ー覚え書きー スコアより抜粋
lin lin lin lin lin lin
私たちは音を奏でる
一輪一輪 strings wire 澄んだ音のする lyric lyre
we are lilies of the vally
refrain refrain 繰り返す
長い長い時をかけ あなたの物語を聴きましょう
遥かなる繰り返しの中 ただひとたび頷いた そう あなたの物語を
『序奏(第二主題からなる小さなロンド)』 in tempo sostenuto
lin lin lin lyre liric lyre
lin lin lin we are lilies of the vally
refrain refrain refrain
季節のタクトで繰り返す 花が咲き 花が散る
refrain in tempo sostenuto
一輪一輪高く鳴り 響いて消える 繰り返す
lin lin lin lyre liric lyre
lin lin lin we are lilies of the vally
refrain refrain refrain
自然は繰り返す 命を繰り返す 花が咲き 花が散る
何処までも広がる鈴蘭の丘
いつからか いつまでも 自然の営みは変わらない
生まれることの繰り返し 白い小さな花が咲く それは気高くもの憂げに
死に行くことの繰り返し 音を奏でて花が散る 自然のままに美しく
そしてまた はじめから 全てが 世界が どこまでも
どこまでも どこまでも どこまでも変わることなく続く 一面の鈴蘭たちの世界
いつからか いつまでも 果てしなく悠久に 繰り返されていく
lin lin lin lyre liric lyre
lin lin lin we are lilies of the vally
refrain refrain refrain
ここは鈴蘭の丘 風が吹く鈴蘭の海がうねりゆく
メゾフォルテ 押し寄せる波に揺らされて
奏でた音が広がっていく 遠くまで そして風は雲を呼ぶ
雨が降る 花弁をたたく 雨粒の音がしっとりと
ささやきがあたりを包むピアニッシモ
sotto voce ひそやかに
ひそやかに 日が落ちて 月の光にも濡らされる
花から茎へ つたい流れる雫から 小さく丸い星空を覗く
セレナーデ 音を届けて語り合う
一日が終り 季節が過ぎ行く 巡る 繰り返す
鈴蘭の丘 refrain 命が巡る 繰り返す 音を奏でて繰り返す
lin lin lin lyre liric lyre
lin lin lin we are lilies of the vally
refrain refrain refrain
『人形と鈴蘭のソナタ』 第一楽章 第一主題の提示 poco animato ma non troppo
鈴蘭の丘にいつの間に ひとつの人形置かれてた
lin lin lin lyre liric lyre
lin lin lin I am a lily of the vally
私は鈴蘭 生まれたばかり すぐに散り行く短い命 繰り返し行く私には
それの違いはわからない ただ一度 風で花弁が触れたのみ
長い時が繰り返す
私は鈴蘭 生まれたばかり 生まれたばかりに見えないそれが 本当かどうか知る由もなく
私は音を奏でゆく ただ一度 落ちて散り舞う花びらが それの頭に触れたのみ
ずっとそこに在り続け たびたび鈴蘭に触れられた
私は鈴蘭 気がついた 古い私の香りのついた これは私たちとは違うもの
繰り返さずにここにある そして一番違うのは これは音を奏でない
私は鈴蘭 生まれたばかり あなたに興味を持ちました あなたの音を聴いてみたい
繰り返さずに積み重なった あなたの中の物語 私たちにない あなたの曲を
しかし 人形が答えるはずもなく
lin lin lin refrain refrain refrain
lin lin lin refrain refrain refrain
そして遥かな時の後 それはただただ偶然に
風のいたずら あるいは時が 関節を劣化させたのか
人形の頭 コクンとたれた
これは ただそれだけの物語 偶然生まれた物語
同じ命を繰り返す 鈴蘭たちの問いかけに
長い長い時間をかけて 意志をもたない人形が 頷いたように見えただけ
でも 物語を持たない鈴蘭は それだけで強く 心乱された 惹かれていった
私は鈴蘭 生まれたばかり だけどあなたは頷いた
だから私はもっと聴きたい 過去の私の望んだ音を 私の知らないあなたの音を
繰り返される鈴蘭が 知ることのできぬ物語
どんなに風が吹こうとも 雨と月に濡れようと 知れない変わりゆく物語
あなたは自在に物語を語れない
それならば 私の命を分けましょう
あなたの中に 聴いた物語と私の力 音をずっと残します
次の私が知り得るように あなたがもっと 奏でやすく なるように
lin lin lin it is lyrics of your story
lin lin lin it is sound of our sonata
私は鈴蘭 生まれたばかり なるほどあなたは生物じゃない でも生物って何のこと
私は鈴蘭 生まれたばかり なるほどあなたは人間の形(かた) でも人間なんて知らないわ
私は鈴蘭 生まれたばかり なるほどあなたは捨てられた それはどんな気持ちなの
あなたの日陰に生まれた私 あなたが少し動いたならば
大きく育ってパッチリと 開くあなたのきれいな瞳に 口づけをすることもできるの!
