「可愛いよ、パルパルー!」
何事が起こったのか、瞬時に理解を得るには酷と思えるほど、不可解な情景が広がっていた。いや。仮にどれだけの時間を費やしても理解を得るのは困難を極めるだろう。それこそ考えるだけ無駄、無意味に時間を浪費するだけだった。そもそも、哲学的な深いテーマ性を孕んでいる訳でもない、思いつきと勢いが混ぜるな危険とばかりにドメスト的な融合を果たした、見切り発車感がありありの二次創作小説の内容に対して、理解を試みようとすること自体が既にナンセンスだった。
幻想郷の地下深くに存在する旧地獄には、かつて、地上を活動の場としていたが、人間にとってはあまりにも忌むべき、禍々しい力を持っていたが故に迫害を受けた妖怪達が移り住んでいた。
その旧地獄の、地上と地底を結ぶ縦穴を潜り抜けた先に、まるで人の血を吸ったかのように赤く染まった橋が架けられている。それは旧都へと続いている正に架け橋であり、頼光四天王のひとり、かの源綱が嫉妬の鬼と遭遇した、一条戻橋を彷彿とさせる造りをしていた。
その橋の中央で欄干に凭れ掛かり、眉根を寄せて口元をきつく結び、多量の脂汗をかきながら、地底の番人・水橋パルスィは視界いっぱいに広がる不可解な情景にただただ戦慄していた。
「妬ましいって言いながらも、すっごく良い笑顔のパルパル、メチャクチャ可愛いよー!」「嫉妬深いのに眩しい笑顔が素敵ー!」「わいの求めた地底の太陽はここにあったんやー!」「サブタレイニアンサン! サブタレイニアンサン!」「ほんま、パルパルの笑顔は地底全土を優しく見守る天照大御神やで!」
パルスィは緑色に妖しく光る瞳を忙しなく動かし、半ば嫌々ながらも、改めて周囲に広がる光景に目を向けた。その様はまるで、数多の変態達に取り囲まれ、恐れ怯む少女のそれのようであったが、事実、あいさつ仮面ヨロシクと言わんばかりにブリーフパンツのみを纏い、インスマス面を彷彿とさせる滑稽な面構えをした、一級品の変態達が水橋パルスィを取り囲んでいた。
果たして、こいつらは何者なのか――パルスィは酷く戸惑いながらも努めて冷静に思考を巡らせた。まず、彼等からは妖力といったものを一切感じなかった。すなわち、彼等は妖怪やそれに準ずる類いの何かではない。また、霊力や魔力といった特殊な力も感じないことから、どこぞの巫女や魔法使いのような、一線を越えてしまった人間でもないのが分かった。
「俺、パルパルと結婚したら、わざと他の女とイチャイチャして嫉妬させた後、安心させるようにそっと抱き寄せて、赤面乙女顔になったパルパルの耳を甘噛みするのが夢なんだ……」「赤面乙女顔のパルパル! そういうのもあるのか」「うむ、確かにパルパルのあの尖った耳は至高の料理、我々の食指を誘ってやまないな」「ふっ……そこに気付くとはやはり天才か」「だが、叶わない夢はただの夢だ」「夢で終わらせるもんか。だって俺は自分を信じているもん。自分を信じて夢を追い続けていれば――夢はいつか必ず叶うんだ!」「素晴らしい――やはり人間は素敵だ」「鑑や……ほんま、あんた妬ましいまでの漢の鑑やで!」
後光を背負いながらアルカイックスマイルをきめる変態と、その彼の夢を追う姿勢に熱いパトスが迸った変態達がうおーんと涙と鼻水を垂れ流した。
一方、セクハラ紛いの妄想を聞かされ、これ以上は堪えきれないといった様子でパルスィは顔面を両手で覆うと、躰の芯から顔全体に向けて、それこそ頭の天辺や耳の先端まで急速に血が巡っていくのを感じていた。
――さっきから黙って聞いていれば、私のことをその……可愛いだとか笑顔が素敵だとか、挙げ句、結婚だの抱き寄せるだの甘噛みだのと。こいつらは何を言っているの? 馬鹿なの? そもそも、こいつらは一体なんなのよ? 本当にもう速やかに死んでくれれば良いのに。あと、そのパルパルって呼び方を即刻止めろ!
突如として地底世界に現れては、ひたすらに水橋パルスィ讃歌を謳い続け、三千世界に混沌の闇をもたらさんとする、この一騎当千の変態達は本当に何者なのだろうか。パルスィの推察によれば、妖怪でもなければ、特殊な力を持った人間でもないらしい。ならば、なんの変哲もない極普通の人間だとでも言うのだろうか。
しかし、それは否――圧倒的な否であった。
時は十数分前に遡る。パルスィが変態達との初対面を果たした時のことだ。幼児性愛者が醸し出すそれのような、出所が知れないながらも、どうしようもなく滲み出てきてしまう危なげなオーラを纏った彼等を見て、パルスィは瞬時に身の危険を感じ、彼等に向けて脊髄反射的に弾幕攻撃を仕掛けたのだった。その弾幕は緋蜂もかくやと言うほど熾烈を極めており、ルナシューターですら、一分ともたずに満身創痍となるほどであった。
だが、実際の結果は意外なもの――まるで無形の煙を相手にしているが如く、まるで夢想天生状態の某巫女を相手にしているが如く、当たり判定などあんまり無いと言わんばかりに変態達は全くの無傷であった。こうなると最早、彼等を普通の人間と見なすのは些か無理があるように思われる。
しかし、前述した通り、彼等は何ひとつ特殊な力を持たない人間である。本来ならば、そんな人間が妖怪の本気の弾幕を前に無傷でいられる訳がない。となると、上記の常人離れした事実をどう処理すれば良いのだろうか。
また、この変態達は結局のところ何者なんだ、東方キャラでもない輩の素性云々の話でどこまで引っ張る気だ、いい加減にしろ、といったややこしい問題も同時に浮上するだろう。
まさか、こいつらの設定なんぞ全く考えてなかった、とは口が裂けても言えない。筆の赴くまま書き殴ってきた弊害がここにきて牙を剥いてきた。飼い犬に手を噛まれるとはこのことか。
だが、腐っていても仕様がない。これらの難題を解決する為、思いつきと勢いだけで二次創作小説なんて書くもんじゃないな、と激しく後悔しながらも、ここはひとつ無い知恵を絞って考えるしかないのだ。
そうして、熟考を重ねること数分――精神的疲労がピークに達したので、気分転換に『東方茨歌仙』を読んで霊夢の可愛さにニヤニヤしていた、当にその時だった。電流走るが如き、圧倒的な閃きが脳内を駆け巡った。
そう……そうなのだ。この変態達は要するに実体をもたぬ思念体のような存在の人間達なのだ。つまりは実体をもたぬが故、弾幕戦においては常に無敵状態という訳なのだ。良し。そういう設定でいこう。
実体をもたぬ思念体であるが故、当然のこと、物理的な攻撃は完全に無効化される。あまりにもチート過ぎる設定を数瞬前に与えられ、僕の考えた最強のメアリー・スー状態へと変貌を遂げた変態達。最早、まともに相手をするのは無謀と言わざるを得ない。
しかし、心の平穏を取り戻して輝かしい明日を手に入れる為にも、パルスィには彼等を討ち滅ぼす以外の選択肢はなかった。いっそのこと、幻想郷の少女らしく宙を飛び、彼等から逃げる手も考えられる。だが、それは迂闊とも言うべき悪手であった。何故ならば、変態達に絶景と称するべき蠱惑的なローアングル、もとい、格好のエサを与えるやも知れないからだ。種族は妖怪であるがパルスィも心は少女である、そういった恥じらいがない訳でもなかった。となれば、この場は攻めに転じるより外はないのだが、果たして、彼等を退けうる手段など存在するのだろうか。
そんな打つ手の見当たらない絶望的な状況の最中、パルスィにふと天啓が舞い降りた。
天啓いわく――神がチェーンソーで両断されるご時世、負けイベントでもない限り、この世に完全無欠な敵など存在しない、必ずやどこかに弱点があるものだ。すなわち、物理攻撃に耐性があるのならば、セオリー的に言って、逆に精神攻撃が弱点だと考えられる。そして、奇しくも、パルスィには一種の精神攻撃とも言うべき、嫉妬心を操る程度の能力が備わっており、これは正しく、ご都合主義的な渡りに船の展開と言える。ここまで完璧にお膳立てが整っているのならば、演出のドラマツルギー的な観点から見ても――パルスィが能力を行使する、なんやかんやで変態達が消滅して混沌ばかりが増していく現状に終止符が打たれる、同時に終着点を完全に見失った、この二次創作小説にも幕を下ろせる、コメント欄で酷評を受ける――という図式が容易に成立するだろう。だから頑張れ、パルスィ!
