藍は夕餉の支度をしていた。
揚げ出し豆腐と岩魚の塩焼き。
橙が尻尾をぴんと立てて喜びそうな晩のおかずが準備できた──その瞬間。
ぞわり、と九つの尾が震え立つ。
「……っ!?」
えもいわれぬ悪寒に、思わず全身の動きを止めた。
嫌な予感がした。
自分がこの手の感覚を味わうのは──決まって橙に何らかの異変が生じた時だけである。間違いない。
スキマ? んなもんは欠片も心配しない。大抵のことは靴下の悪臭で切り抜けられるだろうし。
橙だ。とにかく橙だ。橙になにか良くないことが起ころうとしている。
だとすれば、自分がすべきことはただひとつ。
「橙、今行くぞ……っ!」
菜箸を放り出し、前掛けを乱暴に脱ぎ捨て、火の始末だけはちゃんとして、藍はマヨヒガから飛び出した。
その速度はまさに流星、霧雨魔理沙に勝るとも劣らない超高速で、藍は橙のもとへと向かっていった。
藍が飛び出してからしばらくして。
「……ふあぁ。藍~? 晩ご飯は~?」
主である八雲紫が欠伸をだだ漏れにしながら居間に訪れるも、返事をする者は居なかった。
「…………」
紫はとろけた両目で辺りを見渡すも、家の中に誰もいないと悟ったら、
「……なんだ。まだ寝ててもいいんじゃない」
むにゃむにゃと寝惚け声でそう言うと、そのまま卓の上に突っ伏して、すやすやと寝息を上げ始めた。
「ごーがーい! 号外だよ──あベシッ!?」
鴉天狗が、黄色い流星に弾き飛ばされた。
「働いたら負けかなと思ってる」
「姫は働かなくてもいいのです。貴女が働きなさい、ウドンゲ」
「働くのは構いませんが、座薬の実演販売だけは勘弁──ん? なんだか玄関の方が騒が」
永遠亭の中を、黄色い流星が突っ切った。
「働いたら負けかなと思ってる」
「修繕費が要るわね。ウドンゲ、倍働きなさい」
「って少しは慌てましょうよ! あとテメエも働けNEET!!!」
「助けてー! 食べられるー!」
「ウフフ待ちなさいフライドチキン」
黄色い流星は、夜雀と亡霊を華麗にスルーした。
「止まりなさーい! あ、名前で呼んでくれれば通しま、って、ちょ、止ま」
黄色い流星は中華風門番をあっさり撃破した。
「せめて名前でー!」
「まてー! 魔理沙ー!」
「あばよー、とっつぁーん……ってうひゃあっ!?」
黄色い流星は元祖流星を叩き落とした。
「奴はとんでもないものを盗んでいきました……それは貴女の誇りです」
小悪魔が全く関係ないことを呟いた。
黄色い流星──藍が辿り着いたのは、紅魔館の奥、フランドールの部屋だった。
「──無事か!? 橙!」
ずばん、と扉を吹き飛ばし、藍は己の式の無事を確認しようと視線を走らせる。
無機質な部屋。装飾など数えるほどしかない、ただ広いだけの部屋。その隅に、橙はいた。
「ら、藍さま?」
「橙! そこを動くな!」
飛び込み転がり橙をがっちり捕まえ抱きかかえる。
素早く指先を滑らせて、橙に異常がないかどうか、全身くまなくチェックする。
「きゃ、ちょ、藍さま!?」
「こら! 大人しくしろ! どこにも怪我はないか……? ……ハァハァ……」
部屋の主のフランドールは霧雨魔理沙の抱き人形を腕の中に、先程まで自分と談笑していた少女をまさぐる変質者を、ただ呆然と見つめていた。
「きゃー! 藍さま何をー!?」
「ハァハァ……きっと下着の中に思いもよらぬ怪我があるんだな……待ってろっ!」
「──って、いきなり部屋に押し入ってきて私の友達になにしてるのよ!」
我に返ったフランドールのレーヴァテインに、橙を押し倒していた藍は吹き飛ばされた。
「……何もおかしなことは、なかった?」
しばしの後。
正気に返った藍は、2人に自分の感じたことを伝えたが、2人は特に何もなかったと答えた。
「そうだよ藍さまー」
「ただお話ししてただけよ」
「ねー」
「びっくりしちゃった」
橙とフランドールは、顔を合わせてにっこり笑う。
何の関係もなかったこの2人、実は霧雨魔理沙の紹介で最近ちょくちょく遊ぶようになっていた。
最初こそぎこちなかったものの、今では藍やレミリアがハンカチを噛み締めるほどである。
