《――記憶――》
目覚めたとき最初に嗅いだのは血の匂いでした。
吹き出る鮮血が空気と混じり合う、あの甘美な香り。
「あ……」
――きれい。
その血の一滴だって、どんな霊薬よりも高純度な魔力を秘めてます。
きらり、きらり、とライトに照らされて輝く様子は、だからとても贅沢で、目眩いがするほど無駄な作業。
ダイヤモンドを片っ端から叩き割って、その煌めきを眺めるような。エーテルの精髄を固めて打ち上げ花火にしたような、そんな途方もない無益です。
――血滴が、落ちます。
開いた傷口から絶え間なく。
私の仮形に、私の素体に染み渡ります。
スローモーションのように、ぽたり、ぽたり。
魔術心臓が鼓動をうち、生命が力を獲得します。
熱さが、苦痛が駆け巡り、身体を作りました。
生まれた。
私が、いま、この瞬間に――
そのことに、ためらいや混乱はありませんでした。
……ただ、怖い。
ただ無性に怖かったのを憶えています。
閉じ込められた密室の中で、私はひたすらに震えてました。
「――起きたわね」
冷たい声。
温情や柔らかさなんて、まるでありません。
どれだけ深い海底でも、これほど冷たくはなかったです。
私は震えたまま目を向けます(実際のものではなく、感覚的で魔術的なものです)。
周囲にあるのは魔法陣。
精緻に描きこまれた、光り輝く魔法の陣。
そして、すぐ前に居たのは、私の主人。私の仮形の持ち主。パチュリー・ノーレッジ様――
……今でも憶えています。
手首から血を垂らしながら、真っ直ぐに私を見下ろす様子。
瞳は想像もできない量の知性をたたえ、魔力は炎のように燃えさかります。
血の量はもう致死に近いのに、取り乱す様子はまったく無く、ただ冷静に、ただ静かに私を見てました。
「聞きなさい――」
冷徹な声。
「聞きなさい、そして憶えておきなさい」
蒼白い顔。
声は意外なほど強く、魔力はなお高く、明るく。
「あなたは私に仕えるモノ。私を伝えるモノ。我が七曜を越えて、時の暴虐を越えて、永劫にまで続く道程に属するモノよ。だからこそ、あなたは私の従属者にして一個の独立した情報系でもある」
腕が横に振るわれ、落ちていた血滴が途切れます。
「故に、あなたは私に仕えるだけでは足りない。学び、知り、疑問を持ちなさい。疑問を発しなさい。いかなる事象であれ、曇りのない眼で見つめなさい。隠された真理を暴き、己がモノとなしなさい。その不足は私が補うわ」
漆黒の闇夜の中で、パチュリー様だけが浮かび上がります。
「そう、あなたは暗闇を飛ぶ盲目の鳥。あなたは大洋に迷うちっぽけな魚。あなたは蒼穹を望むただの石ころ。だけれど、私がそれを変える。変えてみせる。あなたに私を書き込み、遥かなる階梯を昇らせてあげる。万物があなたに頭を垂れ、教えを請うことになるでしょう。だから――」
ぴたりと血を止め、ふわりと微笑んで、
「だから、それが満ちるまでは、私の傍にいなさい? 小悪魔……」
それが、パチュリー様の限界だったのでしょう。
倒れました。バッタリと。
そりゃ見事な倒れっぷりでした。受け身もとらずに頭から墜落したんですから。
やけに生々しい、ゴッ、という衝撃。杯や燭台が、どんがらがっしゃんっと音を立てました。
その後には、しーん、という静寂。
「…………え、あの……?」
呆気に、とられます。
「えと、パ、パチュリー、様……?」
奇しくも、これが私の第一声でした。
暗い室内で、無音だけが返事でした。
私はオロオロと左右を見渡します。
暗闇があるだけで、他には何もありません。誰もいません。
むらさき色の髪が石床の上に広がり、たまにパジャマ姿がぴくぴく震えるだけです。
ど、どうしろって言うんでしょう?
