Coolier - 新生・東方創想話

存在の第三者

2016/03/26 00:52:52
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幻想郷には三種類の住人がいる。一つは最初からそこに住んでいたもの達。時がたてばその人間も妖怪も死んでしまうが、彼ないし彼女らの子供はそこに住まう。そういった者達も最初から住んでいる者達だ。
二つ目はある日外からやってきた者。忘れられたり気まぐれなスキマ妖怪の手によって結界の外からやってきて、そのままそこに住み着いた者達だ。
そして三つめは・・・・・・







気が付いたらここにいた。辺りを見渡すと違和感がある。今までビルの森に立っていた私は、いつの間にか本物の森の中にいた。ふらふらと当ても無く彷徨っていると、明かりが見えた。見慣れた電気の明かりではない。ゆらゆらと揺れていることからそれが松明であることに気付いたのはぎりぎりまで近づいてからだった。幾人かが私を取り囲んで何か言っている。頭がぼんやりしていて何を言っているのかわからない。次の瞬間私は意識を失った。

目を覚ますと家の中だった。木製だが結構広く、大きな家だということは分かった。またぼんやりと見渡しているとふすまが開いた。いかつい顔をしたおじさんは私にこんなことを言い出した。
『お前は今日からうちの子だ』
訳が分からなくて混乱している私に、おじさんは色々と説明してくれた。ここが幻想郷という場所であること。妖怪がたくさんいる結界の中の空間であること。自分が人間の里で道具屋を営んでいること。そして、一度入った人間はここから出られないこと。最後のは特にショックだったが、そうならば仕方ないと何故か諦めた私は、素直にそのおじさんの養子になることにした。名前を聞かれて『マリサ』と名乗ると、そのおじさんは『じゃあ今日からお前は霧雨魔理沙だ。うちは霧雨道具店だからな』と言ってニカッと笑った。妙にうれしかった。

それから数年間、霧雨道具店で過ごした。両親は二人とも私を実の娘の様に可愛がってくれたし、お父さんの弟子の霖之助さんも色々な事を教えてくれた。薀蓄を話し出すと止まらない事には閉口したけど。
そしてある日。霖之助さん・・・いや、もうこのころから彼を香霖と呼んでいた私は、度々彼が独立して持った香霖堂へ遊びに行くようになった。博麗の巫女である博麗霊夢と知り合ったのもこのころだ。そして私は衝撃的な事を耳にした。
『博麗神社は外から迷い込んだ人間を送り返す事も出来る結界の要である』
あの日信じて疑わなかった言葉は嘘だったのだ。家に飛ぶようにして帰ると荷物をまとめた。そして机の上に『お世話になりました』という一文を書いた手紙を残して私は霧雨道具店を飛び出した。元々最近魔法絡みで両親との仲も悪くなっていたので丁度良かった。再び天涯孤独となった私はとりあえず香霖に相談した。魔法使いになりたい、と。すると香霖は呆れたような顔をして
『いつかこういう日が来ると思った。魔法の森に一見空き家がある。そこに住めばいいだろう』
どうやら私の行動は読まれていたらしい。少なくとも一人、強い味方を得た私は森の中の空き家に住み着いた。オンボロだがひとりで住むには十分すぎるほど広かった。
そこから私の本格的な魔法使いへの修行生活が始まった。最初のひと月は食べ物を探すだけで死にかけたが、そのうち食べられるキノコと危険なキノコの見分けがつくようになると、主に危険なキノコから魔法を作る研究を始めた。右も左もわからないところからのスタートだ。これも最初の内は爆発したり変な魔法生物が生まれたりしたが、あるキノコから私のイメージした通り星形の弾幕が出た瞬間は嬉しさで森中を駆け回った。その後も研究をつづけ、大分魔法が充実し始めたところで異変が起きた。幻想郷が赤い霧に包まれたのだ。