橙に関する藍の絶対的な勘──略して橙勘が働いたとはいえ、この2人の間で、そうそう変なことは起こらないだろう。
(なにか良くないことが起こったのかもしれないと思ったが……。やれやれ。私も勘が鈍ったかな)
2人が笑顔を交わす様を見て、藍は小さく肩をすくめた。
──と。
「……あ、そういえば」
ふと、橙は恐る恐るといった感じに、藍を見上げてこう訊ねた。
「──藍さま、服を脱ぐのが趣味なの?」
その瞬間、藍は確実に凍り付いていた。
氷精が蛙を凍らせるより低い温度で、藍の全身は凍結していたに違いない。
尻尾の先まで硬直し──頭の中ではちっちゃな藍が大会議を開いていた。
『橙はこの前のことをまだ気にしているのか!?』
『否! あのスッパは気の迷いだったと、ちゃんと納得してくれたはずだ!』
『しかし、家出までしたんだ。きっと傷が残ったに違いない』
『スキマ仕事してくれ』
『だとしても、あれから充分に時は経った。その間、一度もスッパは見られていない』
『だから橙はもう大丈夫だとでも? ハッ! とんだ⑨だな!』
『スキマ靴下臭え』
『⑨だと!? 言うに事欠いて、貴様!』
『それがどうした! 脱(や)るか!?』
『脱(や)らいでか!』
『スキマいい加減起きろ』
「──藍さま?」
橙の声で脳内会議は強制終了された。
正直危なかった。愛しき式の声があと数秒遅れていたら、自分は豪快にスッパしていただろう。
まあそれはそれとして──
「ち、橙? どどどどどうして、いきなり、そんなことを訊くんだい?」
「えっとね、フランとお話ししてる時に、この前藍さまがその……ああなっちゃってた時のこと話したら」
ちなみに。
藍や橙の言う『この前』とは、藍がつい脱(や)ってしまったスッパテンコーを橙が目撃してしまったときのことである。
マヨヒガに自分一人だと思っていたのだが、実は橙が別室で昼寝していたのだ。
奇行を目の当たりにしてしまった橙は、ショックでプチ家出をしてしまった。そんな痛ましい事件である。
あれから藍は橙を必死になだめすかし、口八丁で丸め込み、以後スッパする時は細心の注意を払うようにした。
その努力が実を結び、ようやく昔の信頼関係が戻ってきた──はずなのに。
慌てて藍は口を挟む。
自分と橙の素敵な桃色の日常は、たかが一度のスッパ露見で壊れて良いものではない。
「でもホラ、説明しただろう橙? アレは気の迷いだったんだ。
もうあんなことはしてないぞ。アレ一回きりだ。いやホント」
嘘である。3日に一度のスッパは未だ欠いたことがない。
「……うん。私もそう思ってたんだけど……その……」
そこまで言って橙はちらり、とフランドールの方に視線を送った。
「この前姉様が言ってたの。八雲紫の式神は、服を脱ぐのが趣味──ううん、そういう病気なんだって」
橙は脱がないし、それじゃあ残るのは……ねえ? とフランドールは目を逸らす。
「藍さま! 違うよね! レミリアの言ってることは嘘だよね!?」
「お姉様は嘘なんてつかない!」
「にゃう。……じゃ、じゃあ、ほら、勘違いだと思う! だって──」
「──藍さまは、ハダカになりたがるような ヘンタイ じゃないもんっ!」
見えない弾丸が藍の心臓を打ち抜いた。
この刹那、確実に藍は一度死んだ。
OKOK。落ち着こう。
橙勘は鈍ってなどいなかった。
嫌な予感は、正しかったのだ。
ただ、橙の身体に何かしらの危害が及ぼされるのではなく──
──橙の中での、八雲藍という概念が、破壊されようとしていたのだ。
藍の脳内では、橙にとって八雲藍は尊敬できる絶対の存在である。
それが実は露出狂だなんてことになったら、きっと橙はショックのあまり廃人と化してしまうだろう。
廃人と化してしまった橙を日々介護するのも、それはそれでイケるが、やはり橙は元気が一番。
世界一の橙の主人を自負する身としては、橙の自我崩壊など、決して見過ごすことはできない。
故に。
「ははは。当たり前じゃないか橙。全裸だなんてそんな。
私は下着姿だって誰にも見られたくないぞ。うむ。貞淑なのだよ私は」
絶対に、スッパテンコーであることを悟られてはならない……!!!