過度に強引な論法を展開する天啓に対して、パルスィは――二次創作小説って何のことかしら?――と疑問に思いながらも、取り敢えず、天啓に促されるまま緑色をした瞳を更に妖しく光らせ、嫉妬心を操る能力を行使するのであった。
すると、どうだろう――俄に変態達がざわつき、そわそわと落ち着きをなくし始めた。そして、鈍色に卑しく光る眼光は徐々に濁りを増していき、そのドブのように腐りきった目は正しく、嫉妬心に駆られた人間のそれと同じになった。とどのつまり、パルスィの放った精神攻撃の効果は抜群だったのだ。
「嗚呼、妬ましい妬ましい。俺の中に溢れる甚大なる量のパルパル愛を、遥かに凌駕してしまうほどのお前らの太くて逞しいパルパル愛が妬ましい」「俺が他の女と仲良くしてると、激しい嫉妬のあまり涙目になって怒り出す、ちょっとヤンデレ気味のパルパル――そんな俺の妄想が色褪せるほどの鮮やかな妄想を生み出す、お前らの悪魔じみた発想力、素晴らしくも逞しい妄想力が妬ましい」「妬ましい……可愛すぎて愛しすぎるパルパルと会いたい時にいつでも会えて、あまつさえ、逞しい妄想力によって、誰もがパルパルとのカップリング候補となりうる、幻想郷の少女達が妬ましい」「ぶっちゃけ、星熊勇儀が妬ましい」
確かに効果は抜群だった。しかし、それは無意味だった。例えるならば、アンデッド属性の敵に即死魔法をかけるようなものだった。状況は何も変わらない――むしろ、醜い嫉妬に駆られている分、変態達の薄気味悪さに拍車がかかり、別の意味で悪化の一途を辿ったと言える。
そもそもが正味な話、嫉妬心を操った程度で彼等をどうにかできる道理は欠片も存在しないのだ。それこそ、覚妖怪のように他者の心を読み、トラウマを抉り出して黒歴史をほじくり返す、といった強烈な精神攻撃ならば、あるいは光明も差したかも知れないが。もっとも、豪傑中の豪傑が集った変態梁山泊と謳われてもおかしくない彼等ならば、その精神攻撃すらも、ご褒美と称して倒錯的な快楽に転換しかねない。
最早、何をやっても駄目なのか。そっと能力の行使を止めたパルスィの眦にじわりと涙が溢れ、やり場のない怒りと変態達からの辱しめによって、よく熟れたトマトのようにその顔は赤く染まっていった。そして、悄然としたように肩を落とし、涙が零れないように天を仰ぐのだった。
「ふふっ……道行く人々に白眼視されても、世界中の女性から生理的に無理と言われても、親兄弟親戚から腫れ物を扱うような態度をとられても、決して折れることがないであろう、貴方達の卑しくも逞しい変態根性が妬ましいわ」
完全に打つ手を見失ったパルスィが放った精一杯の皮肉、最後の強がりはしかし、鋭く尖った封魔針のようにちくりグサリと突き刺してくるほどの辛辣さがあった。言葉による弾幕、正にそう呼ぶに相応しい強烈なものである。流石は皮肉の応酬が挨拶代わりの幻想郷といったところか。
このある意味で本当は怖い幻想郷の前では、幻想入りしたらパルスィとイチャイチャラブラブな性活を送りたい、などという甘すぎる心積もりは直ぐに雲散霧消と化してしまうだろう。仮に幻想入りを果たしても、パルスィから「悪い点を挙げれば枚挙に暇がないのに良い点はひとつもない、それでものうのうと生きていける、貴方の生き意地の汚さが妬ましいわ」と皮肉られて一笑に付されるのがオチだ。イチャイチャラブラブできる可能性など万にひとつもない。そもそも現実の女にすらモテないのだから――なんだろう、視界が急に滲んできた。
「うおぉぉぉっ! きたきたきましたよ妬ましい! 本家本元、パルパルの妬ましい頂きました!」「あのパルパルが俺達に妬ましいって、涙を浮かべながら、初めてそう言ってくれたんだ……こんなに嬉しいことはない」「ああヤバイ、パルパルの妬ましい発言でご飯三杯はイケる! 今夜のオカズは君に決め!」「ところで、俺のここを見てくれ。こいつをどう思う?」「すごく……大きいです……」「パルパルから妬ましいって言われた興奮で、鼻の穴が大きく膨らむのは分かるが、少し落ち着け」「お前のその冷静沈着ぶりが妬ましいわ」
が……駄目っ……!
先に述べた通り、覚妖怪の精神攻撃すら快楽に転換して甘受しかねない変態達である。生半可な皮肉が通用する相手ではないのは火を見るよりも明らかであろう。そうであろう。
物理的な弾幕も言葉による弾幕も駄目。嫉妬心を操る程度の能力を行使しても駄目。両手でスカートを強く握り締め、下唇を強く噛み締めながら、これ以上は涙が溢れないように堪えるパルスィの姿には最早、どうしようもないほどの負け犬ムードが漂っていた。
頭の中は――今すぐに敵のいない自宅に飛んで帰りたい――という思いでいっぱいである。
パルスィはこの時ほど、自身の少女としての恥じらいを激しく憎み、スカートの下にせめてスパッツでも穿いておけば、と強く後悔したことはない。だが、それならそれで美味しいと感じる、スパッツ愛好家なる者が存在することをパルスィは知る由もなかった。
「おいお前ら、ここで何をしている! パルスィに何をした!」
と、そんな色々な意味で終わりが見えず、頭を抱えたくなる現状に救いの手を差し伸べるかの如く、地底全土に轟くような勇ましい声が、突如として、この収拾のつかない状況の中に闖入した。パルスィと変態達が思わず、声のした方へ目を向けると、そこには――ずっしりと腕を組んだまま、地底世界の上空から正しく鬼の形相でこちらを見下ろす、星熊勇儀の姿があった。その額には、ミシャグジ様も思わず「ほほぅ……」と唸るほどの立派な一本角が雄々しく屹立している。
「大丈夫か、パルスィ!」
「勇儀っ……ゆうぎぃぃぃ!」
先の負け犬ムードなどはどこ吹く風。颯爽と現れた勇儀が変態達から守る格好でパルスィを優しく抱き寄せた。途端、パルスィの胸中は安堵感に包まれ、それまで抑えてきたものが堰を切ったのか、大粒の涙が頬を流れ伝い、勇儀の胸元に顔をうずめながら「怖かった……怖かった……」と嗚咽混じりに弱音を零した。
そして、それを受けて「私が来たからにはもう安心だ!」と心強い言葉を返してくれる勇儀の姿はとても頼もしく、パルスィの目にはさながら、彼女が自分の窮地を救ってくれるヒーローのように見えた。
だが、実のところ、パルスィは勇儀を苦手としていた。いや。敵視していたと言っても過言ではない。方や、嫉妬心にまみれた妖怪、方や、泥々とした嫉妬心とは無縁の明朗闊達な性格をした鬼、その相性は水と油、すなわち最悪と言える。しかし、いまこの瞬間、パルスィの胸中には安堵感だけではなく、星熊勇儀という鬼に対する、ほのかな恋心が芽生えようとしていた。根拠はないけど、そうなのだ。
一方の変態達は完全に蚊帳の外に置かれていた。当然だ。ふたりの少女達による、この宝塚的空間に男が割って入るなど、上等なスイーツにシュールストレミングをぶちまけるが如き所行。一瞬にして、全世界はナイトメアと化してしまうだろう。
そのあたりの空気が読めているのかいないのか、全くと判然としないが、先刻まで自由奔放な振る舞いをみせた変態達は途端に口をつぐみ、好みの幼女を発見した幼児性愛者よろしく、狩人のような鋭い眼差しでパルスィと勇儀をまんじりと見やるのであった。
そして、彼等のその値踏みするかのような粘性を伴った視線が、基本的にプライドの高い鬼の神経を逆撫でするのにそう時間はかからなかった。
「なるほど、ふざけた連中かと思ったが、なかなか気骨があるようだ。鬼である私を前にしても恐れ怯むことない、強固な意志を宿した、挑戦的な良い目をしている。その蛮勇に敬意を表して、お前らに褒美をくれてやるよ――灼熱地獄の燃料となる権利だ。さあ、死にたい奴から順に受け取りな!」
変態達に威勢良く啖呵を切った勇儀を見て、ふと何かに思い至ったパルスィは懇願するかのように勇儀の躰にしがみつき、酷く慌てた様子でかぶりを強く振ってみせた。
「駄目! いくら貴女と言えども、こいつらが相手では……」
「なんだい、随分と弱気じゃないか。紅白の巫女や白黒の魔法使いが相手なら兎も角、この星熊勇儀がただの人間を相手にして、少しでも遅れをとるとでも思うのかい?」
「違うの、そうじゃないのよ。もう、そういう次元の話じゃないの」
「大丈夫だパルスィ、私が必ず守ってやるさ! そして、ことが全て片付いたら、ふたりで勝利の祝杯をあげようじゃないか。そうだ、こいつは我ながら良い名案だ。普段、付き合いが悪い分、私の酒にたっぷりと付き合って貰おう。いまから覚悟しとけよ、パルスィ」
そう言って豪快に笑った後、勇儀は徐にパルスィを引き離すと直ぐ様、その顔を再び鬼の形相へと変え、射竦めるかのような、睨み殺すかのような眼光で変態達を見据えた。しかし、それでも尚、彼等は恐れ怯むことなく、むしろ、好奇の宿った瞳でパルスィと勇儀を見つめるばかりであった。
やがて、一向に動きをみせる気配がない彼等に業を煮やしたのか、そちらが来ないのならばこちらからと、勇儀は腰を深く落として臨戦態勢をとり、大きく息を吸ったかと思えば、次の瞬間には地面を強く蹴り、まるで弾丸のような速さで彼等に飛びかかっていった。
一方、ああなってしまった勇儀には最早、何を言っても無駄なのだろうと悟ったパルスィは、変態の群れの中に消えゆく彼女の後ろ姿を諦観の念とともに見送るしかなかった。
鬼の四天王、力の勇儀、語られる怪力乱神と謳われる星熊勇儀の、強靭な肉体としなやかな体捌きから繰り出される拳と蹴りは、ひとつひとつが空気を震わせ、大地を揺るがすほどの重さと神速を伴っていた。それでいて、その動作はまるで優雅に踊っているかのよう。機能美の極致のように一切の無駄がなく、淀みのない動きをみせる勇儀の姿には、畏怖の念よりもまず先に美しいという感想が零れる。
だがしかし、あの変態達が相手では、それらの立ち回りが全て、徒労に終わるのは自明の理であった。
変態達を相手にまるで手応えを感じず、困惑とする勇儀は早々に戦線から離脱してパルスィに詰め寄った。パルスィは小さく溜め息を吐くと、これまでの経緯を語って聞かせ、あの変態達にはあらゆる攻撃手段が全くと通用しないことを懇々と説明する。
「なんて奴らだい……こいつらは一応、人間、なんだよな?」
「今回はたまたま相手が悪かったのよ。だから、そんなに気を落とさないで……」