自慢の魔法をひっさげ、ついでに何か珍しいものをかっぱらっていこうと企てて異変解決に乗り出した私だったが、何と黒幕の吸血鬼を倒し、更にはその狂った妹も大人しくさせてしまい霊夢やその吸血鬼――レミリアにも驚かれた。まあ一番驚いたのは私だが。
それからしばらくはパチュリーという紅魔館に住む魔法使いから、魔法について色々教わった。独学で研究した結果を綴ったノートを見せると、パチュリーは『人間でこんなすごい研究が出来るなら、魔法使いになってしまったら』と言ってきたが、それを私はあっさり断った。理由を聞かれると『まだ人間としてやることがあるからだぜ』と返した。この口調になったのはいつからか覚えていない。

その後も色々な異変を解決した。途中で知り合った人形遣い、アリス・マーガトロイドとは異変解決のための共闘したこともあった。そしてあれは・・・山に新しい神社がやってきた異変を解決してしばらくしてからだろうか。私が紅魔館を訪れると、天狗のブン屋である射命丸文に出会った。
「何だ文か。どうしたんだ?」
「ああ、丁度よかった。実はちょっと記事には出来ないですけどとんでもないネタを掴みましてね。その真偽を魔理沙さんに確かめて貰おうと」
「私に?」
「まあここに来たのは美鈴さんにも確かめて貰おうと思ったからなんですけどね」
「じゃあ二人で確かめてやるぜ。その代わり情報料を要求する」
「ホント抜け目がないですねー。まあ人里にもいくのでそこで何か奢りましょう」
「よっし!」
「じゃあ早く行きましょう。私としてもかなり気になる内容なので」
普段あまり行かない紅魔館の正門に回る。私たちが正面から来たのを見て門番の紅美鈴は驚いている様だ。
「・・・不法侵入者トップ2が何で正門に?」
「文がお前と私に用があるんだとさ」
「ええ。早速お聞きしたいんですけど」
ごほん、と咳払いをすると
「お二人は外からやってきて、さもここの住人のように育てられたという話は本当ですか?」

