Coolier - 新生・東方創想話

凄絶! 脳天爆裂男

2016/01/28 21:32:52
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 人間でいるのが厭になった俺は、妖怪として人生の再スタートを切ったのだが、不運にも妖怪巫女に頭を叩き割られてしまった。
 しかし、あの世でくすぶってるような俺じゃあない。
 人でも妖怪でも治療してくれる闇の病院、永遠亭にて華麗なる復活を遂げるのだ!

「えーっと、接着剤はどこに仕舞ったかしら……」
「オイオイちょっと待て! 何に使う気だ何に!」

 人里でも評判の美人女医、八意永琳はとんだヤブ医者であった。
 こちらの事情は一通り話した筈なのだが……ちゃんと伝わっているのかね?

「何って、頭をくっつけるんでしょう?」
「接着剤はねーよ! なんかもっとこう……ちゃんとした薬は無いのか?」
「ガムテープなら」
「ガムテープで何をするんだよ!? 頭に巻こうってのか!?」
「お湯に溶かして……」
「溶かしてどうする! 飲むのか? ガムテープのお湯割り飲んでスッキリ解決アッハハーのハー! ……ってアホか!」
「元気そうですね」
「まあね」

 このアホ医者、どこまでマジなんだよ。
 こっちは御札でグルグル巻きにされたうえ、頭をブチ割られた身なんだぞ?
 冗談にしたってタチが悪過ぎる……しかしまあ、我ながらよくここまで辿り着いたもんだ。
 
「見たところ不都合も無さそうですし、そのままでも構わないのではなくて?」
「本気で言ってるのか? アタマ割られたままでどう過ごせっていうんだよ」
「見た目にインパクトが必要だと思うの。妖怪的に考えて」
「アンタの服装にゃ負けると思うがね」
「…………」

 あっ、いけね。また余計なこと言っちまったかな?
 口は災いの元って、身をもって学んだばかりじゃないか。あのド外道巫女を相手にさ。
 ダラダラと身の上話などせずに、黙って消えてれば助かったかも……いや、そりゃ考えが甘いか。

「私の……うぅっ、私のは別にそんなんじゃないもん……グスッ」
「お、おい。そんな泣かれたって困るよ。悪かったって、なっ?」
「ヒック……いいもん。そんなにこの服が変だって言うなら……脱いじゃうもん!」
「バカ! 早まるなっ!」

 徐に服を脱ぎ始める八意女史。
 当然、俺は制止に入る。こんな場面を誰かに見られでもしたら、絶対に誤解されてしまうからな。

「なによ! 私の裸が見たくないっていうの!?」
「趣旨変わってるじゃねえか! 第一、いきなりそんなモン見せられたって困るわ! 俺にどうしろと言うんだよ!」
「それでも男ですか! 軟弱者!」
「はるかわッ」

 ビンタされた。理不尽にもほどがある。
 叩かれた拍子に割られた頭がくっついて……また離れちまった。ド畜生め。

「いてて……アンタねえ! 嫁入り前の娘さんが、そんな軽々しく肌を晒そうとするんじゃないよ! 少しは恥じらいってモンを……」
「今の言葉、もう一度言ってくださらない?」
「あー? えーっと、少しは恥じらいってモンを」
「違う、もうちょい前」
「……嫁入り前の娘さんが」
「娘さんですって!? やだもーそんな歳じゃないってーのまったくもうバカァ!」

 ……なんなんだよこの人。
 メチャメチャ嬉しそうなんだけど、俺なんか変なコト言った?
 まさかとは思うが、外見どおりの年齢ではないとか……深く考えるのはよそう。

「ねえ、私って何歳に見える?」
「うっわ、出たよ最悪な質問……誰も幸せになれないってコトが、なんで分からんかね」
「アナタも易者の端くれなら、気の利いた答えを披露して御覧なさいな」

 無茶振りにも程があるってモンだが、それを言われちゃあぐうの音も出ない。
 ご機嫌取りなど俺の趣味ではないが、占い師は感情を操ってナンボの職業だ。
 コイツを喜ばせる事を念頭に置きつつ、適度に媚び過ぎない感じで……二十代前半あたりが無難なところか。

「見た目の歳でいいんだよな? それなら……にじゅ」
「ウェッホン! ゴッホン! ウォッッッッッホォン! ……よく聞こえませんでしたわ」
「……十代後半の、十七歳ってところでどうだ?」
「ありきたり過ぎて面白みの無い回答ね。8556点」
「ありがとよ」

 なんか逆に操作されちまった感もあるが、まあ結果オーライって事でひとつ。

「正直者のアナタには、正直な診察結果をお伝えしなければならないわね」
「今のどこに正直な要素が……いや待て! そもそも嘘を付くという選択肢自体ありえんだろ! どうなんだ医者として!」
「ブッブー、私は医者じゃありませ~ん。単なる街の薬屋さんどぅえ~す」
「真面目にやってくれよ頼むから! こっちは命が掛ってるんだよ!」
「マジな話、アナタにはもう助かる見込みが無いわ。匙とか投げちゃいたい位にね」
「……マジで?」
「マジで」

 マジか。
 いや、頭を割られちまった時点でヤバイかなーとは思っていたけど、こうまでハッキリ言われてしまうと……メゲるわ。
 つうかこのアマ、そんな相手に対して接着剤とかくだらんジョークかましてたのかよ。医者がどうとかいう以前に人としてアウトだろ。