「だが、私はパルスィに必ず守ってみせると言った! 鬼は嘘が嫌いなんだ、それが……それがこんな……クソッ!」
「いいえ、その言葉に偽りはない、確かに貴女は私を守ってくれたわ。貴女が私の前に現れた時、どれだけ心が救われたことか、貴女が私にかけてくれた言葉のひとつひとつが、どれだけ心強かったことか。いまだってそう……貴女が……勇儀がただ、こうして私の傍に寄り添っていてくれるだけで色々な不安が吹き飛ばされていく。そう――私は充分すぎるほど勇儀に守られているのよ」
そう言うとパルスィは勇儀にそっと自分の躰を預け、潤んだ瞳を向けて「ありがとう、勇儀……」と普段の彼女らしからぬ言葉を紡いだ。一方の勇儀は柄にもなく照れくさそうに顔を赤らめていた。
そうして、互いの視線が熱く交差する中、ふたりの間にどれほどの時間が流れただろうか。流れ星が落ちて消え行くまでの刹那か、はたまた、何もかもが終わりを迎えるまで続くような永遠か。それはふたりにしか分からない。ただ、ふたつの高鳴る鼓動のリズムだけが、ふたりだけの時を刻むのだった。
やがて、全てを受け入れるようにパルスィが瞳を閉じると、勇儀は驚愕のあまりに一瞬目を丸くしたが、得心したように一度だけ頷き、ぎこちない動作でパルスィの肩に優しく手を乗せた。そして、抗いようのない引力で引き寄せられるかのように互いの顔が近付くと、ふたりの鼻先が触れ合い、あわやキマシタワー的な展開になるかと思った――その矢先のことであった。
それまで沈黙を守っていた変態達のひとりが重い口を開き、「勇パルじゃないか……」と感慨深そうにポツリと零した。全てを台無しにするのはその一言だけで充分だった。桃色めいた空間は途端に色をなくし、してやったりと言わんばかりに嵐のような悲惨な現実が顔を覗かせた。
パルスィと勇儀は怖気で肩をビクリと跳ね上がらせると、徐に自分達を取り巻いている現実へと嫌々ながらも目を向けた。すると、そこには――興奮のあまりに赤く染まった顔をして、喜色満面の笑みを浮かべた変態達がふたりに熱の籠った視線を送っていた。よく見れば、彼等の瞳は一様にしっとりと潤んでいる。
「勇パル! 勇パルですよ母さん! まさか、間近で勇パルを拝める日がくるとは思いませんでした!」「東方がある、勇パルがある地球に――日本に生まれて良かったー!」「勇パルこそが俺達が思い描いた幻想郷! 勇パルは俺達のジェラシー! 勇パルはあるよ、ここにあるよ!」「いや待て! これはパルパル攻め、勇儀姐さん受けのようにも見えるから、正確にはパル勇と称するのが正しいのではないか?」「キャーーーっ! パルパルってば積極的ー!」「勇儀姐さん、俺達の大胆乙女なパルパルをよろしくお願いしまーす!」
変態達は溜まり募らせた劣情を一気に解き放つと、どこにそんなものを隠し持っていたのか、やにわに大量の酒とツマミを取り出して、どんちゃん騒ぎの酒盛りを始め出した。
ある者は興奮気味に勇パルの魅力を語り、また、ある者は自己解釈に基づく勇パルへと至る妄想を熱弁し、別のある者は例大祭で見付けた良質な勇パルものの同人誌を我がことのように誉めちぎった。
その後、彼等の宴と勝鬨の声のような『勇パル』コールは三日間に渡って続いた。そうして、三日目の夜のこと、突如として現れた古明地さとりの「近所迷惑だと、キスメさんやヤマメさんから苦情がありまして……」という一言によって、彼等の宴は俄に終焉を迎えた。
どこから来てどこへ帰るというのか、満足した顔を浮かべた変態達は「さとりんの腕、実際はそんなに短くなかったな」という呟きを残して、地底から去って行った。
その後ろ姿を見送り、地霊殿へと引き返す去り際、何もかもを悟ったかのように目を細めるサードアイを胸に、意味深に親指を突き立てながら、好色に彩られた下卑た笑みを浮かべる古明地さとりの顔を、パルスィと勇儀は一生涯忘れることはなかった。
旧都へと架けられた赤い橋――全てはそこから始まり、やがて、長い悪夢から醒めるように全てが終わりを迎えた後には、糸が切れたマリオネットのように力なく地べたに座り込み、憔悴しきった顔をした、パルスィと勇儀だけが残された。
「結局、一体なんだったんだい、あれは……」
「私達の理解の及ばない、何かだったのよ」
「いやはや、とんだ地獄絵図だったねえ、正しく」
勇儀が困ったような顔でくつくつと笑い、その隣でパルスィは複雑そうな表情で大きく溜め息を吐いた。
あれほど散々な辱しめを受けた直後だというのに勇儀は何がそんなに可笑しいのかしら?――パルスィは率直にそう思った。
とてもではないがパルスィ自身は笑える心境にはなれなかった。それだけ今回の一件は屈辱的だったのだ。無論、自身がまだ橋姫となる前、愛していた男に裏切られた屈辱に比べれば些末なものだ。だが、少なくとも、自身の名前を『水橋パルシィ』と真顔で間違われた時よりは遥かに屈辱的だったのは間違いない。
パルスィがふと隣を見れば、もうすっかりと先の精神的ダメージから持ち直したのか、何事もなかったかのように笑顔を張り付かせる鬼がひとり。ひとつのことにあまり執着しないのか、あるいは度がすぎた楽観主義者なのか、どんなことがあっても最後にはこうして笑っている、星熊勇儀という鬼はいつもそうだった。
それがパルスィは酷く鼻持ちならないと感じていた。些末なことにも深く執着しては悲観的に捉えてしまう自分が馬鹿みたいに思えて仕方がなかったからだ。しかし――悪夢とも言うべき死線をともに耐えきった現在、そんな勇儀の姿がとても心強くて頼もしくて安心する、と感じてしまっている自分を心の内に見付けていた。
「ふん……貴女のその、能天気な性格が妬ましいわ」
自身の中に生まれた新たな感情を悟られまいと、パルスィは努めて普段通りの調子で口を開いた。
勇儀が怪訝そうな顔をパルスィに向ける。
「どうしたんだい、急に……?」
「あんなことがあった後なのに、貴女はどうしてそう笑っていられるの?」
「――そりゃあまあ、先に楽しみがあるからねえ」
そう端的に述べると勇儀は重い腰を上げ、服に付着した砂埃を軽く払ってから、パルスィにそっと手を差し伸べた。パルスィは少しばかり逡巡したものの、最終的には怖ず怖ずといった様子で彼女の手を取った。掌から彼女の温もりが伝わり、パルスィの顔がほのかに上気する――俄に鼓動が早鐘を打ち始めた。
「いいかいパルスィ、よく覚えておくんだ。どれほど困難なことが目の前にあっても、その先に必ず、ひとつでもふたつでも良いから、何かしら楽しみを作っておくんだ。そうすりゃあ、今回のようなことがあっても、最後には笑っていられるもんさ」
「楽しみなんて……そんな簡単に言われても」
「そう難しく考える必要はないよ、本当になんだって良いのさ。例えば、私なんかはそうだねえ――付き合いの悪い橋姫様と連れ立って、これから一緒に酒を飲みに行こうかと思ってる。それがもう、いまから楽しみで仕方ないよ」
そうか、勇儀はこれから橋姫と一緒にお酒を飲むのね、橋姫と一緒にお酒を――と、そこまで考えたところで指先にチリチリと謎の痛みが走る。
だが数瞬後、何かに気付いたパルスィは目を丸くして、少年のような悪戯っぽい笑みを浮かべる勇儀の顔を凝視した。チラリと見える彼女の白い歯はやけに眩しかったが、突然の大災害にでも見舞われたかのようにパルスィの頭の中は酷く錯乱しており、それどころではなかった。
パルスィは混乱する頭をどうにか動かし、勇儀の発した言葉を吟味するように脳内で何度も反芻しては、地底ないしは幻想郷で橋姫と呼ばれる存在が自分の他にもいたかどうかを考え始めた。そうして、ようやくと合点がいったのか、勇儀の言う『橋姫』とは私のことかと得心すると、次の瞬間には狼狽して言葉にならない呻き声を零した。
濁流のように血が勢いよく駆け巡り、体温が下がり知らずの上昇をみせる中、沸騰寸前のパルスィは意を決したように地面を力強く蹴り、勇儀の温もりが伝わる手とは反対の手を上下に激しく振りながら、懸命に彼女から逃れようと試みる。
根拠はない、だが、いま勇儀と一緒にお酒を飲んだら色々と不味いことになりそうな気がする、そんな予感がパルスィを突き動かしていた。鼓動の高鳴りはいまや、和太鼓を激しく連打するように早くなり、力強さを増していった。
しかし、鬼の握力がパルスィの遁走を許さなかった。
「おーい、そっちは旧都と反対方向だぞ。どこに行こうってんだい?」
「離してー! どうして私が貴女とお酒を飲まなければいけないの!」
「どうしてって……そう約束したじゃないか。ことが全て片付いたら、ふたりで勝利の祝杯をあげようって」
「そんなの知らないー! 帰るー! 私もうお家に帰るー!」
「なんだい、つれないねえ――あの時の積極的なパルスィはどこにいっちまったんだい? あれには流石の私も驚かされたってのに」
パルスィの動きがはたと止まる。と、まるで錆び付いて動きが鈍くなったような所作で首を捻り、訝しげな目で勇儀の顔を窺った。あの時とはなんだ?――彼女がなんのことを言っているのか、パルスィは直ぐには理解できなかった。
得体の知れない恐怖が腹の中を這いずり廻る中、それでも脳内の引き出しを忙しなく探り、『あの時』に該当する記憶を懸命に見付け出そうとした。走馬灯の如く、遠い過去から順繰りと実に様々な記憶が頭の中を通り過ぎる。その度にパルスィは橋の欄干に頭を強く打ち付けたい衝動に駆られた。
こういった場合、何故だか思い出されるのは嫌な記憶ばかりだ。例えば、幸せそうな誰かを見る度に左目を押さえながら「くっ……鎮まれ、鎮まれ、私の嫉妬心」などと言って悶えていた時の記憶だったり、はたまた、世に嫉妬の種を蒔こうと画策して何を血迷ったのか、丑の刻参り教室なるものを開いたが、現れた生徒が人形を引き連れた魔女ただひとりだけだった時の記憶だったり。しかし、いずれも勇儀の言った『あの時』に合致するものとは思えなかった。
するとやがて、記憶の探索は最も近しい過去の出来事にまで及び、そこで俄にパルスィの背筋に悪寒が走った。
気味の悪い連中から一方的な辱しめを受けた忌々しい記憶。あまりにも忌々しい為、地底世界の更に地底へと封印したい記憶。いま振り返ってみても、色々な意味で実に酷い有り様だった。もしも、あの時、星熊勇儀が助けに来てくれなければ、パルスィの心は修復不可能なほど壊れてしまっていたかも知れない、この二次創作小説も投げっぱなしジャーマンで終わっていたかも知れない。身が凍り付くような話だ。