次の瞬間私は全力全開のマスタースパークを、美鈴は手加減なしの拳を文に放った。凄まじい爆発音がするが文の姿はない。見渡せば紅魔館の門柱の上に立っていた。
「ま、待ってください!私も同類なんです!」
そういって文がウエストポーチから取り出したのは―――ぼろぼろの石ころ。しかしその形に私は見覚えがあった。
「珊瑚・・・」
「はい。この幻想郷にない海の石。これで私も同類だと信じてくれますか?」
「あ、ああ。わかった。じゃあ門番、お前もなのか?」
「そうです。私も・・・もともとは外の人間でした」
「それで私は、このことについて話せる人を探していたのです。もうかれこれ妖怪になって千年ほど経ちますが、漸く見つける事が出来ました」
「じゃあ今日ここに来たのは?」
「恐らくこれからもこうやって外から人間を連れてきては、ここに初めから住んでいたかのようにするでしょう。同じ外の人間だったものとして、それを許すことはできません」
「ああ待ってくれ。ここだと誰かに聞かれる。そうだな・・・私の家にしよう。今日の夜、私の家に来てくれ」
「そうですね・・・では、私と美鈴さんでお伺いしますよ」
そう小声で確認を取ると、それぞればらけた。夜中までその集いを悟られぬよう、全く持っていつもの通り生活する。そして夜中。
「全員揃いましたね」
三人が集まったので秘密の会議が始まった。
「私は千年前ぐらいに小さな島に住んでいたのですが、ある日気が付いたらここにいました。それから今の天魔様に連れていかれて、黒い丸薬を飲んだら自分の背中から羽が生えてきたことをしっかり覚えています」
「私は・・・五十年くらい前に中国で生まれて育ち、飛ばされたのは今の地底ですね。そこで妖怪になる変な薬を飲まされ、ひたすら戦って戦って地上に出るころにはもう今の私でした。紅魔館に仕え始めたのは咲夜さんより少し前ですね」
「私は十年くらい前に人里近くだ。それからは・・・お前たちも知ってるだろ?」
「まあ事情はそれぞれありますけど一番怪しいのは」
「間違いなく」
「「「八雲紫ですね」」だな」
満場一致だった。とにかくやることは
「冥界に行こう。霊夢は協力してくれるか微妙だから、それなら一番現れやすいポイントで張った方が早い」
「同感ですね。美鈴さん、仕事の方は?」
「何故かお嬢様が休暇をくださいましたので」
「それクビじゃないのか?」
とかいいながら家を出るとぎょっとした。もう既にスキマ妖怪の八雲紫が目の前に立っていたから。
「あやややや・・・早速現れましたね」
「きっちり全部話してもらいますよ」
「そうだぜ。そしてこんなこと止めさせてもらわないとな」
三人とも戦闘態勢に入るが紫は何故か動かない。違和感を覚えて美鈴が一歩前に出たところだった。
「危ない!」
文が強烈な向かい風を美鈴に向けて起こした。それでバランスを崩し後ろに下がる。と、ほぼ同時に足元から黒い槍が飛び出した。もしあのまま進んでいたら、間違いなく足から頭まで貫通していただろう。
「やはりそう来ますか!」そう叫んで文が猛スピードで突進する。が、その前に魔理沙のマスタースパークが紫の肩を掠った。
「おい紫、お前、黒幕じゃないんだろ?」
その言葉を受けて紫の肩が震える。えっ、という表情で魔理沙を振り返った。
「いつものお前ならもっと余裕たっぷりなのに、いつになく切羽詰まってる。てことはそんな急がなきゃいけない理由があるんだろ?」
そこまで魔理沙が言い終わると紫はその場に崩れ落ちた。今まで伏せていた顔を上げるとその顔はいつもの紫らしくなく涙でぐしゃぐしゃになっている。
「ご、ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」
余りの事態を飲み込めてない二人と、泣いている紫を家に放り込むと事情を聴くことにした(もちろん落ち着いて貰ってからだが)。数分経ってようやく落ち着いたようだ。
「実はあなたたちの今の話、私も長いこと追いかけていたのよ。おそらく幻想郷のバランスを保つためなんだろうけど、そんなお節介いらないって言ってやりたかった」
ぽつりぽつりと語りだした。話は続く。
「それでとある日黒幕を見つけたの。弾幕ごっこでボロボロにして、それから文句を言うつもりだった。でも勝てなかった。凄まじい強さだったのよ」
「そしてそいつは言ったの。『これ以上あたし達の行動に文句をつけるなら幻想郷を滅ぼす』って。それだけは嫌だったから引き下がって、結局今まで未解決。無理やりにでも殺しておけばよかった」
「ちょっと待ってくれ。『達』ってことは、そいつには仲間がいるのか?」
「ええ。確かそいつを含めて三人。それで、本当に行くの?」
「ああ。これ以上犠牲者を増やさせない」
「同感ですね。それにこの異変を解決すれば、私はただの烏天狗になれます。もう私は殆ど人間ではないですから、一人間として最後の仕事、ですかね」
「ここに来て色々とありましたが・・・私と同じような目に合う人が増えるのはもう御免です。地底にただの人間が送り込まれたって、生きるのはすごく厳しいですから」
「・・・わかったわ。黒幕のいる場所までは送って行ってあげる。でも、無茶は絶対やめてね」
「わかってるって」
「まあ、ここは貴女を信じるとしましょう。その代わり、今度何かネタを提供してもらいますよ?」

