りー、りー、りー、ひいぃぃぃ、りー、りー
「…秋ももう終りね」
かすかに聞こえる蟲の声を聴きながら、八雲紫は酒を煽った。
風や木々や月光や雲を眺めながら酒を呑む。
目が冴えてしまった夜、これが一番の過ごし方なのである。
だから真昼間に熟睡して夜眠れなくなるのだが。
「…紫様」
「まだ寝ないわよ」
子供かよ
「いえ…どうかそのままで居てくださいませ」
「…?」
はて、これはどんな風の吹き回しか。
いつもは『早く寝なさいっ!』と割烹着姿がよく似合う発言をしてくる癖に。
「…実は、相談したいことがあるのです」
「あら珍しい」
完璧主義者の藍が主人の手を借りようとは。
はてさて、何かとんでもない問題でも起きたのだろうか?
例えば…
「…藍。若ハゲは恥ずかしくないことなのよ」
「は?」
「…違うのか」
「違います。つか誰がハゲですか」
「おかしいわね、普段のストレスから考えても10円ハゲの一個や十個はあると踏んだのに…」
「そのストレスの源が何ぬかすか」
「冗談よ冗談。で、相談事ってのは?」
くいっ
「はあ。子を産みたいのです」
ぶふぅっ!?
「っ!?っっっ!!?は、はにゃっ!!はにゃがあぁぁぁぁっ!!」
酒逆流。しかも鼻奥に入ったらしい。これは辛い。
ゴロゴロとさっきまでの艶やかやらカリスマやらをかなぐり捨て、ただ無様に転がり回る大妖怪。
嗚呼、なんて愉快。
「…紫様。テンコーはもっとはっちゃけるべきです。そう例えば……」
「~~~~~~~~~~~~~っ!!(誰がテンコーなんぞしとるかっ!!つか服に手をかけんなっ!!)」
「えっ?!是非手本を見たいっ!?仕方ないなぁ、ほんの二、三時間ですよ?」
「~~~~っ!!(すんなボケッ!つか助ける気さらさらないわねアナタっ!?)」
「はぁ、はぁ、はぁ………」
「大丈夫ですか?」
「ええ…こんなんで死んだら幽々子に申し訳ないわ」
いや、多分爆笑する
「で、さっきはなんであんなとち狂ったことぬかしたのよ、このテンコー狂狐」
「何をおっしゃいますかっ!人間誰しも自由になりたいのですよっ!?例えば服という拘束とかっ!」
「アンタだけだ露出狂っ!つか人じゃないし狐だしっ!」
「じゃ、いいじゃないですかっ!」
「よくないわよっ!これ以上マヨヒガの印象悪くするなっ!!」
「悪くしてるのは紫様ではないですかっ!だからこうして一肌脱ごうとっ!」
「一枚も脱ぐなっ!…そもそも私が言ってるのはそっちじゃないわよ」
「…はて、何か言いましたか私?」
「…………………白玉楼行く?それとも幽々子のお腹?」
「すみませんごめんなさい」
そんな結末で閻魔様のとこ行きたくないです。多分説教どころか同情されます
「で、誰の子なの?つかいつの間にそんな相手を見つけたのよ…はっ!?まさか、褌っ!?」
「…いや、ちょっと待ってください。何か勘違いをしていませんか?」
「え?」
「私はまだ孕んでません」
「……でも、産みたいっていったわよね?」
「ええ。希望というか実現させたいのですが」
「………」
「………」
「…そろそろ毛皮が欲しい季節よね」
「ゴメンナサイ、ユルシテクダサイ」
土下座
「…はあ……もういいわよ。で、誰の子を孕みたいのよ」
「橙です」
「…………………おやすみ」
「ちょ、寝ないでくださいよっ!」
「もう嫌―――っ!もう変態と話したくない―――っ!!」
「誰が変態ですか!」
「アンタだアンタっ!つか何自分の式に手ぇ出そうとしてんのよっ!!」
「橙はただの式じゃありませんっ!我が子同然なんですっ!」
「なおさら手ぇ出すなこのケダモノっ!」
「私は狐ですっ!」
「開き直りやがったっ!」
はぁ、はぁ、はぁ、はぁ
「……ふぅ……で、なんで橙の子供を…」
「はい。橙ももう式となって幾年か経ちましたが、このマヨヒガという閉鎖的な空間ではこれ以上の成長に無理があるかと」
「ほぅ?」
「私の場合、紫様の世話係も修行の一つとさせていただきましたため、礼儀や思想等の点においても教育を受けることが出来ました。
しかし橙の場合、自分以外の世話をすることがないため、このままでは性格が歪んでしまうかもしれません。
ならば、マスターであり母でもある私が身を張ってでも橙の妹でも弟でも産んでやろうかと」
その目は真剣に子の成長を望む母親の目であった。
「本心は?」
「もう我慢できませんハァフハァ」
その目は本気で襲う気満々の犯罪者の目であった。
「…この異常性欲者が。そもそも橙は雌じゃない」