「むー。それじゃあ、お姉様が勘違いしてたってことなのかな?」
やや不満げに、フランドールが口を尖らせる。
彼女にとって、姉は大きな存在である。
色々思うところはあるにしても、一番信頼しているのはやはりレミリアなのだ。
それが間違えたと認めるのは、少なからず抵抗を覚えるのかもしれない。
だが、ここで藍が露出狂であることに固執させては駄目だ。
信頼できる姉だが、少し行き違いがあった──そういう方向に誘導するのが良いだろう。
「仕方ないさ。レミリアは紅魔館の主として、とても忙しいのだからな。
たまに聞き間違いや思い違いをしたところで、誰にも責められないよ」
「むー」
「それに、レミリアが間違えたのではなく、彼女に私の話を伝えた誰かが間違えたのかもしれない」
「……そうなの、かも」
「まあ、間違いなんて誰にだってあるさ。
私の主なんて、しょっちゅう間違えてばかりだからな」
主に靴下をよく間違える。新しいものと履き古してまだ洗濯していないものを普通に間違えるのだ。
おかげで悪臭が蓄積されて、幾ら洗濯しても落ちなくなってしまっている。ってかニオイで気付け。
藍はフランドールの頭を優しく撫でる。
「だから、レミリアにもわざわざ言う必要なんて無いぞ。
彼女の忙しさは並ではない。そんな中、私の趣味ひとつを間違えたことで、余計に気を遣わせるのは本意ではない。
なに。レミリア一人に勘違いされてたとしても、それくらい笑って済ませられるさ」
重要なのは、フランドールがレミリアに確認を取らないようにすることである。
この場で丸め込むことに成功しても、後々、フランドールがレミリアに事の次第を問いただしでもしたら、たちまち信頼を失ってしまう。
もはや橙とフランドールの友好関係は、自分ではどうしようもないレベルにまで達している。
いくら橙が藍のことを信じていようとも、フランドールが藍に疑念を抱く限り、危険はずっと傍にある。
よって、フランドールが真実を確認しようとしなくなる──そう誘導しなければならない。
しかし、現実はまるで藍を嘲笑うかの如く。
「……でも、この勘違い、咲夜やパチェも信じちゃってるよ。
この前、お姉様がみんなの前で話してたから」
とりあえず、藍のぶっ殺死リストの上位にレミリアの名前が書き加えられた。
しかしそのようなことはおくびにも出さず、藍は笑顔でフランドールに告げる。
「別に構わないさ。
彼女らは人のことを悪しく罵るような存在ではないからな。
そんなに目くじらたてることでもあるまい」
「……藍っていい人だったんだね」
「そうだよー。藍さまは幻想郷で一番優しい人だもん!」
橙が笑顔で藍に飛びつく。
藍は橙を押し倒してペロペロ舐め回したい衝動を必死に抑え、橙の頭を優しく撫でる。
「…………」
フランドールはその様子をじっと見つめた後、やおら立ち上がり、
「……決めた」
なにやら決心した面持ちで、そのまま部屋を出て行こうとする。
「……? フラン、どうしたの?」
ぐりぐりと藍の法衣に頭を押しつけていた橙が、それに気づいて声をかけた。
フランドールは橙の方を振り返り、自分の思いを言葉にする。
「藍みたいないい人が誤解されっぱなしなんて悲しいよ。
──私、みんなの誤解を解いてくる!」
余計なことはしないでくれ!
とっさに飛び出そうになった叫びを、何とか抑えつけることができた自分を褒めてあげたい。
それはともかく、ピンチである。
どうする!? しがみついてでも止めるか?
──いや、 フランの戦闘力は侮れない。
というかスキマの命令で動いていない今の自分では相手にならない。
式という存在は、主の命令に従うことで、主と同程度の力を行使できるのだが、そうでないときは藍はただのスッパテンコーでしかない。
悪魔の妹を力尽くで止めるのは不可能だ。ではどうする?
脱ぐか? 脱ぐしかないのか!?
藍がいい感じでテンパってきたところで、橙もまた行動を起こす。
「フラン、私も手伝うよ。藍さまのことだもん。放っておくなんてできないよ!」
鼻血が吹き出そうなくらい嬉しい台詞だったが、藍としては反応に困る。
「よし。まずは咲夜のところね」
「おー!」
藍がおろおろしているうちに、橙とフランドールは部屋をあっさり出て行ってしまった。
藍も慌ててその後を追う。
──絶対、スッパテンコーであることは隠し通す……!
「おや、どうかしましたか妹様?」
瀟洒なメイドは、仕事中にいきなり声をかけてきたフランドールに、嫌な顔一つせず応対する。
「咲夜、大事な話があるの」
真剣な表情でそう言ってくるフランドールに気圧されて、咲夜も自然と表情が引き締まる。
悪魔の妹が悪魔の犬に果たしてどんな話があるのだろうか。
ふと視線を横にずらすと、フランドールと同じように真剣な表情をした猫又の式がこちらを見つめている。
(ハッ! まさか!?)