lin lin lin it is lyrics of your story
lin lin lin it is sound of our sonata
長い繰り返しの時の中 少しずつ積もりゆく 鈴蘭と人形の物語
poco a poco animato ma non troppo
少しずつ 少しずつ
やがて人形は自由に 物語を語りだす
自分で考え 自在に動く
鈴蘭の命と音を積み重ね 物語を積み重ね
鈴蘭はとても喜んだ 人形もいつも素敵な笑顔
けれど同時に鈴蘭は 自分が動けないことが
季節とともにはじめから 繰り返すことが寂しくて
lin lin lin it is lyrics of your story
lin lin lin it is sound of our sonata
”coda” tempo rubato
「それでね、私スーさんの力をもっと強くする方法を覚えちゃいました。スーさんにはいっぱいいっぱいお礼したいから」
鈴蘭の丘。
五月の淡く澄んだ真っ青な空の下、一面が真っ白広がる鈴蘭の花のなかで人形が鈴蘭に話しかけている。
いつも純粋に楽しそうに笑う きれいな表情の人形と、静かに揺れることで優しく声を聞く鈴蘭。
けれどその後、その人形には珍しい、真剣に何かを決意したような少し難しい顔をした。
「実はね、今日初めて外の人形を見たの。私みたいに自由に動けないんだね、やっぱり。あの子たちにも、私のように自由をあげたい、そしていっぱい新しいお話を聴きたいわ。でも、そうなるとここにいれないことも多くなる。スーさんも一緒に行けたらいいのに」
自由になりたいと思ったのは鈴蘭も一緒だった。
今まで、永遠とも言える時を繰り返してきた中で、初めて覚えたこの感情。
理由はこの人形。人形の語った物語。
自分も人形と一緒にいろいろな物を感じたい、新しく変わりたい、物語の主人公になりたい。
その時、ふと鈴蘭は気がついた。
自分が人形を通して、本来生まれて咲いて散ってゆくだけでは知り得なかった、繰り返されてきた鈴蘭たちの人形とのやり取りを、気持ちを、物語を得ていることに。
鈴蘭はもう、以前の零から全てを繰り返す存在ではなくなっていた。
それは、人形の力と鈴蘭の力の結晶、鈴蘭と人形の二人の奏鳴曲。
tempo rubato 自由に 自在に 決められたテンポ、リズムはもう盗まれた 大胆に 思うままに
「あれ、スーさんどうしたの? もしかして怒っちゃった? スーさん、返事してよー」
鈴蘭からの返事がないことに戸惑う人形の背中を、トントンと何かが叩いた。
驚いて振り返った人形の、パッチリ開いた大きな瞳に小さな妖精がキスをした
”私は鈴蘭 生まれたばかり 今、自由に気がついたばかり あなたがたくさんの物語を分けてくれたから これからは一緒に何処までも行けるわ!”