――良かった、勇儀が助けに来てくれて、本当に良かった。
噛み締めるように心の中で述懐する。
パルスィの脳内は直ぐ様、自分を守るように変態達の前に立ち塞がった勇儀の姿、彼女が掛けてくれた言葉の数々で埋め尽くされた。そうして、色々な場面の勇儀を思い返していた時、パルスィは不意に見付けてしまったのだ、『あの時』の記憶を。
そう――それは変態達が固唾を飲んで見守る、衆人環視の状況下のことであった。思い出す度に顔が火照ってしまうほど、改めて記述するのが恥ずかしくて躊躇われるほど、実に大胆な行動をやらかしていた自身の姿がフラッシュバックして、パルスィの脳裏にまざまざと『あの時』の記憶が甦った。
途端、その躰は石化したように固まり、額からはじわりじわりと嫌な汗が流れ始めた。
「ほーら、いつまでそうしてんだい。時間が勿体ないじゃないか。夜はまだまだこれからとは言え、楽しい酒の時間ってのは、驚くほど早く流れちまうんだからさあ」
「わっ……忘れなさい! あの時のことは即刻忘れなさい!」
「あははっ! そいつは無理な相談ってヤツさ。まあ、もっとも、仮に忘れることができたとしても、地霊殿の主様がいつまでもネチネチと覚えてて、会う度に思い出させてくれるだろうけどねえ」
「――古明地さとり? あいつがなんだって言うの……って、まさかあいつ、私達の記憶を読んで! ああ、だから帰り際にあんな顔をして……!」
「そういうこった。さあ無駄話はこれぐらいにして、さっさと旧都へ向かおう。最近、上等な酒を出してくれる店を見付けてねえ、良い機会だから、是非ともパルスィにも紹介したい」
最早、抵抗する意思を完全になくしたのか、あるいは抵抗しても無駄だと悟ったのか、パルスィは落胆したように肩を落とすと、勇儀のなすがままに手を引かれ、トボトボとした足取りで旧都へと歩き出した。
それと同時に頭の中では様々な思惑が駆け巡っていた。確実に古明地さとりの息の根を止める、その為の方法をパルスィは模索していた。
そんなパルスィのどす黒い思惑などは知らぬ存ぜぬと、隣を歩いている勇儀から陽気な鼻歌が零れ出した。それは勇儀が以前に博麗神社の宴会で聴いた、プリズムリバー三姉妹が奏でる楽曲のものだった。もっとも、ところどころ調子が外れている為、元の曲を知る者でさえ、そうと言われなければ分からないほど大胆なアレンジが施されていたが。しかし、それでも楽しいという気持ちだけは猛烈に伝わってくる鼻歌だった。
パルスィはその調子の外れた鼻歌に眉を潜めると、どす黒さに染まった思考を一旦中断させ、思わず、鼻歌の発信源に苦情を吐露した。
「さっきからなんなの、その変な鼻歌は」
「ん……これかい? 前に地上の宴会に行った時、プリズムリバー三姉妹とかいうのが、こんな感じの曲をやってたのを思い出してねえ」
「新手のちんどん屋か何かなのかしら、そのなんたら三姉妹っていうのは?」
「よく分からないけど、まあ、実に楽しい奴等だったよ。人間の中には、あの子らの熱烈なファンもいるって話さ」
「変わった人間もいるのね……私にはどう聴いても、曲というより、ただの騒音のようにしか思えないもの」
「これはまた、手厳しいねえ」
そう言って苦笑したのも束の間、勇儀は気を取り直したように鼻歌を再開する。鬼にそれとなく苦言を呈しても糠に釘ということらしい。
再度、否応なく耳に闖入する鼻歌にパルスィは苦虫を噛み潰したような顔をした。だが、そこでふと、先程までのどす黒い感情が綺麗サッパリとなくなっていることに気付き――これはどうしたことか?――と自身の胸に手を当てた。それは戸惑いを隠せないほど不思議な感覚だった。
特になんらかの意図があった訳ではなく、パルスィの視線は無意識に促されるまま、隣を歩いている勇儀へと向けられた。そして、満面の笑顔を張り付かせ、陽気な鼻歌を垂れ流す鬼の姿を見て、パルスィはそういうことかとひとり納得した。
つまり――この鬼の前では些末なことに執着するのが馬鹿らしくなる――パルスィは不思議な感覚の原因をそう解釈した。そもそも、あんな調子の外れた鼻歌を直ぐ隣で垂れ流されたのでは、深刻に物事を考える気も失せてしまう。
「――ほんと、その能天気さが妬ましいわね」
「ん、今度はなんだい?」
「なんでもないわ、気にしないで」
気付けば、眼前に旧都の明かりが朧気に見えてきた。煌びやかと言えるほどの華やかさはなく、眩いばかりの鮮烈さもなく、地味とも思える旧都の明かりだが、その明るさは妙に心を温かくする。それは遠い昔に地上で見た、月明かりに似ているとパルスィは思った。
地上から追いやられた日陰者にとって、明暗をくっきりと浮き彫りにする太陽の差別的な光は心に毒しか与えないが、暗闇の中にあっても自身の存在をひっそりと照らしてくれる、月の慎ましい光はどこか安心感を与えてくれるのだ。
思わず、パルスィは繋いだ手にギュッと力を込めた。すると、勇儀は横目でチラリとパルスィを見やり、ニヤリと口角をあげると、応答を返すように繋いだ手に力を込めた。その反応が嬉しくもあり、また、恥ずかしくもあってか、パルスィは表情が緩みそうになった。
「と……ところで。さっき勝利の祝杯とか言ってたけど、よく考えたら、それっておかしくないかしら? 結局、私達はあいつらに終始、振り回されっぱなしだった訳でしょう?」
「なるほど。悔しいけど、確かにその通りだ。それじゃあ、うーん、そうだねえ……勝利の祝杯ってのは訂正して、ここはひとつ――可愛いパルスィが沢山見れたことを祝して――ということにしておくかな」
「――馬鹿! ほんともう馬鹿! そういう恥ずかしいことを平気で言える、貴女ってほんと馬鹿! その馬鹿さ加減が妬ましいわ!」
顔を真っ赤にしてヒステリック気味に喚き立てるパルスィを勇儀が豪快に笑って受け流す。傍から見れば、まるで夫婦漫才のようだった。しかし、ふたりをよく知る者からすれば、それは奇妙な光景に映ったことだろう。何せ、あの橋姫が鬼と手を繋いで仲良さそうに歩いているのだから。
そうして、なんだかんだと言い合いながらも、なんだかんだとじゃれ合いながらも、やがて、ふたりは旧都の夜の繁華街へと消えていった。
その後のことは橋姫と鬼のふたりだけにしか分からないことである。
何事が起こったのか、瞬時に理解を得るには酷と思えるほど、不可解な情景が広がっていた。いや。仮にどれだけの時間を費やしても理解を得るのは困難を極めるだろう。それこそ考えるだけ無駄、無意味に時間を浪費するだけだった。そもそも、哲学的な深いテーマ性を孕んでいる訳でもない、思いつきと勢いが混ぜるな危険とばかりにドメスト的な融合を果たした、見切り発車感がありありの二次創作小説の内容に対して、理解を試みようとすること自体が既にナンセンスだった。
幻想郷の地下深くに存在する旧地獄には、かつて、地上を活動の場としていたが、人間にとってはあまりにも忌むべき、禍々しい力を持っていたが故に迫害を受けた妖怪達が移り住んでいた。
その旧地獄の、地上と地底を結ぶ縦穴を潜り抜けた先に、まるで人の血を吸ったかのように赤く染まった橋が架けられている。それは旧都へと続いている正に架け橋であり、頼光四天王のひとり、かの源綱が嫉妬の鬼と遭遇した、一条戻橋を彷彿とさせる造りをしていた。
その橋の中央で欄干に凭れ掛かり、眉根を寄せて口元をきつく結び、多量の脂汗をかきながら、地底の番人・水橋パルスィは視界いっぱいに広がる不可解な情景にただただ戦慄していた。
「妬ましいって言いながらも、すっごく良い笑顔のパルパル、メチャクチャ可愛いよー!」「嫉妬深いのに眩しい笑顔が素敵ー!」「わいの求めた地底の太陽はここにあったんやー!」「サブタレイニアンサン! サブタレイニアンサン!」「ほんま、パルパルの笑顔は地底全土を優しく見守る天照大御神やで!」
パルスィは緑色に妖しく光る瞳を忙しなく動かし、半ば嫌々ながらも、改めて周囲に広がる光景に目を向けた。その様はまるで、数多の変態達に取り囲まれ、恐れ怯む少女のそれのようであったが、事実、あいさつ仮面ヨロシクと言わんばかりにブリーフパンツのみを纏い、インスマス面を彷彿とさせる滑稽な面構えをした、一級品の変態達が水橋パルスィを取り囲んでいた。
果たして、こいつらは何者なのか――パルスィは酷く戸惑いながらも努めて冷静に思考を巡らせた。まず、彼等からは妖力といったものを一切感じなかった。すなわち、彼等は妖怪やそれに準ずる類いの何かではない。また、霊力や魔力といった特殊な力も感じないことから、どこぞの巫女や魔法使いのような、一線を越えてしまった人間でもないのが分かった。
「俺、パルパルと結婚したら、わざと他の女とイチャイチャして嫉妬させた後、安心させるようにそっと抱き寄せて、赤面乙女顔になったパルパルの耳を甘噛みするのが夢なんだ……」「赤面乙女顔のパルパル! そういうのもあるのか」「うむ、確かにパルパルのあの尖った耳は至高の料理、我々の食指を誘ってやまないな」「ふっ……そこに気付くとはやはり天才か」「だが、叶わない夢はただの夢だ」「夢で終わらせるもんか。だって俺は自分を信じているもん。自分を信じて夢を追い続けていれば――夢はいつか必ず叶うんだ!」「素晴らしい――やはり人間は素敵だ」「鑑や……ほんま、あんた妬ましいまでの漢の鑑やで!」
後光を背負いながらアルカイックスマイルをきめる変態と、その彼の夢を追う姿勢に熱いパトスが迸った変態達がうおーんと涙と鼻水を垂れ流した。
一方、セクハラ紛いの妄想を聞かされ、これ以上は堪えきれないといった様子でパルスィは顔面を両手で覆うと、躰の芯から顔全体に向けて、それこそ頭の天辺や耳の先端まで急速に血が巡っていくのを感じていた。
――さっきから黙って聞いていれば、私のことをその……可愛いだとか笑顔が素敵だとか、挙げ句、結婚だの抱き寄せるだの甘噛みだのと。こいつらは何を言っているの? 馬鹿なの? そもそも、こいつらは一体なんなのよ? 本当にもう速やかに死んでくれれば良いのに。あと、そのパルパルって呼び方を即刻止めろ!