博麗神社の裏、鏡の洞窟と呼ばれる場所の最深部。魔理沙、文、美鈴はスキマを抜けてそこへとたどり着いた。
「もう目の前にいるな。出てこい黒幕!」
「やれやれ・・・“今回の”霧雨魔理沙は随分と無鉄砲だね」
現れたのは緑の髪の青の服と帽子を纏った女性。しかし足は幽霊のようになっており、その女性が人間で無いことを物語っていた。
「あなたが黒幕ですね?」
「まあそうさね。魅魔っていうんだ」
「魅魔・・・後ろの二人は?」
いち早く残り二人の殺気に気付いたのか美鈴が問いかける。暗闇から出てきたのは銀髪に赤いゆったりとした服を着て黒い六枚の羽を持った女性と、全身真っ赤の他二人よりも少々若い女性だ。
「何だい神綺に夢美。まだ出てこなくて・・・」
「ああ、報告に来たのよ」
「何?まさかあれが出来たっていうのかい?」
「ええ。あれさえあれば、幻想郷を作り替える事が出来る」
「聞き逃せませんねえ、そんな物騒なもの」
不意の声に三人が振り返ると魔理沙たちは既に自分の最高パワーをぶつけようとしていた。
魔砲『ファイナルスパーク』
疾風『風神少女』
三華『崩山彩極砲』
避けることも防御の暇もなく三人のスペルカードが炸裂した。倒れ伏す三人のうち魅魔の襟をつかんで魔理沙が叫ぶ。
「教えろ。何であんなことした!それと、“今回の”ってなんだ!」
「はあ・・・簡単なことさ。以前も“霧雨魔理沙”はこの幻想郷に存在した。まあ、あたしたちが始末したんだけどね」
「何だって!?」
「あたし達は皆生まれた世界を失った者・・・だからこの世界を乗っ取り、あたしたちの新しい世界にしようとしたのさ」
「でも、それじゃこの幻想郷に外の人間を送り込む理由にはならない。ちゃんと吐いたら?」
文が仕事モードからプライベートモードの口調になっている。山に入る侵入者を追い帰すのと同様に、この文に容赦の文字は無い。
「外の人間は魔法を信じない。たとえここになじんでも心の奥深くでは信じていない。そういった人間が増えれば妖怪の力が弱まる。そこにあたし達の作ったアレを投入すれば・・・」
ぴちゃ、という音とともに何かが現れた。金髪に赤いリボン、白い着物のような不思議な服を着て、ルナサのバイオリンのようなものを持っており、こちらをぼんやりとした目で見ていた。
「『あらゆるものを吸い込む程度の能力』を持った我らが人造人間(ホムンクルス)、冴月麟」
「冴月麟・・・」
「さあ、まず手始めにそこの三人組を吸い込め」
「はい、マスター」
そして彼女が服をたくし上げると、腹にある大きなほくろが渦を巻きだした。数秒するとごうごうと音を立てて辺りの物を吸い込みだす。まず美鈴が吸い込まれた。次に文が吸い込まれ、魔理沙もだんだんと吸い込まれる。
「負けてっ、・・・たまるか・・・!」
少しずつ離れようとするがまるで逃げられない。そして一瞬気を抜いたため冴月麟に吸い込まれてしまった。
「よし、じゃあ行ってきな。出会った人間と妖怪はきっちり吸い込んでしまうんだよ」
「はい、マスター」
そのまま洞窟を出て行った。外に出るとまずあったのが霊夢だ。
「・・・見ない顔ね。誰?」
「初めまして。私は冴月麟。あなた・・・」

「違う世界に行ってみたくない?」

三つめは引き込まれたもの。誰とも知らぬ者達に、己の欲を満たすだけに引き込まれてしまった哀れな人間。もしそうやって引き込まれたら・・・どうしますか?
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コメント



0.70簡易評価
1.10名前が無い程度の能力削除
アイデアをそのまま書きなぐっただけで練り込みが全くない。兎に角雑な作品でした。
6.無評価名前が無い程度の能力削除
誘拐おじさん
8.100名前が無い程度の能力削除
テンポが早くてよかったです