「スーさん!!」
人形は鈴蘭の精をぎゅっと抱きしめた。
これからもずっと一緒に
lin lin lin this is lyrics of their story
lin lin lin this is sound of their sonata
fine
『人形と鈴蘭のソナタ』 第二楽章 brillante
・
・
・
lin lin lin lin lin lin
私たちは音を奏でる
一輪一輪 strings wire 澄んだ音のする lyric lyre
we are lilies of the vally
refrain refrain 繰り返す
長い長い時をかけ あなたの物語を聴きましょう
遥かなる繰り返しの中 ただひとたび頷いた そう あなたの物語を
『序奏(第二主題からなる小さなロンド)』 in tempo sostenuto
lin lin lin lyre liric lyre
lin lin lin we are lilies of the vally
refrain refrain refrain
季節のタクトで繰り返す 花が咲き 花が散る
refrain in tempo sostenuto
一輪一輪高く鳴り 響いて消える 繰り返す
lin lin lin lyre liric lyre
lin lin lin we are lilies of the vally
refrain refrain refrain
自然は繰り返す 命を繰り返す 花が咲き 花が散る
何処までも広がる鈴蘭の丘
いつからか いつまでも 自然の営みは変わらない
生まれることの繰り返し 白い小さな花が咲く それは気高くもの憂げに
死に行くことの繰り返し 音を奏でて花が散る 自然のままに美しく
そしてまた はじめから 全てが 世界が どこまでも
どこまでも どこまでも どこまでも変わることなく続く 一面の鈴蘭たちの世界
いつからか いつまでも 果てしなく悠久に 繰り返されていく
lin lin lin lyre liric lyre
lin lin lin we are lilies of the vally
refrain refrain refrain
ここは鈴蘭の丘 風が吹く鈴蘭の海がうねりゆく
メゾフォルテ 押し寄せる波に揺らされて
奏でた音が広がっていく 遠くまで そして風は雲を呼ぶ
雨が降る 花弁をたたく 雨粒の音がしっとりと
ささやきがあたりを包むピアニッシモ
sotto voce ひそやかに
ひそやかに 日が落ちて 月の光にも濡らされる
花から茎へ つたい流れる雫から 小さく丸い星空を覗く
セレナーデ 音を届けて語り合う
一日が終り 季節が過ぎ行く 巡る 繰り返す
鈴蘭の丘 refrain 命が巡る 繰り返す 音を奏でて繰り返す
lin lin lin lyre liric lyre
lin lin lin we are lilies of the vally
refrain refrain refrain
『人形と鈴蘭のソナタ』 第一楽章 第一主題の提示 poco animato ma non troppo
鈴蘭の丘にいつの間に ひとつの人形置かれてた
lin lin lin lyre liric lyre
lin lin lin I am a lily of the vally
私は鈴蘭 生まれたばかり すぐに散り行く短い命 繰り返し行く私には
それの違いはわからない ただ一度 風で花弁が触れたのみ
長い時が繰り返す
私は鈴蘭 生まれたばかり 生まれたばかりに見えないそれが 本当かどうか知る由もなく
私は音を奏でゆく ただ一度 落ちて散り舞う花びらが それの頭に触れたのみ
ずっとそこに在り続け たびたび鈴蘭に触れられた
私は鈴蘭 気がついた 古い私の香りのついた これは私たちとは違うもの
繰り返さずにここにある そして一番違うのは これは音を奏でない
私は鈴蘭 生まれたばかり あなたに興味を持ちました あなたの音を聴いてみたい
繰り返さずに積み重なった あなたの中の物語 私たちにない あなたの曲を
しかし 人形が答えるはずもなく
lin lin lin refrain refrain refrain
lin lin lin refrain refrain refrain
そして遥かな時の後 それはただただ偶然に
風のいたずら あるいは時が 関節を劣化させたのか
人形の頭 コクンとたれた
これは ただそれだけの物語 偶然生まれた物語
同じ命を繰り返す 鈴蘭たちの問いかけに
長い長い時間をかけて 意志をもたない人形が 頷いたように見えただけ
でも 物語を持たない鈴蘭は それだけで強く 心乱された 惹かれていった
私は鈴蘭 生まれたばかり だけどあなたは頷いた
だから私はもっと聴きたい 過去の私の望んだ音を 私の知らないあなたの音を
繰り返される鈴蘭が 知ることのできぬ物語
どんなに風が吹こうとも 雨と月に濡れようと 知れない変わりゆく物語
あなたは自在に物語を語れない
それならば 私の命を分けましょう
あなたの中に 聴いた物語と私の力 音をずっと残します
次の私が知り得るように あなたがもっと 奏でやすく なるように
lin lin lin it is lyrics of your story
lin lin lin it is sound of our sonata
私は鈴蘭 生まれたばかり なるほどあなたは生物じゃない でも生物って何のこと
私は鈴蘭 生まれたばかり なるほどあなたは人間の形(かた) でも人間なんて知らないわ
私は鈴蘭 生まれたばかり なるほどあなたは捨てられた それはどんな気持ちなの
あなたの日陰に生まれた私 あなたが少し動いたならば
大きく育ってパッチリと 開くあなたのきれいな瞳に 口づけをすることもできるの!