突如として地底世界に現れては、ひたすらに水橋パルスィ讃歌を謳い続け、三千世界に混沌の闇をもたらさんとする、この一騎当千の変態達は本当に何者なのだろうか。パルスィの推察によれば、妖怪でもなければ、特殊な力を持った人間でもないらしい。ならば、なんの変哲もない極普通の人間だとでも言うのだろうか。
しかし、それは否――圧倒的な否であった。
時は十数分前に遡る。パルスィが変態達との初対面を果たした時のことだ。幼児性愛者が醸し出すそれのような、出所が知れないながらも、どうしようもなく滲み出てきてしまう危なげなオーラを纏った彼等を見て、パルスィは瞬時に身の危険を感じ、彼等に向けて脊髄反射的に弾幕攻撃を仕掛けたのだった。その弾幕は緋蜂もかくやと言うほど熾烈を極めており、ルナシューターですら、一分ともたずに満身創痍となるほどであった。
だが、実際の結果は意外なもの――まるで無形の煙を相手にしているが如く、まるで夢想天生状態の某巫女を相手にしているが如く、当たり判定などあんまり無いと言わんばかりに変態達は全くの無傷であった。こうなると最早、彼等を普通の人間と見なすのは些か無理があるように思われる。
しかし、前述した通り、彼等は何ひとつ特殊な力を持たない人間である。本来ならば、そんな人間が妖怪の本気の弾幕を前に無傷でいられる訳がない。となると、上記の常人離れした事実をどう処理すれば良いのだろうか。
また、この変態達は結局のところ何者なんだ、東方キャラでもない輩の素性云々の話でどこまで引っ張る気だ、いい加減にしろ、といったややこしい問題も同時に浮上するだろう。
まさか、こいつらの設定なんぞ全く考えてなかった、とは口が裂けても言えない。筆の赴くまま書き殴ってきた弊害がここにきて牙を剥いてきた。飼い犬に手を噛まれるとはこのことか。
だが、腐っていても仕様がない。これらの難題を解決する為、思いつきと勢いだけで二次創作小説なんて書くもんじゃないな、と激しく後悔しながらも、ここはひとつ無い知恵を絞って考えるしかないのだ。
そうして、熟考を重ねること数分――精神的疲労がピークに達したので、気分転換に『東方茨歌仙』を読んで霊夢の可愛さにニヤニヤしていた、当にその時だった。電流走るが如き、圧倒的な閃きが脳内を駆け巡った。
そう……そうなのだ。この変態達は要するに実体をもたぬ思念体のような存在の人間達なのだ。つまりは実体をもたぬが故、弾幕戦においては常に無敵状態という訳なのだ。良し。そういう設定でいこう。
実体をもたぬ思念体であるが故、当然のこと、物理的な攻撃は完全に無効化される。あまりにもチート過ぎる設定を数瞬前に与えられ、僕の考えた最強のメアリー・スー状態へと変貌を遂げた変態達。最早、まともに相手をするのは無謀と言わざるを得ない。
しかし、心の平穏を取り戻して輝かしい明日を手に入れる為にも、パルスィには彼等を討ち滅ぼす以外の選択肢はなかった。いっそのこと、幻想郷の少女らしく宙を飛び、彼等から逃げる手も考えられる。だが、それは迂闊とも言うべき悪手であった。何故ならば、変態達に絶景と称するべき蠱惑的なローアングル、もとい、格好のエサを与えるやも知れないからだ。種族は妖怪であるがパルスィも心は少女である、そういった恥じらいがない訳でもなかった。となれば、この場は攻めに転じるより外はないのだが、果たして、彼等を退けうる手段など存在するのだろうか。
そんな打つ手の見当たらない絶望的な状況の最中、パルスィにふと天啓が舞い降りた。
天啓いわく――神がチェーンソーで両断されるご時世、負けイベントでもない限り、この世に完全無欠な敵など存在しない、必ずやどこかに弱点があるものだ。すなわち、物理攻撃に耐性があるのならば、セオリー的に言って、逆に精神攻撃が弱点だと考えられる。そして、奇しくも、パルスィには一種の精神攻撃とも言うべき、嫉妬心を操る程度の能力が備わっており、これは正しく、ご都合主義的な渡りに船の展開と言える。ここまで完璧にお膳立てが整っているのならば、演出のドラマツルギー的な観点から見ても――パルスィが能力を行使する、なんやかんやで変態達が消滅して混沌ばかりが増していく現状に終止符が打たれる、同時に終着点を完全に見失った、この二次創作小説にも幕を下ろせる、コメント欄で酷評を受ける――という図式が容易に成立するだろう。だから頑張れ、パルスィ!
過度に強引な論法を展開する天啓に対して、パルスィは――二次創作小説って何のことかしら?――と疑問に思いながらも、取り敢えず、天啓に促されるまま緑色をした瞳を更に妖しく光らせ、嫉妬心を操る能力を行使するのであった。
すると、どうだろう――俄に変態達がざわつき、そわそわと落ち着きをなくし始めた。そして、鈍色に卑しく光る眼光は徐々に濁りを増していき、そのドブのように腐りきった目は正しく、嫉妬心に駆られた人間のそれと同じになった。とどのつまり、パルスィの放った精神攻撃の効果は抜群だったのだ。
「嗚呼、妬ましい妬ましい。俺の中に溢れる甚大なる量のパルパル愛を、遥かに凌駕してしまうほどのお前らの太くて逞しいパルパル愛が妬ましい」「俺が他の女と仲良くしてると、激しい嫉妬のあまり涙目になって怒り出す、ちょっとヤンデレ気味のパルパル――そんな俺の妄想が色褪せるほどの鮮やかな妄想を生み出す、お前らの悪魔じみた発想力、素晴らしくも逞しい妄想力が妬ましい」「妬ましい……可愛すぎて愛しすぎるパルパルと会いたい時にいつでも会えて、あまつさえ、逞しい妄想力によって、誰もがパルパルとのカップリング候補となりうる、幻想郷の少女達が妬ましい」「ぶっちゃけ、星熊勇儀が妬ましい」
確かに効果は抜群だった。しかし、それは無意味だった。例えるならば、アンデッド属性の敵に即死魔法をかけるようなものだった。状況は何も変わらない――むしろ、醜い嫉妬に駆られている分、変態達の薄気味悪さに拍車がかかり、別の意味で悪化の一途を辿ったと言える。
そもそもが正味な話、嫉妬心を操った程度で彼等をどうにかできる道理は欠片も存在しないのだ。それこそ、覚妖怪のように他者の心を読み、トラウマを抉り出して黒歴史をほじくり返す、といった強烈な精神攻撃ならば、あるいは光明も差したかも知れないが。もっとも、豪傑中の豪傑が集った変態梁山泊と謳われてもおかしくない彼等ならば、その精神攻撃すらも、ご褒美と称して倒錯的な快楽に転換しかねない。
最早、何をやっても駄目なのか。そっと能力の行使を止めたパルスィの眦にじわりと涙が溢れ、やり場のない怒りと変態達からの辱しめによって、よく熟れたトマトのようにその顔は赤く染まっていった。そして、悄然としたように肩を落とし、涙が零れないように天を仰ぐのだった。
「ふふっ……道行く人々に白眼視されても、世界中の女性から生理的に無理と言われても、親兄弟親戚から腫れ物を扱うような態度をとられても、決して折れることがないであろう、貴方達の卑しくも逞しい変態根性が妬ましいわ」
完全に打つ手を見失ったパルスィが放った精一杯の皮肉、最後の強がりはしかし、鋭く尖った封魔針のようにちくりグサリと突き刺してくるほどの辛辣さがあった。言葉による弾幕、正にそう呼ぶに相応しい強烈なものである。流石は皮肉の応酬が挨拶代わりの幻想郷といったところか。
このある意味で本当は怖い幻想郷の前では、幻想入りしたらパルスィとイチャイチャラブラブな性活を送りたい、などという甘すぎる心積もりは直ぐに雲散霧消と化してしまうだろう。仮に幻想入りを果たしても、パルスィから「悪い点を挙げれば枚挙に暇がないのに良い点はひとつもない、それでものうのうと生きていける、貴方の生き意地の汚さが妬ましいわ」と皮肉られて一笑に付されるのがオチだ。イチャイチャラブラブできる可能性など万にひとつもない。そもそも現実の女にすらモテないのだから――なんだろう、視界が急に滲んできた。
「うおぉぉぉっ! きたきたきましたよ妬ましい! 本家本元、パルパルの妬ましい頂きました!」「あのパルパルが俺達に妬ましいって、涙を浮かべながら、初めてそう言ってくれたんだ……こんなに嬉しいことはない」「ああヤバイ、パルパルの妬ましい発言でご飯三杯はイケる! 今夜のオカズは君に決め!」「ところで、俺のここを見てくれ。こいつをどう思う?」「すごく……大きいです……」「パルパルから妬ましいって言われた興奮で、鼻の穴が大きく膨らむのは分かるが、少し落ち着け」「お前のその冷静沈着ぶりが妬ましいわ」
が……駄目っ……!