『実は私たち、結婚することにしたの』
『フランは幸せにするから』
『妹様も色を知る年齢になったのね……! 私も魔理沙と!』
『姉として認められないわ! フランにはまだ早すぎる!』
『おめでとうございます妹様! あと名前d』
『フランがいなくなってから、紅魔館も随分静かになったわね……』
『気を落とさないでくださいお嬢様。紅茶をお淹れしましょうか?』
『……だめ』
『えっ……?』
『咲夜も、私のそばを離れちゃうの……?』
「ウフフ離しはしませんよウフフれみりゃ様バンザーイ!」
引き締まった表情が数瞬で緩みきった瀟洒っぽくないメイドに、その場にいる全員が困惑した。
「さ、咲夜……?」
「──っ! どうかなさいましたか?」
復帰は一瞬。瀟洒なメイドが帰ってきた。
「え、えっとね」
少々戸惑いつつも、フランドールは当初の目的を果たそうとする。
八雲藍が根っからの真裸(マッパ)というのは間違いだということ。
レミリアはきっと勘違いをしているのだということ。
藍はすごくいい人で、人前で脱ぐようなはしたない存在ではないということ。
フランドールは自分なりの言葉で、精一杯説明した。
聞き終えて、瀟洒なメイドはふむと頷き、
「なるほど。お話はわかりました。
しかし、残念ながら──」
レミリアは勘違いをしているわけではない。
八雲藍がスッパテンコーであることは、もはや幻想郷の常識である。
たとえフランドールが藍をいい人だと思っていたとしても、
メイドとして、主が間違っていたなどということを認めるわけにはいかない。
フランドールは長い束縛から解放され、これからどんどん外の世界に関わっていくことになるだろう。
そんな彼女のためを思い、ここはちゃんと真実を──
そして、咲夜は気付いた。
フランドールと橙の背後。
そこに──“奴”がいた。
なんと形容すればいいのか、咲夜は言葉を失った。
色で表すのなら、黒と肌色をぐちゃぐちゃにかき混ぜたかのような、そんな濁った空気を吐き出している。
視線は鋭く、咲夜の瞳を射抜いていた。
八雲藍。
己の脱衣に全てを賭けた、究極のスッパテンコーが睨んでいる。
それはいったいどういう意図によるものか。
憎しみや悲しみでは、こんな気配を作り出すことはできない。
咲夜にはわからなかった。
八雲藍は何を思い、その毒々しいまでの空気をまとっているのだろう。
十六夜咲夜が己の主に懸想する瞬間でさえ、今の藍のような空気を吐き出すことはできない。
いったいどれほどまでの愛情と劣情を抱けば、今の藍になり得るのか──!?
──と、藍がおもむろに動き出す。
フランドールと橙には決して気取られぬように、
だが咲夜にはその意図を認識できるように、
静かに、かつ大仰な動きで、藍は己の声なき言葉を咲夜に叩きつけてきた。
咲夜を指さす。『おまえが』
口の前で手のひらを閉じたり開いたり。『しゃべったら』
胸の前で腕を交差させ──勢いよく広げた。『脱ぐ!』
(意味わかんねーーーーーーーーっ!?)
咲夜は混乱した。
己の背後で行われたことに気付かぬまま、フランドールが咲夜に声をかける。
「ねえ、咲夜。残念ながら──なに?」
「ざ、残念ながら……」
どうしよう。
本当のことを言うべきだろうか。
しかしフランドールの後ろのスッパテンコーは、何度も何度も両腕を交差させては開いての繰り返し。
トランス状態に入っているのか、表情が恍惚としてきている。
ヤバイ。なんかヤバイ。
主が不名誉を被る──そんなことは本来許してはならないこと。
しかし。
今この瞬間の咲夜は、藍に完全に気圧されて、決してしてはいけないことを、してしまった。
「ざ、残念ながら……お嬢様が、勘違いしていたのかもしれませんね」
言ってしまった。
己の主に冤罪を押しつけてしまった。
メイドとして許されることではない。
だが咲夜は──今この瞬間だけは、安堵していた。
フランドールと橙の背後で、音もなく狂喜乱舞するスッパテンコー。
その顔は、何かを達成したかのよう。「今夜は脱(や)るぞ!」などと不吉な叫びが聞こえたような気が、した。
「わかればいいのよ。さ、それじゃあ次行きましょう。次」
「おー!」
「おいおい2人とも、別に私は──」
意気込んで駆け出していくフランドール。
拳を突き上げてついて行く橙。
それを止めようとするが、橙の勇ましい表情に腰砕けになって止められない藍。
彼女らが進むのは、図書室の方向だった。
(同じことを……皆に伝えようとしているの?)
咲夜は思う。
(みんな……気をつけて! アレは決して逆らってはいけない。
もし真実を口にしてしまったら……奴は……八雲藍はきっと……!)
重圧から解放され、腰が抜けてしまった咲夜はそのまま床にお尻を付ける。
しばらく立てそうにもない。
(お嬢様……不甲斐ない私を……許してください)
咲夜は独り、誰もいない廊下で涙した。
パチュリー・ノーレッジは迷っていた。
「魔理沙の心をがっちり掴む方法は……、
いやいや、ここはやはり、魔理沙に言うことを聞かせられる、効率的な脅迫手段は……」
二冊の本を手に、うろうろおたおた。
片方のタイトルは『意中のあの人の一番になるために』
もう片方のタイトルは『緊縛のやり方 初級編』
純愛路線か陵辱路線かで迷っていた。
先程、謎の流星に撃墜され、気絶してしまった魔理沙。
とりあえず応急処置だけ施して床に寝かせ、パチュリーは二冊の本を何度も何度も見比べていた。
早くしないと魔理沙が目覚めてしまう。
あどけない寝顔を晒す魔理沙。
呼吸に合わせて上下する慎ましやかな胸。
寝かせるときに慌てていたせいか、やや捲れ上がっているスカートの裾。そして映える白い太股。
ごくり、と喉が鳴る音は、まるで自分のモノではないかのよう。
魔理沙。
可愛い魔理沙。
その可愛さは悩みがないはずの人形遣いですら悩ませる。
──このままでは、魔理沙は盗られちゃう。
ならばいっそ、ここで自分が……っ!