lin lin lin it is lyrics of your story
lin lin lin it is sound of our sonata
長い繰り返しの時の中 少しずつ積もりゆく 鈴蘭と人形の物語
poco a poco animato ma non troppo
少しずつ 少しずつ
やがて人形は自由に 物語を語りだす
自分で考え 自在に動く
鈴蘭の命と音を積み重ね 物語を積み重ね
鈴蘭はとても喜んだ 人形もいつも素敵な笑顔
けれど同時に鈴蘭は 自分が動けないことが
季節とともにはじめから 繰り返すことが寂しくて
lin lin lin it is lyrics of your story
lin lin lin it is sound of our sonata
”coda” tempo rubato
「それでね、私スーさんの力をもっと強くする方法を覚えちゃいました。スーさんにはいっぱいいっぱいお礼したいから」
鈴蘭の丘。
五月の淡く澄んだ真っ青な空の下、一面が真っ白広がる鈴蘭の花のなかで人形が鈴蘭に話しかけている。
いつも純粋に楽しそうに笑う きれいな表情の人形と、静かに揺れることで優しく声を聞く鈴蘭。
けれどその後、その人形には珍しい、真剣に何かを決意したような少し難しい顔をした。
「実はね、今日初めて外の人形を見たの。私みたいに自由に動けないんだね、やっぱり。あの子たちにも、私のように自由をあげたい、そしていっぱい新しいお話を聴きたいわ。でも、そうなるとここにいれないことも多くなる。スーさんも一緒に行けたらいいのに」
自由になりたいと思ったのは鈴蘭も一緒だった。
今まで、永遠とも言える時を繰り返してきた中で、初めて覚えたこの感情。
理由はこの人形。人形の語った物語。
自分も人形と一緒にいろいろな物を感じたい、新しく変わりたい、物語の主人公になりたい。
その時、ふと鈴蘭は気がついた。
自分が人形を通して、本来生まれて咲いて散ってゆくだけでは知り得なかった、繰り返されてきた鈴蘭たちの人形とのやり取りを、気持ちを、物語を得ていることに。
鈴蘭はもう、以前の零から全てを繰り返す存在ではなくなっていた。
それは、人形の力と鈴蘭の力の結晶、鈴蘭と人形の二人の奏鳴曲。
tempo rubato 自由に 自在に 決められたテンポ、リズムはもう盗まれた 大胆に 思うままに
「あれ、スーさんどうしたの? もしかして怒っちゃった? スーさん、返事してよー」
鈴蘭からの返事がないことに戸惑う人形の背中を、トントンと何かが叩いた。
驚いて振り返った人形の、パッチリ開いた大きな瞳に小さな妖精がキスをした
”私は鈴蘭 生まれたばかり 今、自由に気がついたばかり あなたがたくさんの物語を分けてくれたから これからは一緒に何処までも行けるわ!”
「スーさん!!」
人形は鈴蘭の精をぎゅっと抱きしめた。
これからもずっと一緒に
lin lin lin this is lyrics of their story
lin lin lin this is sound of their sonata
fine
『人形と鈴蘭のソナタ』 第二楽章 brillante
・
・
・
良き調べ、ありがとうございます。
こちらこそ読んでいただけて本当にありがとうございました。