「そこはそれ。式をチョコチョコと弄くって生やしますから」
何をだ
「…可哀想に、こんなマスターを持って…」
「紫様、貴女が言う資格がない台詞です、それは」
「悪かったわね…」
さて、どうするべきか
正直久しぶりに疲れた。もう寝たい
しかしこのまま寝たら哀れ橙はこの色情狐に手篭めにされるだろう
すっごい後味が悪い。それは。ジンキスカンキャラメルの如く。
「そういえば…そんな犯罪計画明かして、私に何させたいのよ」
「はい、少し橙の通常と欲情の境界を弄ってもらいたいと」
「…なるほど、私に片棒担げと」
「ええ、まぁ」
「……ふむ」
よし、殺すか。コイツ
「じっとしてなさい、藍。せめて苦しまずに料理して白玉楼に送ってあげるわ」
嗚呼、まさかこのような日が来るなんて
今までの思い出が走馬灯のように流れるわ……実際見るのは相手のほうだけど
初めての弾幕、初めてのおねしょ、初めてのテンコー……
そして…………あ
明くる朝
「…おはよーございまー……うわっ!?紫様が起きてる!?」
「こら、橙。例えそれが奇跡だとしてもそんなに驚いちゃダメだろう」
「失礼ねぇ」
「…しかし、本当に珍しいですね。何故今朝はそんなお早く…」
「気が向いたのよ。たまには貴方たちと食べるのもいいかなって」
「そうですか」
…よし、覚えてないわね
昨日は藍があまりに煩いから『真面目と不真面目の境』を弄ってたんだったわ
すっかり忘れてた。うーむ
まぁ、コレで無駄な殺生もしなくて済んで問題解決平和一番
「さ、食事にしましょう。ほら橙、ちゃんと顔洗ったか?」
「はーい」
「それじゃ」
「「「いただきます」」」
「あ、モフモフ、紫様、ハムハム」
「こら橙。食べながら話すんじゃありません」
「いいのよ。何、橙?」
「んぐっ、ぷはっ。あのですね、お願いがあるんです」
「何かしら?」
「私、藍様の……
「…秋ももう終りね」
かすかに聞こえる蟲の声を聴きながら、八雲紫は酒を煽った。
風や木々や月光や雲を眺めながら酒を呑む。
目が冴えてしまった夜、これが一番の過ごし方なのである。
だから真昼間に熟睡して夜眠れなくなるのだが。
「…紫様」
「まだ寝ないわよ」
子供かよ
「いえ…どうかそのままで居てくださいませ」
「…?」
はて、これはどんな風の吹き回しか。
いつもは『早く寝なさいっ!』と割烹着姿がよく似合う発言をしてくる癖に。
「…実は、相談したいことがあるのです」
「あら珍しい」
完璧主義者の藍が主人の手を借りようとは。
はてさて、何かとんでもない問題でも起きたのだろうか?
例えば…
「…藍。若ハゲは恥ずかしくないことなのよ」
「は?」
「…違うのか」
「違います。つか誰がハゲですか」
「おかしいわね、普段のストレスから考えても10円ハゲの一個や十個はあると踏んだのに…」
「そのストレスの源が何ぬかすか」
「冗談よ冗談。で、相談事ってのは?」
くいっ
「はあ。子を産みたいのです」
ぶふぅっ!?
「っ!?っっっ!!?は、はにゃっ!!はにゃがあぁぁぁぁっ!!」
酒逆流。しかも鼻奥に入ったらしい。これは辛い。
ゴロゴロとさっきまでの艶やかやらカリスマやらをかなぐり捨て、ただ無様に転がり回る大妖怪。
嗚呼、なんて愉快。
「…紫様。テンコーはもっとはっちゃけるべきです。そう例えば……」
「~~~~~~~~~~~~~っ!!(誰がテンコーなんぞしとるかっ!!つか服に手をかけんなっ!!)」
「えっ?!是非手本を見たいっ!?仕方ないなぁ、ほんの二、三時間ですよ?」
「~~~~っ!!(すんなボケッ!つか助ける気さらさらないわねアナタっ!?)」
「はぁ、はぁ、はぁ………」
「大丈夫ですか?」
「ええ…こんなんで死んだら幽々子に申し訳ないわ」
いや、多分爆笑する
「で、さっきはなんであんなとち狂ったことぬかしたのよ、このテンコー狂狐」
「何をおっしゃいますかっ!人間誰しも自由になりたいのですよっ!?例えば服という拘束とかっ!」
「アンタだけだ露出狂っ!つか人じゃないし狐だしっ!」
「じゃ、いいじゃないですかっ!」
「よくないわよっ!これ以上マヨヒガの印象悪くするなっ!!」
「悪くしてるのは紫様ではないですかっ!だからこうして一肌脱ごうとっ!」
「一枚も脱ぐなっ!…そもそも私が言ってるのはそっちじゃないわよ」
「…はて、何か言いましたか私?」
「…………………白玉楼行く?それとも幽々子のお腹?」
「すみませんごめんなさい」