――いま考えると、パチュリー様は、私を作成するのに体力を使いすぎたのだと分かります。
でも、その時の私は、そんなことはまったく知らず、
『召喚した人が、いきなりひっくり返った』としか理解できませんでした――
「ぅ……」
おそるおそる。
おっかなびっくり。
なにか理不尽な気もしましたが、私は使い魔としての使命を奮い立たせ、儀式台から降りて近づきます。
素足のまま、一歩、二歩。
大理石の床がとても冷たかったのを憶えています。
むらさき色の服と髪。
最初に思ってたみたいにおおきな人じゃなくて、私より少し高いくらいの背丈だと、その時はじめて分かりました。
あれだけの魔力の持ち主だなんて、まったく思えません。
「あの……」
膝をついて、片手で触れました。
手当てというのは、患部を撫でる行為が語源だと聞きます。
だから、その背をさすります。
――さすさす。
とても骨ばった感触でした。
「大丈夫、ですか……?」
「お、お、ぅ……」という、うわごとみたいな言葉。
なにか、意味のあることを喋っているらしいので、私は腰を屈めて耳を近づけます。
――唐突に、がしっ! と手をつかまれました。
「きゃ!?」
「…………」
濡れた瞳が私を見つめ、捉えました。
その口からもれる言葉はあまりに小さく、やはり聞き取れません。
「え? あの……?」
「ぉ、が……」
「あの、なにを」
「お、おなか――」
「はい?」
世にも情けない、泣きそうな声で私の持ち主は言いました。
「おなか、すいたあ……」
***
《――昼――》
枕となっていた本から頭を上げ、目をごしごしと擦ります。
ふわあ、おおきなアクビをひとつ。
ぼんやり目に映る景色は、いつも通りのヴワル図書館。
密閉された空間の中で、淡いランプがそこかしこに灯ります。
――いけない、仕事中にお昼寝だなんて……
よだれのついた口元をふき、本にシミがついてないかを確かめ、ちょっと赤面。
懐かしい過去の記憶は、やっぱりというか、思った通り夢だったのです。
(なつかしいなあ)
しみじみと思い返します。
そう、あの後が、とても大変でした。
それまでエーテルの海をのんびり泳いでいた――つまり純粋に精神体だった――私には、「おなかがすく」ということがよく分かりません。
栄養を取るとは、周囲の魔力を吸収すること。
口から栄養を取るなんて、その概念すらなかったのです。
ですから、棚にあった本から「人が食べれるものは何か」を学ぶことからはじまり、調理の存在とその意義を知り、はじめて見る炎のびっくり、味わう行為に感動し、とぼしい食材を前に頭をひねり、分量はミリグラム単位で慎重に計測し―――――ようやくオートミール(らしきもの)を作り出せたのは、夜がしらじらと明け始めた頃でした。
そうして出来た料理は、味はもちろん、見た目ですら気味悪く。はたして食べ物なのかどうかも怪しいシロモノ。
同じようにしたはずなのに、どうして見本の写真と現物がここまで違うのか、いくら考えても分かりません。
とてもとても情けない気持ちで、寝込む主人の枕元まで運びました。
ですが、心優しいパチュリー様は、それを彊歯呑やカリフメリスのようにむさぼり(どちらも私の故郷にいる動物です)、すこしも残さず完食しました。
その生命力あふれる動きに私は感動し、また、とても安心したものです。
ああよかった、アレは人間が食べれるものだったんだ、と。
――パチュリー様が、たとえ毒物を食べても大丈夫な悪食だと知ったのは、ずいぶんと後になってからのことです――
(ふふ……)
頬杖をついて、目を閉じてみます。
口元がゆるんでいるのを自覚します。
最初の料理、その失敗も、今となってはいい追憶です。
そう、あの時から今日まで、どれだけの数の料理を作り、またどれほどの年月を過ごして来たことでしょう。
あらためて思うと、なんだかくすぐったい気持ちになります。
その時間、回数。
もう、とても数え切れないのです。
パチュリー様を看病した回数も、きっとそうです。
このおおきな図書館と一緒に、長い長い時間を共に過ごしてきたのですから……
「よう」
びく!
背中が震えます。
ぽん、と、完全に油断していたところに肩を叩かれたのです。
掛けられた声は、とても聞き憶えがあるものでした。
私は慌てず騒がず、驚いて羽根が全開になったことなんかまったく無視して、こほん、とひとつ咳をついてから人差し指を立て、振り返りながら言います。
「魔理沙さん、また来たんですか? 本を借りるのは構いませんけれど、いい加減、返却してないものが多すぎますよ? 今日こそは返してもらいますから――てっ!?」
照れ隠し半分の言葉は、最後まで言うことができませんでした。
「な、なんですかその格好わ!?」
「ふふん、いいだろー」
「いいだろー、ではなくて、どうして!?」
「そこに落ちてたんで拾って着ただけだぜ?」
「それはお日さまに干してたんです! 落としていたわけではありません!」
魔理沙さんが袖を持って見せているのは――パチュリー様の普段着でした。
いつも着ている黒くてフリルの多い服ではなく、私の主の服を身に着けてます。
いえ、服だけではなく、帽子と丸メガネ(読書用)もでした、
パチュリー様がいつも持っている魔道書まで手にしてます。
「けっこう似合ってるだろ?」
「違和感がおびただしいです」
「そっか? 我ながら着こなしバッチリだと思ったんだがな」
「似合っていません」
「知的な感じがよく出てるだろ?」
「痴的、の間違いです、きっと」
「なんか着心地がいいんだよなー。この服も私に着られたがってる証拠だよな」
「はあ……」
その服装は、ごく正直に言って、魔理沙さんには不似合いでした。
だって、ゆったりとした薄紫色の服は少しの風にもふわふわ浮かび、活動的な魔理沙さんが着用すると、スカートの裾が常にめくれるのです。
目のやり場に困ること、この上なしです。
「ほれ、いっそ私のことを主人だと思ってもいいんだぜ?」
そのことに気づいているのかいないのか、魔理沙さんは自分を指差して言いました。
親指の先の笑顔がお日さまみたいです。
日照りや干ばつを起こしてしまう、迷惑な所もよく似てます。
「お断りします。私の主人はパチュリー様だけですから」
私はそっぽを向いて言いました。
冗談だとしても、その言葉には頷けません。
「おお、つれないぜ?」
「当然です、使い魔は主人を慕うものです」
「ほれほれ、服装は一緒だ、これは割合で言えば五割六分は同じってことだ」
「それは魔理沙さんの中身が四割四分しかないということですか? とにかくお断りいたします」
「ふうん?」
なぜか頭を撫でられました。
意味不明です。
かいぐりかいぐり。
弾くのも大人気ないと思い、そのままにします。
ですから、私の羽がパタパタと動いているのは、決して嬉しさのためではありません。
「しっかし、この服、いい素材つかってるなー、原材料はなんだ?」
風に乗って移動しやすいよう特殊な素材を使っているので、たしかにそんじょそこらの素材ではありません。
褒められるまでもなく、すばらしい品です。
――――けれど、その目の輝きは、なに?