先に述べた通り、覚妖怪の精神攻撃すら快楽に転換して甘受しかねない変態達である。生半可な皮肉が通用する相手ではないのは火を見るよりも明らかであろう。そうであろう。
物理的な弾幕も言葉による弾幕も駄目。嫉妬心を操る程度の能力を行使しても駄目。両手でスカートを強く握り締め、下唇を強く噛み締めながら、これ以上は涙が溢れないように堪えるパルスィの姿には最早、どうしようもないほどの負け犬ムードが漂っていた。
頭の中は――今すぐに敵のいない自宅に飛んで帰りたい――という思いでいっぱいである。
パルスィはこの時ほど、自身の少女としての恥じらいを激しく憎み、スカートの下にせめてスパッツでも穿いておけば、と強く後悔したことはない。だが、それならそれで美味しいと感じる、スパッツ愛好家なる者が存在することをパルスィは知る由もなかった。
「おいお前ら、ここで何をしている! パルスィに何をした!」
と、そんな色々な意味で終わりが見えず、頭を抱えたくなる現状に救いの手を差し伸べるかの如く、地底全土に轟くような勇ましい声が、突如として、この収拾のつかない状況の中に闖入した。パルスィと変態達が思わず、声のした方へ目を向けると、そこには――ずっしりと腕を組んだまま、地底世界の上空から正しく鬼の形相でこちらを見下ろす、星熊勇儀の姿があった。その額には、ミシャグジ様も思わず「ほほぅ……」と唸るほどの立派な一本角が雄々しく屹立している。
「大丈夫か、パルスィ!」
「勇儀っ……ゆうぎぃぃぃ!」
先の負け犬ムードなどはどこ吹く風。颯爽と現れた勇儀が変態達から守る格好でパルスィを優しく抱き寄せた。途端、パルスィの胸中は安堵感に包まれ、それまで抑えてきたものが堰を切ったのか、大粒の涙が頬を流れ伝い、勇儀の胸元に顔をうずめながら「怖かった……怖かった……」と嗚咽混じりに弱音を零した。
そして、それを受けて「私が来たからにはもう安心だ!」と心強い言葉を返してくれる勇儀の姿はとても頼もしく、パルスィの目にはさながら、彼女が自分の窮地を救ってくれるヒーローのように見えた。
だが、実のところ、パルスィは勇儀を苦手としていた。いや。敵視していたと言っても過言ではない。方や、嫉妬心にまみれた妖怪、方や、泥々とした嫉妬心とは無縁の明朗闊達な性格をした鬼、その相性は水と油、すなわち最悪と言える。しかし、いまこの瞬間、パルスィの胸中には安堵感だけではなく、星熊勇儀という鬼に対する、ほのかな恋心が芽生えようとしていた。根拠はないけど、そうなのだ。
一方の変態達は完全に蚊帳の外に置かれていた。当然だ。ふたりの少女達による、この宝塚的空間に男が割って入るなど、上等なスイーツにシュールストレミングをぶちまけるが如き所行。一瞬にして、全世界はナイトメアと化してしまうだろう。
そのあたりの空気が読めているのかいないのか、全くと判然としないが、先刻まで自由奔放な振る舞いをみせた変態達は途端に口をつぐみ、好みの幼女を発見した幼児性愛者よろしく、狩人のような鋭い眼差しでパルスィと勇儀をまんじりと見やるのであった。
そして、彼等のその値踏みするかのような粘性を伴った視線が、基本的にプライドの高い鬼の神経を逆撫でするのにそう時間はかからなかった。
「なるほど、ふざけた連中かと思ったが、なかなか気骨があるようだ。鬼である私を前にしても恐れ怯むことない、強固な意志を宿した、挑戦的な良い目をしている。その蛮勇に敬意を表して、お前らに褒美をくれてやるよ――灼熱地獄の燃料となる権利だ。さあ、死にたい奴から順に受け取りな!」
変態達に威勢良く啖呵を切った勇儀を見て、ふと何かに思い至ったパルスィは懇願するかのように勇儀の躰にしがみつき、酷く慌てた様子でかぶりを強く振ってみせた。
「駄目! いくら貴女と言えども、こいつらが相手では……」
「なんだい、随分と弱気じゃないか。紅白の巫女や白黒の魔法使いが相手なら兎も角、この星熊勇儀がただの人間を相手にして、少しでも遅れをとるとでも思うのかい?」
「違うの、そうじゃないのよ。もう、そういう次元の話じゃないの」
「大丈夫だパルスィ、私が必ず守ってやるさ! そして、ことが全て片付いたら、ふたりで勝利の祝杯をあげようじゃないか。そうだ、こいつは我ながら良い名案だ。普段、付き合いが悪い分、私の酒にたっぷりと付き合って貰おう。いまから覚悟しとけよ、パルスィ」
そう言って豪快に笑った後、勇儀は徐にパルスィを引き離すと直ぐ様、その顔を再び鬼の形相へと変え、射竦めるかのような、睨み殺すかのような眼光で変態達を見据えた。しかし、それでも尚、彼等は恐れ怯むことなく、むしろ、好奇の宿った瞳でパルスィと勇儀を見つめるばかりであった。
やがて、一向に動きをみせる気配がない彼等に業を煮やしたのか、そちらが来ないのならばこちらからと、勇儀は腰を深く落として臨戦態勢をとり、大きく息を吸ったかと思えば、次の瞬間には地面を強く蹴り、まるで弾丸のような速さで彼等に飛びかかっていった。
一方、ああなってしまった勇儀には最早、何を言っても無駄なのだろうと悟ったパルスィは、変態の群れの中に消えゆく彼女の後ろ姿を諦観の念とともに見送るしかなかった。
鬼の四天王、力の勇儀、語られる怪力乱神と謳われる星熊勇儀の、強靭な肉体としなやかな体捌きから繰り出される拳と蹴りは、ひとつひとつが空気を震わせ、大地を揺るがすほどの重さと神速を伴っていた。それでいて、その動作はまるで優雅に踊っているかのよう。機能美の極致のように一切の無駄がなく、淀みのない動きをみせる勇儀の姿には、畏怖の念よりもまず先に美しいという感想が零れる。
だがしかし、あの変態達が相手では、それらの立ち回りが全て、徒労に終わるのは自明の理であった。
変態達を相手にまるで手応えを感じず、困惑とする勇儀は早々に戦線から離脱してパルスィに詰め寄った。パルスィは小さく溜め息を吐くと、これまでの経緯を語って聞かせ、あの変態達にはあらゆる攻撃手段が全くと通用しないことを懇々と説明する。
「なんて奴らだい……こいつらは一応、人間、なんだよな?」
「今回はたまたま相手が悪かったのよ。だから、そんなに気を落とさないで……」
「だが、私はパルスィに必ず守ってみせると言った! 鬼は嘘が嫌いなんだ、それが……それがこんな……クソッ!」
「いいえ、その言葉に偽りはない、確かに貴女は私を守ってくれたわ。貴女が私の前に現れた時、どれだけ心が救われたことか、貴女が私にかけてくれた言葉のひとつひとつが、どれだけ心強かったことか。いまだってそう……貴女が……勇儀がただ、こうして私の傍に寄り添っていてくれるだけで色々な不安が吹き飛ばされていく。そう――私は充分すぎるほど勇儀に守られているのよ」
そう言うとパルスィは勇儀にそっと自分の躰を預け、潤んだ瞳を向けて「ありがとう、勇儀……」と普段の彼女らしからぬ言葉を紡いだ。一方の勇儀は柄にもなく照れくさそうに顔を赤らめていた。
そうして、互いの視線が熱く交差する中、ふたりの間にどれほどの時間が流れただろうか。流れ星が落ちて消え行くまでの刹那か、はたまた、何もかもが終わりを迎えるまで続くような永遠か。それはふたりにしか分からない。ただ、ふたつの高鳴る鼓動のリズムだけが、ふたりだけの時を刻むのだった。
やがて、全てを受け入れるようにパルスィが瞳を閉じると、勇儀は驚愕のあまりに一瞬目を丸くしたが、得心したように一度だけ頷き、ぎこちない動作でパルスィの肩に優しく手を乗せた。そして、抗いようのない引力で引き寄せられるかのように互いの顔が近付くと、ふたりの鼻先が触れ合い、あわやキマシタワー的な展開になるかと思った――その矢先のことであった。
それまで沈黙を守っていた変態達のひとりが重い口を開き、「勇パルじゃないか……」と感慨深そうにポツリと零した。全てを台無しにするのはその一言だけで充分だった。桃色めいた空間は途端に色をなくし、してやったりと言わんばかりに嵐のような悲惨な現実が顔を覗かせた。
パルスィと勇儀は怖気で肩をビクリと跳ね上がらせると、徐に自分達を取り巻いている現実へと嫌々ながらも目を向けた。すると、そこには――興奮のあまりに赤く染まった顔をして、喜色満面の笑みを浮かべた変態達がふたりに熱の籠った視線を送っていた。よく見れば、彼等の瞳は一様にしっとりと潤んでいる。
