰えてはおらず、またその瞳には一切の恐れも戸惑いもない。妖しく光る眼差しでもって、あくまでも正邪の性根を貫き通している。
そういった針妙丸の精神こそが、正邪の下克上の果てしない循環を駆動させている……!
「正邪って本当に……かわいいっ……ああ、幻想郷のみんなにも、教えてあげたいなぁ……っ」
「こ……のォォォォッ!」
頭の奥と下腹部の奥と、その辺りにもまたパンパンになった水泡のような膜がありその中にもまたありったけの快楽液が封じられている。今それが、妙丸の鋭い眼光にプッと刺されて膜の裂け目から快感液がドロリと排出され、いな、噴き出した。瞬間、正邪は脳を突き刺す快感に襲われもはや声が抑えられなくなってしまう。
「ああああっ、あああああああああっ!」
……これだっ!!
ヒメのこれ! こいつが私をだめにする!
正邪は随分前からそれに気づいている。が、どうしようもないのである。
アヘン……ヒメは正邪にとってアヘンなのだ。
ヒメはかつてワタシを利用した。己の野心の隠れ蓑として私を利用しやがった。
そしてそれが失敗におわると、あっさりとワタシを捨てやがった。
そのくせこいつはまだワタシにお前を誘わせる!
今やワタシは、完全に中毒にさせられてしまった……。
(それなのに、それなのに……!)
涙で滲んだ視線の先にあるものを凝視して、正邪の股間が何度も何度もねじれていく。
正邪の凝視する先にあるのは……燦然と輝く、針妙丸の恍惚!
(ちくしょおおおおお!! 何ですかヒメのその顔は!? なんですかその気持ちよさそうな顔は!? なんでそんなにお前は嬉しそうなんだよ!? このワタシがこれだけ乱暴にお前を凌辱しているのに、なんでお前はそんなに気持ちよさそうに悦ぶんだよおおおお!? お前にそんな顔をされたらワタシはもう!!! もうっ!!!!! お前は!! この最っ高の、アマノジャクめがあああ!!!)
そうしてしゃにむに齧りつく度に、味が、汗が、味が、柔らかさが、熱が、体臭が、そして針妙丸の悲鳴が、正邪を喜ばせる。指をはみ、甲をはみ、手首をはみ、腕をはみ、肘をはみ、脇をはみ、肩をはむ、腕をはむだけでどれだけの時間がかかるのか。しかしまだまだ十分ではないし他にも食むべき箇所は膨大だ。顔も、胸も、尻も、股の中も、足の先までも、あらゆるところを噛んでやれねば気が済まぬ。この唾棄すべき自己中心的なヒメの全てを噛んでやらねば気がすまぬ。
しかしてそれでもなお! 針妙丸はまたそのあくなき精神的抱擁でもって正邪の無限の暴力に永遠にほほ笑み続けるのだ。
「はぶう! はぶぅ!! ふぶうぅぅぅ!!!」
今や正邪の感情の全てが爆発している。鼻水にまみれ、唾液にまみれ、涙にまみれ、ヒメを咥えたまま、それでもなお正邪は雄たけびを上げ続ける。
それは歓喜の咆哮なのであろうか
暗闇につつまれていた正邪の世界。正邪はこれまで遥か彼方の微かな光のみをたよりに生きてきた。
だが、今は違う。正邪のすぐ側に、すぐ隣に、手を伸ばせば簡単に手がとどくその近傍に、少名針妙丸という巨大な恒星が光輝いている。
彼女は正邪を満足させる。人生の喜びをあっという間に与えてくれる。かつて正邪がどれだけあがいても得られることのできなかった悦びの数々を!
敗北と反逆の途切れることのない連鎖、あるいは純情の果てしない循環、正邪の反逆欲は決して満たされることはなく強制的に掻き立てられ続けただ一時的にそれは針妙丸によって満たされるもののかつまた同時に針妙丸よって掻き立てられ続ける。
もし仮に……生命存在において肉体的欲求と精神的欲求の激烈な融合過程において生じる、あの一連の切なる感情を『愛』と呼ぶのならば……。
まぎれもなくこの瞬間、鬼人正邪は、少名針妙丸を、心から愛している。
挿絵が必要だと思った(錯乱
針ちゃんMGMG
でもそんなギリギリを攻める貴方が好きです。
スウィーティーな関係を包み隠さず赤裸々に描くとこうなるのか、と悶々しながら感心しきり。
もはや真似できない境地に貴方はいます。
出だしの後戯で吹いて、いつもの独特の世界に引きこまれて一気に読み終えました。
感想を言うなら一言に尽きます。この、この、このド変態が!
あいかわらず面白かったです。
レベルたけぇ
読んでいくうちにどんどんテンションが上がり、最後には喜びが'マジでやばい'程大きくなりました。亀田興毅なら笑顔で「マジでヤバイ」と言ってしまうんじゃないかという程嬉しかったです。
今作も展開がぶっ飛びで笑いました。タイトルのハム太郎からして笑いました。話の勢いに笑いました。ぐっちょぐちょねっちょねちょ具合も激しくて圧倒されました。いろんな所が三年ぶりで懐かしくて面白おかしくて、笑って、それでいて良かったです。とても良かったです。
KASA先生のSSを読んでいて感動しておりました。えっちぃこと(生殖器どうし)をしなくても、愛情をこんなに表現できるのですね。このように豊かな方法があるのですね。感動でした。新鮮でした。最高でした。ありがとうございました。
面白かったです。