イヤな予感が駆け巡ります。
「駄目ですよ、魔理沙さん。それを持っていかないでください」
「おいおい、人聞きが悪いなー、いつ私がそんなことを言った」
「目が口ほどにものを語ってました」
「なんて?」
「これが欲しい、って」
「トレジャーハンターが遺跡に向かう理由としては充分だよな」
「トレジャーハンターは盗人ではありませんし、ここは遺跡でもないですし、服を盗んでいい理由にもなりません」
「そっかそっか」
「聞いてますか、ねえ」
「もちろんだぜ、ところでこの服の手入れの仕方をひとつ教えて欲しいんだが?」
「なぜです」
「後学のために」
「なんの必要で、です?」
私は力強く言います。
「夢と希望と愛のため?」
首を傾げて返されました。
「どの野望と渇望と物欲の話ですか? 魔理沙さん……」
「なに、私のほんのささやかな蒐集癖のなせるワザだぜ?」
――要するに、持って行くから洗い方を教えろ、ってことですよね。
私は、はあ、とため息をつきます。
なんだかもう、頭痛がしてきました。
額を押さえて首を左右に振ります。
(魔理沙さん、ひょっとして、図書館内のものは、ぜんぶ自分のものだと思ってる……?)
否定する根拠が、なにひとつありませんでした。
なにげに怖い想像です。
――霧雨魔理沙と云う名の魔女は、一個の現象である――
ふと、私に書かれた記述が、喚び出されます。
キーワード検索が一致。癖のある筆記が、流麗なペンの動きもそのままに、空想の中で書かれ出します。
霧雨魔理沙と云う名の魔女は、一個の現象である。
博麗の巫女が無重力を体現し、どこにも属さず宙にあるように、彼女はその強烈な魔術(パワー)で空を駆ける。
その流れは、いかなる障害であっても突き抜け、とどまることを知らない。
彼女の蒐集癖は、その自由さに対する無意識のブレーキであるのかもしれない。
自らを繋ぎ止める錨である。
むろん、これは仮説だ。すべては彼女の業に拠るものであり、他者が理解できるものではないのだろう。
霧雨魔理沙と云う効果に支えられ、霧雨魔理沙と云う結果を残し、霧雨魔理沙と云う忘れ難い名を刻み込む彼女は、博麗の巫女と同じく、ただそう或る現象である。結局のところ、そう認識するより他にない――
パチュリー様の文字です。
私も賛成の意見ですけど、考えてみればなんて厄介な人なんでしょうか……
溜息と一緒に私は言います。
「とにかく、それは一張羅なんです、替えが無いんですから、持ってくのは止めてください」
「おお、レアアイテムか、ますます価値があるってもんだな?」
「パチュリー様の魔力供給が無ければ、そのうち消滅すると思いますよ?」
「ほほう、そりゃ残念だ」
「でしょ? ですから諦めてください」
「うーん…………」
じい。
私を見てます。
なんなのでしょう?
やけに意味深です。
しばらく、そうしていた後、ぱちん、と指を鳴らし、
「仕方ないな、分かった、この服は諦めてもいいぜ、この服はな」
この服は、の部分を嫌に強調して言いました。
「……な、なんですか、その怪しげなイントネーションと視線は」
「いや、考えてみれば、私のすぐ目の前にも、極上のレアアイテムがあったんだなーと気がついたんだが?」
ざざっ!
急いで距離を取ります。
慌てるあまり足がもつれそうに。
机に手をついた音が、やけにおおきく響きました。
背中から、冷や汗が大量増産中。
手近な魔道書を急いで掴み、盾代わりにしつつ訊ねます。
「あ、あの、私の聞き違いだとは思うん――」
「だからこの服は諦めるさ、その代わり、目の前のレアアイテムを持っていく。な、簡単なリクツだろ?」
やばい、です。
聞き違いではという儚い希望は潰えました。
私、本気でレアアイテム扱いされてます……!
「えと、それっていつもの冗談、ですよね……?」
じりじり。
後退しながら、それでも言いました。
言わざるを得ません。
だって魔理沙さんの瞳が収集家特有の、「ころしてでもうばいとってやるぜ」の視線になっているのです!