そんな結末で閻魔様のとこ行きたくないです。多分説教どころか同情されます
「で、誰の子なの?つかいつの間にそんな相手を見つけたのよ…はっ!?まさか、褌っ!?」
「…いや、ちょっと待ってください。何か勘違いをしていませんか?」
「え?」
「私はまだ孕んでません」
「……でも、産みたいっていったわよね?」
「ええ。希望というか実現させたいのですが」
「………」
「………」
「…そろそろ毛皮が欲しい季節よね」
「ゴメンナサイ、ユルシテクダサイ」
土下座
「…はあ……もういいわよ。で、誰の子を孕みたいのよ」
「橙です」
「…………………おやすみ」
「ちょ、寝ないでくださいよっ!」
「もう嫌―――っ!もう変態と話したくない―――っ!!」
「誰が変態ですか!」
「アンタだアンタっ!つか何自分の式に手ぇ出そうとしてんのよっ!!」
「橙はただの式じゃありませんっ!我が子同然なんですっ!」
「なおさら手ぇ出すなこのケダモノっ!」
「私は狐ですっ!」
「開き直りやがったっ!」
はぁ、はぁ、はぁ、はぁ
「……ふぅ……で、なんで橙の子供を…」
「はい。橙ももう式となって幾年か経ちましたが、このマヨヒガという閉鎖的な空間ではこれ以上の成長に無理があるかと」
「ほぅ?」
「私の場合、紫様の世話係も修行の一つとさせていただきましたため、礼儀や思想等の点においても教育を受けることが出来ました。
しかし橙の場合、自分以外の世話をすることがないため、このままでは性格が歪んでしまうかもしれません。
ならば、マスターであり母でもある私が身を張ってでも橙の妹でも弟でも産んでやろうかと」
その目は真剣に子の成長を望む母親の目であった。
「本心は?」
「もう我慢できませんハァフハァ」
その目は本気で襲う気満々の犯罪者の目であった。
「…この異常性欲者が。そもそも橙は雌じゃない」
「そこはそれ。式をチョコチョコと弄くって生やしますから」
何をだ
「…可哀想に、こんなマスターを持って…」
「紫様、貴女が言う資格がない台詞です、それは」
「悪かったわね…」
さて、どうするべきか
正直久しぶりに疲れた。もう寝たい
しかしこのまま寝たら哀れ橙はこの色情狐に手篭めにされるだろう
すっごい後味が悪い。それは。ジンキスカンキャラメルの如く。
「そういえば…そんな犯罪計画明かして、私に何させたいのよ」
「はい、少し橙の通常と欲情の境界を弄ってもらいたいと」
「…なるほど、私に片棒担げと」
「ええ、まぁ」
「……ふむ」
よし、殺すか。コイツ
「じっとしてなさい、藍。せめて苦しまずに料理して白玉楼に送ってあげるわ」
嗚呼、まさかこのような日が来るなんて
今までの思い出が走馬灯のように流れるわ……実際見るのは相手のほうだけど
初めての弾幕、初めてのおねしょ、初めてのテンコー……
そして…………あ
明くる朝
「…おはよーございまー……うわっ!?紫様が起きてる!?」
「こら、橙。例えそれが奇跡だとしてもそんなに驚いちゃダメだろう」
「失礼ねぇ」
「…しかし、本当に珍しいですね。何故今朝はそんなお早く…」
「気が向いたのよ。たまには貴方たちと食べるのもいいかなって」
「そうですか」
…よし、覚えてないわね
昨日は藍があまりに煩いから『真面目と不真面目の境』を弄ってたんだったわ
すっかり忘れてた。うーむ
まぁ、コレで無駄な殺生もしなくて済んで問題解決平和一番
「さ、食事にしましょう。ほら橙、ちゃんと顔洗ったか?」
「はーい」
「それじゃ」
「「「いただきます」」」
「あ、モフモフ、紫様、ハムハム」
「こら橙。食べながら話すんじゃありません」
「いいのよ。何、橙?」
「んぐっ、ぷはっ。あのですね、お願いがあるんです」
「何かしら?」
「私、藍様の……
正直に言って、今回の話はちょっとはっちゃけ度が足りない気がしましたけど
これからもお腹の捩れるようなカッ飛んだ話をお願い致しますぜ。
今後も頑張ってくださいませませ。
紫一家の式はみんなこんなんか~~wwwww
ってか、式は式に似るのだろうか・・・。
と言うか弄ったのが真面目と不真面目の境界なのだとしたら、結局の所普段我慢してるだけで願望はあるのかw
「違います。つか誰かハゲですか」は、「誰がハゲですか」だと
思います。つまり、「か」ではなく「が」だと思います。
訂正させていただきました。ご指摘ありがとうございます
あれは・・・口の中に広がる香りが・・・・苦しみが・・・