パチュリーの片手が、本を遠くへ放り捨てる。そのタイトルは──『意中のあの人の一番になるために』。
手に残ったのは『緊縛のやり方 初級編』。
この瞬間、パチュリーの中で、何かが弾けた。
「う、ふふ、魔理沙……魔理沙……」
顔がゆっくりと近づいていく。
息が荒れる。
心臓の鼓動がうるさい。
指先は震え、しかし確実に魔理沙の服のボタンを外していく。
「はぁはぁ……魔理沙……ヒューッ……魔理……ゲホゲホッ……」
喘息の症状が現れ始めた。
しかしパチュリーは気にすることなく、魔理沙という名の禁断の果実へ触れていく。
「……理沙……ヒィーッス……マリザ……ヒィーッス……」
ぺちゃり、と舌が頬に当たる。
湿った音が図書室に響く。
眠る少女は、未だ目覚めず。
「………………」
「………………」
「………………」
「え、えっと……」
「……と、取り込み中みたいだね」
「忙しいみたいだし、後で来た方がいいかもしれないな、はは……」
図書室に突入しようとしていたフランドール・橙・藍の3名は、入り口でこそこそと相談した後、そそくさと出て行った。
この空気はやばすぎる。
誰もが肌でそう感じ取っていた。
見れば、小悪魔が図書室の入り口そばでガタガタと震えてうずくまっている。
使い魔さえ恐怖させるパチュリーの狂気──関わらないでおくに越したことはない。
ぱたん、と静かに扉が閉まる。
その後どうなったかは、神のみぞ知る。
「あとはお姉様ね!」
気を取り直し、ぐっと拳を握るフランドール。
「頑張ろうね!」
橙も、先程の図書室の光景を忘れようと、その勢いに続いていく。
困った。
何とか紅魔館の手強い2人をやり過ごしたが──最後の一人は流石に厳しい。
橙の前では実力行使は難しいし、レミリアがこちらの事情を考慮してくれるとは思えない。
そろそろ年貢の納め時か──
──藍さまは、ハダカになりたがるような ヘンタイ じゃないもんっ!
ハッ!?
橙の言葉を思い出す。
そうだ。ここで諦めてはならない。
自分がここで屈してしまったら、橙はきっと廃人化してしまう。
きっと下の世話もしなくてはならなくなるから……それはそれで……ゴクリ。
──いやいやそうではなく!
橙の幻想を崩してはならない。そのためなら、自分は何だってできる。
いざとなったら脱ぐことだって躊躇わない。というか脱ぎたい。
──自分にとって、脱ぐことは支えだった──
「いやいや、モノローグ始めている場合じゃなく」
かなりテンパってきた模様。
ストレスも限界ギリギリである。
こんな状態で、紅魔館の主をやり込めることができるのだろうか……?
しかし、藍が何らかの策を思いつくより早く、
「お姉様っ!」
フランドールが、扉を勢いよく開け放っていた。
一方その頃。
スキマ妖怪は飢えていた。
「藍~……お昼ご飯はまだかしら~……?」
ちゃぶ台の上に突っ伏しながら、片腕を力無く上げて左右に揺らしている。
顔を上げる気力すらない模様。
本当はもっと寝ていたいが、お腹が空いているから仕方なく動いている、といった感じである。
ちなみに外はすでに暗く、夕餉に相応しい時間帯なのは言うまでもない。
寝過ぎて時間感覚が駄目になった典型例だろう。
まあそれはそれとして。
お腹が空いた紫は考える。
せっかく目を覚ましたのに、どうして食事が用意されていないのか。
おさんどんを任せていたはずの式は、どうやらマヨヒガには今いない様子である。
主人が飢えているというのに、こんな怠惰が許されていいのだろうか?
──否!
自分の生活は基本的に寝るか食うか。
その片方を妨げた罪は、限りなく重い。
「……ふふ、藍ったら……おしおきを望んでいるのかしら……」
それでは制裁に──
──行こうとはしなかった。
式にお仕置きをする程度で、体を動かすのは面倒くさいのだ。
起き上がったら負けだと思っている。
スキマ妖怪は、誰もいないマヨヒガで、空腹を抱えたまま、ちゃぶ台の上から移動しようとはしなかった。
極度のものぐさ妖怪、ここに在り。
そして再び紅魔館。
主であるレミリア=スカーレットの部屋で、妹のフランドールが一生懸命、八雲藍が貞淑で良識ある存在であることを語っていた。
「だからっ! 藍はお姉様が言うみたいな脱ぎたがりなんかじゃないのっ!」
びしっ! と人差し指を突きつけて、フランドールはそう締めくくった。
「……(はらはら)」
「……(そわそわ)」
橙と藍はその様子を、固唾をのんで見守っていた。なお藍はストレスのせいで脱ぎたくなっている模様。
「……フラン」
突然自室に乱入してきて、まくし立てるように言葉を浴びせかけてきたフランドールに、レミリアはにっこり笑顔で応対した。
その表情に曇りは一点もない。
自分が口にするであろうことに、欠片の疑いも抱いていないのだろう。
レミリアは、絶対の自信を微笑に込めて、一言、言った。
「寝言は寝てから言いなさい」
その続きは、半ば畳み掛けるように、
「そこの狐が露出趣味じゃないですって?