「いやいや、魔女は有言実行で義理堅いのが特徴だぜー?」
じりじり。
近寄ってきます。
妹様と目が合ってニッコリと微笑まれた時よりも、ずっと怖いです。恐怖です。
「そんな魔女、魔理沙さんの他にはいないと思いますよというか近づかないでくださいお願いします」
「主人には忠実、性格はいい、見た目もかわいいし、働き者だし言うことなしだ。やっぱ私も魔女だし、使い魔の一人くらいは必要だよなー」
目にはからかうような光。
その指が、すぅ、と伸び、私の頬にふれそうになります。
慌てて距離を取りました。
「なら自分で作製してください! 魔理沙さんなら、それくらいはできるでしょう!?」
「うーん、私が作ると、私に似て整理整頓をしなさそうなんだよ」
「私にあの部屋の掃除をさせるつもりですか!?」
混沌、という言葉がなによりも似合う、魔理沙さんの部屋です。
くらり、意識がとおくなります。
「なに、ほんの百年ばかり丁稚してくれればいいだけだぜ?」
「それって魔理沙さんが死ぬまで働けってことじゃないですかぁ!!」
「いやいや、もちろん、それだけじゃない」
目が細められます。
肉食獣がエモノを狙う時のと、とてもよく似てました。
「どーも、お前から、いい匂いがするんだよ」
「え、あ、ちょ!?」
背中に壁が当たります。
い、いつの間に、こんな所まで後退してたんでしょう……
「スゴク、嗅ぎ慣れたやつなんだ。それが私の蒐集魂に火をつける?」
「どうして半疑問形なんですか……」
オレンジのランプが横から照らし、魔理沙さんの金髪や瞳にゆらめく陰影を作ります。
本当に間近に顔があるのです!
魔理沙さんの両腕と壁。
この三角形に、私は囲まれてしまいました。
「や、やめましょう? ね?」
魔理沙さんは笑顔のままです。
その笑顔が、なによりも雄弁に「いやだぜ」と語っていました。
彼女の良心に、「蒐集をあきらめる」という文字は無さそうです。
私は――手元の魔道書を、ぎゅっと握ります。
指が痛くなるほど、力いっぱい。
覚悟を決めます。
「お?」
「――」
このままだと、私は本当に連れ去られることになるでしょう。
ドナドナの子牛的な哀愁を感じながら、遠ざかるヴワル図書館を眺める結果になります。
そんなの、ゴメンです。
それよりもなによりも、あの混沌とした魔理沙さんの部屋を掃除し続けるなんて、私にはとうてい耐えられません……!
(――心の中で真言を。呼吸を静かに繰り返し、いまは架空領域にて数式を――)
魔道書は熱を持ち、指先を暖め、内なる機構に炉が灯る。
目をつむり、呪文と呪陣を重ね上げて、遥かなる法域の高みを目指し。
そう、隠された光精と連結し、隠匿された秘文字を繋げ、彼方から此方へ。
命脈と叡智はセフィロトの樹を巡りて、王冠を手にする。
真なる光明を四方に配置し、輝ける輪廻を、今、この時こそ発動を!!
魔道書を突き出し、撃退の熱線を炸裂!!――――させる代わりに、私のお腹が「くぅ!」と鳴りました。
(え?)
ぱすん、と魔道書から煙が昇ります。
どっと手足から力が抜け、ぐんにゃりと空間が歪んで見えます。
二本足で立ってはいられず、前のめりに――
「おお!? っと!」
床に激突する寸前で、魔理沙さんに抱えらました。
けれど、その感触ですら遠いです。
(!? ま、まさか、魔力切れ!?)
遠い意識の中で、異変の原因に気づきます。
そ、そういえば最近、エネルギーの摂取をしていません。
ふだんの私らしくない失敗を――お仕事中のお昼寝をした時に気づくべきでした……!
「あっぶないなぁ、こんな危険なことしちゃ駄目だぜ?」
ぷすぷす、煙を上げてる魔道書が取り上げられました。
顔が、ほんの目の前に。
「は、離れませんか? 離してくれませんか? あの……」
髪を撫でられます。
魔理沙さんは、まるで三日月みたいな笑顔です。
「あ、やっぱり魔女なんだ」とか、どうでもいい考えがよぎります。
「さぁて、悪い子にはお仕置きだ。契約印はどっこかなっ?」
髪を撫でていた手が、えと、その、そのまま下に滑り――
「や、ちょ! だ、駄目ですって!」
「んー、ここかな、それともこっちか?」
魔理沙さんの背徳的な指先が、私のあらゆる所を確かめます。
「や、やめてください――!」
「おっかしーなー、小悪魔、どこに隠したんだ? これじゃ『書き換え』ができないだろ?」
魔力が切れた私は、もうろくに動けませんでした。
体重を、ほとんど魔理沙さんに預けてる格好です。
肌に魔力が触れ、じりじりと痛みます。
弾き飛ばすだけの力が残っていません。
身じろぎすることしかできません……!