「今のは“匙”と“マジ”をかけた高度なジョーク……アナタには難しすぎたかしら?」
「なあ先生、マジで俺はもう駄目なのか? せっかく死ぬような思いをして、いや実際死んでまで蘇ったのに……甲斐が無さ過ぎるよ」
「スルーするとは失礼千万ね。ちなみに今のは……」
「“スルー”と“する”をかけたジョークだろ? 超ウケルよ。いや傑作だわマジで」
「ああもう、そんな捨て鉢になること無いでしょう。また蘇ればいいだけの話じゃない」

 他人事だと思って簡単に言ってくれるよ、まったく。
 俺が復活を遂げるためには、本の力が必要不可欠なのだが……あのイカレ巫女どもが余程のアホでもない限り、まあ処分されちまっているだろうな。
 となると、まだ元気な内に一からやり直さにゃならんわけだ。もっとも、今となっては同じ方法が通用するとも思えんがね。

「いまどき本に拘る必要なんてあるのかしらねぇ。内容を広める手段だったら他にもあるし、お望みとあらば提供することも出来るわよ」
「なんだと? そいつは有り難い話だが……いいのか? これでも俺は妖怪の端くれ、アンタら人間にとっちゃ敵も同然だぞ?」
「窮鳥懐に入るは、仁人の憫れむ所なり……ヤブ医者と思われたままお別れするのも、それはそれで寂しい話ですからね」

 なんだよ、コイツ結構いいヤツじゃないか。
 どうせ復活するなら、こういう人の元でしたかったモンだ……いや、そもそも俺の術なんかにかからないか。アホの小娘とは役者が違うね。

「しかし、一体どうやって広めるつもりなんだ? まさか口述じゃあるまいな。そんなコトをしたら……」
「ええ、私が霊夢にお仕置きされてしまうわね。柔肌に食い込む熱い針、責め苛まれる女体のわななき……」
「そういう展開を期待しているのなら、一つだけ忠告がある」
「ん?」
「死ぬほど痛いぞ」
「……ッフフフフフ、ハハハハハハ!」

 身体を張ったジョークが大受けするってのは、そう悪い気分じゃあない。
 もっとも、妙齢の美女が腹を抱えて笑うってのは、流石にどうかと思うがね。

「……アナタが書いた文章を、私の手の者が“波”を用いて拡散します。波というのは……」
「ちょっと待った。その話、長くなりそうか? だったらまた今度にして貰いたいんだが」
「では簡潔に。常人には見ることも聞くことも出来ない通信手段といったところかしらね。どちらかというと幻想郷の中ではなく、外の世界に広まってしまいそうだけれど」

 外の世界……ねえ。俺が垣間見た“世界の外側”とは、また一味違った世界なんだろうか。
 まあ、伝わりさえすれば何でもいい。何処の世界にも酔狂な輩は居るものだ。きっとそいつらが、俺の役に立ってくれる事だろう。

「でも、また占術をダシにするのは、やめた方がいいかもね。余程のド田舎でもない限り、あんなモノを真に受ける人なんて居ないだろうから」
「ここへ来て俺の人生全否定かよ。まあいい。それならもっと分かりやすい内容にして、せいぜい俺の嫉妬を掻き立てて貰うとするさ」

 とは言ったものの、俺に残された時間はそう多くない筈だ。今すぐ書き記せるような何かでなければ……待てよ。
 俺と八意女史のやりとりをまとめて、そいつを公開してしまうってのはどうだ? それならすぐにでも作れるし、内容もいい具合にアホめいている。
 馬鹿話として笑い者にされればそれでよし。何かの間違いで好評を博しちまった日には……しめたものだ。

「降りてきたァーッ! 先生、紙と筆を用意してくれ!」
「お金、いくら持ってる?」
「金取るのかよ!? ……ええい、出世払いで頼む!」
「この世を出ると書いて出世……なるほど、よく出来たジョークだわ」
「笑えねえよ!」

 ……そんな訳で俺は今、永遠亭の診察室にてこの文章を書いている。
 こいつが復活を遂げる為の鍵となるか、はたまた遺言になっちまうかは、波とやらを受け取った奴の頑張り次第ってところか。


 しかし……一体どんな形で公開されるのかねぇ? それだけが気になって仕方がないよ。
 こんな形だよ!
平安座
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コメント



0.650簡易評価
1.90奇声を発する程度の能力削除
面白かったです
2.100名前が無い程度の能力削除
前回100位から順位が下がるどころか77位にランクアップした易者の正体は平安座さんだった・・・?
公式設定にザクザク切り込んでいく平安座スタイルすき
8.80名前が無い程度の能力削除
セイラさんとかトロワとか8556点与えだした辺りでワロタ
9.90名前が無い程度の能力削除
タイトルだけで笑えるのはずるい(褒め言葉)
10.80名前が無い程度の能力削除
アホな永琳いいですね。

貴重な男性キャラゆえ二次創作ではちょいちょい復活させてもらえそうな気がするから頑張れ易者。
14.90とーなす削除
この作品が読まれ続けるかぎり易者は死なない……!

>「見た目の歳でいいんだよな? それなら……にじゅ」
>「ウェッホン! ゴッホン! ウォッッッッッホォン! ……よく聞こえませんでしたわ」

なんで20代で不満なんですかね……。ちょっと欲張りすぎでは
19.90名前が無い程度の能力削除
たった書籍版の1話にしか出てないのにこれだけ人気な易者さんに嫉妬。
20.90大根屋削除
奇想天外なアイディアが面白かったですねw
21.90名前が無い程度の能力削除
面白かったです
23.100名前が無い程度の能力削除
平安座楽しいね
未だ書籍関連ひとつも読んだことない、でも楽しい
24.100名前が無い程度の能力削除
上手い!
後は易者が外の世界に幻滅しないことを祈るばかりですね
26.100名前が無い程度の能力削除
発想の勝利!