冗談にしては質が悪すぎるわね。
いい、フラン?
貴女は外に出るようになってからまだ少ししか経っていない。
それは仕方のないことだけど──だからといって、現実を見間違えてはいけないわ。
私の妹として恥ずかしくない程度には、現実を見定める目を持って欲しいわね」
「で、でも、咲夜はお姉様の勘違いだって……!」
「あら、咲夜はそんな世迷い言を口にしていたの?
それはお仕置きしなくちゃね。
この前たっぷり虐めてあげたのに、まだ足りなかったのかしら」
くすくす、とレミリアは笑いを零す。
そしてふいに真顔になり、
「フラン。
八雲藍は露出狂よ。自分の全てをさらけ出さずにはいられない変態なの。
そこの猫又と遊ぶのは構わないけど──変態狐とは関わらないで頂戴。
これは貴女のためを思ってのことよ。
少し嫌なことがあるたびに全裸で往来を練り歩く妹、なんてモノを持った日には、私は生きていけなくなるわ」
心の底から心配した様子で、フランドールに語りかけた。
「…………」
これが嘲り混じりであったり、からかうような響きが少しでも含まれていたのなら、フランドールは迷わず姉を糾弾しただろう。
しかし、レミリアがあくまでもフランドールの身を心配して説得しようとしていることが伝わってきてしまい、フランドールは何も言えなくなってしまった。
だから。
動いたのは、他の者。
「──藍さまを、そんな風に言うなっ!」
怒りを全く隠さずに、橙がレミリアに飛びかかった。
「こ、こら、橙!」
慌てて藍が押さえ込む。
ただで橙の拙い攻撃を喰らってくれるレミリアではない。
感情ではレミリアに自分も突っかかっていきたいところだが、自分とレミリアがぶつかり合ってしまっては、尋常でない戦いとなるのは必至である。
そうなってしまったら、傷つくのは可愛い式の橙になる。
それだけは絶対に避けなければならない。
ここは力ではなく──口で何とかしなければならない。
「──レミリア。自分の妹が真摯に語ったのに、お前は上から押しつけるように命令するだけか?」
ここが正念場だ、八雲藍。
自分にそう言い聞かせて、藍はレミリアの瞳を見据える。
「……言うわね。でも、妹のためを思ってしたことに、外部のお前が口を挟まないで欲しいわ」
「外部? それは異な事を。フランは橙の友人だ。
彼女のためにならないことを、黙って見過ごすわけにはいかないな」
「ためにならない? 何言ってるの。
そもそも話題の中心はお前じゃないの。
こちらのことをどうこう言う前に、まずは自分の悪癖を省みなさい」
冷たいレミリアの声が、藍の耳に突き刺さる。
彼女の言うことは間違いではない。自分がスッパテンコーなのは紛れもない事実である。
ここは自分が素直に認め、反省するのが道理かもしれない。
しかし──
不安げにこちらを見つめている橙。
彼女を裏切るわけにはいかない。
無理を通せば道理が引っ込む。
ここは無理を通す一手だ。
「それがそもそもの間違いだ。
いいか、レミリア=スカーレット。
私は──露出狂なんかじゃ、ない!」
きっぱりと。
藍は、そう断言した。
己を偽る、保身の言葉。
スッパ中の自分が聞いたら、何を言うんだと殴りかかってもおかしくない。
脱衣は自分にとって生き甲斐であり、なくてはならないものである。
それを真っ向から否定した。
いままでの素裸狐生を台無しにするその発言──しかし、橙のためなら惜しくはなかった。
「ハ──なにを言うかと、思えば……」
流石に本人の真っ向からの否定には、レミリアも少なからず驚いた模様。
八雲藍といえばスッパテンコー。
スッパテンコーといえば八雲藍。
西行寺幽々子が大食いであることと同じく、幻想郷では誰も疑わない常識である。
「八雲藍──お前は鏡を見たことがないのか?
数秒後には脱ぎそうな、その気配。
脱ぎ慣れていそうな身のこなし。
着慣れていそうで着慣れていないその法衣。
全てが、お前の露出狂を表している!