「も、駄目、です、ってば……!」
「まあまあ、固いこというなって」
ふれる指。
強引な抱擁。
なにもかもが気持ちを混乱させます。
唇を噛み締め、弱った体に鞭打って抵抗し、でも、心のどこかで、この状態を喜んでいる私がいました。
とても、矛盾した気持ちです。
嫌だと思ってる本心とは別に、心の底から喜んでいる私がいるのです!
私の機構が、私の気持ちを裏切ります。
「あの、お願いです、見えるところに契約印なんてありません! こんなことしても駄目なんです……!」
「んー?」
記された文字が、空想の中でぐるぐると。まるで恋文のように――
違う! それは私の気持ちなんかじゃない!
「内蔵式なのか? そりゃ厄介だな」
「でしょ、ですから、もう……」
「なら、家に持って帰って、ゆっくりと調べないとなぁ」
「なな、違います! そこは「残念だな、今日はあきらめよう」とかそんなセリフが……!」
「小悪魔……?」
息も絶え絶え。
私は魔理沙さんを見つめ返すことしかできません。
「仲良く暮らそうぜ♪」
「諦める気ゼロですか!?」
言うなり私を抱え、お姫様でだっこな姿勢に変わります。
むらさきの服を着て、満面の笑顔で。
服は同じなのに、その表情と顔だけが違っていて、なんだか気持ちが混線してきます。
魔理沙さんの言葉じゃないですが、「半分はいつものパチュリー様だから半分は大丈夫?」なんて、わけの分からない考えが……
「や、やー!」
「こらこら、暴れるなって、まいはにー」
「なんですか! その「仕方ないなあ、このワガママさんは♪」みたいなニュアンスは!」
「嫌よ嫌よも」「嫌なんです!」
「むう、強情な」
「魔理沙さんが積極的すぎるんです!」
「まあ、その強情をいかに籠絡するか、それがこれからの課題だよな」
「使命感に燃えた目をしないで下さい! 鼻息荒くしないで下さい! あと、なんですかその強く握った力拳は!」
「これからの意気込みの現れ?」
「ああ、もうこの人は……」
「――――」
その時――視線を――感じました――――
背中がいっぺんに凍結します、おなかから下が奈落に吸い込まれたみたいです。
不自然な体勢から、急いで振り向きます。
「……ぱ、ぱちゅりー、さま…………?」
遥か向こうの私室。
扉の開いたわずかな隙間から、我が主人の視線が突き刺さってました。
半眼の、無表情な目がやたら怖いです。
ご主人様は見た! みたいな?
な、なんか、混乱しています、私。
――ひゅう。
室内なのに寒風が一陣通り抜けます。
天使が咆哮や騎馬や武具と共に一個師団ほど通り抜けたでしょうか?
魔理沙さんは、私の目線を辿って同じくパチュリー様を見つけ、にやり、とそれはそれは邪悪に笑ってから、私にぴたりと頬を付け、
「よう、パチェ、コイツは持ってくぜ?」
「ち、違うんです! これは、あの――」
「…………」
ああ、駄目です。この姿勢。
こんなお姫様では、何を言っても無効化されます。
あの実に微妙きわまりない視線は、完全に誤解をしてます!
振りほどく力もなく、成すがままの私に、笑顔の魔理沙さん。
まるで私が魔理沙さんに身を任せてるみたいじゃないですか!
「そう、そうなのね、そうだったの、ふふ……」なんてパチュリー様の呟きが、聞きたくなくても聞こえて来ます。
「ふはは、さらばだ!」
「た、助けてください! これは違うんですっ!!」
「そしてこんにちわ清潔な室内っ!」
「むりー!!」
魔理沙さんが、高笑いと共に上昇しました。
もちろん、私も上昇してます。
怪盗に攫われる宝石の気持ちが初めて分かりました。
いえ、これは完全に人攫いです、ってかどっちも犯罪です!
パチュリー様と目が合います。
あの、なんで、悲しげな視線で小さく手を振ってるんでしょうか?
諦めが早すぎます!
え、ホントにこのまま!?
「や……」
天井の高さまで飛び上がり。
星屑の速さで箒は行き。
窓の向こうには湖がきらきらと光ります。
絶望的な感情。
ここが私の新たなる一歩になってしまうのでしょうか?