「勇パル! 勇パルですよ母さん! まさか、間近で勇パルを拝める日がくるとは思いませんでした!」「東方がある、勇パルがある地球に――日本に生まれて良かったー!」「勇パルこそが俺達が思い描いた幻想郷! 勇パルは俺達のジェラシー! 勇パルはあるよ、ここにあるよ!」「いや待て! これはパルパル攻め、勇儀姐さん受けのようにも見えるから、正確にはパル勇と称するのが正しいのではないか?」「キャーーーっ! パルパルってば積極的ー!」「勇儀姐さん、俺達の大胆乙女なパルパルをよろしくお願いしまーす!」
変態達は溜まり募らせた劣情を一気に解き放つと、どこにそんなものを隠し持っていたのか、やにわに大量の酒とツマミを取り出して、どんちゃん騒ぎの酒盛りを始め出した。
ある者は興奮気味に勇パルの魅力を語り、また、ある者は自己解釈に基づく勇パルへと至る妄想を熱弁し、別のある者は例大祭で見付けた良質な勇パルものの同人誌を我がことのように誉めちぎった。
その後、彼等の宴と勝鬨の声のような『勇パル』コールは三日間に渡って続いた。そうして、三日目の夜のこと、突如として現れた古明地さとりの「近所迷惑だと、キスメさんやヤマメさんから苦情がありまして……」という一言によって、彼等の宴は俄に終焉を迎えた。
どこから来てどこへ帰るというのか、満足した顔を浮かべた変態達は「さとりんの腕、実際はそんなに短くなかったな」という呟きを残して、地底から去って行った。
その後ろ姿を見送り、地霊殿へと引き返す去り際、何もかもを悟ったかのように目を細めるサードアイを胸に、意味深に親指を突き立てながら、好色に彩られた下卑た笑みを浮かべる古明地さとりの顔を、パルスィと勇儀は一生涯忘れることはなかった。
旧都へと架けられた赤い橋――全てはそこから始まり、やがて、長い悪夢から醒めるように全てが終わりを迎えた後には、糸が切れたマリオネットのように力なく地べたに座り込み、憔悴しきった顔をした、パルスィと勇儀だけが残された。
「結局、一体なんだったんだい、あれは……」
「私達の理解の及ばない、何かだったのよ」
「いやはや、とんだ地獄絵図だったねえ、正しく」
勇儀が困ったような顔でくつくつと笑い、その隣でパルスィは複雑そうな表情で大きく溜め息を吐いた。
あれほど散々な辱しめを受けた直後だというのに勇儀は何がそんなに可笑しいのかしら?――パルスィは率直にそう思った。
とてもではないがパルスィ自身は笑える心境にはなれなかった。それだけ今回の一件は屈辱的だったのだ。無論、自身がまだ橋姫となる前、愛していた男に裏切られた屈辱に比べれば些末なものだ。だが、少なくとも、自身の名前を『水橋パルシィ』と真顔で間違われた時よりは遥かに屈辱的だったのは間違いない。
パルスィがふと隣を見れば、もうすっかりと先の精神的ダメージから持ち直したのか、何事もなかったかのように笑顔を張り付かせる鬼がひとり。ひとつのことにあまり執着しないのか、あるいは度がすぎた楽観主義者なのか、どんなことがあっても最後にはこうして笑っている、星熊勇儀という鬼はいつもそうだった。
それがパルスィは酷く鼻持ちならないと感じていた。些末なことにも深く執着しては悲観的に捉えてしまう自分が馬鹿みたいに思えて仕方がなかったからだ。しかし――悪夢とも言うべき死線をともに耐えきった現在、そんな勇儀の姿がとても心強くて頼もしくて安心する、と感じてしまっている自分を心の内に見付けていた。
「ふん……貴女のその、能天気な性格が妬ましいわ」
自身の中に生まれた新たな感情を悟られまいと、パルスィは努めて普段通りの調子で口を開いた。
勇儀が怪訝そうな顔をパルスィに向ける。
「どうしたんだい、急に……?」
「あんなことがあった後なのに、貴女はどうしてそう笑っていられるの?」
「――そりゃあまあ、先に楽しみがあるからねえ」
そう端的に述べると勇儀は重い腰を上げ、服に付着した砂埃を軽く払ってから、パルスィにそっと手を差し伸べた。パルスィは少しばかり逡巡したものの、最終的には怖ず怖ずといった様子で彼女の手を取った。掌から彼女の温もりが伝わり、パルスィの顔がほのかに上気する――俄に鼓動が早鐘を打ち始めた。
「いいかいパルスィ、よく覚えておくんだ。どれほど困難なことが目の前にあっても、その先に必ず、ひとつでもふたつでも良いから、何かしら楽しみを作っておくんだ。そうすりゃあ、今回のようなことがあっても、最後には笑っていられるもんさ」
「楽しみなんて……そんな簡単に言われても」
「そう難しく考える必要はないよ、本当になんだって良いのさ。例えば、私なんかはそうだねえ――付き合いの悪い橋姫様と連れ立って、これから一緒に酒を飲みに行こうかと思ってる。それがもう、いまから楽しみで仕方ないよ」
そうか、勇儀はこれから橋姫と一緒にお酒を飲むのね、橋姫と一緒にお酒を――と、そこまで考えたところで指先にチリチリと謎の痛みが走る。
だが数瞬後、何かに気付いたパルスィは目を丸くして、少年のような悪戯っぽい笑みを浮かべる勇儀の顔を凝視した。チラリと見える彼女の白い歯はやけに眩しかったが、突然の大災害にでも見舞われたかのようにパルスィの頭の中は酷く錯乱しており、それどころではなかった。
パルスィは混乱する頭をどうにか動かし、勇儀の発した言葉を吟味するように脳内で何度も反芻しては、地底ないしは幻想郷で橋姫と呼ばれる存在が自分の他にもいたかどうかを考え始めた。そうして、ようやくと合点がいったのか、勇儀の言う『橋姫』とは私のことかと得心すると、次の瞬間には狼狽して言葉にならない呻き声を零した。
濁流のように血が勢いよく駆け巡り、体温が下がり知らずの上昇をみせる中、沸騰寸前のパルスィは意を決したように地面を力強く蹴り、勇儀の温もりが伝わる手とは反対の手を上下に激しく振りながら、懸命に彼女から逃れようと試みる。
根拠はない、だが、いま勇儀と一緒にお酒を飲んだら色々と不味いことになりそうな気がする、そんな予感がパルスィを突き動かしていた。鼓動の高鳴りはいまや、和太鼓を激しく連打するように早くなり、力強さを増していった。
しかし、鬼の握力がパルスィの遁走を許さなかった。
「おーい、そっちは旧都と反対方向だぞ。どこに行こうってんだい?」
「離してー! どうして私が貴女とお酒を飲まなければいけないの!」
「どうしてって……そう約束したじゃないか。ことが全て片付いたら、ふたりで勝利の祝杯をあげようって」
「そんなの知らないー! 帰るー! 私もうお家に帰るー!」
「なんだい、つれないねえ――あの時の積極的なパルスィはどこにいっちまったんだい? あれには流石の私も驚かされたってのに」
パルスィの動きがはたと止まる。と、まるで錆び付いて動きが鈍くなったような所作で首を捻り、訝しげな目で勇儀の顔を窺った。あの時とはなんだ?――彼女がなんのことを言っているのか、パルスィは直ぐには理解できなかった。
得体の知れない恐怖が腹の中を這いずり廻る中、それでも脳内の引き出しを忙しなく探り、『あの時』に該当する記憶を懸命に見付け出そうとした。走馬灯の如く、遠い過去から順繰りと実に様々な記憶が頭の中を通り過ぎる。その度にパルスィは橋の欄干に頭を強く打ち付けたい衝動に駆られた。
こういった場合、何故だか思い出されるのは嫌な記憶ばかりだ。例えば、幸せそうな誰かを見る度に左目を押さえながら「くっ……鎮まれ、鎮まれ、私の嫉妬心」などと言って悶えていた時の記憶だったり、はたまた、世に嫉妬の種を蒔こうと画策して何を血迷ったのか、丑の刻参り教室なるものを開いたが、現れた生徒が人形を引き連れた魔女ただひとりだけだった時の記憶だったり。しかし、いずれも勇儀の言った『あの時』に合致するものとは思えなかった。
するとやがて、記憶の探索は最も近しい過去の出来事にまで及び、そこで俄にパルスィの背筋に悪寒が走った。
気味の悪い連中から一方的な辱しめを受けた忌々しい記憶。あまりにも忌々しい為、地底世界の更に地底へと封印したい記憶。いま振り返ってみても、色々な意味で実に酷い有り様だった。もしも、あの時、星熊勇儀が助けに来てくれなければ、パルスィの心は修復不可能なほど壊れてしまっていたかも知れない、この二次創作小説も投げっぱなしジャーマンで終わっていたかも知れない。身が凍り付くような話だ。
――良かった、勇儀が助けに来てくれて、本当に良かった。
噛み締めるように心の中で述懐する。
パルスィの脳内は直ぐ様、自分を守るように変態達の前に立ち塞がった勇儀の姿、彼女が掛けてくれた言葉の数々で埋め尽くされた。そうして、色々な場面の勇儀を思い返していた時、パルスィは不意に見付けてしまったのだ、『あの時』の記憶を。