冗談もほどほどになさい!」
容赦のないレミリアの言葉。
しかし、藍はこれに真っ向から立ち向かう。
「人を見た目で判断するな!」
狐ですけどー、とは誰も言わなかった。
一般論すぎる一般論に、思わずレミリアも言葉を詰まらせる。
そこへすかさず藍はつけ込んだ。
「確かに私は、他の連中に比べて少々肉付きがよくて扇情的かもしれない。
だが、それだけで露出狂と言われる筋合いはない。
気配や服装はお前の主観だろう? そのようなものまで根拠にしてもらっては困るな」
「……ふん。確かに先程のは私の主観でしかないけど。
でも、貴女が露出狂だという話が、幻想郷中に広まっているのも事実じゃない。
そちらはどう弁明するつもりかしら?」
「脱いだことがない、だなんて言うつもりはない。
現に、幻想郷のそこかしこに、私の裸の目撃例がある。
お前が私を露出狂と疑うのも無理はない」
え、と橙たちが虚を突かれたような表情を晒した。
藍は脱がないと信じていた。
自分たちは騙されていたのか──そんな表情である。
しかし、藍としてはここで止める気はなかった。
目的は、あくまで橙たちの信用維持のみ。
故に、これは布石にすぎない。
「だが──あれらは不可抗力だったんだ」
全員が、藍の言葉に耳を傾ける。
レミリアは疑わしげに。橙とフランドールはハラハラドキドキ。
「私だって脱ぎたくはなかった。
本来なら、下着姿ですら他人の目には晒したくないんだ!
しかし──紫様が無理矢理……っ!」
秘技:主人に責任なすりつけ
おいおいと泣き崩れる藍。
一応演技なのだが、主人に対する鬱屈はかなり溜まっているため、リアリティは抜群である。
流石にこれは想定外か、レミリアも反論の言葉を紡ぎ出せずにオロオロする。
「で、でも、なんで紫さまが藍さまのことを……えっと、その……脱がせるの?」
藍は尊敬しているが、紫も当然尊敬している橙が、おそるおそる藍に訊ねた。
「……年増と言われ続け、私のことも仲間入りさせようとしたらしい。……紫様曰く、全部出した奴はもう売れ残りだ、と……」
泣きながら、堂々と嘘を吐く藍。
「そんな……自分が売れ残りだからって……酷い!」
なにげに自分も酷いことを言うフランドール。
「そうだったの……。
確かに、八雲紫の式である貴女なら、あいつの命令には逆らえないものね……。
──露出狂だなんて言ってごめんなさい」
勝った!
泣き真似をしつつ、心の中で藍は思いっきりガッツポーズ。
あとは余所に波及しないよう、心の傷を匂わせつつ、同情ムードで幕を閉じればいい。
そう、思っていたのだが。
むんず、と襟首を捕まれた。
この感触は! と即座に悟った次の瞬間、背中に聞き慣れた声が届いた。
「藍……お昼ご飯は、ま・だ・か・し・ら?」
噂をすれば影が差す。
おそるおそる振り返ると、スキマから伸びている見慣れた手。
そういえば。夕餉の支度の途中であったことを思い出す。
ぐーたらスキマが空腹に耐えられず、自分を呼び出そうとしているということか。
「す、すみません! すぐに戻って支度をしますから!」
とにかくここは平謝り。
そして時間を稼いでこの場を締めくくり、それから戻って夕餉の支度をすればいい。
紫だって鬼ではない。少しの間は待ってくれるだろう──
「──じゃあ、今すぐこっち来なさい」
ぐい、とスキマに引き込まれそうになる。
「え、ちょ、待っ」
まだ仕上げが済んでいない!
ここで中途半端に終わらせてしまっては、後で冷静になったレミリアやフランドールが、再びスッパ疑惑を盛り返しかねない。
二度とスッパの件には触れないよう、2人に釘を刺しておかねば、このミッションは終わらない。
「ゆ、紫様……す、すぐに戻りますから、どうかもう少しだけお待ちください……!」
ぐぐっと踏ん張って、紫の引っ張る力に対抗する。
「駄目よ藍。私はお腹が空いてるの。一瞬たりとも待てないわ」
紫の方も譲らない。
というよりは、式が自分に逆らうのが気にくわないのかもしれない。
八雲紫は握力の境界を弄っているため、とんでもなく掴む力が強い。
過去に、束ねたトランプの一部をちぎり取ったこともあるそうだ。
故に、生半可な力では対抗できない。
ここは全力でこの場に留まろうとしなければ、すぐさまスキマに引っ張り込まれてしまうだろう。
(力を尽くせ八雲藍! ここで踏ん張らねば、橙の愛情を勝ち取れないぞ……っ!)