それは――
その時、私が発した言葉は、私にも何で言ったのか分からない言葉でした。
「パチュリー様! 今夜の夕食はオムライスです!」
「!」
「お?」
――ずうん。
図書館ぜんたいが唸りました。
「っ! 開かない!?」
窓ガラスは締め切られ、本は思うままに飛び回り、オレンジのランプは炬火のように燃えさかります。
「ちい! なら出口から――」
私を抱えたまま、箒の行く先を方向転換します。
柄の先しめしているのは、開いたままの玄関口です。
「――――」
パチュリー様の手が、こちらを示し、そして、ぎゅっと握りました。
「おお!?」
むらさき色の服が、魔理沙さんの体を締めつけます。
そのまま手が、少し上に持ち上げられ――
「ななな!?」
魔理沙さんも浮かびます。
そして、気合一閃。手が振り下ろされました。
聞こえた「おむらいすーっ!!」という叫びは、空耳だと信じたいです。
服とその中身が図書館の床に急落。
すさまじい勢いで迫ります。
「って、ええっ!?」
「逃げるな小悪魔ー! っていうか飛べー!」
「むちゃいわないでぇぇえ!!?」
捉えられた私は、当然のように落下。
私の上昇力なんてたかが知れてます。
天井がもの凄い速さで遠ざかっていきます。
半秒もしない後、やけに生々しい、ごごンっ! なんて音が頭蓋に響いて――――きゅぅ…………
***
《――夜――》
「あの、本当に大丈夫ですから」
私の言葉は、暗い室内に消えるだけでした。
返事は帰って来ません。
「ほら、ちょっとガス欠気味ですけど、しばらくすれば回復しますし……」
じー、と見られてます、私。
あの後、事態の成り行きを説明した私は、この私室に呼び出されました。
事態がこじれた原因のひとつに、私の空腹があるとの理由で、です。
自然回復だけでは、もう限界だろうと言うのです。
ですから今、「そんなことは無いはずです」と、弁論大会を実施中です。
古代ローマの市民集会さながらに詭弁を弄します。
現在の時刻は深夜。
ちいさな円窓には三日月がかかり、フクロウが当たり前な顔でホーホー鳴いてます。
静かな室内には、私の演説しか響きません。
――ちなみに魔理沙さんは、色々と文句を言いながら夕食を一緒に食べ、いつものように本を二・三冊借りて、いえ、かっさらって帰りました。
ことの元凶なのに、一番トクをしてる気がします……
「それに最近だと、私のお腹が減る回数もすくなくなっていませんか? きっと独立して働ける機構に近づいてるんですよ、あ、あとパチュリー様の体調もよくないじゃないですか、今日だって熱が出てましたし、ほら、ここはひとつ、お開きということで、ね、そうしましょう」
身振り手振りをまじえての言葉は、やっぱり虚しく消えるだけ。
年代物の椅子に座ったパチュリー様が、ペンを片手に手招きをはじめました。
半眼で見つめられながらそれをされると、なんだか地獄に招かれてるみたいなんですが……
「あの、やめましょう、ね?」
まっくらの室内。
光源はパチュリー様の手元のランプだけです。
照らされた顔は蒼白く、幽霊じみてます。
「…………」
パチュリー様は数秒、視線を下に向け考えるような仕草をし、再び私を、じい、っと確認するように見つめます。
そして意志を持って、ゆっくりと首を振りました。
絡繰り人形のように左、右。
その動作には、固い固い意志が窺えました。
パチュリー様が、意見をひるがえす予兆はまったくありません。
「うぅ……」
――観念を、します。
いえ、実を言えば、最初から勝敗はついていたのです、私が本当にパチュリー様の命令に抗することはできませんし、まして――
「――――」
まして、パチュリー様が持っているペンは、いまこの瞬間も血を啜り、その切先から血を滴らせているのです。
あえて見ないようにしていましたが、もう駄目です。
一度見てしまった以上、もう逃れえません。
その煌めきが、濃厚な芳香が、私の意識を侵食します。
のどおくが鳴りました。
もう一月以上、アレを飲んでいません。
思い出したように、お腹がぐるぐると唸ります。
信じられないほどの空腹感。私を構成するあらゆるモノが、アレを欲しているのです。
――トントン。
促がすように、指が机を叩きました。
視線が「さあ、早く」と催促してます。
「うぅ……」
もう一度、私は唸り、
「見ないで、下さいね……」
いつもの言葉と共に、胸元のタイに手を伸ばします。
躊躇しながらそれを解き、ボタンをひとつひとつ外していきます。
さらさら肌を滑る布。
服が着地した音が、やけにおおきいです。
夜の冷たさが、全身に染み込みます。
(…………やっぱり、目を閉じてくれてない)
恨みがましく見つめ返します。
靴下などの小物を続けて脱いでいる間、パチュリー様は変わらず私を見つめてました。
恥ずかしさが、体中を駆け巡ります。こればかりは、何度しても慣れることはありません。
やがて、私の体以外のものをすべて脱ぎ、準備が整います。
部分部分を手で隠し、不自然な格好で歩み寄りました。
足下の床の感触が、やけにハッキリ分かります。
ぺたん、ぺたん、ぺたん――
十三階段を上る罪人や、予防注射をうける子どもの気持ち、です。
その時が来なければいい、そうでなければ、いっそ早く終わって欲しい。