そう――それは変態達が固唾を飲んで見守る、衆人環視の状況下のことであった。思い出す度に顔が火照ってしまうほど、改めて記述するのが恥ずかしくて躊躇われるほど、実に大胆な行動をやらかしていた自身の姿がフラッシュバックして、パルスィの脳裏にまざまざと『あの時』の記憶が甦った。
途端、その躰は石化したように固まり、額からはじわりじわりと嫌な汗が流れ始めた。
「ほーら、いつまでそうしてんだい。時間が勿体ないじゃないか。夜はまだまだこれからとは言え、楽しい酒の時間ってのは、驚くほど早く流れちまうんだからさあ」
「わっ……忘れなさい! あの時のことは即刻忘れなさい!」
「あははっ! そいつは無理な相談ってヤツさ。まあ、もっとも、仮に忘れることができたとしても、地霊殿の主様がいつまでもネチネチと覚えてて、会う度に思い出させてくれるだろうけどねえ」
「――古明地さとり? あいつがなんだって言うの……って、まさかあいつ、私達の記憶を読んで! ああ、だから帰り際にあんな顔をして……!」
「そういうこった。さあ無駄話はこれぐらいにして、さっさと旧都へ向かおう。最近、上等な酒を出してくれる店を見付けてねえ、良い機会だから、是非ともパルスィにも紹介したい」
最早、抵抗する意思を完全になくしたのか、あるいは抵抗しても無駄だと悟ったのか、パルスィは落胆したように肩を落とすと、勇儀のなすがままに手を引かれ、トボトボとした足取りで旧都へと歩き出した。
それと同時に頭の中では様々な思惑が駆け巡っていた。確実に古明地さとりの息の根を止める、その為の方法をパルスィは模索していた。
そんなパルスィのどす黒い思惑などは知らぬ存ぜぬと、隣を歩いている勇儀から陽気な鼻歌が零れ出した。それは勇儀が以前に博麗神社の宴会で聴いた、プリズムリバー三姉妹が奏でる楽曲のものだった。もっとも、ところどころ調子が外れている為、元の曲を知る者でさえ、そうと言われなければ分からないほど大胆なアレンジが施されていたが。しかし、それでも楽しいという気持ちだけは猛烈に伝わってくる鼻歌だった。
パルスィはその調子の外れた鼻歌に眉を潜めると、どす黒さに染まった思考を一旦中断させ、思わず、鼻歌の発信源に苦情を吐露した。
「さっきからなんなの、その変な鼻歌は」
「ん……これかい? 前に地上の宴会に行った時、プリズムリバー三姉妹とかいうのが、こんな感じの曲をやってたのを思い出してねえ」
「新手のちんどん屋か何かなのかしら、そのなんたら三姉妹っていうのは?」
「よく分からないけど、まあ、実に楽しい奴等だったよ。人間の中には、あの子らの熱烈なファンもいるって話さ」
「変わった人間もいるのね……私にはどう聴いても、曲というより、ただの騒音のようにしか思えないもの」
「これはまた、手厳しいねえ」
そう言って苦笑したのも束の間、勇儀は気を取り直したように鼻歌を再開する。鬼にそれとなく苦言を呈しても糠に釘ということらしい。
再度、否応なく耳に闖入する鼻歌にパルスィは苦虫を噛み潰したような顔をした。だが、そこでふと、先程までのどす黒い感情が綺麗サッパリとなくなっていることに気付き――これはどうしたことか?――と自身の胸に手を当てた。それは戸惑いを隠せないほど不思議な感覚だった。
特になんらかの意図があった訳ではなく、パルスィの視線は無意識に促されるまま、隣を歩いている勇儀へと向けられた。そして、満面の笑顔を張り付かせ、陽気な鼻歌を垂れ流す鬼の姿を見て、パルスィはそういうことかとひとり納得した。
つまり――この鬼の前では些末なことに執着するのが馬鹿らしくなる――パルスィは不思議な感覚の原因をそう解釈した。そもそも、あんな調子の外れた鼻歌を直ぐ隣で垂れ流されたのでは、深刻に物事を考える気も失せてしまう。
「――ほんと、その能天気さが妬ましいわね」
「ん、今度はなんだい?」
「なんでもないわ、気にしないで」
気付けば、眼前に旧都の明かりが朧気に見えてきた。煌びやかと言えるほどの華やかさはなく、眩いばかりの鮮烈さもなく、地味とも思える旧都の明かりだが、その明るさは妙に心を温かくする。それは遠い昔に地上で見た、月明かりに似ているとパルスィは思った。
地上から追いやられた日陰者にとって、明暗をくっきりと浮き彫りにする太陽の差別的な光は心に毒しか与えないが、暗闇の中にあっても自身の存在をひっそりと照らしてくれる、月の慎ましい光はどこか安心感を与えてくれるのだ。
思わず、パルスィは繋いだ手にギュッと力を込めた。すると、勇儀は横目でチラリとパルスィを見やり、ニヤリと口角をあげると、応答を返すように繋いだ手に力を込めた。その反応が嬉しくもあり、また、恥ずかしくもあってか、パルスィは表情が緩みそうになった。
「と……ところで。さっき勝利の祝杯とか言ってたけど、よく考えたら、それっておかしくないかしら? 結局、私達はあいつらに終始、振り回されっぱなしだった訳でしょう?」
「なるほど。悔しいけど、確かにその通りだ。それじゃあ、うーん、そうだねえ……勝利の祝杯ってのは訂正して、ここはひとつ――可愛いパルスィが沢山見れたことを祝して――ということにしておくかな」
「――馬鹿! ほんともう馬鹿! そういう恥ずかしいことを平気で言える、貴女ってほんと馬鹿! その馬鹿さ加減が妬ましいわ!」
顔を真っ赤にしてヒステリック気味に喚き立てるパルスィを勇儀が豪快に笑って受け流す。傍から見れば、まるで夫婦漫才のようだった。しかし、ふたりをよく知る者からすれば、それは奇妙な光景に映ったことだろう。何せ、あの橋姫が鬼と手を繋いで仲良さそうに歩いているのだから。
そうして、なんだかんだと言い合いながらも、なんだかんだとじゃれ合いながらも、やがて、ふたりは旧都の夜の繁華街へと消えていった。
その後のことは橋姫と鬼のふたりだけにしか分からないことである。
二作目に期待します
どうも初めまして、こんにちは
コメントありがとう御座います
評価されがたいもの
正しく、仰る通りだと思います
薄々と自覚はあったのですが案の定の結果でしたね
次で挽回したいと思いますので
ご縁がありましたら、またよろしくお願いします
>>4様
どうも初めまして、こんにちは
コメントありがとう御座います
不快に思わせてしまったようでごめんなさい
創想話に投稿する
ということで少々舞い上がってた面がありまして
結果的にそれが空回りしてしまったようです
次はもうちょっと楽しめるものが書けるよう精進致しますので
ご縁がありましたら、またよろしくお願いします
特に今回は自虐気味の「見切り発車感ありありの〜」と言う「練ってから書けよ」と反論されてしまいそうな、いわば「筆者にも読者にも一切得が無い情報」です
お互いが得をしない情報と言う意味では「東方をやった事が無い」と同レベルなので、そういう情報は出さずに黙っている方が賢明です(なのに無意味に申告する人多し)問題は冒頭から中盤にかけて、場の空気が暖まってない状態でそんなギャグを採用した事ですかね…
読みはじめは読者も冷静なのでメタネタにアレルギーがない人でも「は?」となるかもしれません
ノリと勢いは悪くないと思ったので、話の終盤なら拒否反応が出ない可能性もあったと思われます(個人的見解)
どちらかというと醜さがえぐり出される感が全面に出ているように感じました。
まあそれはそれで本当は意味のあることだとは思うけど、
二次創作が好きな人が集まってるこの場では、多数の共感は得にくいかなと。
穿ち過ぎかもしれませんが。
普通にギャグ作品としてみれば、面白かったです。
どうも初めまして、こんにちは
コメントありがとう御座います
なるほど
そういった解釈をされるのは充分に有り得ることですよね
ノリと勢いだけで書いてる作者という体裁をとったメタネタの、ギャグのひとつだったのですが完全に迂闊でした
今回の結果を次に活かせるよう頑張りますので
ご縁がありましたら、またよろしくお願いします
>>9様
どうも初めまして、こんにちは
コメントありがとう御座います
確かにかなり辛辣な感じになっていますよね
私も投稿した後にそれに気付きまして反省しております
次はもっと純粋に楽しめる作品を書く予定ですので
ご縁がありましたら、またよろしくお願いします
嫌いじゃないわ!
どうも初めまして、こんばんは
コメントありがとう御座います
はい、全力投球でバカをやらさせて頂きました(笑)
こんな作品でも楽しんで頂けたのなら幸いです
次回作も少々おバカな作品になる予定ですので
ご縁がありましたら、またよろしくお願いします