可愛い式の笑顔を夢想する。
決して失ってはならない最高の宝。
そのためには、主の握力すら乗り越えよう──
藍は、全力を尽くした。
愛しい橙のために。
今までで最高の力を出して耐えた。
藍の踏ん張りと紫の握力。
どちらもとんでもない力となり、拮抗した。
しかし──その拮抗は、長くは続かなかった。
──先に、法衣が限界に達した。
びりびりびり、と布の悲鳴が甲高く響いた。
勢い余って襟首の部分を掴んだままの紫の手が、そのままスキマに吸い込まれていく。
裂ける法衣。
舞う布片。
常識外の力が加えられた法衣は、その勢いでほとんどの部分が破けてしまった。
「って、藍、下着はっ!?」
フランドールが悲鳴のような声を上げる。
そう。
八雲藍の法衣の下、そこに下着らしきモノはなく、素肌がそのまま晒されていたのだった。
いつでもスッパできるように、藍は滅多に下着を着用しなかったのだ。
そして今日も下着を付けず、一日を過ごしていたのである。
よって、藍の全身を隠す布は欠片もなく。
ここに、スッパテンコーが完成した。
「……『下着姿ですら他人の目には晒したくない』……ねえ。
だからって、何も付けないのはどうかと思うんだけど。
──というか、やっぱあんた、露出狂じゃない」
じゃなきゃ普段から下着付けてないことなんてないでしょ、とレミリアがため息を吐く。
ほんの短い時間でも、藍に場を支配されたのが悔しかったのだろう。
虐めるような視線でジロジロとスッパテンコーを眺めていた。
これはノーパン健康法だ! と藍は即座に主張しようとした。
だが。
その前に。
「…………」
橙が、呆然と、藍を見ていた。
その心は読みとれない。ただ真っ白に、藍の裸を眺めている。
その視線に、藍は動きを止められた。
そして。
橙が、目をそらした。
気まずいものを見たかのように。
痛々しいものに触れてしまったかのように。
橙は、藍から、視線を外した。
「う、う、う、」
この仕草は致命的だった。
今まで藍を構成していた何かが、ガラガラと音を立てて崩れていく。
いたたまれない空気。
拒絶する式。
藍は、この瞬間、この空間を、心より恐怖した。
「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああっっっ!!!」
全ての矜持は崩れ去り。
ただの一匹の負け狐として。
情けない悲鳴を迸らせながら。
藍は其処から逃げ出した。
当然、全裸で。
「うう……パチュリー様が壊れた……って、あら?
あれは…………うわあ……すっごいなあ……」
「なんで誰も名前で呼んでくれないんだろう……って、うわ。
……よし、ギリギリで勝った。あとは名前で呼んでさえもらえれば……」
「ふう、結構美味しかったわね……って、あら。あれって確か、紫の式よね。
……風邪引かないのかしら?」
「働いたら負けかなと思ってる」
「姫は働かなくてもいいのです。ウドンゲ、働き先が見つからないのであれば、やっぱり実演販売をしなさい」
「逃げちゃ駄目だ逃げちゃ駄目だ逃げちゃ──って、あれ?」
「脱いだら負けかなと思ってる」
「ウドンゲ、貴女も脱ぎなさい」
「ってちょっとは驚きましょうよ全裸がうちの中駆け抜けてったんですよっていうか脱ぐのかよ!」
「号外も配り終わったことですし、そろそろ次の記事のネタを──おお!?
これは最高のネタですねっ! 激写激写」
幻想郷を、肌色の流星が駆け抜けていった。
そして文々。新聞は過去最高の発行部数を記録し、藍は伝説となった。
藍は夕餉の支度をしていた。
ほうれん草のお浸しと鶏肉の茶碗蒸し。
冷めても美味しい晩のおかずが準備できた。
食卓に並べてから、居間の外に声をかける。
「紫様、食事の準備ができましたよー!」
主にそう知らせた後、藍はマヨヒガの一室へと向かう。
こんこん、とノックをする。返事はない。
「橙……食事はちゃんと台所に置いておくから、お腹が空いたら食べるんだぞ」
部屋の主を刺激しないよう穏やかな声で伝えるも、ばん! と枕を扉に投げつけるような音が返ってきた。
「ご、ごめんな……。すぐあっちに行くから……!」
慌てて藍はその場を去る。
こぼれそうになる涙を必死に抑え、藍はそのまま居間へと戻る。
2人の間には、深い溝ができてしまった。
式の狐は、式の猫への過剰なまでの愛情の行き場を失った。
マヨヒガに残ったのは狐のようなモノでしかなかった。
──そして藍は、今宵も悲しみを紛らわせるため、外に繰り出してスッパする。
「って、結局脱ぐの!?」
紫のツッコミもどこ吹く風。
藍は今宵もスッパする。
《完》
ベタだけど一番笑ったのは「働いたら(ry
ご馳走様でした。
…ギャースorz
誰か藍さんを止めてくださいイヤマジデ。
アンタの勝ちだ……!!
何て深いお言葉……。
さすが紫様。
この涙は…ッ!
喘息ゼヒゼヒ言わせながら魔理沙に迫るパチェがツボでした。
一歩間違えば(間違わなくても?)ホラーですがw
ソノゴドウナッタンダロウ…
あんた最高や……ッ!!
橙との信頼回復編も書いて欲しいなあと思う今日この頃です。
ここまで幻想キャラで笑わせてくれるなんていいセンスしてますね!!w
ディスプレイが焼酎まみれに・・・w
点数入れ忘れました
とりあえず新聞十部くらいくれ。友人に配る。
藍の真面目キャライメージが崩壊しました。
大好きだった橙に完全に拒否られてしまって…
シリアス風に書いてなんぞこの変態幻想郷