綱上の緊張と恐怖。
やがて膝同士がふれるほど近づき、手を外しました。
私はただ待ちます。
その時を。
……パチュリー様の手が真っ直ぐ伸び、おなか付近にふれました。
手の動きが、闇の中で白い残像となって浮かびます。
す、う――
息を、ひと口分だけ吸い込み――
《 もどれ 》
そして、命じられたのはひとつの単語。
「ン……」
全身がぶるりとふるえ、魔術心臓が鼓動を止め、時がゆるやかに巻き戻ります。
いかなる時であっても働いていた機構が停止し、別の働きが作動。
白かった肌は元の白に、黒い翼はおおきく広がり包み、そのまま私を圧縮、手足は必要をなくし、ただ本来のカタチに還元。
私というカタチは解け、ただ一点に吸い込まれるように消え。
パチュリー様の手元に素体としての私――一冊の本としての私が残ります。
黒い翼をあしらった背表紙を、我が主につかまれています。
私は……震えてました。
振動がパチュリー様の指を、より確かに感じさせます。
裸だった時の、何倍も恥ずかしく、また心細いです。
だって、今の私はただの本です――行動も魔力も持つことのできない、ただの器物でしかありません。
たぶん、ヒトが首を切断され、頭だけになって誰かの掌の上にあれば、いまの私の気持ちになるでしょう。
そこでは、一切の自由が許されないのです。
素体としての私は――召喚のコアとなる物質は――それそのものの働きしかできないのですから……
……パチュリー様は私を無造作に机の上に放り、白紙部分を探り当てます。
背に当る木板の硬さ、長く白い指の冷たさ。
筆記されていた箇所を確かめるようになぞり、そこから先――まだ白いままの紙に躊躇いなく書き込みました。
(ン……)
痛みと、そしてそれと同量の悦楽が、流れるようなリズムで刻まれ、キレイな筆記体が描かれます。
それらは一行が過ぎたところで、ジュッ……という音と共に煙を上げ、私の一部となり、永久にその場に印刷されます。
カラッポだった体内(いえ、正確には本内、でしょうか?)にエネルギーが注ぎ込まれ、真奥に活力が灯りました。
イメージ――
私は、このとき、いつも妙な想像をします。
ちいさな机に横たわり、私の背中にパチュリー様がいっしんに刺青を掘り込んでいる。そんなイメージです。
瞳を閉じ、唇を噛み締め、私はただ耐えるだけなのです。
もちろん、現実にはこれは栄養補給と知識修得を兼ねている行為ですから、まったく似ているところはないのですけど、なぜか、いつもそう連想します。
(あ、また……)
闇の中で、空想の中で文字が浮かびます。
消すことも叶わない文字列、永久に記される文の流れ、その内容は、ここ最近がいつもそうであるように――――魔理沙さんのことでした。
彼女と知り合ってから、私に書き込まれる内容は加速度的に変化しました。精霊間における術的な問題や、秘儀、密議の事柄はなりを潜め、彼女の事ばかりが増えています。
そう、鮮やかに、ただ鮮やかに、魔理沙さんの姿を、仕草を、表情を書き綴られてます。
黒の三角帽子をつまむ様子。
含羞んだ笑顔。
瞳の強さ。
誰よりも真っ直ぐなそのまなざし。
本当に、目の前にいるみたいです。
くるりくるりと、布が翻るように魔理沙さんの色々な姿が、想像が浮かびました。
その想いは、私の感情を侵食するほど強烈で、また日々こうして書き込まれるたびに、その割合は増えて行きます。
――実は以前は、この時間はとても楽しみでした。
記される事柄は常に知と品に富み、終わればその時、新しい何かを、確かな知識を手にすることが出来ました。
私の中にある情報を本当に大切に感じながら、眠りにつくのが常でした。
けれど、最近では、哀しみばかりが沈殿します。
嫉妬……とは少し違います。これは後悔によく似た、表現しようのないものです。
弾けるような、七曜に煌めく魔力を受けとりながら、けれど、私の気持ちはどこまでもどこまでも下降します。
目をつむっても、歯を食いしばっても、なにをしてもその情報は私に流れ込んで来ます。
だからせめて、それが心に響かないように。
私のものだと錯覚しないように、ただそれだけを念じつづけました。
私にできる、ただひとつの反抗です。
『なぜ魔理沙は私を攫ってくれないのか』とか書かれても、私には返事のしようがないのですから。
あと『いっそ小悪魔を丁稚に出そうか』とか真剣に悩まないでください。
その後の『いや、これ以上ライバルを増やす訳には……』とかも意味が分かりません。
――パチュリー様がすべてを書き終わるまで、私はそれらを溶け込ませないようにしました。
***
《――深夜――》
私はベッドに寝そべっています。
既に元のヒトガタです。
下にはシーツの感触。頭には枕の柔らかさ。
そして、すぐ隣にはパチュリー様。
寝息がふれるほどに近いです。
えいっ、とつつきたくなる気持ちを堪えます。
ちなみに指ではなくナイフで。
こんなに非道な主なんですから、それぐらいは許されると思います。
魔力供給が終わった後は、私もパチュリー様も、疲労のあまりこうして同じベッドで眠ります。
自室に戻るほどの体力が残っていないので、必然的にそうなるのです。
……あ、いえ、すいません。半分だけウソ、なんです。
確かに初期はそうだったのですが、実を言えば、最近は違います。
屋根裏の個室にまで帰るくらいの体力は残っています。
司書の仕事は体力勝負。
こんなことでは、もうヘコタレません。
なのに、それをしないのは――――やっぱり、そうしたくないからでした。
ここ最近だと、特に。
『いかにパチュリー様が魔理沙さんのことを好きか』。
そんなことを理解しながら独りになるのは拷問でしかないのです。
眠れるわけがありません。
こうしてパチュリー様の目の前で、ぶつくさと文句を言わなければ、私の精神の天秤は整いません。
私が心の中で思う度に、パチュリー様がちょっと魘された表情をしていますが、それは私の預かり知るところではございません。
等価交換と自業自得は魔術の基本なのですから。
「もう、ホントに……」
ほんの小さな声。
起こすためのではなく、ただ口にするだけの言葉。
不機嫌そうに顰められた眉や、青白いほっぺた、とても長い睫毛……
それらを何となく、見つめました。
ふれたいな、とふと思います。
けれど、パチュリー様は眠りが浅いので、実際にはしません。
想像の中で、そうしてみます。
本当にすれば、起こしてしまいますから。
そして起こした時に、「どうして触ったの?」なんて尋ねられたりしたら、さすがにちょっと恥ずかしすぎるのです。
だから、目で、ふれてみます。
――月に照らされた、とても白くて細い首筋、手足、そして、その中に脈打つ血潮。
毎朝している、パチュリー様の髪をくしけずる感触が、白昼夢のように、とてもリアルに蘇りました。
「パチュリー様……」
……実を言えば、
私には、恐れていることがひとつあります。
心底、恐れている。真っ暗な、明けない夜のような恐怖。
それは魔理沙さんとパチュリー様が好き合うこと、ではありません。
仮にそうなっても、司書としての私がいます。
パチュリー様と離れることが無い以上、それを本当に恐れたりはしません。
そうではなく、私が不要になる時のことです。
――私は、本として、この世に在ります。
本であるからには、当然、ページがあります。
それは有限で、決して無限にではありません。
いつの日にか、『書き終わってしまう日』が来ます。
自分が一体、どれだけ書き込まれているのかは分かりませんが、ただ、いままでの年月を思うと、尽きる日は遠くないと思います。
召喚の時、パチュリー様は、『満ちるまでは傍にいなさい』と言いました。
つまりそれは、『ページが満ちた後は契約が切れる』ということです。
それこそが、魔術の契約。
誰にも変えられない、絶対の戒め。
――いっそ私の中にある文字を、すべて吐き出せれば。
こんな夜には、強く思います。
私に染みついた何もかもを嘔吐できれば、こんな風に悩むこともないのに。
魔理沙さんの記述も、いままで記された知識もいらない。
――万物があなたに頭を垂れ、教えを請う――
そんな日が、来なければいいと思います。
ただいつまでもパチュリー様の傍にいられれば……
ただそれだけでいいのに。
なのに、それすらも叶えられそうにありません。
「おやすみなさい……」
だからせめて、今だけは、仄かなぬくもりが感じられるこの場所で眠りにつきたい。
誰にも邪魔されることなく。
ただひっそりと。
――私は目を閉じます。
怯える心をなだめて、静かに横たわります。
意識が眠る直前、
甘い甘い血の香を、一瞬だけ捉えました……
小悪魔むっちゃ可愛い?
でも、まさか本体が一冊の本だったとは……これはいいかも。
中に書かれる知識を糧として生きるってかっこよすぎ。
って、その小悪魔の中に何書いてんだ紫もやし。殆ど愚痴日記かよ…
後魔理沙も魔理沙で何でパチェ服着てるかな。……可愛いからいいか。
服の交換もきb(ハヴェってレヴァるぞコラ
個人的には「ああ、このテのパターンか」と思いましたし、その後パチュリーが空腹で倒れるのも如何なものかと感じました。
他にも首を捻った点は多々ありますが、この作品の場合そういった部分はどうでもいいのでしょう。
重要なのは小悪魔の魅せ方にあるのでしょうから。
そういう意味では、堪能しました。最後まで綺麗に纏まっていましたし、良い作品だと思います。
ですが、知識の名を関する彼女にとって、飽くなき智を知る行為に終わりが存在するわけもなく・・・
つまり、小悪魔は永遠にパチュリーと一緒に居られるわけですね、よかったよかった・・
あと、オムライスにはちょっと噴かせて頂きました(w
小悪魔はその先を暗く思っていたようだけれど、その先の選択肢は小悪魔自身の手にゆだねられている気がする。
万物がひれ伏すほどになるそのとき、元は単なるアストラルの存在に過ぎなかった小悪魔が現世に存在を確かにするのでしょうか。だから、パチェとの契約が切れた後、その未来は小悪魔自身が決める……の、かな?
ゆれる小悪魔の思いがとても切なかったです。
で、オムライスは笑いどころですかそうですかええ笑いましたy
そんな2号さんライクな小悪魔がとっても切ない。
パチェ……罪なお方……
子悪魔分、補給させていただきました。
気が遠くなるほどの時間を共に過ごしてきた二人。
子悪魔の本がいっぱいになった時、パチェと子悪魔はどんな選択をするんでしょうか・・・